ジャパンカップ戦は主人公とオグリが出ませんが、話の流れ&絶対に描写しなければならない設定が二つあるのでそれなりにしっかりと書きます。
ジャパンカップ当日。
菊花賞から3週間経った、11月の第4日曜日。
海外遠征による体調の不和もあってか2人の海外ウマ娘の出走取り消しを経て、当日のジャパンカップは計14名のウマ娘による施行と相なった。
日本勢の本命は、勿論天皇賞・春と秋の連覇を成し遂げたウマ娘。
タマモクロス。2番人気を得た彼女は、天皇賞・秋と勝るとも劣らないパフォーマンスでジャパンカップを迎えた。
そう。タマモクロスは毎日王冠と菊花賞の間に開催された天皇賞・秋を勝利している。
楽勝とまでは流石に言えなかったが、タマモクロスの勝負は極めて順当な形だった。
最終直線での末脚勝負は、タマモクロス一人の押し切りで圧勝。
破竹の8連勝。重賞は7連勝。
中距離2000mと長距離3200mの決定戦を容易く連覇し、更に上半期のグランプリ戦である宝塚記念を『マイルの帝王』の土俵で勝利した彼女は、名実共に現役最強の名を恣にしている。
この勢いのまま、タマモクロスはジャパンカップを勝つのか。
世間の注目は集まっていた。
「日本一を獲る前に、世界との勝負か」
レースが間近に迫る、控え室。
彼女特有の、レース直前に起こるナーバス的な不調は一切見当たらないながら、何となく気迫に欠ける佇まいでタマモクロスは天井を見上げていた。
「……タマちゃん」
「ん? 何や?」
備え付けのソファに座り、手足を投げ出す姿勢のタマモクロスに気負いは見られない。
別に物思いに耽っているという訳でもなく、小宮山トレーナーの呼び掛けにはすぐ反応する。
集まっていた外部からの報道陣の声や騒音にも、タマモクロスは気にした様子がない。
非常にリラックスしている。
小宮山トレーナーが見て来た、普段通りの姿。
正に日常の延長線上と言った姿であった。
「なんやもうコミちゃん。ウチよりも緊張してたらアカンやろ?」
表情に硬さを感じて、タマモクロスは陽気な笑みで小宮山トレーナーを見る。
「そこはどっしり構えなぁ。今までも一緒にトレーニングこなして来たし、最近はずっと調子良かったやん」
「そ、そうだけど……だって〜〜!!」
ウマ娘の反応を見てすぐに自分の態度を改めるのは、流石中央のトレーナーと言える。
何より、照れるように頬を掻きながらタマモクロスとの談笑に講じる小宮山トレーナーの姿は、家族にも近い間柄のやり取りであった。
「よし! じゃあちょいと行ってくるわ!」
「うん。頑張ってねタマちゃん!」
おう! と返事をして、タマモクロスは控え室を飛び出し地下バ道を進む。
歩きながら腕を鳴らし、軽くジャンプをすれば自らの調子が伝わって来る。
違和感は、ない。
ここからが本番。
タマモクロスには、今日のジャパンカップは前走とは全く異なるだろうという感覚がある。
予感、直感にも近い第六感だ。
——日本一を獲る前に、世界との勝負。
そう。それは当たり前の事ではある。
天皇賞・秋。ジャパンカップ。有馬記念。
秋のG1戦線、全部取る。報道陣を前にそう宣言してジャパンカップに出走している身として、道中で世界との戦いが挟まるのは見えていた。
ただ何となく、今一度その事を口に出せば、何かもの足りない感覚を覚える。
天皇賞・秋。順当に勝った日本最高位の中距離決定戦。
