会議室から解放されたトピアは、工場長に要請されたレガシータイプの熟練の炉を必要数設置した後、カミールを連れて再びシャルバート氷山の塔に向かい、そこからガンマで氷山一帯の調査を進めることにした。会議自体は終わってないので通信は繋がったままであるが、報告を聞きながら調査を進められるのは幸いであった。つまりリモート会議しながらの業務である。
サティ≪……それで352並列52.8GW希釈燃料発電所の建設が終わったから当面の電力に大分余裕が出来たわ。同時にここの環境とカンパニーのサーマルポンプに合わせてブループリントデザイナーの登録を中純度油脈1単位分の176並列26.4GW発電所で組み直したから、今後の設置は更に楽になるはずよ。マインに設置してもらったサーマルポンプも原油・水ともに正常稼働したわ≫
テクス≪朗報でござるな≫
マイン≪フン、当然だ≫
スコア≪安定性はどうなんだ?≫
サティ≪もしポンプがエラー停止した場合も蓄電装置528基で1時間は電力をもたせるから大丈夫よ≫
スコア≪なら安心だな≫
テクス≪万全でござるな≫
トリオ≪抜かりないの≫
マイン≪くっ≫
そんな報告を聞きながらトピア達はシャルバート氷山の塔から外側海岸線沿いに時計回りに探索を開始していた。ガンマの高度を下げての目視である。
時間の掛かる仕事だが、必要な情報を仕入れながらということで大分気が紛れる。
サティ≪次に、テレポーターロジスティクス実現の前にカンパニーの対環境性能を調査してみたけれど、一応建前は守ってるみたいで、放射性物質の濫用以外は思ったほど酷くはないわね。でも設計の完成度が高すぎて拡張の余裕をほぼ使い切ってるから、パワー・シャードに対応させるには大々的な設計変更が必要になりそうね≫
トリオ≪あれを一朝一夕でどうにかするのは難しそうじゃの≫
サティ≪次に採掘機器の放射線遮断とテレポーターロジスティクスへの対応だけど、サーマルポンプとエアブラストドリル、加速ドーム、あとは汎用入出力アタッチメントに限るなら構造的には難しくないわね。テレポーターと工具の実物が手に入ったから今日・明日中には対応出来そうよ≫
スコア≪その汎用入出力アタッチメントとは何だ?≫
サティ≪製造工程で放射性物質を扱う工場のコンベア入出力に取り付けてコンベアの代わりにテレポーターで運ぶアタッチメントよ≫
トピア「ああ、入出力のコンベアを無線化する形ですね」
まあ実際にはワイヤーでテレポーター同士を繋ぐ必要があるのだが、コンベアは無線化出来ている。
サティ≪そういうこと。あとは
ラリー≪いや、まず何でトピアが持ってきたのだけでも2種類あるんだ?≫
トピア「何やら新しい世界を作るに当たって色々とてこ入れがあったようで、新旧の仕様が混在した結果です」
テクス≪ややこしいでござるな≫
実際の所てこ入れがあったのはアダマンタイトだけではなく、全体的に鉱物の★の数が再設定されている。
レガシーワールドやこの世界の既存地域では
★×1:石、砂
★×2:銅
★×3:鉄
★×4:銀、アルミニウム
★×5:鋼鉄
★×6:チタン、形状記憶合金
★×7:金
★×8:プラチナ、硬化プラチナ合金、エレメンタルインゴット
★×9:ダイヤ
★×10:黒曜石
★×11:パラジウム
★×12:アダマンタイト
となっていたのが、あのシームレスワールドのスタート地点と思われる島に限っては
★×0:石
★×1:銅、砂
★×2:
★×3:鉄
★×4:銀
★×5:
★×6:金
★×7:プラチナ
★×8:アダマンタイト
★×9:ハイミスリル
となっており、砂と鉄と銀以外全部の鉱物の★が減っている。
鉱物の種類を少なくした分だけ★のランクを圧縮しようとしたのかもしれないが、だとしたらどうして★×2を空白にしてまで銅と石の★を減らしたのかが分からないし、金やプラチナを1つだけ詰めて★×5が空いたままなのもおかしい。
また、同じ材質の道具では例えば★の変動が無い鉄を基準にしても
・鉄の片手剣:
・鉄のつるはし:
・鉄の斧:
といった具合に、全体的に武器の性能が上がってツール類の性能が下がっている。
なのでつるはしの工作精度を上げて従来★×12扱いだったアダマンタイトを★×9相当で採掘出来るようになったという解釈も難しい。
