スーパーロボッコ大戦外伝 ディファレンス・ロボッコ・バトル 作:ダークボーイ
「ヴァイス、11時方向から多数! 3時方向からも!」
「どこからこんなに!?」
「疑問は後! 迎撃を!」
押し寄せるヴァイスの大群に、アクトレス達はフォーメーションを組んで迎え撃つ。
「弾幕を張って遠距離撃破を重視! 間違っても下に流れ弾を落とさせないで!」
「了解!」
「でもすごい数…」
薫子の指示が飛び、それぞれが銃口をヴァイスへと向ける中、突如として地上から放たれた攻撃がヴァイスの一群を撃ち抜く。
『援護する!』
地上からシグナムがデバイス・レヴァンテインを、弓矢型のボーゲンフォルムで地上からの狙撃魔法でヴァイスを狙い撃つ。
「魔法組は強力でいいな」
「でも連射してたらすぐ切れる可能性もあるわ! こちらも!」
シタラが一群が消える威力に思わず漏らすのを文嘉がたしなめながら同時にトリガーを引く。
「小型だけならいいけど、ひょっとしたら…」
「夜露さん、向こうに更に!」
弾幕をばら撒きながら、夜露がある懸念を抱くが、のどかの慌てた声にとにかく今は見える敵への攻撃に専念する。
「一体、JAMはどれくらいの戦力をもってるんだろう………」
夜露の呟きは、誰もが心中に抱え始めていた事だった………
「このっ!」
「うわっ!」
地上では巨大シュリ相手に、皆が苦戦させられていた。
圧倒的な性能の巨大シュリ相手に、なんとか勝機を見出そうと次々攻撃が繰り出されるが、小技は効果が薄く、大技は出す隙を与えられない状況に皆が焦りを覚え始めていた。
「何か、攻略点は…」
トゥアールが必死に解析する中、隣の地面がいきなり跳ね上がる。
「!?」
「ふむ、全員生きてるな」
そこからいつの間にか姿を消していた皐月が這い出して来る。
「おま、どこに行ってた!?」
「地下だ。そこから敵が出てきたのが気になってな」
流子が思わず怒鳴る中、皐月は体についたホコリを払いながら平然と説明する。
「何かあったのか!?」
「それだ。地下にはあのロボとそいつが出てくるためのハンガーが有った。だがそれだけだ。肝心の物が無い」
「何だよそれは!」
「カバーズが出てきたという事は、その元が無くてはならないはず」
「あ…」
一人別行動を取っていた皐月に怒鳴る流子だったが、皐月の言わんとする事にようやく気付く。
『原初生命戦維か!』
「カバーズの大元がどっかにあるはず!」
鮮血の指摘に流子もようやく理解した。
「そして一か所、探していない場所が有る」
皐月は縛斬を構え、大型シュリを見据える。
「刃持つ物は続け! 狙いは右腕だ!」
叫ぶや否や、皐月が大型シュリの猛攻をかいくぐりながら迫り、宣言どおりその右腕に斬りつけるが、表面に傷をつけるだけに終わる。
「続け!」「おお!」「分かりました!」「はい!」
そこへ流子、テイルレッド、魅零、フェイトが続き、なんとか攻撃をかいくぐりながら、皐月が付けた傷へと斬撃を連続させる。
「いけない…!」
最後に攻撃したフェイトが、外装がようやく壊れるかどうかの状態に歯噛みする。
「いえ、行きます。ファイナルドライヴ」
そこで身をひるがえした魅零が手にした長剣からエネルギーを噴出させ、渾身の一撃を繰り出す。
繰り出された一撃は破損部分を貫き、巨大シュリの右腕を切断した。
「やった! このまま他のも…」
テイルレッドが喝采を上げるが、直後予想外の事が起きる。
轟音と共に地面に突き立った右腕と残された上腕部から、赤い繊維とも血管とも見えるような物が伸び、絡み合い、そして切断された右腕を引き寄せていく。
「そういう事か! 鮮血、武滾流猛怒!!」
『おお!』
「戦維喪失!」
それが何か理解した流子が手にした片太刀ハサミを展開、再度結合しようとした右腕を再度切断する。
「今のは!?」
「生命戦維だ! こいつ、中に生命戦維が仕込まれてやがる!」
「恐らく原初生命戦維がな。つまりこいつこそがここのボスだ」
テイルレッドの確認に流子と皐月が答える。
「つまりそれを破壊すれば」
「こいつは倒せる!」
「だが破壊出来るのは私か流子だけだろう」
ようやく攻略方法を見つけた者達が色めき立つが、片腕を失ってもなお巨大シュリの猛攻は続く。
