夕飯を終えたトピアとカミールは、次の目的地であるダンジョン『狩人の遺跡』へと向かった。
ダンジョンに入ると正面に短い下り階段があり、その先にMOBが屯した部屋があった。はじまりの遺跡にそっくりな構造だが、違いは空中に架かった橋状の道が崩れていないことだ。
トピアがMOBを軽く捻ると奥のゲートが短冊状に分かれて左右に開き、その通路を出ると右折、そこの道が崩れて途切れていたが二段ジャンプで飛び越え、次の部屋に入る。
やはり道も部屋もゲートもそのデザインがはじまりの遺跡とそっくりだ。共通して遺跡という名前が付いているので遺跡タイプのダンジョンという分類なのかもしれない。
部屋に入った途端に床が途切れており、正面で壁状のリフトが停まった。壁にしがみついて進むアスレチックらしい。
トピアが壁に貼り付いて進むと次は軸回転する縦の円柱、斜めの円柱と続き、その先は普通の床状リフトに乗ってゲート前のスイッチに到達。スイッチにアクセスすると次の部屋の入口が開いた。
部屋の奥に開いたゲート、その先に宝箱。いかにも罠がありそうな風情であった。恐らく右側の閉じたゲートの方が正規ルートであろう。
トピアが奥のゲートに歩いて近づくと案の定ゲートが閉じてMOBが上から降ってきた。そして作業のようにMOBを殲滅すると右側のゲートが開いた。
部屋を出て二度左折すると、先ほど閉じたゲートの先の宝箱が目に入った。道は繋がっていないが二段ジャンプで飛び越えて宝箱を開けると、木の矢、毒の矢、火の矢が出てきた。ゴミではないが喜べもしない微妙なチョイスだ。
トピアはまた正規ルートの通路に戻り、短い階段を二度上って左折、道が崩れて出来た空隙をジャンプで越えて次の部屋に入る。
部屋の奥のゲートは最初から開いており、可視化した赤外線センサーのような縦横の光のラインが大量に並んでいた。リフトが部屋の手前側と奥を往復しており、手前側にはリセットボタンがあった。
察するに、光のラインに触れると扉が閉じてしまうのだろう。
まずトピアがジェットパックで全部飛び越えようとすると、不思議な力で部屋の入口に戻されてしまった。流石に完全無視は出来ないらしい。
しかし部屋の真ん中のライン密度が薄かったのでリフトを使わずに三段ジャンプで足場を渡り、あっさり対岸に渡ってしまった。
部屋を出るともう次の部屋が見えていた。上昇気流と壁状リフトと回る柱と火炎砲。そして遥かに高い位置にある対岸の足場。
要するにグライダーをうまく使って渡れというのだろう。
飛び飛びの足場を渡って部屋に入ったトピアは、多分普通にやると結構難しいだろうなと思いつつ、ジェットパックで離陸するとまっすぐ対岸に渡った。
一応完全無視ではなく、グライダーでも通るであろう範囲を通る程度の配慮は見せた。多分大きくはみ出すとまた不思議な力で戻されそうな気がしたので。
長めの階段を下って左折するとまた部屋があった。部屋の中には何も無く、奥には閉まったゲートがある。どうせ途中でMOBが降ってくるんだろうなと思いながらトピアが歩を進めると、少々予想を裏切ってギガンテス・ホプロンLv.27が二体現れた。
ギガンテス・ホプロンとは身の丈10mを超える巨人で、巨大なハルバードを持っているタイプだ。
それをトピアはヒルデブラントで適当に突っついて倒した。ギガンテス・バリスタのような避けにくい攻撃も無いので、もはや当たり判定がでかくて普通のMOBより楽だという感想しかない。
開いたゲートから二回右折してやや長い階段を2つ上るとまた次の部屋だ。奥のゲートが閉まっており、中央に何らかのスイッチがある。スイッチをONにして出現した敵を倒せばゲートが開くといった形式だろうと予想を立ててトピアは気軽にスイッチを押す。
スイッチを押すとカウントダウンの後に入口が閉鎖され、ゴブリンが4体現れたのでこれを殲滅。多分複数ウェーブに分かれて出てくるんだろうなと思いながら上を見上げると天井が溶岩のようになっており、封鎖の念入りさに若干の驚きを覚える。
次は大盾を持ったグレムリン2体。最後にウィザード2体とゴブリンアーチャー3体だ。
全て討ち滅ぼすと前後のゲートが開放され、天井もまた青空が見えるようになった。
苦戦したわけではないが、息苦しい密室からの開放にトピアは思わず深呼吸した。
部屋を出て足場を渡り右折するとボスのバトルフィールドが見えた。お相手は荒野のリザードガンナーLv.30。
目立つのは機械化された右腕。右腕が丸ごと魔導砲になっており、発射口を取り囲むように三つのカギ爪がついている。本体はボロボロのマントを頭から被り、フードから角が突き出している。全体的に焦げ茶色で形状が分かりづらいが、何となくリザードマンの面影はある。
これもレガシーからお馴染みのボスキャラで、その特徴的な右腕の形から
トピアは砲撃に注意しながら飛び上がり、ドラゴンフォールで上からつついた。
