有効射程距離25バ身   作:sabu

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12/20 第39回 G1阪神ジュべナイルフィリーズ 4/4

 

 限界を超えてはならない。

 それが喘鳴症である私に与えられた枷だった。

 

 じゃあ限界を超えなければ良い。

 限界を超えない『100%』で勝てるようになり、そして『100%』を常に出せるようにすれば良い。

 我ながらどうかと思うが、それしか選択肢がないのだから仕方がない。

 むしろ一本道で分かりやすく、助かる。

 他を顧みない自我が私にはあった。

 

 だから私の本質は何処までも王様気質で、傲慢なんだろう。

 

 不遜。唯我独尊。

 邪魔して欲しくない。遮られたくない。いらないものは何もいらない。

 

 傲慢。傍若無人

 限界を超えてはならないと分かっていながら——尚も限界を超える。

 限界の先の、更にその先へ。

 

 私は身軽じゃない。生まれ付き枷がある。重い重い、枷が。

 故にそれでも私が限界を超えようとしているのは、それは空に手を伸ばすようにバカな事で、実現させるには多くのものを切り捨てるしかなかった。

 

 邪魔なものばかりだった。

 色んなものが煩わしくて仕方がなかった。

 耳に入る音が五月蠅くてしょうがなかった。

 

 だからいらない。風も音も光も。

 いらない。いらない——誰もいらない。

 私だけで良い。二人目なんていらないし、走っているのも私だけで良い。

 だから私は静かなのが好きだった。光の向こう側にある、何もない暗闇が好きだった。

 

 だからそう。

 私は、本当はずっと、限界の先の先にいた。

 喘鳴症。限界を超えてはならない。

 でも違う。最初は喘鳴症だから、走ってすらいけなかった。

 私にとって走る事そのものが限界の先にあるものだった。

 

 なのに走った。

 短慮で短絡的で。何もかも捨て去っても良いと、死んでも良いとすら思って。

 無我夢中に、傲慢に、何も振り返る事なく、顧みる事なく。

 

 200mも走れず脚が止まった。

 たったそれだけで息が止まり、這い蹲る。

 それでも走る。繰り返す。

 前へ。もっともっと前へ。速く、もっともっと速く、速く——全てを擲つほどに速く。

 

 そして本当にあの日、私は空に手が届いた。

 

 空に手を伸ばし、見えないナニかを掴む。

 あの時、あの瞬間、私はナニかを理解した。

 見て、知って、理解した。二度と手放さないように、掴んでみせた。

 

 あの感覚を覚えている。

 あの世界を私は知っている。

 

 一度、不幸な事故で手放してしまった。

 だから今日、また掴めば良い。

 私はまた、あの地平へと行く。

 点滅する光を追い抜いて、光のない向こう側へ。

 

 あぁ。

 きっと。

 私は今、笑っている。

 

 

×        ×         ×        ×

 

 

 ウマ娘は、走る為に生まれて来た。

 彼女達には耳があり、尾があり、超人的な脚がある。

 

 だが彼女達は、空を駆ける事は出来なかった。

 

 だからウマ娘達は、空に憧れを抱いた。

 古来よりから続くその憧れは、形を変えながらも現代に残っている。

 例えば羽の生えたウマ娘の絵画。空を駆け抜けるウマ娘達の彫刻。

 或いは語り継がれて来た神話に、翼を持ち空を飛ぶ事が出来たペガサスというウマ娘もいる。

 

 空。

 それはウマ娘にとって速さの象徴であり、自由の象徴。

 翼を広げて走っている、空を飛ぶように走る。

 そんな称号を人がウマ娘に与えるのは、限りない名誉の証であり、最大級の賛美であった。

 

 ——『天』トウショウボーイ。

 

 その賛美を、唯一戴いたウマ娘がいる。

 天性のスピードと華麗を極めたフォーム。速さの象徴。トウショウボーイ。

 15戦10勝。内2着3回。3着1回。

 1600m、2000m、2500m。当時全ての日本レコードを更新。

 彼女は規格外に相応しい強さと速さを両立させたウマ娘だが、それだけじゃない。

 

 トウショウボーイは、空を飛ぶように走る。

 

 広いストライド。

 低く、低く下げた首。

 地面と平行になっているとまで言わしめたその優雅極まりないフォームは、ふわふわ浮いてるようでスピード感がないとまで言われるほど類を見ない走りだった。

 ではトウショウボーイにスピードがなかったかというと、全く以ってそんな事はない。

 事実彼女は、競争率の高いレースで日本レコードを三つも更新した。

 彼女は当時間違いなく現役最速であり歴代最速でもある。もしかしたら世界最速でもあったかもしれない。

 だが言われた。スピード感がないと。

 

 空とは自由の象徴であり、同時に未知の象徴である。

 

 トウショウボーイの走りは、理解されなかった。

 途方もない差がある事だけは漠然と理解出来て、故に畏れすら抱かれていたかもしれない。

 同じ大地を走っているようには思えないと。

 翼の生えたウマ娘と、翼を持たぬウマ娘は、もはや別の存在なのだと。

 