宿命のライバル。そういう存在との決戦に、タマモクロスは出会っていない。
『東京レース場、本日のメインレースは国際G1ジャパンカップ!』
ワァァァ……と重なり合って響く歓声に混じって、実況の声が遠くから聴こえて来る。
地下バ道を抜けた先から差し込んでいる、外の光。
その光を遮るように、地下バ道の出口には二人のウマ娘がいた。
「HEY! ニッポンのスターさん!」
否。いると表現するのは間違いだった。
一人がもう一人に対して一方的に絡んでいると表現する方が適切だった。
後ろからガバッ……と突如肩を組んでは、馴れ馴れしい声色で話し始める海外のウマ娘。
この場面ではあまりにも似つかわしくない態度。長身。初対面の距離感ではない。
「調子はどう?ミーはバッチリよ!」
「………あ?」
一方、馴れ馴れしく絡まれている側のウマ娘に、タマモクロスは見覚えがあった。
黒いシャツ。そして家の色を象徴する勝負服。濃い緑のハーネスブラザー。
「(……うわぁ。なんでよりにもよってシリウスに絡んでんねん。怖いもの知らずか)」
或いは、世間知らずと呼ぶべきか。
中央トレセン学園でも取り分けスタイルが良く長身のシリウスシンボリ、よりも尚一回り大きい事が、海外のウマ娘を増長させている要因なのかもしれない。
要は
レース前から嫌なモン見せられとんなぁ……。調子乗ってんとちゃうぞと眉を顰めながら、タマモクロスは歩みを再開する。
「何だ? お前。気安く触るな」
「ん〜〜。残念! だってキミがニッポンで一番有名なウマ娘じゃない。だからまずは挨拶を、ってね! 」
「………チッ」
世界的に見てシリウスシンボリは、現役最強と名高いタマモクロスより——そして皇帝シンボリルドルフよりも遥かに知名度が高い。海外遠征を成功させたからだ。
馴れ馴れしい海外のウマ娘の発言は、間違いではない。
しかしシリウスシンボリは、その言葉を聞いてから露骨に機嫌を悪化させる。
肩に回された手を思いっきり振り払った。
言葉を聞く事すら無駄でしかないと悟ったような態度。
全てを無視して、シリウスシンボリは前へ進む。
「それにキミは、日本のGladiateurの代わりに出るんだろ?」
ピタリと、その足が止まった。
「(Gla……グラディ………、なんや?)」
何らかの意味がある単語なのか、もしくは名前なのか。
後ろでこの会話を聞いていたタマモクロスには、その言葉の意味が分からない。
聞いた事もない不可思議な単語だったのだ。
しかし、他ならぬシリウスシンボリには理解が及ぶものだったらしい。
振り返ったその瞳には、先程はなかった警戒が存分に含まれている。
パフォーマンスや表現的な怒りとは違う、本物の怒気も滲ませて。
「…………………………」
「噂のヒーローとはきっと気が合うと思っていてね。あーあ! ミーも一緒に走ってみたかったよ!」
睨み付けるシリウスシンボリに対して、分かっているのかいないのかヘラヘラとした笑みを隠さない海外ウマ娘。
一触即発。馴れ馴れしい態度のウマ娘の横を分かりやすいように通り抜けるか、或いは適当に嗜めつつシリウスシンボリに助け船を出そうとしていたタマモクロスは、彼女達の異様な雰囲気に足を止めた。
最初に口を開いたのは、シリウスシンボリだった。
「That's a bizarre outfit,If you're going to dance in the back, wouldn't you look better in shabbier competition uniform?」
