スーパーロボッコ大戦外伝 ディファレンス・ロボッコ・バトル 作:ダークボーイ
「じゃあそっちは倉庫に」
「こっちは燃えるゴミでしょうか」
ポータルでつながったとりのタウンの一部を成子坂製作所の整備員の男子寮にすべく、まもりと魅零が中心となって清掃が行われていた。
「断絶されていた島だと聞いてたけど、結構私物があるのね」
「物資は一応本土から送られてきてたので。まあ横流しや密売してた人もいましたけど………」
手伝っていた夜露の何気ない疑問に、まもりが少し言葉を濁しながら答える。
「隔絶されていたのでは仕方ないでしょう」
「何か妙なのもあるけどな」
文嘉が頷く中、流子がとても男性に見せられないアレコレを見てボヤく。
「監視厳しかったのはビクニ島もだったけどね」
「そうだね………」
倫花と乱花の呟きに、アクトレス達は思わず顔を見合わせる。
「ホントに色んな世界があんだね………」
「どこも色々よね。ホントどうしたら戻れるのかしら?」
シタラが密かにゲーム機の類を集める中、愛香はトレーニング機器(※恐らく美容用)を品定めしていた。
「その辺はトゥアールさんに任せるしかないのでは?」
「理解出来る人間が解析するしかないのは事実だ。我々は我々の出来る事をするしかない」
出てきた物資のリストを作っている慧理那とそれを手伝っていた皐月の言葉に、誰もが頷くしかなかった。
「取りあえず、今調整中の高高度偵察仕様のギアが完成するのを待つしかないわね」
「新人の方のと聞きましたが、大丈夫なのですか?」
夜露が呟くのを、魅零が思わず聞き返す。
「今、成子坂製作所の所有するギアの中で、のどかさんのが一番最新型なので」
「メーカーから送られてきた試作機だけどね。夜露も一緒の予定だから、大丈夫じゃない?」
文嘉とシタラが頷く中、他の者達は納得するしかなかった。
「あの通信を送ってきた人、以後繋がらないんですか?」
「色々やってるけど、ダメみたい。やはりギリギリまで登ってみるしか………」
まもりの疑問に、夜露は首を左右に振る。
「こっちも飛べりゃいいんだけどな………」
「成層圏以上となると、私達の神衣は耐えられても私達自身がどうなるか分からん。だが空中戦の問題は確かにあるな」
「また拳で打ち出すのは止めてくださいね………」
流子が明らかに地球と違う空を見てボヤき、それを更に皐月が混ぜ返すが、文嘉が前の戦闘を思い出して釘を刺してくる。
「必要ならば、拳で打ち出されようが何だろうが、やるまでだ」
「タイプ違うけど、やっぱあんた達姉妹だね」
「そんな事を言われたのは初めてだ」
皐月が断言するのを聞いたシタラが思わず呆れる。
「とにかく、今一番必要なのは情報なのは間違いないですから」
「トゥアールさんが改造手伝ってるそうですけど、大丈夫でしょうか?」
「変な改造とかしてそう………」
「してるでしょ」
アームの少女達が色々懸念し、皆して思わず唸る。
「何が悲しいって、あいつに頼るしかない状況なのがね………」
「テイルギアじゃ宇宙行けませんしね………」
「宇宙かー、飛ぶだけだったら乃音がいれば」
「蛇崩の極制服ではそんな高度までは不可能だ。以前に試したが、三つ星でも普通呼吸できる高度が限度だ」
「なんで自然に宇宙に行けるかの話になってるんです?」
ツインテイルズと神衣をまとった姉妹が話すのを聞いたまもりが思わず首を傾げる。
「念のため言っておきますが、多分私達は無理です」
「アーム化してればなんとか………」
「してない方が持たないって」
アームの少女達も思わず顔を見合わせて苦笑いする。
「結局誰か、多分トゥアールしかいないけど、ここを脱出する方法を見つけてくれるのを待つしかないわけね………」