『シンボリエウロス——翼を広げた! 翼を広げて追い込んで来た!!!』

 

 だから多分、彼女もそうだった。

 前傾姿勢。

 首を下げた、重心の低い独特のフォーム。

 それは素人目に見ても、美しく見える。

 同じ大地を走っているとは思えない。

 

 似ている。

 天と呼ばれたウマ娘と。

 

 そして異なる。

 天と呼ばれたウマ娘と。

 

 例えば、ストライドの広さ。踏み締めた脚と蹴り出す角度。走っている時に頭が全く揺れないほどの身体の軸のブレなさ。

 大地を走っているのなら、少しはブレる。ズレる。揺れる。

 だがシンボリエウロスには、それがない。

 トウショウボーイにすらあった重心のブレが、彼女には本当にない。

 

 その未知の走りは、20年近く時が流れた後、既知になる。

 シンボリエウロスがトウショウボーイの走りを既知にしたように。

 

 ディープインパクト。『奇跡に最も近いウマ娘』或いは『衝撃の英雄』と呼ばれる彼女が、また空を飛ぶ。

 

 ——なんで……なんであんなに……っ!

 

 勿論、その事を彼女達は知らない。

 ターフの上のウマ娘達が知ったのは、空を飛ぶという事だ。

 

 手を伸ばす。

 たった今、自分を置き去りにして空へと駆けていったウマ娘の背中に。

 当然、その手が何かを掴む事はない。

 空に手を伸ばすとは、そういう事だ。

 

 天へ手を伸ばしても、その手には何も残らない。

 雲や青もただそこに在るだけ。

 だから何も届かないし、何も変えられない。

 翼を持たぬウマ娘には、空を飛ぶウマ娘を止められない。

 彼女達では、光の先へ消えていったウマ娘に辿り着く事は、未来永劫あり得ない。

 

 ——なんで………なんで………。

 

 それが分かった。

 彼女の走りに、見惚れてしまったから。

 空への憧れが目の前で現実になったから。

 

 そして彼女達は走れなくなっていく。

 私には届かない。あんな走り方出来ない。

 才能か、努力か。どちらにしろ、私はシンボリエウロスにはなれないんだ。

 

 憧れが、諦めへと裏返る。

 空を飛ぶというのは美しい。

 そして、無慈悲で残酷だった。

 

『抜いた! 抜き去った! 僅か1Fで最後方から2番手へ! たった200mで7人も抜き去った!』

 

 もはや勝負になっていなかった。

 ラストスパートでの加速力と速度に、10段階近い差がある。

 比喩でも大袈裟な例えでもなく、本当にだ。

 

 1F辺りのタイム差、1.0秒以上。

 道中ならまだしもラストスパートでの0.1秒は、そのまま1段階速度が違うようなものである。

 レースでの最速と、最遅。

 それに等しい加速力の差が、シンボリエウロスとそれ以外全員のウマ娘にある。

 

「——止まっているみたい……」

 

 シンボリエウロス以外、全員。

 

 呟いたのは観客席の一人。月のような流星を額に持つウマ娘。

 止まっているというのは比喩である。でも彼女にとっては事実である。

 速い。誰よりも。誰も彼も置き去りにするほど。

 皆が皆、ラストスパートに入った時の速度は大して変わらない。

 だけど一人シンボリエウロスだけが違う。

 逃げウマ娘が垂れて来て、とかなら分かる。

 だが誰も垂れていない。失速もしてない。

 なのにカメラの画角に収まらないほどの後方から突っ込んで来て、僅か200m……凡そ11秒で7人のウマ娘を抜き去った。

 そんな経験、彼女にはない。知識としてもない。

 何ならこの光景を見ている9割9分にもない。

 

『2番手シンボリエウロス! 緑の勝負服を風にたなびかせて2番手シンボリエウロス!! 先頭のディクタストライカとは約8バ身差! もう7バ身差以上も詰めた!』

 

 だからもはや、シンボリエウロスに抜き去られたウマ娘に視線など誰も行かない。

 空を飛べるウマ娘は、大地を駆けるウマ娘を翼で覆い隠す。

 本来なら向かう筈だった光すら自分だけが浴びれる。

 それに抗えているのは、先頭。

 唯一まだシンボリエウロスに抜き去られていない1着、ディクタストライカ。

 

「……ははは」

 

 今までのレースで、競争で、生活で、ディクタストライカは幾度とシンボリエウロスに笑みを見せて来た。

 それは虚勢もあったかもしれないが、笑みは笑み。野性が見せる攻撃的なもの。

 だが今回ばかりは本当に疲れた笑みだった。吐き捨てる事も出来ず、溜め息に近い、口から出ただけの渇いた音であった。

 

 分かっていた。

 自分がこの地平に辿り着いたのだから、アイツも当然辿り着くだろうと。

 絶対にアイツも、こちら側のウマ娘だと。

 いや自分がようやく、アイツが元々いたあちら側に行けたのかもしれない。

 