実際★×9のダイヤのつるはしで★×12のレガシーアダマンタイト鉱石には弾かれるが、新方式★×8アダマン鉱石には弾かれないし、そもそもインベントリに入れた時点でアイテムについている★の数が違うし同じ枠にも入らない。
ただし鉱石だけならまだ純度が低いだけの可能性が考えられる。どういうことかと言えば、FICSITの採鉱機ならば鉱脈の純度に応じて1単位分の量を掘るのにかかる時間を調整して概ね同等の鉱物含有量で揃えたひとまとまりの鉱石を吐き出すようになっているのだが、
その可能性を夢の中の師匠に教えられたトピアは飛び起きて工房に駆け込み、試しに★の数が8から7に低下した新方式プラチナを炉でインゴットにしてみた。
まず新型の炉では3つ鉱石を投入したところで★×7プラチナインゴットが完成した。従来1つの鉱石で1つのインゴットを生成できたので、この時点でもう変換率が悪い。やはり純度が低いのだろう。
次に同じ新方式★×7プラチナ鉱石をレガシーの炉に入れてインゴットにしてみると、3個ではインゴットにならず、2倍の6個投入してようやく従来の★×8プラチナインゴットになった。
つまり鉱物自体は同じでも従来に比べて極めて純度が低く、新型の炉では純度が低いなりの加工で雑にインゴットにしてしまっているからそれなりの★しかつかないのではなかろうかという仮説に至った。まあどうせファンタジー加工なのでそんな原理が通用するかは分からないのだが。
トピアは島で新しく採取した鉱石を一通りサティに渡しているが、やはり量的にも質的にも新しく識別してまで扱うだけの価値が無いので、既存のものと混ざらないように隔離するという結論の一致を見ている。とはいえ現状最上位のアダマン鉱石くらいはまともに分析してもらったわけだが。
テクス≪それで、物性が同じということは★×12と★×8は全く同じものなのでござるか?≫
サティ≪いえ、★×8のアダマン鉱石は元素自体は★×12と同じで、純度がかなり低いからランクが落ちているようね≫
トピア「やはりそんなところでしたか」
やはり夢の中でも師匠の教えは正しかったことにトピアは大いに満足した。
ということは、★×9のハイミスリルもきちんと仕上げればTier12の
とはいえアダマンタイトの時点で★×8アダマン鉱石を★×12インゴットにするのも★×12アダマンタイト鉱石をそのままインゴットにするのも、クラフトピアの設備では実現不可能だ。かなり広範囲に対応しているテラリアンの炉でハイミスリルも含め加工できればいいのだが。
サティ≪そうね。あとはテクスの所のチタナイトだけれど、ラリーの所のチタニウムに近い特性があるわね。同じチタンの同元体のようだし≫
テクス≪どちらの方が強度が高いでござるか?≫
サティ≪ほぼ同等ね。ただの色違いと言ってもいいわ≫
テクス≪でござるかー≫
サティ≪テクスの所のメタリウムとチタナイト以外は分析にかけて資源スキャンの対象には登録したけれど工場長の研究待ちね。既にイグナイトとエルダイトには着手してるみたいだし。あとはメテオライトなんだけど、比較をしようにもトピアの世界の隕石のサンプルが無いのよね≫
トリオ≪比較対象の無い比較調査は流石に無理じゃの≫
サティ≪まあメテオライトはトピアのところで言うレアメタルのような色々な同元体の混合物で、ラリーの炉で精錬したインゴットもその合金になってることまでは判明したんだけどね≫
ラリー≪あれ合金だったのか。初めて知ったぜ≫
サティ≪隕石が落着した周囲の土壌が変性して出来てるようだから、火山岩に近いかしらね。魔法的には利用価値があるようだけれど、硬度や靱性、電気特性を工業利用するにはちょっと頼りないわね。私からは以上よ≫
トピア「ありがとうございました。では次はマインさん報告どうぞ」
マイン≪うむ。まずはサンプル提供だが、ランサー、エアブラストドリル、サーマルポンプ、加速ドーム、IDタグ、フェーズファイバー、シリコン、トキソピッド、クアッドの実物は出したぞ。IDタグをつけた他社の設備の加速も問題なく機能した。機動兵器の実機を組み上げるのに大分資源は使ったが、予定通りコア002の設置も完了した。現在002エリアの資源採掘を進めて003と004の発射準備を進めているところだ≫
スコア≪002というと001の東隣だったか? 順調だな≫
トリオ≪ここじゃな≫
トリオからコア002の設置位置に関するマップ情報が送られてきて、通信機の画面に表示される。
