この家には風呂が二種類ある。
五右衛門風呂と、石のタイルで作られた風呂である。
俺は風呂に入れればどっちでもいいんだが、今日は石のタイルの方である。
先程の紫の母の日記を見た時に流れた冷や汗などを流し、湯に浸かれば疲れも吹き飛ぶ。
「んぅ…いい湯だ」
最っ高に気持ちが良い。
このまま寝てしまいそうである。
トストスと足音がする。
風呂の前に誰かがいる。
「…」
ガラリと風呂の扉を開く。
「っ…」
パクパクと口を開けたり閉めたりするタオルを巻いた紫がいた。
「…何してんの?」
「いや…あの…その…」
「…取り敢えず、一旦俺が出るから風呂入るんだったら入りなさい」
「…はい」
紫サイド
あの人とお風呂で相対してから私はお風呂に入っていた。
何故かは分からないがあの人と一緒にいると心臓が煩くなりキュンキュンとする。
布団を出してくるまっていたら後ろから抱き付いてきてくれないかなぁとか思っちゃって息が荒くなっちゃって汗をかいた。
だからお風呂に入ろうと思ったのに…
あの人がいま入っているとは思わず布一枚で相対してしまった。
もう顔が熱くなって心臓がうるさい。息も荒くなっている。
興奮した時は大体他の事を考えれば収まるってお母さんも言ってた。
だから他の事を考えようと思ってさっきの事を思い出して、こう思った。
彼、冷静すぎなかった?
私が布一枚で顔真っ赤にしてる時、彼何て言ってた?
淡々と「何してるの?」と、「風呂入るんだったら入りなさい」って。
こっちは凄いドキドキしたのに!彼の胸板とか腹筋とか見てドキドキしたのに!
私の体だって少しは胸もあるしお尻も大きいのに!向こうは顔も赤らめなかった!
悔しい…。
そう思いながら風呂から出て、拭き布で体を拭いて、寝間着を着た。
寝る前にトイレに行こう。
そう思ってトイレに行った。流石に彼はいなかった、何故かガッカリした。
その事に何か恥ずかしくなって急いで事を済ませ、布団の部屋に戻った。
私の布団の横には彼がぐうすかと寝ている。
今なら、何をしても彼にはバレない。
その事にとてもドキドキしながらチラチラと彼を見る。
どうしよう。何かしたいけど、何をすれば良いか分からない…!
そうやって悶々していたが、一つ、生前の母がやっていたことを思い出した。
私は彼に馬乗りになって、手をとった。
人差し指を拝借し、口のなかに入れた。
まるで赤ちゃんみたいだが、これはこれで何かが満たされる。
そして眠くなってきたので口に入れた指を布団で拭いていたところ、眠くなって寝てしまった。
紫サイドアウト
「…ん」
俺は起きた。
今何時だ。
外を見ると朝日が登って少し経ったくらいだった。
「ふう…」
一息吐いて何かを掴んでいることに気がついた。
「…紫?」
そう、紫と手を繋いでいたのだ、一緒の布団で。
「…事後?」
いや、でも紫を見てみろ。服が乱れていない、大丈夫だ。
それはそれとして人差し指から何かいい匂いがするが何故だろうか?