 ただ、それでも限度がある。

 

 そして当人は、そんな限度知らないらしい。

 引き摺り落とし、蹂躙し、踏み越えていくものらしい。

 笑いながら、さも当然の如く。

 

 何となくそういうシンボリエウロスの心情がディクタストライカには分かった。

 領域。そのぶつかり合い。

 後に具体的な名前と現象を知るそれも、色々な事が分かった。何となくだ。

 ただの直感と言われたらそれまでの事。だからそれを言語化するなら、魂がそう言っているとしか答えられない。

 

 多分これには、条件がいる。

 

 最初の一回目は、多分何でも良い。

 だが二回目からは、縛られる。

 動作、目印、手順……そういうものを経由しないといけない。

 例えばフリースロー前の構えやフリーキック前の歩幅の調整のような、人間の競技者が行うルーティンに近い事が必要になる。

 そうしないと、一回目を再現出来ないのだ。

 

 そして多分、シンボリエウロスはその条件が複雑だ。或いは厳しいのだろう。

 

 どれだけ成長しても、僅かな運の介入で崩れる。

 少しでも初歩的なミスをしたら壊れる。

 その癖、最後の最後で1番の不利を背負っていないと、アレは発動しない。

 故に間違いなく、シンボリエウロスはそれを完璧にやった。

 

「お前、本当に何なんだよ」

 

 重力に引かれるように後ろを振り向く。

 視線は交差しない。

 シンボリエウロスはきっと、何も見ていない。

 だが口元だけは見えた。

 超前傾姿勢で走る故に、髪に隠された瞳は見えず、しかし見えた口元は……笑っていた。

 牙を剥き出しにしたような笑みだった。

 

「本当に、お前は……」

 

 覚醒したと表現するに相応しいシンボリエウロスは、物々しい圧力を放っている割に、寒気がするくらいに美しく流麗で、静けさすら伴う走りをしている。

 あぁそういえば、台風の中心は不気味なほど静かで、安定しているらしい。

 

 極まった静寂の中で、周りは無秩序に振り回す。

 自分は周りなど知らんとばかりに、完璧に走る。

 あぁ、本当にらしい。

 ただ好きに走っているだけでらしさが付いて来るのだアレは。

 

 呟いたディクタストライカの顔は、苦笑いだった。

 心底複雑そうな、諦念と納得。

 恐ろしい。何もかも。

 

 ——あぁ。

 

 幸か不幸か、その恐れがディクタストライカの背を押す。

 反骨心。気性の荒さに裏打ちされた、現状への反発。

 そして、決して口にはしない一つの敬意。

 あんな怪物に勝てたらどれほど嬉しいのだろうか、なんていう……怪物が何処までも怪物で居てくれる感謝だった。

 

 ——吐き気がするほど勝ちたい。

 

 一瞬、揺らぎかけた領域が明度を取り戻す。

 最後の200m。既に600m全力のラストスパートをしているディクタストライカにとって、正真正銘、限界の先の先。

 

『シンボリエウロスが来た! シンボリエウロスが来た! ディクタストライカ粘る!ディクタストライカまだ粘る!』

 

 残り10秒程度の刹那。

 その刹那が、永遠に感じられるほど苦しい。

 走る。走る。

 より前へ。もっともっと前へ。

 ディクタストライカは、シンボリエウロスから逃げていた。

 

『完全な一騎討ち! ディクタストライカと後続の差は縮まらない! その中、シンボリエウロスだけが動いている! 一気に詰め寄っている!』

 

 途端に脚が鉛のように重く、鈍く、痛みすら伴うようになった。

 呼吸が間に合っていない。

 身体に溜まる熱の発散も間に合ってない。

 内臓が溶けて行っているような気がする。

 心臓が恐ろしい速さで加速している。

 頭に血が昇る感覚と、全身から血の気が失せるという矛盾した感覚の中、ディクタストライカは必死に逃げていた。

 

 それが全速力で30〜40秒を越えるという事。

 

 ドーピングをしたウマ娘、或いは人類は大抵この壁を通り抜けて戻れなくなり、壊れていく。

 薬による副作用で壊れる、というのは意外とそこまで多くない。

 昔なら違うが、残念ながら時代の進歩はこういう部分にも大きく働く。

 それをドーピングなどという違法の手段に頼る事なく、自らの努力と才能と執念でこの壁に挑戦しているディクタストライカは、どう考えても一つ時代を担い、そして創るウマ娘の一人であった。

 

『残り100m! 差は4バ身! 僅か4バ身!』

 

 そのディクタストライカを、追い詰めている。傍から見れば容易く。

 異次元の加速力。理解不能の速度。

 残り100mで4バ身というのは重い。普通は覆せるものではない。

 なのに僅か4バ身と実況が叫ぶほどの速さ。実際にもう、シンボリエウロスは11バ身捩じ伏せている。

 

 勝てる訳がない。

 そう思われていた目測が、最後の最後で全て逆転する。

 常識も非常識に裏返る。

 

 苦しい顔で、必死に逃げている先頭。

 20秒程度前までは、自分が一番追い詰められていた筈のウマ娘。

 二人の一騎討ちは、片方が仕留め切るか逃げ切るかという様相を呈していた。

 

 ——まだだ……まだ……っ!

