スーパーロボッコ大戦外伝 ディファレンス・ロボッコ・バトル 作:ダークボーイ
「ふぃやー、たすはった。ひのうから何もくってなふて」
「流子、口に物を入れながらしゃべるな」
トリノタウンに戻った一行は、残ったメンバーが急遽作っていた朝食を片や貪り、片や丁寧に食している対照的な二人を見ていた。
「随分お腹すいていたんですね」
「まあな、昨日の昼から何も食ってなかった」
「たかだか一昼夜だろう」
「コーヒー飲むなら入れるぞ?」
「紅茶が有るならそちらを頼みたいがいいだろうか?」
「あ、紅茶の葉なら厨房の真ん中の棚に」
「ありがたい。ストレートで頼む」
流子と皐月が食事を終えるのを待ちながら、皆は何かにつけて正反対の二人を見ていた。
「つまり、お二人も突然ここに来た訳ですね?」
「ああ、妙な霧に包まれたかと思ったら、こいつと二人で草っぱらの中って寸法さ」
「全く予想外だ、なぜこのような事になったのか………」
「それはここにいる全員同じだぜ」
まもりの確認に流子と皐月が両方頷く中、総二も自分達を指さして頷く。
「さて、じゃあ紅茶をどうぞ」
「ああ、ありがとう」
「悪いな」
総二が入れた食後の紅茶を受け取った二人がそれを嚥下したのを見ながら、ようやく詳細な話し合いが始まる。
「さて、まずはどこから話せばいいか………」
「取りあえず、これからじゃねえか?」
優雅にティーカップを戻す皐月に、いささか無作法に紅茶をすする流子が自ら着ている鮮血を指さす。
「そうだな、まずは極制服の事か」
「極制服?」
「私が生徒会長をしていた本能寺学園では、私が認めた生徒に極制服と呼ばれる物を支給していた。生命戦維と呼ばれる繊維を織り込まれた極制服は、着用者の能力を飛躍的に向上させるが、その割合が増せば増すほどコントロールが困難になる。だが、私のまとう純潔と流子のまとう鮮血はその生命戦維だけで作られた、神衣と呼ばれる特注品だ。着用できるのは私と流子だけだが」
「それで、その生命戦維ってのは一体?」
「元は我が鬼龍院家の奥に祀られた原初生命戦維に端を発している。これは宇宙から飛来した物だ」
「はあ!? つまりそれってエイリアンを服にしてるって事!?」
「厳密には少し違うが大体その通りだ」
思わず愛香が声を上げるが、皐月がそれを肯定した事で全員が仰天する。
「つまり、エイリアン繊維の軍事転用試験を学校でしてたという事ですか」
「軍事かどうか知らねえが、まあそんな感じだ」
「原初生命戦維には明確な知能がある。その最終目標は衣服に紛れて地球を征服し、地球その物を取り込む繭星降誕を引き起こし、また新たなる星へと旅立つ事。そしてそれを先導していたのは私の母、鬼龍院 羅暁。我々はそれを阻止すべく戦っていた、極制服も本能寺学園もその戦いのために作り上げた物だったが………」
「気付いたらこんな訳の分からない所で訳の分からない連中に襲われて、あんたらに助けられたって話」
「随分と壮大なお話ですね………」
「こちらよりも危険な状況だという話でもありますが」
慧理那と倫花がなんとか話を理解しようとするが、さすがに話が壮大過ぎて完全理解は難しかった。
「道すがらそちらの状況は聞いた。何はともあれ、皆それぞれの世界に帰らねばならない」
「つうかパラレルワールドなんてアニメじゃあるまいし………」
「状況の詳細が分かるまで、協力するしかないと思うのですが」
「そうだな、それには賛同する」
「まずは飯と寝床がねえと話にならねえし」
「じゃあ二人も協力するという事で」
「ああ、よろしく頼む」「よろしくな」
「こちらこそ」
皐月がばっさりとその話題を切り捨てる中、総二の確認に皐月が席を立って片手を差し出し、総二が握手で返すと流子も手を差し出し、こちらはまもりが握手する。
「あの………それでまずは確認したいのですけど」
そこで何故か無言だったトゥアールがタブレットのような物を手に首を傾げる。
「ああ、なんだ?」
「先程頂いた血液サンプルをチェックして気付いたのですけど、お二人は…」
「あ、言ってなかったな」
「私と流子は、実の姉妹だ」
『え!?』
トゥアールの確認にさも事も無げに言う皐月と流子に、全員が思わず声を上げる。
「生真面目生徒会長にヤンキー娘が姉妹って」
「私達より正反対ですね………」
「あれ、でも名字が…ぐふっ!」
「馬鹿、姉妹が名字が違うってそういう事よ」
皆が首を傾げる中、総二の疑問を愛香が思わず(かなり手加減した)肘鉄で黙らせる。
「そういう………あのひょっとしてご両親が………」
「そうだ、私は母に、流子は父に育てられた」
「姉妹がいるって事も、こいつがそうだってのも知ったのはつい最近さ」
慧理那が恐る恐る聞いてくるのを、当の二人は平然と答える。
「随分と仲の悪いご両親だったんですね、姉妹の事も教えないなんて………」
「ああ、両親は共に元は生命戦維の研究者でな。実の娘である私達を生命戦維との融合実験に使ったのを切っ掛けに、離反しようとした父を母が処理しようしたのを逆に利用し、父は死を偽装して流子を連れて脱走したそうだ」
