【完結】匠 VS BETA   作:MMZK

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093. (マイスター)オブ(マイスター)が普通なわけないじゃないですか

 凍りついた木の採取が終わってガンマの操縦席に戻ったトピアは、会議を進めることにした。

 

トピア「マインさんの報告は以上のようなので、次はテクスさんお願いします」

 

テクス≪承知つかまつった。資源サンプルを提出したあとは万能ブロック工場を設置して、採掘所から物資規格コンバータを挟んで接続して、ミサイル、ロケットランチャー、レールガンなどの生産を始めたでござるよ。このサンプルを元に工場長の方の自動研究が進むとのことでござるが?≫

 

トリオ≪うむ、素材拡張オプションの拡充が一通り落ち着いた後は、軍事サイエンスパックを拡張してTech由来兵器の制限を取っ払う方向の研究、それから魚雷の開発を予定しておる。このまま生産を続けてくれればええぞ≫

 

テクス≪了解でござる。あとTechのOSのコードは……案の定のスパゲッティでござったなあ。まあとりあえず機能別に分別してコア部分を丸裸にする所からやってるでござる。他は研究に必要な資料を発掘してるくらいでござるな。正味報告は以上でござる≫

 

マイン≪何だ貴様、あまり仕事をしていないのではないか?≫

 

トリオ≪いや、結構助かっとるぞ。儂も一から資料探しなんぞやっとる暇は無いからの≫

 

トピア「兵器やシステムの改造なんてそうすぐに成果なんて出ませんからね……普通は」

 

マイン≪工場長がやっているようだが?≫

 

トピア「(マイスター)オブ(マイスター)が普通なわけないじゃないですか」

 

 テクスの仕事が遅いと感じられるのは、レーザーの強化が必要と感じてから僅か2日でレーザーの射程を100倍にした工場長のせいでもあった。

 

サティ≪設計やソフトウェアのエキスパートもいれば良かったんだけど、どっちも工場長が内包してるせいで仕事が偏ってしまうのよね≫

 

 ドワーフというイメージからは離れるが、ああ見えて工場長はソフトウェアの知識もかなりある。スパイダートロンや打ち上げロケットを一から作ったのは伊達ではないのだ。だがそれ以外にも工場長の仕事が多すぎてソフトウェアに専念させることが出来ず、ソフト関連の人手が足りなくなっているのだ。

 

トピア「そう言えば工場長の研究施設にソフトウェアの研究をさせることって出来ないんですか?」

 

トリオ≪ある程度は出来るが、元のサンプルの問題点を除去しろというのはやったことが無いの。それ以前に複数の研究を同時に進行させられんという都合がある≫

 

トピア「そう旨い話も無いですか。ええと、次は私の番ですね。カミールさん、暫く速度を落とすので入念に探索をお願いします」

 

カミール「心得た」

 

トピア「まず操縦訓練後にモルファ狩りをつつがなく終えてモルファのリングを余剰在庫含めて確保、それから私、ラリーさん、スコアさんの装備全7種のエンチャント付与を完了しました。テストでは特に不具合は無かったはずですが、その後何か問題ありましたか?」

 

ラリー≪いや、絶好調だぜ?≫

 

スコア≪戦力自体は上がっているんだが、4つ気になる点があったな≫

 

トピア「4つもですか? 今後の強化に影響するのでそういった点は是非積極的に教えてください」

 

スコア≪すまない、トピアさんが大分忙しそうだったので条件の検証まで自分でやっていた。気になる点というのは、まず1つ目はファントムスパークではヘッドショットでも威力が3倍にならないということだ≫

 

ラリー≪そうなのか?≫

 

スコア≪色々試してみたのだが、相手がコアベース周辺のモンスターでもテラリアンゆかりのモンスターでもクラフトピアゆかりのモンスターでも結果は変わらなかった。そしてトピアさんの工房を借りて作った弓だと対象に関わらずヘッドショットで3倍のダメージになった。つまりこれはモンスター依存の特性ではなく武器依存の特性ということだ≫