 

 次の瞬間には、全ての力が抜けているかもしれない。

 パチパチと光る閃光は擦れ、世界が自分だけになった感覚はもうほとんどない。

 領域が、解けている。

 ディクタストライカはそれが分かった。

 

 全てを塗り潰す黒が、後ろから迫って来る。

 シンボリエウロスの領域だけ、明らかに明度が違う。

 異質。そう表現する他ない。

 

 残り80m。

 

 長い。果てしなく長い。

 自分のすぐ後ろにアイツがいるのが分かる。

 存在感もあるが、何より脚音。

 最終直線で10バ身以上詰め寄って来たその加速力が齎す、芝を蹴り抜く音はもはや雷霆だった。

 

 残り50m。

 

 まだ、後ろにいる。1と¼バ身後方。

 ウマ娘が振り返らず後ろを認識出来る限界距離。

 

 残り30m。

 

 遂にシンボリエウロスが視界に入った。

 頭の高さが自分の腰の位置ほどしかない、超前傾。

 

 ——後……後……っっ!

 

 一歩、前に出れば。

 ほんの少し、シンボリエウロスよりも前に出ていれば。

 逃げ切れる。

 勝てる。

 

 ディクタストライカは駆け抜けた。

 失速もせず、ペースも崩さず、800mを駆け抜け切った。

 

 オレンジと、グリーン。

 普段から変わらずの強さを意味する己。

 名門としての責務を背負った己。

 それぞれ異なるものを象徴する二つの勝負服が、同時にゴール板を通過する。

 

『——ゴールッッ!! 今二人がゴールッッ!!』

 

 どちらが先にゴールしたかは、分からなかった。

 普通なら分かっていたかもしれないが、シンボリエウロスの加速力が余りにも異次元過ぎて分からない。

 

 ゴールする2秒前、シンボリエウロスが後ろだった。

 1秒前ですら、隣に並んでいなかった。

 0.5秒前でもまだ、きっとディクタストライカが前だった。

 0.1秒前ですら、どうだったか。

 だけど、ゴールした瞬間では——

 

『シンボリエウロスとディクタストライカ並んでいました! 二人が完全に並んでいました! ………際どい結果になりそうです……写真判定! 写真判定です!』

 

 ディクタストライカはターフの上で、大の字で倒れ込んで息を切らしていた。

 シンボリエウロスは初めて疲れた表情を見せ、少し大きな呼吸をしていた。

 

 勝利を讃えられるのは、一体どちらなのだろう。

 掲示板の上では、写真判定の電光ランプが灯り続いている。

 ただ一つ言えるとするなら、2着のウマ娘は3着に大差を付けていた。

 完全な一騎討ち。 1着と2着にほとんど差がなく、3着はどう考えても大差を付けられているという、史上類を見ない結果。

 その最終結果が、まだ現れない。

 

『出ました! 出ました! 写真判定の結果が出ました!』

 

 長い長い静寂の後、ようやく結果が出た。

 実際には一分もなかっただろう。

 

 阪神レース場に響き渡る歓声。

 釣られて彼女達二人は、ゆっくりと掲示板を見た。

 

 

 

 

着順枠番名前タイム上り着差
1 6 6シンボリエウロス 1:34.232.5  
2 4 4ディクタストライカ1:34.235.7クビ
3 3 3サープリミリック 1:35.936.6大差
4 7 7ネーハイコマンド 1:36.136.22バ身
5 8 8ヒロノオスカー  1:36.236.41バ身

 

 

 

 

×        ×         ×        ×

 

 

 上がり3F世界最速は、ダンシングブレーヴが刻んだ31.9秒である。

 今現在、彼女以外に31秒台を刻んだウマ娘はただ一人として存在しない。

 ではジュニア級で世界最速は何秒かと言われると、良く分かっていない。

 だが唯一分かっている事がある。

 ジュニア級で上がり3F32秒台を刻んだウマ娘は、まだこの地上では確認されていない。

 

 そして今日、確認された。

 

『——シンボリエウロスです! シンボリエウロスが勝った! クビ差で勝った!

 僅か3人しかいない1:34秒台を刻んで、マルゼンスキーのジュニア級最速レコードも超えて……上がり3F32.5……! こんなタイムが現実に起こり得るのでしょうか!?』

 

 1:34.2。

 シンボリエウロスとディクタストライカが刻んだ阪神JFのタイムは、約20年の月日の後、コースの形状も形態も変わってからようやく更新される。

 ウオッカ。

 後に『常識破りの女帝』と呼ばれる彼女が現れるまでは、この記録は破られない。

 

 上がり3F32.5秒。

 上がり2Fは——10.6 10.5という、この時代では凡そ現実的ではないラップタイムを刻んだ21.1秒。

 

 越えた。

 1F11秒の壁も、上がり3F33秒の壁も両方。

 6戦6勝無敗。ジュニア級で重賞レース5連勝。

 上がり3F及び上がり2F、ジュニア級世界最速。

 それが、シンボリエウロスに与えられた称号だった。

 

 ——うぉぉぉぉおおお!!!