ドラゴンフォールは連続ヒットで攻撃力が段々上がっていくスキルなのでマナサイフォンをかけなければ初期ダメージは通常攻撃と変わらない程度しかなく、そのためリザードガンナーは1発目は耐えた。そこで白ゲージの方が0になって何かが割れた音がすると、リザードガンナーは目を回してふらふらとしているように見えた。そして2発目でリザードガンナーは斃れた。
つまりこれは気絶ゲージで、割るとピヨるのだろうとトピアは理解した。
次の区画で得られた報酬は特産素材20個ずつと消耗品、換金アイテムだった。これで時代進化の納品アイテムが揃ったので、草原北部のダンジョンには行く必要が無くなった。
トピア「戻りました。特産素材全部出ましたよ」
カミール「お帰り。それは幸いだね。また周回するのかい?」
トピア「いえ、一旦塔に戻ります。難易度HardがワールドLv5で解放されるので」
カミール「なるほど」
二人はまたギーザ台地の塔へと戻った。
そして時代進化を実行。ワールドLv5、産業の時代である。
トピアは早速次の時代で解放されるアイテムを確認しようとして、その前に次の納品アイテムが目に付いた。これまでと違って8種類ある。内容は『雷華』×5、『諸島のモルガナイト』×20、『竹』×20、『諸島の古代人形の破片』×5、『怪しいカボチャ』×5、『渓谷のトパーズ』×20、『キノコの生えた木』×20、『渓谷の古代人形の破片』×5だ。
カミール「次は確実に2箇所必要になるな。オオワタツ諸島とブリガンダイン渓谷か」
トピア「そのようですね」
となると、諸島と渓谷を合わせてワールドLv6、氷山でLv7になるとして、Lv8まであと一手足りない。やはり進化のカギを使うことになるのではなかろうか。
それはともかくまずはワールドLv6で解放されるものの確認だ。
プラチナ装備各種。金の次がプラチナなのはレガシーから変わっていないようだが、プラチナの弓の
『熟練の防具屋』。上位防具を作るのに必要なものだろう。
『熟練の炉』、『熟練の機械工場』、『熟練の鍛冶屋』は以前からあったが見た目がリニューアルされている。
熟練施設シリーズを見ると終盤に入ってきた感があるが、びっくりするほど重要なものは無さそうだ。
確認が終わったので、トピアは早速ワールドLv5で解放された改良型作業台をハンドクラフトで作ってみた。
トピア「……素晴らしい」
水平調整機構付きの脚。滑らかに角を丸めた上で縁を金属で覆われた天板。工具を吊り下げたバックプレート。小さい部品の紛失に役立つ引き出し。机の左右に設置された大型工具。大型工具の名前はさっぱり分からないが、使い方は使ってみれば分かる。装丁は若干アンティーク気味だが、これはこれで気品を感じる。
待ちに待った「カッコイイ作業台」に、トピアは口角が上がるのを止められない。
カミール「おお、それが新しい作業台かい? 性能はどうなんだ?」
トピア「おっと、そうですね確認しないと」
トピアは改良型作業台にアクセスし、製造可能な品目を確認した。そしてすぐに問題に気付いた。
見たところこの島で解放したリニューアル版のアイテムばかりが並んでおり、レガシーのレシピでアイテムを作ることは出来ないようなのだ。レガシーのレシピでアイテムを作るためにはレガシーの作業台を使う必要があるということだ。
確かに両方並んでいたら混乱して間違うことがあるかもしれないが、両方の生産方式のいいとこ取りをするには旧作業台を捨て去れないという事実にトピアは眉をしかめた。
しかし楔の塔の起動後に追加された小さな設置たいまつは元々レガシー作業台の製造可能品目に無かったからいいとして、元々製造可能品目に入っていたエンチャントテーブルや精錬所が新型に置き換わっていてレガシー版が製造不可能になっていたのは何なのだろう。仕様変更の途中だったのだろうか? 或いは解放時期が早まった影響か? 新型でも精錬所のような完全上位互換ならともかく、レガシーのエンチャントテーブルは武器に関してだけなら新型よりも高性能なので製造不能になるのは痛いと思うのだが。
などとトピアが推測を重ねても正解らしき理由は出てこない。
なおこの改良型作業台の製造可能品目リストには普通の『作業台』もあり、これもレガシーの作業台とはデザインが変わっていた。これを実際作って使ってみると、製造可能品目リストは改良型作業台と全く同じであった。では改良型作業台は一体何を改良したのか。流石に見た目だけということはあるまい。
トピアは原木×1と石×1だけで製造出来るモンスタープリズムを新型作業台と改良型作業台それぞれで10個ずつ作成してみた。
トピア「なるほど、製造速度が上がってますね。1.3倍ほどでしょうか」
カミール「そういうことか」
地味だが助かる効果だった。そのくらいは説明に書いておいてほしいものではあったが。