 

ラリー≪ああ、となると、俺の所の弓も偶然頭に当たっても3倍ダメージにはならねえから同じだろうな≫

 

 ラリーの世界にはその名もフェイスモンスター(Face Monster)という、頭がやたらでかいモンスターがいる。これはコアベースの上の真紅(The Crimson)に生息しているのでトピア達も見たことがある。つまり弓で狙えば大体頭に当たるわけだが、ラリーが知る限りヘッドショットで特にダメージが増えることは無かったのだ。

 なおフェイスモンスター(Face Monster)はその狙いやすさからスコアがヘッドショット検証の的にしていた。

 

トピア「……なるほど検証ありがとうございます。言われてみれば槍で頭を突いてもヘッドショット3倍にならないので、ヘッドショット判定はクラフトピアの武器種の中でも更に弓に依存した特性ということですね。流石にいいとこ取りは出来ませんでしたか」

 

スコア≪2つ目はクラフトピアの弓でも頭以外で普通にクリティカルが出る。3つ目は同じくクラフトピアの弓ではクリティカル倍率が1.5倍ほどで固定されている。4つ目は同じ弓でヘッドショットでもクリティカル確定はしなかった≫

 

トピア「んん? 私が記憶しているのと大分特性が違いますね。ちょっと待って下さい」

 

 トピアは慌ててエンチャントシミュレーターのデータベースを調べた。通常のUIで説明されない武器種やスキルについての特性説明資料も入っているのだ。

 

トピア「えー、はい。大変申し訳ありません。私の記憶の方が間違っておりました。マグナムショットによってクリティカルダメージ倍率の固定は掛かりませんが、そもそも()()()()()()()()()()()()()()()()()()という仕様でした。弓は専門外だったとは言え、出鱈目な数字を出してしまったことを深くお詫び申し上げます。」

 

 リモコンの方の通信ディスプレイに顔が写っているので、トピアはガンマのシートの上で深く頭を下げた。

 

マイン≪おいィしっかりしろ現代表! ()()()()()()()()!≫

 

 この間違いにマインが即座に噛みついた。バフをかければ自慢のレインを一撃必殺出来る威力という触れ込みをやはり気にしていたのだろう。

 

スコア≪いや謝罪を求めているわけではないんだ。つまりファントムスパークの場合はクリティカルダメージ倍率は乗るから、結局の所ヘッドショット3倍だけ外れて当初の計算の1/3の威力ということでいいのかということだ≫

 

トピア「そうですね、本当にマグナムショットでクリティカルダメージ倍率の固定が掛からないのかの検証は必要ですが、理論上は装甲貫徹力がバトルヒム込みで385万、総ダメージはマナサイフォンをかけて1154万といったところです」

 

テクス≪十分な威力でござるな?≫

 

トピア「前回は素の威力で900万と言い張ってましたので」

 

スコア≪すると、クリティカルダメージ倍率を上げられるファントムスパークと、クリティカルダメージ×ヘッドショットで4.5倍を低コストで確保して余力を攻撃力(ATK)に回せるクラフトピアの弓のどちらが威力を出せるかが問題だな≫

 

ラリー≪いや、同じか若干ダメージが低いくらいならいちいち頭を狙わなくていいファントムスパークの方が有利だろ。装甲貫徹力が十分ある上に当たり判定がでかくなるからな≫

 

テクス≪それもそうでござるな≫

 

トピア「そうですね。どちらのダメージが上になるかについては後で再計算してみます。あとはそれらの弓でマグナムショットなどこちらのスキルを使った場合にどちらの判定になるかの追加検証が必要ですね。恐らく武器依存になると思いますが」

 

スコア≪先ほどからのスキル検証というのは、もしや私達でもスキルを使える目処が立ったのか?≫

 

トピア「はい、達成はまだですがそのあたりの情報も今回の報告にありますので続けて宜しいですか?」

 

