何らかの力が光とともに星に満ちていくのを随分派手な演出だなあと眺めていたトピアであったが、少しして横に立っていたカミールの様子がおかしいのに気付いた。
カミール「これは……そうか、そういうことだったのか……人間とは……文明とは……宇宙とは……」
まるで意志を持つ放射線に汚染されたかのようなうわごとを呟くカミールの様子に普通の人間であればドン引きしても不思議ではなかったが、それはそれとして何か情報が得られそうだと判断したトピアは普通に問いかけた。
トピア「何か分かったんですかカミールさん?」
カミール「あ、ああ。分かったんだよ。この世界の全てが。こんなに簡単なことだったんだな」
カミールは言葉を発しながらも敬虔な信徒のように両手を組んで目をぐるぐるさせながら落涙しており、やはり尋常の状態ではなかった。しかしそれに構うトピアではない。そもそもテンションが上がっているときのトピアも似たようなものなのだ。
トピア「もう少し具体的に説明して戴いて宜しいですか?」
カミール「この楔の塔から力が放出された瞬間に理解したんだ。我々が神の子であること、これからやるべきこと、そしてそのために必要な知識を。文明の普及とはこういうことだったんだな。言わば教化さ」
トピア「あー、つまりワールドLv8相当の文明を直接頭に刻み込まれた、ということですか?」
カミール「そうだね、まさに神の奇跡だよ。我々一人一人が作業台の作成からワールドLv8相当設備作成までの工程を理解することが出来るようになったんだ」
なかなか強引な普及方法だなとトピアは思ったが、従来のクラフトピア世界では今まで普通に指導してもどうにもならなかったので、やはりこういう手段になってしまうのだろう。
トピアはここで重大な懸念に思い至り、通信機を全体会議モードにして緊急連絡を入れた。
トピア「
トリオ≪……何じゃ、余程急ぎのようじゃの?≫
ラリー≪何だ?≫
テクス≪何事でござる?≫
アヌビス神≪X(何用か)?≫
トピア「今ワールドLv8に到達しまして、楔の塔全てから文明教化の力が円状の輝きとともに広がってます。既にこちらの住民にはワールドLv8までのクラフトを可能とするほどの影響が出ているようなんですが、工場長はこの輝きの輪がどこまで到達するかを衛星観測しておいて戴けますか?」
アヌビス神≪XX,XXXX(うむ、
トリオ≪別に構わんが……≫
トピア「あとアヌビス様はこれの
マイン≪ふむ?≫
サティ≪……あっ、もしかして
トピア「それを懸念しています。杞憂ならそれはそれでいいんですが」
スコア≪万が一そうなったら相当厄介だな≫
マイン≪おいィ! エンチャントで強化されたBETAなど
アヌビス神≪XX,XX,XX,XXXX(範囲は星全体、あくまで人間、エルフ、デーモンなどの知的生命体に限った効果の筈だが)……≫
トピア「BETAでも重
アヌビス神から情報を聞き出すほどに放っておくと不味い可能性が高まってきた。
ファム≪あの、アヌビス様? 顔色が大変優れないようですが?≫
アヌビス神の顔は真っ黒な犬顔なのだが、通信画面越しに見ても分かる程汗をだらだらと流しており、明らかに動揺していた。
マイン≪貴様一体何を考えてこんなことをしたアヌビス神ン!!?