「………HA-HA-HA,エンターテイナーはまず形から入るべきでしょ? 」
数年間、海外を飛び回っていたウマ娘らしい流暢な英語。
学園のリスニングテストならまだしも、シリウスシンボリの発言の意味を正しく聞き取るのはタマモクロスには難しい。
しかし流れから、罵倒である事は分かった。
海外のウマ娘の反応を見るに恐らく、かなり侮蔑的な罵倒。
そして『Gladiateur』とは、シリウスシンボリからそれほどの発言を引き出す、意味のある言葉だったらしい。
海外のウマ娘は明らかに、それを分かってて使った。
レース前の盤外戦術という訳だ。
——本当に、レース前から嫌なモン見せられとんなぁ……。
別方向から展開された、好みではないやり取りに頭を掻く。
そんなタマモクロスの様子に、海外のウマ娘は気付いたらしい。
一瞬驚いたような顔をしつつも、星のような瞳でウィンクで返す。
ひらひらと手を振りながらそのウマ娘は颯爽と立ち去って行った。
「それじゃ、またターフの上で!」
地下バ道を抜けてターフに躍り出る彼女の後ろ姿を、タマモクロスとシリウスシンボリが見据えていた。
片方は呆気に取られ、もう片方は刺し貫くほどの眼光で。
「何やアイツ………」
「………………」
「おう、シリウス。久しぶりやな」
「アンタ、アイツの名前知ってるか」
「えぇ……?」
話しかけて来たタマモクロスに一瞬だけ目を寄越しながらも、シリウスシンボリは海外のウマ娘を刺すように睨み続ける。
「何やったのかな、アイツ。ウチも良く知らんのよな」
確か、あのウマ娘は。
「
「そうそう、確かそんな名前………って知っとるやんけ!!」
「……………」
——無視すんなや!
甲高い罵声を聞き流しつつ、シリウスシンボリは思い出す。
一人、異様に情報がなかったウマ娘の事を。
23戦3勝。G1勝利経験なし。
重賞レース勝利回数は、Red Smith HというG2の一つのみ。
アメリカ代表。
情報と言えばそれくらいだ。
言語が異なる海外と言えど、あまりにも少ない。
無論、それくらいの情報しかない程度のウマ娘である、とも言えるのかもしれない。
実際にこのウマ娘の戦績は決して良いとは言えないし、注目されていた四名のウマ娘とは比べものにならない。
だが。
先程アイツは。
——それにキミは、日本のGladiateurの代わりに出るんだろ?
「チッ………」
こういう固執が良い結果を生んだ試しがない。
既に仕掛けられた場外戦に呑まれている感覚を覚えたシリウスシンボリは、
「何やねん、どいつもこいつも………」
続くタマモクロス。
地下バ道からターフに上がる際の光に目を細め、彼女もターフに上がった。
『天候は晴れの良バ場! 晩秋の府中に、世界中からウマ娘が集まりました!』
広がるターフ。迎え撃たなければならない世界の強豪達は、すぐ目の前に。
彼女達を覗くは、世界と日本の勝負に注目を寄せた10万にも及ぶ観客達。
ターフに降り立ったタマモクロスは、その光景に天を仰ぐ。
「観とるか? おっちゃん。ウチが今こうしておるんは、おっちゃんのおかげなんやで」
我武者羅に突き進んだ。
タマモクロスは遂に、こういう舞台にまで上がって来た。
瞳を閉じればすぐに、あの日の情景が目に浮かぶ。
——あのね! おっちゃん!
——ウチね、強くなる!
