【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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 23日ぶりのプラス評価を戴きました。しかも最新話まで読んだ上でとはありがたい……!


085. 何て器用な手の抜き方を

 トピアはワールドLv5への時代進化を終えると狩人の遺跡へと戻って軽く周回し、宝箱から出るエンチャントスクロールの傾向を確認した。

 まずHardではアンコモンからレジェンダリまでが出た。レジェンダリの出現率は低いが、その一つ下のエピックはそれなりの頻度で出るようになっていた。その後Easyに切り替えて周回してみるとそれまで出なかったコモンが出るようになったので、難易度によってスクロールのレアリティが変動するのは間違いないだろう。

 

 

 トピア達はヤーデン草原北部のダンジョン『暴風の古庭』を一旦スルーしてオオワタツ諸島のダンジョンへと向かった。

 そこは『激流の迷宮』という名前らしかった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ガンマを飛ばして激流の迷宮に向かうと、その入口の近くにこれ見よがしな青い球体バリアに包まれた東屋を発見した。中には宝箱が一つ。見たところ南の廃城と同じ3色のスイッチで開けられるタイプのバリアだ。

 何か重要アイテムが入っているのではと思ったトピアはガンマで上空からスイッチを探し、このバリアを解除。宝箱を開けて出てきたのは『EXPポーション1000ml』であった。

 

トピア「これどの程度貴重なアイテムなんですか?」

 

カミール「これは……遺跡の集落やオオワタツ諸島の集落では作物と引き換えで普通に販売されてるね」

 

トピア「その程度のアイテムをこんな厳重に封印するとはなんと思わせぶりな……」

 

 トピアはその後に続く「時間の無駄でしたね」という言葉を飲み込んだ。何か重要なアイテムがありそうという見解には案内役のカミールも同意していたからだ。わざわざ空気を悪くする必要は無い。

 

カミール「この地域の伝承に聞く三種の神器でも封印されているのかと思ったけど、そうでもなかったようだね」

 

 直接的には言われなかったが、カミールもばつが悪そうであった。

 

トピア「やけに手の込んだ嫌がらせでしたが、まあ気を取り直して行ってきます」

 

カミール「うむ、気をつけてな」

 

 トピアが入口のゲートを潜ると、そこは水の神殿とも言うべき場所であった。

 トピアは一旦ゲートの上によじ登って建物と周囲を見渡してみる。建物の正面の壁の一部、11箇所から滝のように水が流れ出し、しかし下の床は水浸しにならずにそこで水が消えていた。滝の形をした噴水的なものだろうが、ちょっと不思議な光景だ。建物自体は大分朽ちてしまっているが、その周囲は透明度の高い澄んだ水が水平線まで続いており、観光スポットにもなりそうな風光明媚さであった。

 

トピア「暇が出来たらみんなを誘って泳ぎにでも来たいですね。……当分無理ですけど」

 

 心の底からくつろぐにはBETAが邪魔だ。早急に殲滅せねばならぬ。

 トピアは正面に続く道を進んで短い階段を二つ上る。そこには滝の噴水を背にして盾を地面に立てた騎士の石像があり、石像を行き止まりとしたT字路の先がそれぞれ短い上り階段になっていた。

 ひとまず左側の階段を上ると、そこにははじまりの遺跡で見た光線を出す鏡と、亡者の古庭で見た色膜ゲート、それから膜のON/OFFを切り替える三色の結晶が二つずつあった。初期状態ではスタートの鏡から出た光線がゲートの赤い膜で遮られており、次の鏡に届いていない。なるほど、鏡の角度と膜の切り替えスイッチで終点まで光線を通せということだろうか。鏡の終点は先ほど登らなかった右側の階段の先にあるようだ。

 ……いや、鏡を触ってみても角度が変わりそうにない。複雑に見えるが実際は膜の切り替えだけらしい。

 それでこのパズルを解くと何が変わるのだろうか、と周囲を見てみると、建物の入口らしき所にも光の膜が張られている。赤、青、黄色のどれでもなく、白く光っているので、対応しているスイッチは無いと見える。つまりあの入口を通行可能にするためにパズルを解けということだ。

 トピアが試しに入口を通ろうとしてみるとやはり通れない。ではパズルを解きに戻ろうかと思ったところで、建物の天井が崩れて無くなっていることに気付いた。

 まさかなあと思いつつもダメ元で壁を登ってみると、あっさり入口の裏側に入ることが出来てしまった。

 廃城にあった亡者の古庭の膜パズルもそうだったが、結構ザルな設計であった。

 パズル自体も別に難しくなさそうだったが、わざわざ戻って解く必要も無い。設計の杜撰さに若干呆れながらもトピアはそのまま進むことにした。

 

 壁の上から前を見渡してみると、今度は全面に広がった光の膜、光の壁とも言えるものが次の区画全体を囲んで遮断していた。天井が無い長方形区画の境界線を全て光の壁で遮断しているので、光の柵とも言えるだろう。この光で遮断された区画の手前に左右に伸びる道があるので、つまり最終的な進路は正面で、左右のルートからこの光の壁を解除せよということだろう。

 トピアは建物正面の壁の上から降りる前に、この光の壁を越えられないか試してみることにした。幸い遮断された区画の角四つにそれぞれ柱が立っており、柱の3/4が光の壁の外側に露出しているため、上には人間が何とか直立できるスペースがあった。トピアはこの柱の上に飛び乗り、光の壁に触れてみた。やはり壁には当たり判定がある。だがどのあたりの高さまで判定があるのだろうか。トピアはジャンプして壁越えを試みた。

 光の壁は柱と高さが大差無かったらしく、柱の上からは普通のジャンプで超えることが出来た。しかもこの区画の上も見えない天井で遮断されていたらしく、その上に乗ることが出来てしまった。