 

 静寂を伴っていたレース場から、破裂するように上がる歓声の音。

 そこには上がり3Fの世界記録更新だとか、レコードタイム更新だとか、類を見ない勝ち方とか、6戦6勝とか、そういう色んな記録が一気に達成された事を讃える声が大きい。

 応援していたウマ娘がシンボリエウロスに負けた事を嘆く声も、今は全くと言って良いほどない。間違いなく今日、一つの歴史が変わったのだ。

 

「あ〜ぁ………」

 

 そんな観客達の中で恐らく彼女だけは、心境を複雑にしながらも残念そうに呟いた。

 ミスターシービー。

 大地を弾ませた、ウマ娘。

 

「取られちゃった。『天翔るウマ娘』」

 

 それ、アタシが欲しかったのにな。

 ボソリと呟いたミスターシービーは、傍から見てらしくない。

 でも彼女には譲れないものがあった。執着するものと言っても良い。

 

 例えば、お母さんとお父さんの事。

 例えば、エースの事。

 例えば、トレーナーの事。

 例えば——『天』トウショウボーイの事。

 

 ミスターシービー。

 天衣無縫と称された彼女は、自由の象徴だった。

 でも速さの象徴ではなかった。

 未知の象徴でもなかった。

 それが引退する前の、過去の話だ。

 彼女は空を飛んだ事がない。

 

「まぁ……仕方がないよね。こればっかりは、どうにも」

 

 もしも引退した先があるなら、きっと話は違っただろう。

 ミスターシービーほど、多くの可能性と夢を見せたウマ娘はいない。

 でもそうはならなかった。夢のレースも存在しなかった。

 ミスターシービーは、空を飛べない。

 ただ変わらない現実だけが、ずっとそこにある。

 

 ただシンボリエウロスも、ミスターシービーの大地を弾ませる豪快な走り……具体的に言えば、自分が全力を出す事を重視する代わりに、距離ロスを許容したり力強いロングスパートを行う走り方が出来ないが、隣の芝生は青く見える。

 それが本当は自分が追っていたウマ娘で、遂には今追い抜いていったウマ娘であるなら余計に。

 

「……いっその事、そこまで行ったのなら突き抜けるとこまで突き抜けて欲しい。何処までも、何処までも、それこそ空の果てまで」

「ふふ……シービーちゃんも、エウロスちゃんには甘いのね」

「そう? 別にルドルフと——」

 

 同じだよ、と言おうとして反射的に口を塞ぐ。

 しまった。自分はそこまで彼女に甘い対応をしない事をウリにしているのである。

 それにうん………流石にない。視線の先でまた腕組みし始めたあの姉ほど甘くは。

 

 ただルドルフが甘いだけと思ってないのも、またあった。

 

 確かに、姉と妹として見るなら明らかに甘い。

 生まれ付きの病とか、周りを取り囲む環境とか、人格や性格が形成されていく幼少期の頃に大きく影響を受けたのもあるだろう。

 でも……あの"ルドルフ"が、なのだ。

 シリウス風に言うのなら、あの『皇帝』サマがと言ったところ。

 

 ——必ず、私を越えてくれるウマ娘です。

 

 引退の日にルドルフが発言した言葉。

 彼女を知る者からすれば、こう聞こえる。

 

 ——彼女は仮にも、この『皇帝』が認めたウマ娘なんだが?

 

 勿論これは他人からの印象だ。実態は違うかもしれない。

 ただ今のところ、この印象が崩れた瞬間がない。

 

 全てのウマ娘に幸福を。

 そう言っているし、相応しい立ち振る舞いをしているし、実績もある。

 だけど意外と、シンボリルドルフは独占力強めな部分がある。

 何なら自らの夢の一部を妹に重ねていそうな雰囲気もある。

 

「(どう考えても……この姉妹から牙は抜け落ちてないでしょ)」

 

 ルドルフは隠すのが上手くなっただけで。

 エウロスの方は、少し忘れてしまっただけで。

 まぁそういうのにこだわるのはシリウスに任せておけば良いや、くらいのマイペースでミスターシービーは、ターフの上に視線を戻した。

 

 二人目の皇帝とでも言うような重厚な装い。グリーンの勝負服。翼のような赤いマント。

 立ち上がったシンボリエウロスは、心ここに在らずというような表情で掲示板を見上げている。

 

「……………」

 

 吐息。上下していた胸が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。

 喉に負担にかけないよう細心の注意を払い、夢から再起するようにシンボリエウロスは身体を動かした。

 右手を開き、そして閉じる。握る。

 ナニかを再び掴み、思い出した。

 現実に引き摺り落とした。

 