——誰にも負けないくらい強くなって……
「……日本一のウマ娘に」
確かに、約束した。
もう。余命幾許もない。
あの人と。
「——ハッ、やったるわ」
拳を打ち据え、闘志を胸に。
タマモクロスは、ゲートへと進んでいった。
粛々と、その瞬間が近付いて来る。
レース場に響き渡るファンファーレ。続々とゲートに並ぶウマ娘達。
国外との言語の差もあってか、レース前に言葉を交わすウマ娘はほとんどいなかった。
ゴールドシチーとエラズリープライドの二人くらいだ。容姿を揶揄するような言葉に軽口で返す、英語の応酬を交わしたのは。
そういう意味では、日常会話レベルまで日本語を仕上げて来ているオベイユアマスターは、特に異質と言えただろう。
『出走は取り消した2名を除く14名!』
日本の悲願。
日本の立場を利用しに来た挑戦者。
世界のレベルを示しに来た王者。
国から団体。そして個人。多く思惑を内包したジャパンカップは、その瞬間を待つ。
『勝つのは海外ウマ娘か!? それとも日本ウマ娘か!? 世界が注目するジャパンカップ!!』
緊張の一瞬。刹那に広がった静けさ。
より一層重みを増したその時、ゲートは開く。
『スタートしました! 正面スタンド前の先行争い!!』
ガコンと音を立てて開くゲート。
同時に響き渡る歓声。
流石、世界レベルのレースと言ったところか。
場に呑まれて出遅れたウマ娘はおらず、展開も早い。
だがやはり、慣れ親しんだ国内の芝を走り込んで来た日本勢にスタートのアドバンテージはあったのだろう。
皆が幸先の良いスタートを決める中、更に幸先の良いスタートダッシュを決めたのは、全員日本。メジロデュレン。スズパレード。ロングリヴフリー。
日本のウマ娘の中でも、海外のウマ娘に対抗出来得る強豪として名を挙げられた三人である。
『3名の日本勢が上手く飛び出した!』
東京2400。
日本ダービーと同じ条件で行われる本レース。当然ポイントは同じ。
だが基本的には、と前置きが付く。
大きな違いはやはり、出走人数。
今年の日本ダービーは24人で施行され、それ故に【日本ダービーは最も運のあるウマ娘が勝つ】【ダービーに勝つためには1角を10番手以内で回らなければいけない】の二つのジンクスがあったが、14名で施行された本レースではそれは適用されない。
また日本ダービーとは違い、出走するウマ娘達全員はまず2400mを体験しているという前提もあった。
こうなると東京2400にて考えなくてはならないのは、末脚を活かしやすい504.2mの最終直線と、ゴール手前400mにある急勾配の二つくらいだろう。
他は極めて王道的なレイアウトをした本コースは、総合的な力と瞬発力が求められていると言える。
『トニビアンカはその後ろに!』
そう。コースだけを考えるならば。
『ミシェルマイベイビーが更に続く!』
東京・芝・2400m。
国際招待G1ジャパンカップ。
まず考えるべきは、距離や開催場による特徴ではなく。
「Hello! Dear Japanese people!」
国外から参加するウマ娘達の特徴。
「Japanese Umamusume are extremely well-mannered runners huh?」
欧米は、日本よりもポジション争いが苛烈。
彼女はラフプレーの自覚なく接近し、前方のウマ娘目掛けて身体を衝突させる。
「……Sorry,but that's my best position 」
彼女の名前は、ミシェルマイベイビー。
身長195cm。
「I can't let your have this!」
日本に於いて、隊列に囲まれた時はバ群をこじ開けるという概念がある。
だがそれは、欧米に於いてはレースの基本の延長線上にある普遍的なやり取り。
別に囲まれていなくとも、自らのポジションを得る為に肩をぶつける程度は良くやる。
そう。
ジャパンカップにて考えるべきレース展開は、コース設計や距離ではない。
まず最初が国外ウマ娘達の脚質分布と、その特色。
欧米はポジション争いが熾烈。
まず