「この間通信してきた人が何かを知ってるかもしれませんし」
両肩を落として重いため息をもらす愛香を、夜露が励ます。
「望遠鏡で覗いたらその人が見えたりしませんかね?」
「確か、とりのさんの私物で有ったような」
「相手が余程の大型宇宙船にでも乗ってない限り、難しいだろうな。やるなら本格的な大型天体望遠鏡がいる」
慧理那の提案にまもりが思わず望遠鏡を探しに行こうとするが、皐月が首を左右に振る。
「結局あたしらに出来んのは、ここで拠点作って襲ってきた連中返り討ちにするだけか」
「それと探索範囲の拡大ですね」
流子が思わずボヤき、文嘉がそれに付け足す。
「体勢さえ整えば、防戦から攻勢に出れるのですが」
「どこまで整えられるかだな。少なくてもここは防衛陣地としてはあてにならないだろう」
「軍人みたいな事言ってるな………」
「一応、昔軍属だったので」
「私設軍のような物は率いていたぞ」
魅零と皐月の発言にシタラが呆れるが、続く言葉に絶句する。
「欲を言えば、防御に優れた移動陣地のような物があればいいのだが」
「トゥアールに言って。変なの嬉々として作るだろうから」
同時刻 成子坂製作所
「取りあえず、通信機能特化の調整はしておいた」
「私の作った通信装置も組み込んでは見ましたが、問題はこの惑星を囲む次元障壁の強度ですね。惑星外は見えてはいますが、探査の類は一定高度以上は阻害されてますし」
「それはこっちでも確認した。まるで星丸ごとラッピングされてるみてえだ」
磐田とトゥアールがギアの最終調整をしながら、呟く。
「正直、この規模の次元操作なんて前代未聞です。少なくても、私の経験上はここまでの技術を持った存在は初めてですね」
「そりゃこっちもだ。幸か不幸か、すぐにこっちを壊滅させるつもりはねえようだが………」
「こんな技術力持ってるのに攻めてこられたら、ヴァイス以上に厄介なのは確かよ」
様子を見に来た薫子が思わずため息を漏らす。
「向こうが本気を出す前にトンズラするのが一番なんですが、その方法も見つからない以上はどうにも」
「やはりカギはこの間の通信相手ね。あの敵、JAMが一体どういう存在で何が目的なのか、それが分かればもう少し手の打ちようもあるかもしれないのだけど」
「ヴァイスもそうだが、エイリアンの考えてる事なんぞ理解出来るかね。それこそあのヤンキー姉ちゃんの母親みたいにおかしくなるかもしれねえぞ?」
「否定出来ないわね………」
「とにかく、私はここの資材を借りて他にも使える物を作ってみましょう。まずは総二さんの貞操を守るガードドローンを…」
「いるんかそんなの?」
時たま明後日の方向に外れるトゥアールに磐田が呆れる。
「アクトレスと他の子達の連携もシミュレーションしてみましょう。空戦と陸戦では移動速度も違うし」
「ギアに合わせられる乗り物が欲しいな。オートサイクルの類か?」
「皆さん、運転免許持ってる?」
「少なくてもツインテイルズは持ってませんね」
「ここでキップ切られる事も無いだろ。何か探してみる」
「人手が増える程、新たな問題が出てくるわね………」
「誰も彼もそれなりに強いという一点以外バラバラですからね~。正直、よくここまで寄せ集めたと思ってますよ」
「歩調合せるのも一苦労ね………前回はみんなよくやってくれたけど」
「まあお互いやれる方面でやっていくという事で………まずは情報収集から」
「そうなりますね。所で、それは一体?」
「こちらでも独自に情報収集をしようかと思い作ってみました。ベクトル操作型垂直式発射機、アイカトバース一号です。ここに蛮族をセットすれば、自動的に第一宇宙速度で射出されます。セッティングいかんでは第二、いや第三宇宙速度までいけるはず」
「第三って、この恒星系を単身脱出するつもり?」