スコア≪勿論だとも≫

 

トピア「では続けます。エンチャントを付与した後は地下畜産場の増築をして、ウォールオブフレッシュを再討伐して、ガンマで南南東の毒沼に赴いてハイドラを討伐、ついでにレガシーのアダマンタイトとパラジウムを採取、ドロップの『知識の奉納品』を納品して『時代の祭壇』でのワールドLv7に到達しました」

 

サティ≪あら、今ワールドLv7を目指して素材を集めてるって言ってなかった?≫

 

トピア「ええ、それを今から説明しますが、ワールドLv7に到達すると同時に湖の半島の先に7つの光の柱が発生しまして。工場長の衛星からも観測できてましたか?」

 

トリオ≪そうじゃの。念のための異常探知に引っかかったんで、慌てて確認したぞい≫

 

トピア「それはお騒がせしました。それで、現場に向かったところカミールさんとそれに襲い掛かるメカデューサというのに遭遇しました」

 

ラリー≪やっぱりトピアが倒したのか。俺の所にも通知が来てたんだが、メカデューサ(Mechdusa)ってどんなのだったんだ?≫

 

トピア「あー、やっぱりラリーさんも知らない奴でしたか。話に伺ったメカニカルボスが三体合体したようなのでしたよ」

 

ラリー≪いや、俺も噂でしか知らなかった奴でな。それで同時に通知が来たのか。良く分かったぜ≫

 

サティ≪ラリーが遭遇したことのないクトゥルフもいるのね≫

 

カミール「それでトピアがガンマの機銃、というのだったか? であっという間に倒してみせてな。すごかったぞ」

 

トピア「そう、その機銃ですよ。建設用の機体と聞いてたのに自衛用の誘導機銃で88,000DPSくらい出たのでびっくりしましたよ?」

 

スコア≪三体合体ボスをガンマに乗ったまま倒せたのか≫

 

テクス≪侮れない火力でござるな≫

 

マイン≪まあ我が中隊(カンパニー)のユニットは優秀だということだ≫

 

トピア「ガンマは機動性が十分あるので、空中戦をやるには下手に降りて戦うより楽でしたね。メカデューサの討伐でメカボス三体分と合わせて合計5レベル分上限開放されたので、生産組の報酬ストックにも大分余裕ができたと思います」

 

トリオ≪そいつはありがたいの≫

 

サティ≪でも珍しいわね。赤道から離れた所にラリー関連のイベントが起きるなんて≫

 

トピア「……それもそうですね? ラリーさん原因分かります?」

 

ラリー≪正確には分からんが、メカニカルボス(Mechanical Boss)は環境に依存せず俺らがいる場所に発生するボスだからじゃねえか?≫

 

スコア≪そうなるとムーンロードとピラーの召喚は益々博打要素が強くなるな≫

 

ラリー≪そこなんだよなあ。ムーンロードは近くに出現するとしてピラーの方がな≫

 

テクス≪一応大陸内には収まっているようでござるが≫

 

マイン≪そもそも誰も大陸外に出ておらんではないか≫

 

サティ≪まあいいわ、トピア続けて≫

 

 結論が出そうにないため、サティは自らの疑問に対する議論を一旦打ち切った。

 

トピア「はい。それで、光の柱というのが正式には『楔の塔』という遺跡の基部から出ていたんですが、どうもこれが『時代の祭壇』に文明普及機能を足した電波塔のような施設だったようなんですね」

 

ラリー≪つまりどういうことなんだ?≫

 

トピア「『時代の祭壇』でLv1から7まで上げると『楔の塔』が起動するので、その楔の塔でまたLv1から7まで上げたら漸くLv8への道が開けるということです」

 

スコア≪2周しろということか≫

 

サティ≪だからまたLv7を目指してるのね≫

 

トピア「単純に2周ではなくて、今度はこのシームレスワールド用の新方式レシピが解放されていってるんですが、同じ名前で性能やレシピが違うアイテムが多いので、混ざってややこしくなってますね」