サティ≪マイン落ち着きなさい! 対処の方が先よ!≫
テクス≪そうでござる、責任はともかく対処法、対処法は何か無いのでござるか!?≫
アヌビス神≪……XXX(楔の塔のうちどれか1つを機能停止させればこの現象も止まるはずだ)≫
トピア「ラリーさんスコアさん手伝ってください、ミルウィン丘陵の塔を破壊します!」
ラリー≪おうよ!≫
スコア≪すぐに行く!≫
決断からの行動は早かった。トピアが召集して2分でラリーとスコアがギーザ台地の塔に集まり、トピア達は連れ立ってミルウィン丘陵の塔へと向かった。
ギーザ台地の塔を破壊しないのは、このポータルからファストトラベルへの乗り換え機能を残すためだ。
トピアがバトルヒムLv6(Max)の
トピア「粉砕し、破砕し、爆砕し、塵芥と化せ! 全力必中
ラリー&スコア≪
細かいことだが、この場合の
トピアは
ただし
そうしてトピア達は楔の塔の解体を始めたのだが、しかし何か魔術的な保護が働いているのか、当初光球保持機構はラリーの全力でも全く傷つかないほど堅牢であった。流石にノーダメージとなるとこれはエンチャントの効果が乗っていないことが原因ではない。
ラリー「全くダメージが入らないんだが!?」
トピア「続けてください! こっちは
しかし塔の根元の破壊が半分以上進んでもまだ塔は傾かない。それにもめげず更に根元の破壊を進めて全部の支柱を叩き折っても塔の位置は変わらなかった。もう空中に浮いている状態だ。
スコア「ここまで破壊しても位置が動かないだと……!?」
トピア達と逆にラリーは頂上から塔の破壊を試みているが、それでも光球の位置が動く気配は無い。
魔術的保護の影響がこちらにまで及んでいるのだろうか。或いは
トピアは頂上の光球を見上げ、益々活性化するその輝きを忌々しげに睨んだ。すると脳裏に閃く物があった。
まず
つまりは
ならばまず破壊するべきはその光の柱の発生源たる
トピアは見上げるのをやめて光の柱の発生源である楔の塔の土台を睨み、渾身の力でつるはしを振り下ろした。
トピア「Wasshoi!!」
トピアのつるはしが弾かれた。だがダメージが入った感はあった。全く傷が付かないのではなく、材質が★×11以上になっているので★×9のダイヤのつるはしが弾かれたのだ。ここに来てつるはしが★×9で止まっていることが仇になるとは。新素材のハイミスリルも★×9なので問題の解決にはならない。ならば。
思い至ったトピアが隣のスコアに目配せすると、スコアも既にガラクサイトのつるはしを振りかぶっていた。確かガラクサイトは★×9のダイヤよりも硬度が上だったはずだ。
スコア「土台を壊せばいいんだな!?」
トピア「お願いします!」
アヌビス神≪XX(土台を)……!?≫
アヌビス神が動揺した気配があったが、何かを言い終わる前にスコアが渾身の一撃を見舞った。その一撃で、土台に罅が入り、塔がぐらついた。
トピア「もう一撃!」
スコア「よしきた!」
スコアがもう一撃入れるのと同時に反動から立ち直ったトピアも一撃入れると、楔の塔の土台が真っ二つに割れ、土台を囲む燭台の炎が消えた。そして根本が無くなって空中に浮いていた塔が遂に自由落下を始めた。
トピアとスコアはその真下にいるのだが、透明な天井越しに構わず叫んだ。
トピア「今ですラリーさん!」
スコア「破壊しろッ!」
ラリー「……光になれェッ!!」
ラリーが渾身の力で
粉砕された光球保持機構は抱えたエネルギーを暴走させて爆発、それとともに7つの塔と島は輝きを失った。
この爆発でいよいよミルウィン丘陵の塔は崩壊し、残骸が散らばるばかりの朽ちた遺跡へと戻った。
マイン≪やったか!≫
テクス≪折角倒壊させたのにフラグ建築はやめるでござるよ!?≫
ファム≪いやその前に無事なんですか!?≫
トリオ≪まあ簡単にはくたばらんと思うが≫
サティ≪念のため救助の準備はしておきましょうか≫
ミルウィン丘陵の塔の惨状は普通の人間ならば間違いなく死んでいるようなものなのだが、新しく入ったファム以外はあまり心配していなかった。戦闘班の連中は普通に心配するには人間の基準を逸脱しすぎているのだ。