「そうすれば全容が分かるかもしれませんね~」
さらりと何か危険な物を作ったトゥアールに薫子の頬が引きつる。
なお、使う前に壊されたのは言うまでもない。
「準備はいい?」
「はい! いつでも!」
ギアをまとった夜露の問いに、同じくギアをまとったのどかが元気よく答える。
「のどかさんのギアは通信、観測装備にリソースを割り振ったから、攻撃力はほとんど無いわ。夜露さんが護衛として随伴、危険と判断したらすぐ戻るように」
「分かりました!」
「敵があまり上空にいないといいのだけど………」
薫子の最終確認にのどかは力強く答え、夜露は若干不安を口にする。
「私達もスタンバイしてるから」
「念のためにお二人のギアは速度重視でセッティングされてます。交戦はあくまで非常時だけで」
同じようにギアをまとって待機態勢のシタラと文嘉が頷く。
「う~ん、テイルギアじゃ空戦出来ないしな………」
「それはこちらもです」
「待つしかないな」
総二、魅零、皐月が三者三様に唸るが、どう考えても手助け出来ない状況に大人しく推移を見守る事にする。
「じゃあ、行ってきます。あ、シモンちゃんお留守番よろしくね」
「ピッ!」
出発直前に、のどかがペットの小鳥であるシマエナガの北落師門(通称シモン)に声をかけると、シモンは返答する。
「システムオールグリーン、比良坂 夜露、発進します」
「高幡 のどか、行きます!」
掛け声と共に、二機のアリスギアが成子坂製作所から発進、天空へと向けて上昇していく。
「高度上昇、現在敵影無し」
「各種システム起動、通信およびセンサー感無し」
『そのまま上昇を続けて。こちらでもモニターしてるから』
「了解」
薫子の指示に従い、二機は更に上昇を続ける。
「考えてみたら、本当の空を飛ぶのって初めてですね」
「そうね。シャードでは無理だし、宇宙空間を飛ぶのとは全く違います」
のどかと夜露が、人工とは違う空をひたすら上昇していく。
「大気濃度変化確認、外気温低下が停止。対流圏から成層圏に抜けた物と思われます」
「相変わらず感無し、こちらからも通信を送ってるんですけど………」
『こちらでも確認出来ず。次元障壁は熱圏外部に有るらしいけど、上昇は中間圏までにしておいて』
「了解、敵影も確認出来ず。高高度戦闘技術は無いのかしら………」
『油断しないでください。JAMと呼ばれるらしい敵は極めて高度な技術を持ってます。どこで何をしてくるかは不明です』
夜露の疑問にトゥアールが警告する。
「更に上昇、もうじき中間圏です」
「全く感無し、あちらに届いてないんでしょうか………?」
『出力更に上げてみて。それでダメなら…』
相変わらず反応が無い事にのどかが首を傾げ、薫子が指示を出した時、夜露の視界の端に何かが光って見える。
「のどかさん!」
「うわっ!?」
ほとんど直感で体当たりのような形で夜露がのどかを弾き飛ばした直後、閃光がのどかの通過するはずだった位置を貫く。
『どうしたの!?』
「攻撃を受けました! 敵影確認出来ず!」
「こ、こちらでも!」
『探索停止! 至急帰還を…』
「夜露さん!」
薫子の帰還指示が出る中、今度はのどかが夜露を引っ張るように上昇、先程とは別方向からの閃光が二人がいた位置を貫く。
「別方向からの攻撃! 敵は複数います!」
「センサーに感無し! 一体どこから!?」
『落ち着いて! 光学センサーにリソースを!』
「は、はい!」
トゥアールが慌てて指示を割り込ませ、のどかがセンサーを切り替える。
『待ってろ! すぐ行く!』
「来ないで! シタラのじゃ狙い撃ちされます!」
『けど!』
「は、発見! すごい離れた場所に一機、反対にも!」
急発進しようとするシタラを押しとどめ、夜露が敵を探す中、のどかが敵を発見する。