マイン≪そうだな。現在その更に東側に飛ばす新しいコアの準備を進めながら対環境性能の調整と放射線遮蔽、テレポーターロジスティクスに対応するための設計カスタマイズを進めている。進捗はサティが言っていた通りだ≫
トピア「ルミナイトあたりの採掘に難があると聞きましたがドリルの対応状況はどうですか?」
サティ≪それなんだけれど、カンパニーの設備は設置時にインゴットから加工する方式だから、ドリルのブレード部分の材質を変更しようとしてもルミナイト並に加工性が悪い物質の採用が困難なのよね。『建造見込み時間:無限』みたいなエラーが出るわ≫
スコア≪対策は出来ないのか?≫
サティ≪エアブラストドリルの材料のうちチタンをチタナイトに変更すればドリルの建造時間が倍に伸びる程度で摩耗問題をかなり軽減できるわ。で、このままだとやっぱり徐々に摩耗するんだけど、これに修復機か修復プロジェクターを併設することで摩耗した分を回復出来ているわ≫
トピア「便利ですね修復プロジェクター」
トリオ≪電力もそれほどかからんしの≫
テクス≪耐摩耗素材のチタナイトでも修復しなければ目に見えて摩耗していくとは大した硬度の鉱石でござるな≫
マイン≪だが副次効果で採掘対象によって採掘速度が低下する症状をかなり緩和できるようになったぞ≫
サティ≪元のままだとルミナイトの採掘ではFICSITの採鉱機Mk.3改二、ルミナイトドリル搭載型に速度で負けていたからね≫
トリオ≪要するに今後チタナイトなりチタニウムなりの鉱脈がもっと必要になるけえ、そこんとこ頼むぞ嬢ちゃん達≫
トピア「任せてください」
カミール「あっ、トピア、右下のあれはどうだ? 木が凍ってるというか、氷の木のようだが?」
氷山を一周して塔からやや内陸に入り、そこから少し進んだところで、ガンマの右下方にカミールが目的の凍りついた木らしきものを発見したようなので、トピアは一度振り返ってからカミールが指さす方向を注視する。凍りついた木という名前だが、氷を削り出して作った木の彫像のようなものだ。カミールが指し示すものは、既に持っている20個のサンプルとそういった特徴が合致した。
なお1周見てきた限り、海岸線に近い低高度に分布する鉱石は鉄鉱石が大半だった。昨日サンプルを採取したアダマン鉱石は山頂近くにあったことも合わせて考えると、どうもこのシャルバート鉱山では高高度ほどランクの高い鉱石が分布しているようだ。
また、今回の目視探索開始直後にブリガンダイン渓谷側の円形フィールドに金グリフォンを発見していた。殺戮の古庭ダンジョンの入口から結構近くであり、ダンジョン攻略の際は場所が分かっているダンジョンに赴いただけなので見逃したのだが、表でグリフォンを見たことがないと言ったカミールの知識もやはり万全ではないということが露呈してしまったわけだ。
そんなわけで汚名を返上すべく本日のカミールの探索には気合が入っていた。
トピア「それっぽいですね。降りて伐採してきますね」
トピアは当たりであると判断してキャノピーを開け放った。
カミール「やはりキャノピーを開けると寒いな!」
トピア「雪が降り続いてますからね! 吹雪いてないだけマシです」
言いながらトピアはフリーズレジストポーションを飲み干し、地表に飛び降りた。
カミール「待機中は閉めておくからな!」
閉めながらカミールもフリーズレジストポーションを飲んだ。
地表に降りたトピアが透明な樹木を直接伐採してみると、『凍りついた木』がドロップした。やはり当たりだ。
折角なので30個ほど収穫してトピアはガンマに飛び乗った。
トピア「やっぱり当たりでしたよ」
カミール「それは良かった。あとは氷山のアクアマリン、青い結晶だったな? 引き続き探していくぞ」
トピア「はい、この調子で行きましょう」
凍り付いた木も氷山のアクアマリンも既に実物サンプルが入手できていて数が足りない分を探しているので、当然二人の間では実物の確認は終わっている。
期待の万能岩盤製造機を入手すべく、トピア達は氷山の捜索を続けるのだった。
全く別のゲームならともかく同一のゲームで急に鉱石レベルで仕様がガラッと変更されると、どうやって世界観の整合性つけるのか悩みますよね。
まあゲームするだけなら考える必要も無いんですが。
次回から12時46分投稿になります。