「どういう家族関係!?」
「父さんは結局私にも正体を隠したまま殺されちまったけどな」
「昼ドラどころか深夜ミステリーも真っ青のドロドロ関係………」
まもりが思わず呟いたのに、皐月が詳細を説明し、流子が補足した所で全員が思わず仰天する。
「そういう事で私達は一刻も早く元の世界に戻り、母に引導を渡さねばならん」
「いや、さすがにそれ以上家族で殺し合いは…」
「首切り落としても生きてる奴を母親なんて思いたくねえよ」
「………あんた達の母親ってゾンビか何か?」
「まあ左程変わらんな。心臓を貫かれても笑ってたくらいだ」
「ゾンビの方がマシだろうぜ」
「家族関係が複雑過ぎますね………」
一番冷静そうな魅零ですら唖然とする関係に、当人達以外はだいぶ引いていた。
「あの、それなのですけれど………」
そこで慧理那がおずおずと手を上げる。
「鬼龍院家なら私も存じてます。確かに服飾産業の大手を経営している名家ですが、夫婦仲はよろしかったはず。それと娘さんも二人いましたが、私よりずっと年下でそちらもとても仲がよろしかったのですが………」
「何だそりゃ?」
「あ、多分パラレル存在って奴だろ。パラレルネタでよくある」
更に首を傾げる流子に、総二がアニメ知識で助言する。
「そう言えば、そちらは神堂と名乗っていたな? それがこちらの知る神堂なら確かに慧理那という人物はいたが、母より年上だったぞ? 若ければ要注意人物だったと母 羅暁は言っていた」
「え!?」
「随分と設定違うわね………」
「ひょっとしたらそっちの世界にもそっちの私達がいるのかな?」
「見てみたいような、見たくないような………」
愛香が思わず顔をしかめる中、倫花と乱花も思わず顔を見合わせる。
「その、それともう一つ………」
「まだ何かあるの?」
更に追加でトゥアールが聞こうとするのを愛香が呆れるが、トゥアールは流子を上から下まで見てから口を開く。
「先程安全確認のために全身スキャンした時に分かった事なのですが………」
「ああ、こいつか?」
トゥアールが慎重そうに聞いてくるのに、流子は無造作に自分の胸元を指さす。
「何の事ですか?」
「心臓だろ。私の心臓は生命戦維で作られた人工心臓なんだ」
思わずまもりが聞き返すと、流子はとんでもない事を平然と言い放った。
「人工心臓!?」
「流子は生後間もない時に先程の融合実験で一度心停止している。父はそこにその人工心臓で流子を蘇生させた。これこそが両親が断絶した決定的要因だ」
『………』
あまりに危険すぎる話に、今度こそ全員が絶句する。
「ま、私自身これもつい最近まで気付かなった位だから、気にしねえでくれ」
「当人がそう言うのなら………」
「パラレルワールドには上には上がいる物ですね………」
平然としている流子に、総二が頷き、魅零は思わず漏らす。
「複雑な事情はとりあえず置いとこうよ、二人ともごはん済んだらともかく一休みしたら? 野宿で疲れてるでしょ?」
「そうね、ここは私達が警戒してるし」
「そうか。ならその提案に甘えさせてもらうか」
話を切り替えるためか、倫花と乱花の提案に皐月は頷く。
「部屋は好きな所使ってください」
「すでに使ってる部屋はこことそこと………備品も使っていいです。休む前に着替えた方がいいでしょうし」
まもりも休息を進める中、魅零の提案に皐月の眉が僅かに跳ね上がる。
「…気付いていたのか」
「薄々。妹さんほど、生命戦維の適性が無いのでは…」
「ああ、その通りだ。鋭いな」
「昔軍にいたので…」
小声で話す皐月と魅零に、皆は気にせず空き部屋の説明を続ける。
「一休み、の前にやる事しねえとな。アイロンあるか?」
「あ、持ってきます」
「………その服、本当にアイロンで喜ぶの? うわっ!?」
流子が鮮血を見ながら聞くのに、まもりはリネン室に向かい、愛香はしげしげと鮮血を見るがそこでタイ部分の目のような模様が動いた事に仰天する。
「人員も増えた事だし、今後の事を練り直した方いいかもな」
「頼りにはなりそうですからね。まだ他にもいるかもしれませんけど」
「今度はどんな人が来るのかな?」
「あんまり変わった人はちょっと」
総二とトゥアールが今後の事を考える中、倫花は楽し気にそれを考え、乱花はむしろ懐疑的だった。
「やべえのが更に集まるんじゃねえのか?」
「それは否定できないわね………」
揶揄する流子に、愛香が思わず顔をしかめた………
「こちら夜露。戦闘らしき痕跡発見。やっぱり他にも誰かいるみたいです」
『そう、友好的な存在だといいのだけれど………』
「どうします? 一度戻ります?」
『そうして。シタラとのどかさんと合流してから再調査しましょう』
「了解」
黒地に白のツートンカラーの軽装型のパワードスーツに身を包んだ少女は、報告を済ませると空へと舞い上がる。
「本当にここはどこなんだろう………」