有力な逃げウマ娘を潰す為だけに出ても良いし、同じチームのウマ娘を勝たせる為に前に出て展開を操作しても良い。
当然、ラビット同士で
日本では公平性と安全性の観点からラビットは禁止されているが、欧州ではそうじゃない。
その為、ジャパンカップでラビット役のウマ娘は走らせる事は出来ないが、ヨーロッパから参加したウマ娘がどれだけラビットとの経験を積んで来たかは頭に入れた方が良いだろう。
ラビットを潰すとは、即ち逃げを潰すという事とほぼ同義である。
次に
正確には、ラビットは別に禁止されていないが、アメリカでは活躍させる事がほとんど出来ない。ラビット文化はほぼほぼ欧州の競馬特有のものだ。
しかし米国のポジション争いは極めて熾烈。
何ならヨーロッパのそれよりも更に熾烈で、世界最高の激しさを伴うのがアメリカのレースの特徴である。
これを説明するにはまず、米国のウマ娘レース体系を知らなくてはならない。
貴族、王族に由来する欧州とは異なり、アメリカでは庶民の娯楽や祭りの側面からウマ娘レースが広がった。
狭い街中でお金をかけずにレース場を作り、土の上をそのまま走らせる。どのウマ娘が一番速いか決める。
そのスタイルは、現代の日本で言う野良レースの性質に近かった。
今でこそ違うが、昔は芝の維持費には金がかかったのだ。
故にアメリカでは欧州とは違い、ダートが主流である。
また多額の資金を投入して広大な土地を切り拓きレース場を作った欧州とは異なり、レース場は小回りで距離が短い。
アメリカではダートが軸で、短距離・マイルが中心である。次に中距離だ。
必然的にスピードとパワーが最重視され、小回りである故に最終直線は短く末脚勝負は決まりにくい。アメリカのウマ娘達は前へ前へと突き進むレースが求められる。
これがまず一つ目の理由。
二つ目の理由は、そもそもダートの特徴に由来する。
至極当然の話なのだが、芝レースとは違いダートでは地面に根ざすものが何もなく、地面の土や砂が勢い良く舞い上がる。
舞い上がるダートは後方のウマ娘の顔などに当たり、よっぽど距離を取る場合でもない限り後方脚質は常に不利。
そのよっぽどの距離を詰められるウマ娘は、米国ではシルキーサリヴァンくらいしか存在しなかった。
更には、アメリカのダートは他国の芝並みに速度が出るのもあるだろう。
形成する大地の違い。国土の土壌的な比較でいえば、日本のダートが砂だとするならアメリカでは土。粘土質なバ場である。
規則的な方向性からの話をするなら、アメリカではスパイクが付いた蹄鉄で走る事も許可されており、日本以上に深く地面を蹴り込める。
あらゆる面からアメリカでは速度が出やすく、前に行ったものが勝ちの世界。
この環境下でラビットをするなら、もうそのラビットを本命にした方が早い。
スタートしてから常に真っ向勝負。根性とバ体を活かした叩き合い。
犇くバ群の中で、力の劣るウマ娘から徐々に脱落していき、最後までスピードが持続したウマ娘が勝利を掴む。
ミシェルマイベイビー。
ダート最強国から来た巨神。
気性。脚質。バ体。
正にアメリカ競馬の世界を体現するウマ娘の彼女は、スタートそのものは日本勢に対し芝の速度で遅れを取るが、一気に巻き返して来る。
1番手〜3番手を手にした三人のウマ娘目掛けて、彼女は動いた。
「GO!GO!GO!GO!」
恵まれた体格を活かした凌ぎ合い。
ラフプレーの自覚無き、ポジション争い。
彼女だけではない。
他の海外勢のウマ娘達も、バ群の隙間を詰めるように走る。
最終直線前ならいざ知らず、スタートしてからまだ第1コーナーにも到達していないこの状況で、先頭から最後方まで凡そ8バ身。
熾烈なポジション争いを常にして来た海外勢にとって、密着したこの隊列が通常の世界である。
「ちぃ……! なんやクッソ走りにくいな!」
それは前方にいないタマモクロスも同じだった。
現在12番手。最後方から数えて3番目に位置する彼女は、最内を走りながらも隙間のない窮屈な場所を走っている。
場所は良い。
全員の位置や動きを把握出来るし、元々はケガのトラウマで取りがちなポジションだったが、慣れてる分この脚質は得意だ。
だが、そう。やはりケガ。
