【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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079. やめときなよ、せめてLv7はないとキツイぜ!

 ギーザ台地のアヌビス神殿にコアユニット・ガンマで乗り付けたトピアは、アヌビス神殿に着陸するほどのスペースが無いのでガンマをホバリングさせたまま操縦席を寄せて神殿に降り立った。

 アヌビス神殿の上にはワープポータルが置いてあり、起動しておけば各地の塔から直通になるため、トピアはまずこれを起動した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

トピア「こんにちはアヌビス様。お聞きしたいことがあって参りました」

 

アヌビス神「X,XX(うむ、何用か)」

 

 トピアのアイサツは例によって合掌し頭を下げてのブッディズムスタイル。これに対しアヌビス神は鷹揚に頷く。

 

トピア「このソウルオーブの使い道なんですけど、何かご存じではありませんか?」

 

 トピアはソウルオーブを1つ取り出して用途を問う。アヌビス神の魂が込められたオーブの用途を本神に聞くとはなかなか大胆な犯行である。

 アヌビス神は少しの間遠い目をしてこれに返答した。

 

アヌビス神「XXX. XXXX(それは我が魂の一部が込められたオーブ。探し出して我に返却することで引き換えに報酬を出すことになっている)」

 

 なっている、ということは恐らく上司にそう命じられたのだろうが、アヌビス神としてはその魂を引き剥がした連中が返却しに来たからと言って対価を払うような行いは気が進まないのだろう。

 それはともかく貰えるものは貰っておくべきだと、トピアはアヌビス神が提示した報酬リストを確認した。

 ソウルオーブ5つにつき報酬を1つ、報酬リストの1番から順番に交換出来る形式のようで、現在は26番まで表示されている。1番はランタンの設計図、2番は進化の石板10枚、と一部例外はあるが大体は奇数に設計図、偶数に進化の石板とほぼ交互に出てくる形だ。しかし26番までに並んでいる設計図は既に製造可能なものばかり、ペット秘伝書も元々ペットが弱い上に用途も不明のため、今のところは進化の石板との引き換えの方がメインのようだった。

 

カミール「なあトピア……トピアったら」

 

トピア「どうしました、カミールさん?」

 

 わざわざガンマを降りてきたカミールがトピアに呼びかける。しかしその挙動は妙に不審であった。

 

カミール「もしかしてあの方は本物のアヌビス神なのかい? あの伝承にあるクラエル神の従属神という」

 

トピア「そのアヌビス神ですね」

 

カミール「ヒエッ……まさかこんな近くにおわしたなんて」

 

 なるほど、考古学者のカミールにとってはアヌビス神は生ける伝説のような存在なので無用に緊張しているらしかった。つまり大好きなアイドルに不意に遭遇したようなものかとトピアは理解した。

 

アヌビス神「XX,XX(人の子よ、何用か)?」

 

カミール「頭の中に直接……!? わ、ワタシはカミール! 考古学者をしております! アヌビス神におかれましてはええと……」

 

アヌビス神「X. XX,XXX. X(そこまで堅苦しくしなくてよい。我はアヌビス、クラエル神に仕える下僕である。そして)……」

 

 アヌビス神は声に可能な限りの威厳を乗せて名乗り、一旦言葉を区切ると、トピアの方に視線を向けて言葉を続けた。

 

アヌビス神「XXXXXX(赦されざる侵略者共の討滅を行うべく結成されたこの者達匠衆(マイスターズ)の顧問でもある)」

 

カミール「……キミ本当に神様の指示で動いてたんだねえ」

 

トピア「ご理解戴けたようで何よりです」

 

 カミールはトピアの方を振り返ってしみじみと呟いた。信じてなかったと自白しているようなものだが、ツッコんでも仕方ないのでトピアはさらっと流した。

 

トピア「アヌビス様、今のところ交換したいものは無いようなのでまた今度宜しくお願いします」

 

アヌビス神「XX(あいわかった)」

 

 現在トピアが所持しているソウルオーブは6個。元々作成可能なランタンの設計図と引き換えても意味が無いどころかインベントリを圧迫するだけなのでそのまま取っておくことにした。

 

トピア「ではカミールさん、そろそろ行きましょう」

 

 トピアがカミールの手を引いてガンマの操縦席へと戻り始めた。トピアの方が遥かに腕力(ATK)が強いのでカミールは抵抗できずに引きずられてしまう。

 

カミール「ええっ、もう帰るのかい!? せめて握手だけでも……」

 

トピア「一緒にお仕事していれば毎日でも会えますから」

 

カミール「それは本当だろうね!?」

 

