【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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080. とりあえずいっぺんクリアしてきました

 通路の崩れた部分を飛び越えると一段低い通路になっており、その先は天井の無い部屋に繋がっていた。通路からでもグレムリン1体とゴブリン2体が待ち構えているのが分かる。トピアが部屋に入り次第ヒルデブラントを振り回してそれらを殲滅すると、奥の閉まっていたゲートらしき部分が光り、細かく短冊状に分割されて左右に引っ込んだ。妙に凝っている。

 次の部屋でもMOBを殲滅すると右手のゲートが開いた。左手にも通路らしきものがあるが、無視して右手に進む。トピアの気質としては未知のダンジョンなら全ての通路を踏破して隠し要素を暴きながら進むところだが、今はあまり時間を無駄に出来ないので最短と思われるルートを進むのだ。

 

 右のゲートを出て道なりに2回左折、階段を上って更に右折、また敵対MOBの部屋に入ったので殲滅。正面のゲートを出て右折。階段を上って次の部屋に入ると、そこは14台もの砲台が空中に火の玉を撃ち続ける空間になっていた。床は早々に途切れ、その途切れたところから先に2ブロック分上り方向の木の斜め床が設置してある。更にその隣にこれ見よがしに置いてある宝箱。これを開けると、原木×20、木の床×30、木の斜め床×30が入っていた。どうやらこれを設置して進めということらしい。床を設置したとしても設置した木の床を火の玉で燃やされるのが実に悪質である。普通に攻略するなら不燃性の石の床などを自前で用意した方が良いだろう。

 対岸を見てみれば、床は勿論、壁ですらこちらの床よりかなり上にあるため、グライダーでの通行もおよそ不可能だ。なるほど、空中に床を設置出来ない普通の住民ではここから先は通行不能なようであった。

 納得したところで、トピアはこのアスレチックの意図を無視してジェットパックで対岸に飛んでいった。時間が無いのにこんなものに付き合う理由はない。

 

 部屋の対岸に辿り着き、部屋を出ると通路が右に曲がって上り階段になっていた。階段には複数のゴブリンが徘徊している。そこまではいいのだが、階段の上から次々にトゲ鉄球が転がってくる。創作ではそれなりにあるトラップだが、実物を目にしたのは初めてだ。鉄球は空中に浮かんだ箱形の装置から階段の上の方に落下して、そこから階段に沿って転がってくるようだった。階段の端に寄って回避アクションの無敵時間を使うか、或いは階段の横に点在する足場に一時退避すればやり過ごせそうだが、面倒なのでやはりジェットパックで上を通過した。どちらにしろやはり一般住民には厳しいトラップであることは分かった。

 

 階段の上で左折したトピアが次の部屋に入ると、向こう側の扉の前に宝箱が一つ置いてあった。その宝箱に向かってトピアが歩を進めると、間もなく足元が広範囲で崩落した。視線を誘導した上での足場崩しトラップだ。ただ縁までは崩されていなかったので、トピアはジェットパックを使うまでもなく空中ジャンプで後ろの足場に戻った。そして壁沿いに部屋の対岸に辿り着き、宝箱を開けてみた。出てきたのはパン一つ。ハズレとでも言いたいらしい。おまけにパンの後ろのゲートは半端なところで止まっていて開く気配が無い。穴の底には完全に閉じたゲートがあるので、結局順路は穴の底ということなのだろう。

 トピアは改めて穴の底に降りるとゴブリン2体とウィザード1体を討ち滅ぼし、穴の底のゲートを開けた。

 このウィザードというのは魔法使い型のMOBで、拘束能力が高い風の魔法を撃ち出すのと、接近するとテレポートして逃げるのが特徴だ。まあ常に逃げるわけではないし、消えたと思ったら一時退避しただけでその場に戻ってくることすらあるので、追いかけ続ければ普通に討滅できるのだが。

 この落とし穴の後ろ側をよく見ると梯子が掛かっており、穴の上に登ることが出来るようになっている。上の宝箱が気になる人のためにわざわざつけたのだろう。そしてわざわざ戻って開けた宝箱にパン一つだけを入れておいてがっかりさせるという周到な罠だ。

 どこに力を入れているんだあの女神的存在(クラエル・ザ・グレート)は。トピアは呆れた。

 