「その肝心の原初生命戦維だとかはどこにあるの!?」
テイルブルーが一番大事な事を聞くが、流子はそこで考え込む。
「鮮血、どこだ?」
『私にも分からない。この機体、他にも色々仕込まれているのか、生命戦維の反応も希薄だ』
「探りながら攻撃するしかあるまい」
流子が鮮血に問うが鮮血も答えられず、皐月が構えながら巨大シュリを睨みつける。
「どうにかして動きを封じて、なのはちゃんの大技叩き込めば出てくるかも!」
「問題はどうやってかよ!」
テイルブルーが取りあえずの対策を打ち出すが、むしろ苛烈さを増す攻撃をかわしながらアルフが叫ぶ。
「上空からの支援は難しそうですね…」
上空からも響いてくる戦闘音に、アクトレス達の援護は期待できないと判断した魅零が振り下ろされる剣をなんとか受け流しながら考える。
「上がダメなら、下! 全員跳べ!」
そこでヴィータが叫びながらグラーフアイゼンを大上段に構え、その声に応じて全員が宙へと飛び上がる。
「テートリヒ・シュラーク!」
ヴィータの渾身の一撃が地面へと叩き込まれ、ヒビが入ったかと思うと、地下からの搬出口などを中心に地面が一気に崩壊していく。
「うわ! 無茶を!」
「だがこれなら!」
それぞれが驚異的な身体能力でそれなりの高さまで跳び上がり、崩壊していく地面に仰天するが、巨大シュリはその巨体と重量が災いし、崩壊した搬出口に足を取られて動きが止まる。
「今よ!」
「レイジングハート!」『Standby』
「ディバインバスター!」
巨大シュリがもがいている隙に、なのはの砲撃魔法が放たれ、巨大シュリの胴体を貫く。
「やった!」
「まだだ!」
テイルレッドが歓声を上げるが、流子が砲撃魔法で穿たれた穴を生命戦維が素早く塞ごうとしているのに気付く。
「エグゼキュートウェイブ!」
再生を防ぐべく、テイルブルーが投じた水流を伴ったウェイブランスがその穴を更に穿つ。
「胴体じゃないとしたら…」
「今生命繊維は下から伸びた! つまり下腹部だ!」
魅零が巨大シュリを再度観察する中、皐月は一早く相手の急所に気付く。
「嵌ってる今の内だ! 足を…」
テイルレッドが叫ぶが、それより早く巨大シュリのツインテールパーツが向かおうとしてくる者達を狙う。
「グランドブレイザー!」
テイルレッドがその巨大ツインテールが交差した一瞬を狙い、必殺技を叩き込んで何とか拮抗させる。
「この邪悪ツインテールはオレがどうにかする!」
「任せた!」
「なんとか下腹部の装甲を!」
テイルレッドの脇を通り過ぎながら、流子と魅零が迫る。
巨大シュリは残った片腕で崩壊した路面のがれきを掴むと、それを凄まじい勢いで投じてくる。
「うわ!」
『気を付けろ! かなりの威力だ!』
「余計な武器を与えたかもしれません…」
巨大散弾と化すガレキに突出していた二人のみならず皆が慌てて回避や防御に専念する。
「距離を取るとむしろ危険です! なんとか接近戦を!」
トゥアールが余波で周辺が崩壊するのを避けながらの指示に、皆がなんとか接近を試みる。
だが距離を詰めると、巨大シュリは残っていた剣を掴んで薙ぎ払ってくる。
「動けなくてこれか!」
「何か突破口は…」
「そこよ!」
ヴィータとフェイトが同時にしゃがんで斬撃をかわす中、テイルブルーは薙ぎ払いの直後を狙って飛び込み、巨大シュリの剣を持つ手、その親指をウェイブランスで貫く。
「得物を持っている時狙うとしたら!」
「親指と小指だ!」
古武道の心得から持ち手の要となる親指を狙ったテイルブルーに、同じく皐月が小指に残月を突き刺す。
「二人ともそのまま! バルディッシュ!」
さらにフェイトがバルディッシュ・アサルト ザンバーモードで突撃し、上段と下段ので振るわれた刃が巨大シュリの親指と小指を斬り飛ばす。
「これで…」
「うわあ!」
有利になったかと思った瞬間、テイルレッドの声が響き、拮抗状態だったはずのツインテールパーツが自由を取り戻す。
「全員また跳べ! 轟天爆砕! ギガントシュラーク!!」
だが拮抗状態の隙を利用して、グラーフアイゼンを巨大なギガントフォルムにしたヴィータが渾身の打撃魔法を叩き込む。
巨大シュリはツインテールパーツでそれを阻もうとするが、それごと巨大化したグラーフアイゼンは叩き潰していく。
