集落での情報収集を終えたトピアは、カミールを引き連れてミルウィン丘陵のダンジョンへと向かった。
ダンジョン『亡霊の古庭』の入口は南の廃城の中にあるらしかった。
トピア「ここの廃城は以前から注目してたんですけど、ダンジョンになってたんですね」
カミール「注目? マップの権能でかい?」
トピア「いえ、衛星観測で」
カミール「衛星観測……? 何だいそれは」
トピア「まあはるか上空から観測する手段があるということです。詳しくはまた今度」
そう言い残してトピアは廃城に押し入っていったが、雰囲気に反して廃城自体がダンジョンというわけではなかった。廃城の中にダンジョンの入口がある形だ。
しかしそのダンジョンの入口にはバリアが張ってあり、入る前からダンジョンの入口を開放するための3つのスイッチ探しをする羽目になった。まあ廃城もそれほど広くはないので、これはすぐに見つかった。
ダンジョンに入ってみれば、そこは例によって下に空……雲海がある別空間で、足元には円環状の池があった。水の透明度は高く、踏んでも全く沈まず上を歩けてしまう。
表面には蓮のような植物が浮いており、ガラス張りというわけでもなかった。不思議だがなるほど庭だ。
正面にはボスが出現する円形バトルフィールドが見えていた。ただしそこまでの道が途切れており、フィールドにも結界らしきものが見えたので、これをどうにかする必要があった。
正面以外のルートは2つあった。左と右だ。
トピアはまず左に進んだ。左側には帯状の光る道があり、これを進むとグレムリンとゴブリンの小集団がキャンプファイアの周りに屯していた。トピアがヒルデブラントを振り回してこれらを討滅すると更に光の道が出現した。
道なりに進んで円形の部屋に入ると、入ったゲート以外に3方向にゲートがあった。正面ゲートが二重になっていてそれぞれ黄色と赤の膜で塞がっており、左ゲートが青の膜、右ゲートが黄色の膜で塞がっていた。進むべき光の道は正面ゲートの向こうに伸びており、左右のゲートの向こうには更にゲートとスイッチが並んでいた。ゲート以外がスカスカなので通れそうにも見えたが、見えない壁や天井があって通行は不可能だった。
部屋の中央に青い結晶があり、これに触れると左ゲートの青い膜が消えた。その代わり右ゲートの二つ先にあるゲートに青い膜が新たに出現した。
なるほど、最終的に正面の黄色と赤の膜を解除した状態でこの部屋に戻ってくるパズルか、と理解したトピアは、踵を返して部屋の入り口から出て三段ジャンプ、
次の部屋に入ると3×3のスイッチが並んでおり、「全テノ明カリヲ灯セ」と指示が書いてあった。さてはスイッチを押すたびにそれだけでなく隣のスイッチのON/OFFも反転するパズルか、とトピアは身構えたのだが、何か設定が間違っているのか、完全にそれぞれのスイッチだけでON/OFFが独立していたので、ただ消灯しているところをONにするだけで済んでしまった。パズルをリセットするためのスイッチも全く機能していないようだった。
これは一体何だったんだろうかと首を傾げながらトピアは新たに現れた道に進んだ。
次の足場では珍しい雷属性のグレムリンが出現したが、トピアは例によって一刺しで片付けた。
この足場のMOBを全滅させるとスタート地点への道が繋がった。とりあえず左ルートはこれで終わりらしいが、正面への道は開いていないのでやはり右側も攻略する必要がありそうだ。
右側のルートはまず倒れた塔や崩れた橋が連なった飛び飛びの足場を進んだ先にギガンテス・バリスタLv.17が待ち受けていた。
ギガンテス・バリスタは巨大な弓を持った身の丈10m以上の巨人で、矢の弾速が速く避けにくい。トピアは遮蔽と回避アクションで難なく全弾回避しながら接近して倒したが、もし当たればそれなりのダメージを受けただろう。なお接近したら例によって一突きであった。
そのギガンテス・バリスタを倒した先は一見行き止まりであったが、上空には真ん中に穴が空いた円形のステージがあった。そして高低差のある細かい岩塊状の足場と、その足場の上端あたりから円形ステージ中央の穴に向けて伸びる上昇気流があった。ここに踏み入った時点でスタミナ消費量増加と建築不可能の制限がついているので、細かい足場を登ってあとはグライダーで上昇気流に乗れということなのだろう。トピアは当然スタミナも建設も無関係なジェットパックであっさり飛び乗ったのだが。