 そう、確かに。

 姉貴(シリウス)の手を借りて家を飛び出し、初めて走ったあの日。

 空に手を伸ばし、ナニかを掴んだそれそのものを——

 

 ——ハハハ。

 

 言葉ならざるその笑みが、遠く離れたシンボリルドルフには確かに聞こえた。

 感動と喜悦に染まった、光悦とした表情。

 普段の気品さは欠片もない、獰猛な笑み。

 

『おっとここでシンボリエウロス右手を上げて——!?』

 

 ピクッ……と反応したルドルフに応じるように——或いは全く関係なかったか、エウロスが観客席の方へ顔を向ける。

 

 エウロスは今まで、一度足りとも勝利後のパフォーマンスをした事がない。

 手を振る事も笑顔を見せる事もせず、レースが終わったらスタスタとターフの上から消える。

 代わりにライブは本気でやる。

 そのギャップが影響しているのか、シンボリエウロスは雰囲気に反し意外と人気がある。後は単純にそういうのが好みな層がいる。

 

 そんなウマ娘が初めて見せた、ライブとは全く関係ないパフォーマンス。

 

 視線と注目を浴びる彼女が行ったのは、勝利のガッツポーズではない。

 権威や象徴は全く関係ないが仮にもG1。姉のようにまずは一つ、と指を立てる訳でもない。

 

 彼女はシンボリルドルフに向かって、指を差して笑っていた。

 獣が牙を剥き出しにし闘争心を真正面からぶつけて煽っているような、攻撃的な笑みだった。

 

「———————」

 

 ——シンボリエウロス指を差して、その先にいるのは……——シンボリルドルフ! シンボリルドルフ! どうだ見たか! というような笑みで、今あの姉妹が顔を突き合わせています!

 

 反応する実況と観客の声が、姉には聞こえない。

 完全に世界から切り離された静寂で、姉妹は顔を突き合わせる。

 

 ——もうすぐその玉座に手が届く。指を咥えて見ていろ。

 

 妹はそう言っているような気がした。

 

「——ハハハ」

 

 思わず、笑みが溢れる。

 あぁ、嬉しい。妹が戻った事が。

 あぁ、心地良い。ビリビリと肌を刺すこの感覚が。

 あぁ、本当に——

 

「ルドルフ。ルドルフ」

 

 ぽんぽんと、背中を叩かれる。

 話しかけているのがミスターシービーだと、シンボリルドルフはすぐには分からなかった。

 

「出てる。すっごい出てる。ライオンな部分」

「………………」

 

 ビクッ。

 肩が一瞬跳ね上がった後、耳と尻尾がピーンっ! と跳ねる。

 

「……いや、違う」

「違わないでしょ」

「いやその……違うんだ……」

 

 え? もしかして今更? 若干呆れた表情でミスターシービーはルドルフを見ていた。

 一応は生徒会の補佐だ。だから生徒会長としての顔を立てる為にぽんぽんと叩いたが、個人的には今の顔の方が良い。

 シリウスは言わずもがな、多分マルゼンスキーもそう思っている。

 別に今を否定する訳じゃない。流れを読んでレースを進める理路整然とした今の走りも、考え方によっては昔より断然強い。

 

 でもこの姉妹だけは、違う筈だ。

 

 力と智。

 その両方でレースの常識を思うがまま捩じ伏せて、自らの行いが次の新たな常識になるような、そんな暴虐が彼女達には似合っていた。

 彼女達からありふれた常套句なんて聞きたくない。陳腐な真似もして欲しくない。

 

 だから、うん。

 姉と妹。両方共々牙を剥き出しにして向き合っている方が良い。

 だってそっちの方が懐かしいから。

 姉に影響されて、妹が。妹に影響されて、姉が。

 そうやって永遠に高みへと昇り続けていれば良いのだ、この姉妹は。

 

「認めちゃいなよ。生徒会長って実は意外と独占欲強めでギラギラしてる暴君なんだって」

「い、いや……今のは単に妹の功績が嬉しくなっただけで………」

「大丈夫大丈夫。エウロスはそんなお姉ちゃんが大好きだよ」

「うぐ——……だ、だが私をお姉ちゃんと呼んでいた頃の妹は私の後ろをトコトコ付いて来ていて、勿論私はちゃんとした頼れるお姉ちゃんだったからこそ——」

「(これは長くなるから聞かなくて良いや)」

 

 尚全くの余談だが、つい先程シンボリルドルフが浮かべていた牙を剥き出しにしたような笑みは各メディアや新聞記者に激写され、ついでにクール&無表情がデフォルトだった筈のシンボリエウロスが浮かべた、同じく獰猛な笑みも撮影され、

 

【姉と妹。二人の獅子が浮かべる笑みは同じ】

 

 みたいな感じの一面で、デカデカと姉と妹が対比して向き合っている構図の新聞が発行され、週間発行部数は過去最大を更新するし、とあるウマ娘は複数部購読する。ついでに部屋にも飾る。