 梯子に関する考察を終えて穴の底の正面ゲートを潜ると、正面に何らかの装置、右手には短い上り階段とその先にまた崩れて途切れた道が見えた。

 先ほどの足場崩しの部屋に入るところから建築禁止エリアになっているため足場は設置できず、対岸が高い位置にあるのでグライダーで渡るのも困難だ。……いや、三段ジャンプから始めればスタミナ次第ではギリギリ行けるか? 察するに、正面の装置をどうにかして道を作れというダンジョンギミックなのだろう。やはり以前の一本道ダンジョンに比べると大分凝っている。

 トピアはまた装置を無視してジェットパックで渡ってみたが、その先にはボスステージらしき円形フィールドがあり、そこには結界が張られていて入ることが出来なかった。なので引き返して装置をいじってみることにした。

 装置は5つの回転パネルになっており、そのうち2つには上端部のクラフトピアの紋章に光が灯っていて、更にそのうち片方からは光線が出ている。発射された光線は紋章に光が灯っていないパネルに当たって90度反射されている。

 なるほど光線を鏡で誘導するよくあるパズルだなと理解したトピアは、手際よくそれぞれのパネルの向きを調整して終点であろうもう一つの光るパネルへと光線を誘導した。すると途切れていた道の先に黄色く光る帯状の道が延びた。トピアが体重を預けない程度に足を伸ばしてみると、光の線の隙間の光っていない部分も含めて普通に上に乗ることが出来るようだった。

 

 上り坂になっている帯状の光る道を渡ると、その先に短い上り階段を3つ挟んで、大きな8つの飾り柱に囲まれた円形のバトルステージが広がっていた。先ほどは入れなかったフィールドだ。ステージの縁が黄色く輝いており、バトルステージとは言っても観客席の類いは無い。どう見てもボスキャラが出てくるところだ。

 トピアがステージに足を踏み入れる。やはり先ほどのパズルがフラグになっていたらしく、今度は普通に通行できるようだ。すると、満を持してボスキャラが躍り出てきた。名前はサテュロスLv.10と表示されている。赤い髪に牛の角、同じく赤いもじゃもじゃの髭、そして足は蹄になっている。大分無骨だが、片手剣と盾を持っている。また、どういった意味があるのかは分からないが胸から肩にかけての入れ墨状の模様が黄色く発光していた。

 気になるのは赤紫色のライフゲージの上にある白いゲージだ。この島のMOBの多くにこれが付いているのだが、今のところみんな一撃で死んでしまうのでどういう意味があるのか良く分かっていない。

 試しにトピアがヒルデブラントでサテュロスを軽くつつくと、両方のゲージが一気に0になり、何かが割れた音がすると同時にサテュロスは声も上げずに崩れていった。まあ序盤ボスなのでこんなものだろうが、結局白いゲージの意味は分からなかった。

 

 なおサテュロスの名前は『ギーザ台地の進化のカギ』の説明文に記載されていたので、ここのボスに当たりは付いていた。しかし「ギーザ台地の『サテュロス』によって守護されていたカギ」と書かれていた割にはサテュロスを倒しても進化のカギは手に入らず塔の完成で手に入ったのは不思議である。フレーバーとして過去の逸話を記載しただけなのだろうかとトピアは首を傾げた。

 

 サテュロスを軽く捻ったトピアはステージの向こう側に新しく出現した帯状の光る道を渡り、上り坂を更に上っていった。そこにはまた4つの飾り柱に囲まれた円形のステージがあり、青いバリアに囲まれていた。

 青いバリアに見覚えがあるトピアがそれに接触するとバリアはあっさり崩壊し、成長の石板が一枚入手できた。この辺りの仕組みはレガシーから引き継いでいるようだ。

 ステージの中央には縦長の石板が一つ浮かんでおり、その周囲に宝箱が5つ並んでいた。正面中央の宝箱が一段豪華な装丁で、他は普通の木の宝箱だ。

 トピアがそれぞれ開けてみると、周囲の宝箱からは消費アイテムや換金アイテムが、中央の宝箱からはワールドLv3への時代進化に必要な地域特産素材がそれぞれ20個ずつ手に入った。

 なるほど、ダンジョンを踏破すれば特産素材の収集は省ける仕組みになっているようだ。だが最初のダンジョンでこのボリュームだと、次のダンジョン以降は普通に素材を集めた方が早いのではないかという疑念が生じた。

 何はともあれ、トピアは一旦外に出ることにした。宝箱の奥には入口と同じ形式の空間接続ゲートが存在するのでこれが出口で間違いないだろう。

 