 アヌビス神の方を振り返ってみると満足げに頷いていたので、本当なのだろうとカミールは判断し渋々サブシートへ乗り込んだ。

 ちなみにトピアのインベントリには蒸着装置担当のアヌビス神が常駐しているので、それを出せばわざわざ神殿に立ち寄る必要は無いようにも思えるが、安全が保証されていないところで出してアヌビス神がそこらのMOBに攻撃されるのも面倒だし、回収に別途モンスタープリズムを消費するのも少しだけ無駄なので、近場にたまたまいたアヌビス神の分体に話を聞いてみた形である。アヌビス神としてはトピアのインベントリから気軽に出されると威厳が低下するので助かったとも言える。

 

 

 ところでトピア達が次に向かったのは台地の塔ではなく最寄りのダンジョン、はじまりの遺跡である。

 

カミール「おや、塔に戻るんじゃないのかい?」

 

トピア「いえ、ここのダンジョンではどういったものが得られるのか気になりまして」

 

カミール「それはワタシにも分からないね。何せ今まで踏破した記録が無いんだ。古文書にも殆ど記述が無い」

 

トピア「じゃあちょっと行ってきますね」

 

カミール「じゃあって」

 

 言うなりトピアはダンジョン入口前へいつものように飛び降りた。ただ今回はそこに先客がいた。

 

集落の男性「うわぁ! ……なんだ、モンスターかと思ったよ……」

 

 いきなりトピアが目の前に落ちてきたからだろう。丁度ダンジョン入口前にいた村人風の男が悲鳴を上げた。

 頭の上には『Lv.1 集落の男性』と出ていた。

 

トピア「あなたは?」

 

集落の男性「あんたまさか、門の奥に行くつもりかい? やめときなよ、せめてLv7はないとキツイぜ!」

 

 男は自分が何者かについては全く答えず、ダンジョンに入ろうとするトピアを引き留め始めた。しかしそれはトピアにとっては安心材料でしかなかった。

 

トピア「あ、やっぱりその程度なんですね。情報ありがとうございます」

 

集落の男性「は?」

 

 まずトピアのレベルは60を超えている。それだけでもLv.7以上推奨ダンジョンで戦力的に手こずるはずがない。

 そもそも、レベル云々以前に理想郷の建設者(クラフトピアン)の戦闘能力は最終的にエンチャントがどれだけ充実しているかで決まる。レベルで測る程度の脅威度ならばたかが知れているということだ。

 しかしそれはそれとして、Lv.7程度で挑戦できるダンジョンの踏破記録が未だに無いというのが逆に謎である。連れ歩いている間に多少レベルが上がってしまったが、考古学者のカミールですら最初からLv.4だったのだ。戦いを生業にしている者ならLv.10は軽く超えてくるだろう。ならば理想郷の建設者(クラフトピアン)以外に通行不能なところがあったりするのだろうか?

 

 高さ10mほどの遺跡のゲート前には楔の塔に備え付けられたものと全く同型のコンソールが設置されている。トピアがこれにアクセスすると、一度クリアしてからアクセスせよと拒否された。恐らく周回用の装置なのだろう。

 ならば仕方ないとこちらは一旦放置して、いよいよ遺跡のゲートを潜る。ゲートの内側は向こう側の景色が歪んでおり、見るからに空間接続ゲートという様子であった。

 

 そして潜った先はやはり全く別の場所であった。ゲートから3歩ほど進んで後ろを振り返っても、今までいた場所の面影は全く無い。足場の端に寄ってみても、石造りの足場の下は青空になっており、地上が全く見えない。レガシーワールドの通路型ダンジョンとは見た目こそ大幅に違うが、やはり同様に完全に切り離された空間であると推察できた。

 

 ゲートがある最初の足場から踏み出すと、少しの下り階段から通路、そして通路の先は崩れて足元の青空が広がっていた。崩れた先の通路までの距離はやや遠く、ジャンプ1回ではまず届かないだろう。ただこのくらいの距離ならグライダーの扱いを覚えれば通行できる。

 トピアは試しに床を1つ設置してみた。しかしその先の2つ目が設置できない。どういうことかと首を傾げれば、『建築禁止エリアにいます』という短いログが流れていた。なるほどやはりグライダーを使えということなのだろう。レガシーだとグライダーはワールドLv1から製造出来たはずだが、こちらでも同じなのかは定かではない。しかしLv7以上を推奨されるということは、戦闘が発生するエリアまでは進行した者がいるはずだ。……いや、先ほど遭遇した男がチュートリアル専用に配置された人員ならばそんな前例はもしかしたら無いのかもしれない。そもそもダンジョン前で何もせず突っ立っているのが不自然だった。

 トピアは『現地住民にこのダンジョンを攻略することが出来るか』という観点の攻略に不毛さを感じ始めたが、とりあえずこのダンジョンの最後まではこのまま行ってみることにした。

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