「二発目はやばいんじゃね!?」
「今度こそ地面ぶち抜くぞ!」
『いや、まだだ!』
凄まじい威力に全力でジャンプした皆が上空で顔を引きつらせる中、鮮血が流子に注意を知らせる。
崩壊していく地面でなお、もがいていた巨大シュリが残った剣を高速で投じようとする。
それが正確に一番危険視されているなのはを狙っているのに気付いた流子が、空中で手を伸ばして強引になのはの襟首を掴むとさらに強引に体勢を入れ替える。
「流子さ…」
投じられた剣がなのはの襟首を掴んでいた流子の左腕を切断し、それに気付いた者達が顔色を変えかけるが、他でもない流子が闘気を失わず巨大シュリを睨みつける。
そして、ヴィータの魔法の余波で装甲が崩壊した巨大シュリの下腹部に、バスケットボールくらいの生命戦維の塊を見つける。
「今だ、飛ばせ!」
「こちらもだ!」
「は、はい!」
「行きます!」
流子と皐月の声に、なのはとフェイトが二人の背中に加減した攻撃魔法を撃ち込み、流子と皐月が飛ばされながらも片太刀はさみと斬月を構える。
「打武琉・武滾流猛怒!!」
「食らえ!」
姉妹の刃が、小型原初生命戦維を×の字に斬り割き、完全に崩壊させる。
すると巨大シュリの体もそれに応じるように崩壊していった。
「やった………?」
歓声を上げそうになったなのはが何か襟首が重い事に気付き、何気に手を伸ばして自分の襟首を掴んだままの切断された流子の腕に気付く。
「………え?」
それが何かを理解するのに数秒を要したなのはの顔から完全に血の気が失せ、そのまま失神してしまい、その場から落下し始める。
「なのは!」
「危ない!」
フェイトがその場に向かう前に、そばにいたテイルブルーがリボンエレメーラで滑空しながらなのはと腕を確保する。
「やばい! 止血を! 治療魔法とかって有るか!?」
「止血剤の用意を!」
「シャマル! 緊急事態だ、すぐ来てくれ!」
切断面から血を垂れ流しながらも崩壊しかけた地面に立つ流子にテイルレッドと魅零が大慌てで駆け寄り、ヴィータが緊急連絡を入れる。
「血止めるんだ! 早く!」
「トゥアールさん! 医薬品を!」
「これも保存して手術を…」
「大丈夫だ………腕持ってきてくれ」
皆が急いで流子の治療を試みるが、当の流子はやや顔色は悪いが平然としていた。
「おい鮮血! そっちで血どうにか止めてくれ!」
「だから必要ねえ」
テイルレッドが鮮血に話しかけるが、流子は落ち着いている。
「腕はあるけど、確か冷やして接合手術を…」「だから必要無えって」
テイルブルーが持ってきた腕を流子は受け取ると、それを切断面へと近付ける。
すると、切断面から流れていた血の中から繊維のような物が伸びたかと思うと、切断面へと潜り込み、腕を引き寄せる。
「え…」「は…」「何それ…」
皆が絶句する中、引き寄せられた腕が切断面に張り付き、やがて完全にくっ付くと流子は腕を動かしてみる。
「は、やれば出来るモンだな」
「羅暁のように首はするなよ?」
流子が腕の具合を確かめ、皐月は少したしなめるが皆は絶句したままだった。
「言ったろ、私もいじられた口だって」
「さすがに腕の接合は私も出来ないと思いますが………」
流子の説明に、魅零がぼそりと呟く。
「上もそろそろ終わりそうだな」
「あっちも頑張ってみてえだしな」
「問題は…」
爆音と共に大型ヴァイスが撃墜され、アクトレス達の戦闘が終焉に近い事を下にいる者達が見る中、テイルブルーが背後を見る。
「なのは、大丈夫!?」
「無理に起こすな。さすがに生腕ぶら下がりはきつかったか」
「誰か、記憶消去か精神操作出来る?」
失神したままのなのはを心配するフェイトにヴィータが呆れ、テイルブルーの確認に全員が首を横に振る。
「皆さーん、大丈夫ですか~?」
「おい、なのはに何かあったのか?」
「あー、私のせいか…」
上空のヴァイスを殲滅した夜露とシグナムがこちらに駆け寄る中、どう説明した物かと、問題の当事者である流子が空を仰ぐ。
「とにかく、これでここの安全は確保された」
「まずはこのロボを調査します」
皐月の確認に、トゥアールは嬉々として残骸だけとなった巨大シュリを解析し始めた………