 トピアがゲートを潜ると、やはりそこはダンジョンの外であった。

 そこには暇そうな村人風の男が相変わらず突っ立っており、上空には待機させたガンマも見える。

 

トピア「とりあえずいっぺんクリアしてきましたー」

 

カミール「早いな!?」

 

トピア「探索せずに最短で突っ切りましたので」

 

カミール「いや踏破成功者がまずいなかったんだが……」

 

 視線を正面に戻せば、チュートリアル男が呆然としているのが見える。

 とりあえずそれは無視してトピアはコンソールを今度こそ操作してみることにした。

 UIを表示すると、そこには選択肢が表示されていた。

 

・Story 推奨Lv.10

・Easy 推奨Lv.10

・Normal 推奨Lv.20(開拓の時代で解放)

・Hard 推奨Lv.30(産業の時代で解放)

・Hell 推奨Lv.50(科学研究の時代で解放)

 

 Normal以降はグレーアウトしており、書かれている時代まで進めないと選択できないようだった。難易度に対応する報酬の変化としては、見て分かる範囲ではサテュロスのドロップ品のグレードが少しずつ上がっていくようだった。

 

カミール「何か変化があったのかい? ……おお、難易度を選べるようになったのか」

 

 気がつけばカミールが頭上から覗き込んでいた。どうも好奇心を抑えきれずにグライダーで降りてきたようだ。今回ガンマが滞空しているのは大した高さではないので、万が一グライダーを上手く扱えなくても重大な事故にはならないと判断したのだろう。落下は割合ダメージとトピアに教わったこともそれを後押ししたに違いない。

 

トピア「ええ、時代を進めないとNormal以降は選べないようですが。とりあえず次はEasyで行ってきます」

 

 トピアはEasyを選択してまたゲートを潜った。

 

 ゲートを潜るとまたダンジョン内であったが、今度は途中の経路が全て省略されてボス前の階段下から始まった。なるほど周回用の配慮らしい。

 そして目の前には『サテュロスLv.10』の耐久ゲージが見えていた。ステージに踏み入ったトピアが軽くつつくと、サテュロスはまた簡単に斃れた。

 その先のステージの青いバリアを解除すると、今度は成長の石板が入手できなかった。だが宝箱は復活している。トピアが宝箱を開けると、中央の宝箱には換金アイテム、周囲の宝箱には何とエンチャントスクロールが入っていた。

 

トピア「何と……」

 

 トピアが驚くのも無理はない。エンチャントスクロールはレガシーワールドではボスラッシュダンジョンでしか手に入らなかったアイテムである。今回手に入ったもののレアリティはコモンからアンコモンレアまでだったが、難易度をHellまで上げるか或いはもっと終盤のダンジョンに行けば、エピックレジェンダリも手に入りそうだ。そうなるとこのシームレスワールドのボスラッシュダンジョンでは何が手に入るのだろうかと気になるところだが、ひとまず色々なエンチャントの入手先が確保できたのは良いことだ。これならばエンチャントスクロール供給源確保のついでに特産素材も集まることになり、多少時間効率が悪くても無駄にならない。

 トピアは収穫に満足して出口のゲートを潜り、外に出てからコンソールを眺めているカミールを確認すると、手を振ってまた入口のゲートを潜った。すぐにボスや宝箱が復活するのかを確認するためだ。

 幸いサテュロスは既に復活しており、宝箱も同様であった。

 

 そこまではいいのだが、3回目のサテュロスがドロップした サテュロスの サテュロスシールドというのがびっくりアイテムであった。

 まずシールド自体の防御力(DEF)が200もあった。更にエンチャントの サテュロスの の効果が防御力(DEF)+150、スタミナ消費量-5%、移動速度+5%であった。

 トピアは防御力(DEF)30のアスクレピオスの盾をインベントリに仕舞ってこの サテュロスの サテュロスシールドに変えてみた。しかし防御力(DEF)の変化は期待に反して僅か5増えただけであった。

 

トピア「あ、これ防御力(DEF)の表記が10倍になってるだけですね。紛らわしい……」

 

 トピアは即座に元の装備に戻してサテュロスシールドを忘れることにした。




 クラフトピアのシームレス版では実際DEFの表記だけが10倍になっているのでとても防御力が高そうに見えます。見えるだけなんですが。
 あと進化のカギはシームレス版初期には塔の完成とダンジョンボス討伐の両方で入手できており、現在の説明文はその名残です。
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