 

テクス≪それでアダマンタイト鉱石が2種類あったりするんでござるか≫

 

トピア「ただ以前のレガシーワールドに存在しなかったワールドLv8の設備というのが、苦労してでも目指す価値がある代物でして、その一つが『万能岩盤製造機』なんですが」

 

サティ≪どう低く見積もっても重要よね≫

 

トリオ≪じゃな≫

 

トピア「他にも『エンチャント抽出機』、『スキルエンチャンターモジュール』、『エンチャントコスト上限拡張モジュールI』といったものがありました」

 

ラリー≪名前を聞くだけでも掟破り感のあるラインナップだな≫

 

スコア≪つまり、そのスキルエンチャンターモジュールで装備にマグナムショットなどのスキルを付与することが出来るんだな?≫

 

トピア「そのようです。他にも色々ありましたが特に有用性が高そうなのはこれらの4つですね」

 

スコア≪手伝えることがあったら何でも言ってくれ≫

 

トピア「それはもう。次にこの楔の塔がある島のダンジョンなんですが、既存のダンジョンと仕様が全く違います。一番の違いはクリア後の周回でランダムなエンチャントスクロールが入手できることですね。種類がどれだけあるかはまだ分かっていません」

 

スコア≪確か従来はボスラッシュダンジョンでしか手に入らないものだったか?≫

 

ラリー≪なかなか役立ちそうだな≫

 

トピア「はい。次に石板集めなんですが、進化の石板についてはこの島に散らばっている『ソウルオーブ』というアイテムを集めてアヌビス様に納品すればまとまった数手に入るので、見かけたら回収しています。あとはユグドラシルの拠点近くにカニカゴを大量に仕掛けてますので、運が良ければ海産物と一緒に幾つか回収できているはずです」

 

テクス≪海産物と一緒に獲れるものだったんでござるか≫

 

トピア「確率はかなり低いですけどね。成長の石板の方は、鍛冶屋ファーガスがこの世界にいない可能性が高くなりました」

 

マイン≪何だと?≫

 

テクス≪どういうことでござるか?≫

 

 マインとテクスは在庫の都合で成長の石板の配布数が他の面子の半分だったので、入手の動向は気になるところのようだ。

 

トピア「まず既存のエリアではクラフトピア住民が一人も見つかっていません。逆に今回見つけた7つの塔のある島では、聞き込みをしても全く見つかりません。その上、新しく成長の石板を得る手段として『修羅の試練』などのシステムが実装されています」

 

スコア≪つまり今後はその試練を達成して成長の石板を手に入れろということか≫

 

トピア「はい。でも試練自体が散らばっていて探しにくい上に修羅以外の達成に手間が掛かりすぎるので、業務の傍らに集めるのは全くお勧め出来ません」

 

サティ≪それは難儀なことね≫

 

マイン≪アヌビス神よ、何とかならんのか?≫

 

アヌビス神≪XXX,XX. XXX(石板が無くては我も能力の付与が出来んのでな、どうにもならん。むしろ上昇幅が低下する予定だったのをどうにか維持しているのだぞ)≫

 

サティ≪アヌビス神、知らないところで頑張ってたのね≫

 

スコア≪流石は我らのアヌビス神だな≫

 

トピア「中間管理職の悲哀を感じますね」

 

 効果を維持している理由は効果が薄いと神のありがたみが実感できなくなるのを危惧したからだったが、動機はともあれ有益ではあった。




 実際のゲームではレガシーからシームレスへの移行で成長の石板の効果が

ライフ上昇幅:50→10
マナ上昇幅:50→4
スタミナ上昇幅:10→4

 とびっくりするほど激減しているので、ここのアヌビス神は匠達が考える以上に頑張ってくれています。


 あと今更ながら第067話の最後に少し文章を足しています。
 つまりは弓の計算を間違っていたのは作者だったというオチでした。
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