飛び乗った円形ステージの端にあったスイッチをトピアが押すと、そこから下り坂の光の道が現れた。その先は落ちる足場を乗り継いでいくアスレチックであった。トピアは基本的には足場を乗り継ぎつつも、落ちそうな所は三段ジャンプとジェットパックで乗り越えていった。やはりジェットパックはこの段階で持っていていい装備ではない。
アスレチックを終えると次の崩れた円形の足場には炎属性のグレムリンが率いるMOBが屯していたのでこれを殲滅。スタート地点へと戻る道が開かれるのと同時にスタート地点から正面ボスステージへの光の道が開かれた。
光の道を上って更に2つの小さな階段を上ると、現れたのは青き冥界の使者Lv.20。
目深に被ったフードと影になって見えない顔、ロングコートのような裾の長い服、大きく広がった背中の翼に死神のような大鎌、そして深い青で統一されたカラーリング。
つまりはレガシーワールドでもお馴染みのボスである。
トピアはこれをあっさり突き殺すと宝箱のある区画へ進み、丘陵の特産素材各20個と各種消耗品を入手した。
レベルが10程度上がったところでお馴染みのボスに今更苦戦するはずがないのだ。やはり今回も白いゲージが何なのかは分からなかった。
その後Normal難易度の2周目で初の エピック である 巨大な のエンチャントスクロールが入手できた。最初のダンジョンとの対照実験をしていないのでどちらなのか分からないが、先のダンジョンに進むか難易度を上げるかで上位のエンチャントスクロールが出るのはほぼ間違いないだろう。
ダンジョンの攻略を終えたトピアはガンマに飛び乗ってギーザ台地の塔へと戻るだけとなったが、その前に気になるポイントに立ち寄ることにした。古城の東北東すぐ近くにある、石で整地された円形のフィールドだ。いかにも何かあると言わんばかりであった。
実際にそのフィールドにトピアが近寄ってみると、立派なキングモノLv.30が出現した。
キングモノとは、普通のモノのサイズを大きくして王冠と白髭をつけたボスモンスターである。丸みを帯びたボディに大きな一つ目、短い手足と円錐状の尻尾はそのままなので、偉そうかつ可愛いらしいという絶妙なバランスのデザインだ。レガシーのクラフトピアにも存在した、比較的弱い方のボスである。ただジャンプからの着地衝撃波で吹っ飛ばされるのがやや面倒なので、トピアはガンマからの飛び降りざまにドラゴンフォールで上から突き刺した。キングモノはあっさり斃れた。
トピア「なるほど、ここはダンジョン外のボス出現フィールドなんですね。……島全体で10箇所もないはずですが、高レベル版はどうやって出現させるんでしょうね。時代進化で上がるとか……?」
まずクラフトピアのMOBはレベルによってそれぞれ最大4段階のバリエーションがある。Lv.30~59の『立派なキングモノ』はキングモノの中で下から2番目の段階であり、4段階目で最上位版はLv.90以上の『名君キングモノ』になる。同様に『憤怒のドラゴン』や『死せる地のハイドラ』もLv.90以上で4段階目、最上位版である。
そして高レベル版が出現しないと何が困るかというと、段階ごとにドロップアイテムやエンチャントが変化するために上位版からしか獲得できないものがあるのだ。
キングモノの場合はやや特殊で、養殖した王子モノとスプリンクラーで増やしたモノを合体させてキングモノにする手が使えるのでレベルはどうにでもなる。しかし他のボスキャラはそうはいかないはずなのだ。
まあここの島以外、ユグドラシルや毒沼の近くなどではレガシー仕様のダンジョンが既に発見できているので、そっちを探せば見つかるのかもしれないが、折角一箇所にボス出現ポイントがまとまっているのに碌に活用できないのは勿体ないという話であった。
考察を進めつつもトピアは再びガンマに飛び乗ってギーザ台地の塔に戻り、時代進化を進めてワールドLv4、ルネッサンスへと到達した。
例によって次の時代で解放されるものを確認する。
まず金素材装備。ワールドLv3で鉄と同時に鋼鉄のチェストが解放されていたため何となく察してはいたが、従来間にあった鋼鉄とチタンは飛ばされたらしい。
『パイプライン』。遂にクラフトピアにも液体の取り扱いが来たのか、と注目して説明を読んでみれば、どうも単に2つの設備の間でアイテムを輸送するためのもので、液体は特に関係ないようだ。クラフトコネクタと似たようなものだろう。
『エンシェントグライダー』。またグライダーシリーズだが、性能については一切の言及が無い。