 つまりこの光の壁と天井は区画を丸ごと箱状に囲っており、その上に乗ることが出来たのなら完全に無視してそのまた次の区画に進むことが出来るということだった。

 水面上に4つの足場が浮かんだ区画を眼下に眺めながら、本当にザルだなあと思いながらもトピアは先に進んだ。

 

 次の区画には海賊スケルトン系MOBの小集団が待ち構えていた。スケルトンパイレーツ、スケルトンセイラー、スケルトンアーチャーの3種類だ。トピアはヒルデブラントをふるってこれを殲滅したが、区画の奥にある大きなゲートは内側に光の膜をたたえたままで通れそうにない。

 最悪戻って前のギミックを解除する必要があるだろうかと思いながらもダメ元でトピアはゲートの上を飛び越そうとした。

 ゲートが巨大なので一度の三段ジャンプで飛び越せず、一旦しがみついてよじ登る必要はあったが、普通に飛び越せてしまった。やはりザルであった。

 

 次の区画は碁盤目状に仕切られたエリアごとに違う方向の水流が発生しており、水流を辿って宝箱を回収しながら向こう岸に辿り着くパズルのようだった。

 普通にジャンプすれば宝箱の足場を辿れそうだなと思いつつトピアがパズルのスタート地点に立つと、ジャンプ不可、建築不可、スタミナ消費激増、ワイヤーフック使用不可の制限が掛かった。

 そもそもワイヤーフックを作成可能になった覚えが無いのだが、見逃していたのだろうか? などと疑問を抱きつつ、トピアは各種制限が掛かる前の場所まで戻り、宝箱に用が無いのでジェットパックで丸ごと飛び越した。

 

 ここまで来ればボス前だ。トピアは短い階段を1つ、中くらいの階段を1つ上って浅い水に覆われた道を通り、池の真ん中のバトルフィールドへと向かった。

 この少しだけ水没した道は見る分には綺麗なのだが、実際に歩いてみると靴の中に水が入ってくるのが微妙であった。まあ完全武装のまま平気で泳ぐ理想郷の建設者(クラフトピアン)にとっては今更なのだが。完全武装で湖底や海底を歩くテラリアンにとっても同様だろう。

 しかし遠目に見ても何となく分かっていたのだが、ボスのバトルフィールドは結界に覆われていて入ることが出来なかった。ここに来てどれかのギミック解放が不足していたようだ。

 別にボス自体を倒さなくても報酬が貰えれば良いと試しにジェットパックで飛び越して報酬フロアに先に行ってみたが、敵が多くて開けられないというエラーが出て、バリアを開けることが出来なかった。

 

トピア「流石にそこまでザル尽くしではなかったようですね」

 

 トピアがジェットパックで二つ前の区画に戻ると、スケルトンが再度湧いていた。試しにこれを狩ってみたところこの区画の奥にある大きなゲートの光の膜が消えた。

 もしやと思いゲートを潜って階段を上ると、水流パズルの次のボスステージの結界が消えていた。

 つまりボスステージの結界を消すためのフラグには結局パズルやスイッチは全く無関係でスケルトン小集団の殲滅だけが必要だったのだが、そのスケルトンのポップ数が足りずにギミックが作動していなかったのだ。

 いや、このスケルトン区画にも池があるので、もしかするとポップしたものが水没ダメージで勝手に死んで討伐数に数えられなかった可能性もある。スケルトンでしかも海賊が溺死。全くイメージに合わないがクラフトピア世界にはよくあることだった。

 どちらにしろボスステージに入れないのは前提ギミックのチェック機構がきちんと働いていたのが原因ではなく、単なる不具合であった。

 そう言えばレガシーワールドにも一時期似たような不具合があったなとトピアは脱力しながらボスステージに入った。

 

 今度は無事にバトルフィールドの中に入ることが出来、ノーブルフロッグLv45が出現した。

 新種のボスモンスターであり、巨大な蛙の上に王様のような衣装と王冠を身につけた蛙が乗っている。なるほどノーブルな出で立ちだ。

 下の大蛙が大きく息を吸い込んだのでトピアは一旦立ち止まり、咆哮をやり過ごしてからランスチャージ、続いて通常攻撃でこれをあっさり叩き伏せた。まだまだ余裕だ。

 トピアが特に攻撃していない上の王様蛙も何故か一緒に死んでしまったが、実は下の方が本体だったのだろうかとトピアは首を傾げた。

 

 ノーブルフロッグが斃れるとボスフィールドの奥に聳え立っている滝の中から石のプレートが突き出してきて水流を遮り、石のプレートの下の壁が左右に展開。そこを通るように光の道が現れた。なかなか凝った演出だ。

 だがその滝が途切れたところを通ろうとすると目に見えない水流がトピアにのしかかってきて少しの間息が詰まった。通り抜けるとまた息が出来るようになったが、どうやら滝を遮っているのは見た目だけという妙な手抜き工事がされていたらしい。

 

トピア「何て器用な手の抜き方を」

 

 普通に施工するなら見えない滝の判定を残す方が難しいというのに。

 報酬ステージの宝箱に入っていたのは例によって諸島関連の特産素材20個ずつと消耗品、換金アイテムであった。

 トピアはクリア後の周回を省いてすぐにブリガンダイン渓谷へと向かった。




 シームレスクラフトピアの初期バージョンではオオワタツ諸島で三種の神器を集めてくるようにカミールに依頼されるイベントがあり、ダンジョン前のバリア付き東屋の宝箱にもその三種の神器の一つ入っていたのですが、バージョンが上がったら仕様が変わってイベントが突然無かったことになりました。
 でもバリア付きの東屋と解除スイッチはそのまま残ってるので大袈裟な仕掛けの割に中身が微妙なことになってるわけです。
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