 

 その事を知らぬ姉と、ついでに妹。

 尊敬する姉と憧れの追込ウマ娘が楽しそうにしているのを眺めた妹は、ふっと笑みを緩めてターフを去っていった。

 

「………エウロス」

「ごめんなさい」

 

 控え室、へ向かう途中の地下バ道。

 不安になり、表付近まで来ていた樫本理子を開口に迎えたのは謝罪であった。

 

「約束、守れませんでした」

「え………はい……?」

「怪我なく、故障もなく、もう少しで勝てたと思わせる余地すらなく勝つ。そう言いました。でも普通にもう一歩で負けていました」

「そんな事——」

 

 一瞬、悩む。

 勝つ。負ける。その比重が重いウマ娘の中でも特に重くのし掛かっているエウロスに向かって簡単な事は言ってはいけない。

 でも樫本理子は言った。

 悩んだ末に、樫本理子は樫本理子である事を選んだ。

 

「そんな事、気にしなくて構いません。貴方が無事に戻り、そして勝利してくれた以上とやかく言う事なんてありません」

「……でも故障してるかもしれません。そういう走りをしました」

「………………」

 

 ウマ娘の故障。

 それは樫本理子のトラウマである。

 

「痛みや熱は、ありますか」

 

 だが本来、ウマ娘に怪我を意識されるというのはあまり良くない。力を出し切れなくなる可能性があるからだ。

 しかし樫本理子は休暇中シンボリエウロスに故障した時の話をしたし、走れなくなった時の話もしている。

 怪我と全力。

 その釣り合いの手綱は本来トレーナーが握るものであって、ウマ娘になんとかさせるものではない。

 

 充分過ぎるほど、エウロスに譲歩させている。

 ここから先はもう、ウマ娘を担当するトレーナーじゃない。

 樫本理子は、本当に静かに尋ねた。

 

「痛みと熱……はありません。感覚としても怪我をしている気はしません。ただ思っているだけです」

 

 外側はともかく、内側へのダメージは自覚し辛い。

 レース直後なら尚更だ。レースの熱が引いてから急に体調が悪化したり、怪我が発覚するウマ娘は多い。

 

「流石に32秒台の末脚は無理をしました。遅れて怪我が発覚してもおかしくありませんし、炎症は起こしている気がします」

「喉は……大丈夫ですか」

「大丈夫だと思います。少し風邪を引いたくらいの感覚です」

「……………」

 

 少し……ほんの少し呼吸を乱しただけで、それか。

 シンボリエウロスはなんて事のないように言ったし、事実なんて事はないのだろう。

 生まれながらそうだったのだ。

 風邪くらい。だから治る範囲ではある。

 でも樫本理子からすれば、少し息が上がっただけで病に罹るレベルだった。

 

 樫本理子はその感覚に共感出来ない。

 喉に深刻な病気を持っていないし、喘鳴症の子も担当した事がないからと言われたらそれまでだが、この感覚をシンボリエウロスに寄せたら後々取り返しの付かない事が起きる気がした。

 

「エウロス。私はウィニングライブを辞退するべきだと思います」

「………まぁ、はい。そうかもしれませんね」

「実際に貴方はあまりにも無茶な記録を出しました。阪神JF16年以来のレコード更新で、マルゼンスキーのジュニア級1600m最速レコードも越えました。しかも上がりが32秒台です。理由としては充分ですし、それに……」

 

 樫本理子は視線を外した。

 その先には、担架で運ばれていくディクタストライカがいる。

 物々しい見た目に反し、ディクタストライカ本人の意識ははっきりしているし、見た目の範囲で怪我はない。

 極度の疲労で立ち上がれなくなったらしい。

 ただ筋肉の損傷の有無と休養の必要性は……それは彼女のトレーナーに任せるしかない。今必要なのは、目の前の自分の担当だ。

 

「ディクタストライカもウィニングライブを辞退するでしょう」

「1着と2着が辞退ですか……埋め合わせになりますが、落ち着いた時期でウィニングライブとか出来ないでしょうか。或いは代わりのイベントとか」

「……問い合わせてみましょう」

 

 仮にもURA職員だ。しかも幹部職員。

 それに事態が事態なのでURA側も協力を惜しまないだろう。

 

「ここからは私、トレーナーの役割です。ウィニングライブなどの細かい手続きは私が行いますし、総合病院での検査予約も済ませておきます。貴方は控え室で休んでいてください」

「はい」

「……少しだけ席を外してしまいますが、何か有ればすぐに連絡を。私以外でも構いません」

「はい」

 

 おもむろに携帯端末を取り出し、早速何処かと通話を始めながら樫本理子は離れていった。

 

「……………」

 

 トレーナーの指示通り、控え室に入って身近な場所に座る。

 静か。

 代わりに響くのは自分の心音。

 解かれた領域の外で、まだドクンドクンと少し熱を持っている。

 

