本小説を開いていただき有り難うございます。
今まで読んでばかりだったのですが、たまには自分で書いてみようかと思いまして筆をとりました。
では、1話目は短いですがお楽しみいただければ幸いです。
「う…ぁ…」
そこはうす暗い空間であった。壁と天井に等間隔で並んだ灯りはその役目を果たそうと煌々と輝いているが、その空間が広すぎるために部屋を十分に明るく灯すことはできていないようだ。
そして、そこには3つのとても大きな箱状の装置が設置されていた。それらは稼働中のようで、静かだがよく響く低い唸り声を上げている。
「ここは・・・」
その装置のうちの1つの前に、1人の少女が佇んでいた。腰まで届く純白の長い髪に、血の気のない真っ白な肌。その整った顔立ちは、未知の空間に一人であることからの不安を垣間見せ、きょろきょろとあたりを見回している。すると、彼女はその空間に自分以外の存在を見つた。一瞬不安の色が濃くなったが、その表情はすぐに一面の好奇心に染まる。
「うわぁあああ!かわいい!!なにこの小さな女の子たちは!!」
その存在は、小さい女の子たちだった。膝丈程度の身長の大きさの女の子たちは、忙しそうに走り回っている子から、倒れこんでぐっすり寝ている子まで様々な様子を見せており、中には空中に浮かんでいる子もいるようだ。彼女はそれをみて、まるで妖精のようだな、と思った。まるで後ろにお花畑が見えそうなくらいに妖精たちの可愛さに酔ってる彼女の幸せそうな表情を見ると、彼女はまだ大人と呼ぶには若い年頃の少女であることがよく分かる。さらに、その表情からは彼女が頭のなかで妖精たちを愛でる妄想をしているが見て明らかなほどに駄々漏れだ。
「ふぁあああ・・・!!!」
その可愛らしい唇からは、終始幸せそうな声が漏れだしているのであった。
「・・・あなたが、新しく建造された艦?」
「ふぁぁああああ・・・あ!?」
幸せそうに妖精たちを眺め、しびれを切らして近くを通った妖精を抱き上げて悦に浸っていた少女は、突然に声をかけられたことに驚き間の抜けた返事を返す。返事というよりはびっくりして声が上ずっただけかもしれないが。驚きに跳ねた身体と鼓動をそのままに、彼女は自分に声をかけた相手を確認するために振り返った。
「・・・ひっ!?」
が、そこでみた光景にまたびっくりする。声をかけてきた少女は、彼女と同じように白髪に白い肌。同じくらいの背丈で、どこか物静かな雰囲気を醸し出している。しかし、彼女をびっくりさせたのは頭の被り物だ。それは大きな黒いベレー帽のようであったが、それからは白い触手が数本垂れさがっており、正面には大きな口があったのだ。唇はなく、犬歯のように尖った歯が噛み合っている。今は閉じているが、もし開いたならば彼女はぱっくりと食べられてしまうだろう。それを間近で見てしまった彼女はすっかり怯えきってしまったようで、震える身体を縮こまらせて自らの手で抱きしめた。
「・・・どうしたの?」
少女は、震えている彼女に心配そうに声をかける。しかし、彼女は震えるだけで返事も無ければ、どんな顔をしているか伺うことも出来ない。少女は首を傾げて思案する。彼女は建造されたばかりだ。なにか建造時に失敗でもあったのだろうか?そんな的はずれな思考をする彼女の表情は至って真剣だ。今彼女のために、私がすべきことはなにか。少女は考えるが良い答えが浮かばないようである。そこに、その様子を見かねたのか数人の妖精が近寄ってくると、なんと少女にアドバイスをはじめたのだ。
「こわがってる!ぼうしこわい!!ぬぐ!!」
「じこしょーかい!じこしょーかい! なかよくなる!」
彼女は私の被り物が怖いのか?と少女は不思議そうな顔だ。
「・・・これとって、自己紹介?」
妖精たちはうんうんと首をふる。今は妖精たちの言葉を頼るしかないだろう。そう結論づけた少女は帽子をとった。帽子のようなものが不満気にきーきーと抗議の声をあげるが、「静かに。」と彼女は一蹴すると、改めて彼女に声をかける。
「・・・もう、怖くない。だから顔を上げる。」
彼女にも妖精たちとのやりとりが聞こえていたのだろう。ゆっくりと顔を上げると、ほんとうに頭に乗っていた化け物のようなものを脇に抱えているのをみてぎょっとする。しかし、少しは怖くなくなったのだろう、おそるおそる少女に話しかけた。
「それ、とれるんですね・・・」
「・・・これ、結構重い。・・・首も疲れる」
「そ、そうですか・・・」
じゃあなんでかぶってるんですか。とはさすがに聞くことはできなかった。
「あの・・・あなたはいったい?それと建造ってなんですか・・・?」
「・・・私は空母ヲ級。建造は新たな艦を生み出すこと。・・・妖精に頼むと、その装置からでてくる」
「空母ヲ級・・・さん、ですか?」
「・・・ヲ級でいい。」
「じゃ、じゃあヲ級さんで・・・。」
「・・・うん。」
どうやら、この不思議な少女の名は空母ヲ級というらしい。すると、ここで少し落ち着いてきた彼女は、ヲ級という名前の響きをきっかけに、自分がどういった存在であるかを思い出してきたようだ。
「戦艦・・・レ級?」
「・・・そう。貴方の名前。髪が長いのはめずらしい。」
そうか。そうだ。彼女は漸く思い出した。自分が誰であるか。どのような存在であるか。
「私は・・・戦艦レ級。」
もう一度言葉に出して反復する。不思議な感覚だ。まるで、自分がそうであるのが当然のように知識がある。なぜだろう。今生まれたばかりのはずなのに。考えれば考える程、思考は堂々巡りするばかり。
「・・・姫を待たせてるから。ついてきて。」
「え、あの、ちょっと!!」
レ級が考えこんでいると、ヲ級は突然そう言い放ち歩き出す。レ級も多少戸惑ったものの、その後ろについていくあたりヲ級に対する恐怖心はもうどこにもないのだろう。
「あの、姫って?」
「・・・姫。私達のボス。」
レ級が尋ねると、ヲ級は振り向かずにそう答えた。
姫。いったいどんな存在なのだろう。前を歩くヲ級からはぐれないように追いかけながらレ級は姫という存在をイメージ不安と興味をふくらませるのであった。