タマモクロスは囲まれる・接近されるという状況が好きじゃない。
それから。
「(コイツ、追込やったんか……!!?)」
オベイユアマスター。
地下バ道でシリウスシンボリから怒りを買った彼女は、最後方。
13番手がタマモクロスのやや外後ろを走っている都合上、キラキラとしたアメリカガールの如き勝負服を着た彼女は、タマモクロスの最後方にピッタリと付ける。
「お! んん〜? ミーがそんなに気になる?」
チラリと、後ろを覗き込んだ事に反応するオベイユアマスター。
ヒラヒラと手を振ってまで見せるのは人懐っこさの現れか、それとも。
「あぁそれとも走りにくいのかな? 少し下がろうか?」
「ハン! 誰がアンタみたいなふざけた奴から施しなんか貰うかい!」
どうせこのままでは、コイツのペースに呑まれる。
故に、もう動く。
タマモクロスは最後方近い位置から前に上がる為、前方のウマを躱す姿勢で外に向かった。
タマモクロスの順位、現在11番手。
「フーン。いいんだ」
まだまだレースは始まったばかり。
しかし——既に事態は動いている。
或いはひっそりと、水面下で動かしているものがいると考えるべきか。
ニヤリと、オベイユアマスターが笑っている。
道化師。それは場を掻き乱すエンターテイナーの証。
JOKERは、果たして誰なのか。
「…………」
シリウスシンボリが、オベイユアマスターの事を睨んでいた。
残り約2000m。
◯That's a bizarre outfit,If you're going to dance in the back, wouldn't you look better in shabbier competition uniform?
随分と奇抜な衣装だな。バックダンサーなら落ち着いた勝負服の方が似合っているぞ?(意訳)
尚作者はここら辺のセリフに翻訳アプリを使用しています。こっちの方が煽りとして良いよ! という人は誤字報告機能等で変えるか教えてください。
◯2番人気を得たタマモクロス陣営は
本来ではトニビアンカを抑えてタマモクロスが1番人気。ここでは天皇賞・秋での芦毛対決が実現しておらず、"オグリキャップを撃退したタマモクロス"という箔がないのでやや人気が下がっている。
後多分、復活劇を果たしたシリウスシンボリにも票が流れている。
◯だが極めて順当な形でタマモクロスは天皇賞・秋に勝利していた
オグリキャップが天皇賞・秋にいない事によってレース展開は異なる筈だが、それを含めても尚タマモクロスが負けるとは思わない。
というかそこまでレース展開が変わるとも思っていない。
よって具体的な描写はせず数行語るだけで流します。
シンデレラグレイの第36R〜第44Rに相当する出来事です。
◯HEY! ニッポンのスターさん!
シンデレラグレイ第51R『ジャパンカップ』でのオベイユアマスターがタマモクロスに向けた発言。
尚翌年のジャパンカップ、第118R『キミの言葉』でもオグリキャップに向けて全く同じ構図&全く同じ言葉で接触を図っている。
本来の寡黙で陰気な素の性格と、演技の模倣元を考えるにこのやり方以外に接触方法を知らないと思われる。
つまり絶対にシリウスシンボリにも同じ事をする。
余談ですが第118R『キミの言葉』の後書きでは、オベイユアマスターがタマモクロスをエミュる案もあったそうですよ。
もしかしたら。何らかの形で。
ここでは他のウマ娘をエミュっているかもしれません。
ちなみにオベイの脚質は本当に追込です。
◯長身のシリウスシンボリ、よりも尚一回り大きい。
数字にすると明らかになるが、オベイユアマスターの身長は182cm。
これはアプリのウマ娘で最も身長が高いヒシアケボノの180cmよりも更に上。
シリウスシンボリは167cm。
◯
複数存在する主人公のモチーフの中で、作者がシルキーサリヴァンより最初にモチーフに選び、この話投稿時点まで作中でも一切名を明かさず、感想欄でも名前が出なかった最後の競走馬。19世紀最大の英雄。
19戦16勝。
主な脚質は追込。
——L’Eclipse moderne,