『改良型作業台』。一切の説明が無い。しかしトピアの興味を最も引いたのはこれである。何しろ従来の作業台と違って見た目が近代的でカッコイイのだ。性能は良く分からないが、まさにトピアが求めてやまないものであった。これを解放するために疾く疾くワールドLv5に到達せねばならぬ。
次の納品要求は『食虫植物』×5、『草原のアレキサンドライト』×20、『珪化木』×20、『草原の古代人形の破片』×5だ。
だが草原と名の付く塔は南側の『ヤーデン草原・山地の塔』と北側の『ヤーデン草原・遺跡の塔』の2つがある。ではダンジョンはどこか? トピアは判断に迷った。
トピア「カミールさん、次の特産素材がある場所ってヤーデン草原ですよね? 塔が2箇所ありますけど、ダンジョン遺跡はどのあたりでしょう?」
カミール「ヤーデン草原のダンジョン遺跡なら南部に『狩人の遺跡』、北部に『暴風の古庭』があるね。それぞれ南部と北部の塔に対応したものだろう」
トピア「特産素材集めはどちらが正解でしょうね……或いは両方でしょうか?」
カミール「そこはワタシにも何とも言えないな。両方という可能性も無いわけではない」
トピア「そうですか、ではさしあたって南から……」
トピアがガンマに飛び乗ったところで電子音が鳴り出した。
カミール「一体何事だい!?」
トピア「あーすみません、夕飯の時間ですね。一緒に食べに行きます?」
トピアはアラームの音で頭が冷えたのか、落ち着いてアラームを止めるとガンマを収納した。
ここからだとファストトラベルで台地の塔に向かってそこからポータルで戻るのが早い。
カミール「……そうだね、折角だからお呼ばれしようか」
トピアはカミールを連れてコアベースに戻った。
トピア「……というわけでこちら現地協力員のカミールさんです!」
カミール「考古学者のカミールだ。宜しく頼むよ」
トピアは夕飯の食事会でカミールを紹介することにした。それ自体は問題なかったのだが。
アヌビス神「XXX(こちらも現地協力員のファムだ)」
ファム「引き継ぎ嬢のファムです。宜しくお願いします」
どういうわけかファムが合流していた。こうしていると見た目は一見清楚であるが、騙されてはいけない。
トピア「アーヌビース様ぁ? ちょおっと説明して戴けます?」
トピアは元凶に目星をつけて小声で語りかけた。
アヌビス神「X,XXX. XXX. XX(うむ、あの後私の神殿のワープポータルからあの者が出てきてな。何でもするので神を手伝う仕事をさせてくださいと殊勝なことを言うのでここに連れてきたのだ。確か人手不足だったろう)?」
なるほど、自身の名声で人材勧誘に成功して得意げな顔をしているアヌビス神が元凶で間違いなかった。
つまりファムはあの集落から伸びている階段を上って台地の塔のファストトラベルでアヌビス神に頼み込みに行き、それを承諾したアヌビス神は何らかの手段でここにファムを連れてきたのだろう。
アヌビス神は女神的存在の従属神なのだから、
トピア「あの子、侵略者撃退の話をしたら嬉々として異教徒狩りとか異端審問とか言い出すヤバイ子なんでしっかり手綱握ってくださいね? ここにいるのは殆どが異教徒なんですから」
アヌビス神「X,XX(えっ、そんなの聞いてない)……」
アヌビス神も今になって自分が何をしたのか気付いたようで、黒い犬顔にびっしり冷や汗が浮かんでいた。犬顔の割にしっかり汗腺があるらしい。
トピア「幸い何でもすると言ってるので命令くらいは聞くでしょう。それで聞かなければ追い出しましょう」
アヌビス神「XX,XX(分かった、それで行こう)」
どうにかリカバー出来そうなプランが出てきたことで、アヌビス神はこれを即座に承認した。
トピア「……ファムさん、アヌビス様からのお達しです! この侵略者撃退作戦において意図的に味方の足を引っ張る真似をしないこと。味方とは教義関係なくこの作戦に協力する者達です。いいですね?」
アヌビス神「X,XX(うむ、頼んだぞ)」
ファム「分かりましたアヌビス様ぁ! この敬虔な信徒ファムにお任せ下さい!」
マイン「……何やら我よりもよほどヤバイ奴が入ってきた気がするのだが?」
テクス「え、自覚があったんでござるか?」
サティ「マイン、貴女、熱でもあるんじゃないの?」
マイン「貴様らバラバラに引き裂かれたいのか?」
こうして
なおフルエンチャント料理は二人にも好評であった。
3×3のスイッチパズルはシームレス版公開当初はトピアの予想通りの内容で、しかももっとスイッチの数も多かったのですが、難しすぎると不評だったせいかアップデートで改変され、パズルの体を成さなくなってしまいました。哀しいね。