 ふと思い至って、自分の携帯を手に取った。

 シンボリルドルフ。マルゼンスキー。ミスターシービー。三人がいた事は知ってる。

 でも一人足りない。何となく今日は、四人が良い。

 

『なんだ? どうした?』

 

 ワンコールで、シリウスシンボリは通話に出た。

 

「私のレース、見ていたよね」

『…………』

「見てなかったの?」

『まさか。ただお前の……見ていない訳がないだろうなんて反応に面食らっただけだ』

 

 言葉に反し、通話越しのシリウスはくつくつと笑っていた。

 気分が良い。そういう反応である。

 

『それで? まさか私に褒めて貰いたいのか?』

「いや、別に。そんな言葉よりも雄弁なものが私達ウマ娘にはあるから」

『……へぇ』

「姉貴はそろそろ、引退を考えなきゃならない時期だよね」

 

 ピクッ……という、通話越しの反応。

 僅かな物音と姉貴以外の声が僅かに聞こえた。どうやらトレーナーもいるらしい。

 じゃあ宣言としては丁度良い。

 

『——何が言いたい?』

「有記念。その年の最優と最強を決める、最後のレース。ここを引退レースとするウマ娘は多い」

『で、だからなんだ?』

「私は来年、三冠を取る。そしてジャパンカップも取り、有記念も取る。だから一年後、全盛期の私が、有記念にいる」

『……………』

 

 今は少し、熱がある。

 或いはただ、昔のように戻っただけか。

 分からない。ただ宣言するなら今が最も相応しい気がした。

 

「早く帰って来てよ。私の全盛で、全力で、全てをかけて、もう悔いが残らないくらい叩き潰して上げるから」

『ハ——』

 

 宣言を受け取った側は、静かに笑っていた。

 その笑みは、歓喜か、嘲笑だったかは尋ねない。

 1秒、2秒。

 笑みを落ち着かせたシリウスが口火に言う。

 

『——お前、言ったな?』

「うん。言ったよ。私が勝つと」

『気に入らないな、余裕そうにしやがって。私の後ろをトコトコ付いて来るばかりだった仔犬が皇帝サマの真似事か?』

「狼も獅子も、子供の時は親には付いていくよね。後もう一つ。今はまだだけど、私は『皇帝』より強いから」

『——ハハハ』

 

 ガチャ、と視界の端で控え室の扉が開く。

 樫本理子。戻って来た彼女の表情は不安と訝しみが交じっていたが、敢えて変わらず通話を続けていた。

 

『初めての敗北が私で泣いても知らないぞ?』

「私が泣くとしたら、姉貴に勝利出来た時かな」

『フ……せいぜい覚悟しておけよエウロス。世間知らずなお前に海外のレースを教えてやる』

「ありがとう。でも私がしてる覚悟は、私の手で姉貴の牙を叩き折る覚悟だけ」

 

 同時に通話を切る。

 攻撃的な言葉の応酬の割に、息はぴったり。

 あぁ、懐かしい。私達はそうだった。

 

「あの、今のは……」

「あぁ気にしないでください。私と姉貴はこんな感じなんです。全然、喧嘩してる訳じゃないですからね?」

 

 血が繋がっている姉と、血が繋がっていないだけの姉。

 と言っても、同じシンボリの冠を被る近縁。明確な血の繋がりなんて別に大した事はない。

 

 樫本理子はそれを知っている。

 知ってはいるが、攻撃的な言葉の応酬をエウロスが当たり前のようにするのが少し意外だった。

 

「来年が、楽しみです」

 

 後日、一面を飾ったシンボリエウロスの話題で世間が盛り上がる中、再び世間を震撼する発表がされた。

 シリウスシンボリ、帰国。

 来年の有記念を引退試合にすると。

 




 
 裏設定というか、作者が阪神JFの展開を作成するに当たって設定した、シンボリエウロスとディクタストライカのタイムを一応書いておきます。ここに内枠外枠の立ち位置や1F毎のラップタイムとラップタイムによって変化する0.1秒辺りのバ身差とかがあります。

 シンボリエウロス  上がり3F32.5。ラップタイム11.4 10.6 10.5
 ディクタストライカ 上がり3F35.7。ラップタイム11.9 11.8 12.0

 シンボリエウロス  800m通過タイム49.0。
 ディクタストライカ 800m通過タイム47.1。

 800m通過時の2人の距離差、約10〜11バ身。

 シンボリエウロス  1000m通過タイム61.7(+上がり3F32.5、1600mゴールタイム94.2秒=1:34.2秒)
 ディクタストライカ 1000m通過タイム58.5 (+上がり3F35.7、1600mゴールタイム94.2秒=1:34.2秒)

 1000m通過時の2人の距離差、約19〜20バ身。
 
 シンボリエウロス  上がり2F21.1。ラップタイム10.6 10.5
 ディクタストライカ 上がり2F23.8。ラップタイム11.8 12.0

 残り400mでシンボリエウロス8+9=約17バ身の追い上げ。
 最終直線352mで6+9=約15バ身の追い上げ。
 
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