「高高度長距離狙撃型!? こんな物を配備してたなんて………!」
それが一見人工衛星を思わせる形に、長大な砲身を持った機影である事をデータリンクで確認した夜露が驚く。
「緊急離脱! こちらの攻撃は届かないわ!」
「は、はい!」
不利を悟った夜露が離脱しようとするが、そこへ狙撃型の攻撃が逃げ道を塞ぐように放たれる。
「なんて精度………!」
「夜露さん!」
(分かれて各個退避、いえ相手が二機、下手したらもっといる。別れたら各個撃破される! どうすれば………)
こちらの攻撃可能範囲の外からの精密狙撃に、夜露は焦るが打開方法を見出せない。
『やっぱり行く! 少しだけ持ちこたえて!』
『装備を最低限に! 少しでも速度を上げないと!』
シタラと文嘉が向かおうとしている通信が届くが、それまでどう持たせるかすら夜露は思い浮かばない。
「夜露さん! こうなったらお互い一機ずつ狙えば!」
「相手の防御力が不明、のどかさんのギアには今最低限の戦闘力しかないです。私から離れないで!」
「は、はい!」
防戦重視に切り替え、二機のギアが互いに背中合わせで警戒する。
「シールドにエネルギーラインを集中、けど基本は回避」
「分かりました!」
「来る!」
再度放たれた敵の狙撃が、かろうじて回避したのどかのギアの表面をかすっていく。
『かすっただけでコレ!? 直撃は絶対避けて!』
送られてきたギアのダメージに薫子の声色が変わる。
「夜露さん………」
「大丈夫、私が守るから」
『今向かってる!』『こちらも狙われるかも!』
『待ってください! 夜露さんものどかさんも動かないで!』
シタラと文嘉の通信を遮るように、突然トゥアールの通信が届く。
「何か手が!?」
『片方だけなら何とか! 今光学センサーつけたので!』
「何に…」
夜露が思わず聞き返した時、地表から何かの反応が感知される。
直後、すさまじい閃光が急上昇し、狙撃機の一機を撃ち貫く。
「え………」
「すご………」
思わず絶句する二人だったが、すぐさま夜露は残ったもう一機へと向かっていく。
「そこだ!」
有効射程に入ると同時に、夜露はフルパワーでライフルを連射、被弾した狙撃機に更に剣に持ち替えて止めを刺す。
「目標撃破………いや」
夜露がふと目を凝らすと、はっきり確認出来ないがかなりの遠距離に影が一つ、また一つと確認出来た。
「何機有るの………」
『夜露さん、無事!?』
「はい、恐らくこの二機だけではないようです。攻撃範囲に入ると自動的に攻撃してくるシステムかと」
『すぐに帰還して!』
「了解しました」
空が完全に封鎖されているという事実を確認した夜露が、思わず拳を握り締める。
「夜露さん!」
「帰還しましょう、どうやらこれ以上は無理のようだから」
「はい、それにしてもさっきのすごかったですね」
「あんな武装、ウチには無かったですよね? 誰のでしょう………」
「命中しました………」
己の武装を全て合体させた、超合身巨大砲・スーパーユナイトウェポンを構えたテイルイエローが大きく呼吸を乱しながらも、成果を確認する。
「いや~、さすがにこの超長距離は想定してませんでした………」
トゥアールが突貫で作った超長距離光学サイトをスーパーユナイトウェポンから外す。
「お前ら、こんなの持ってたのか………」
「本来はこんな長距離砲撃用じゃないんですけどね」
磐田が絶句する中、トゥアールが説明してやる。
「………で、大砲はともかく、そっちは何だ?」
流子が胡乱な目でテイルイエローを指差す。
正確には彼女の首にはまっている首輪型デバイスと、そこから伸びたリードを握っているテイルレッドを。
「頼む、聞かないでくれ………」
「不足する分のエネルギーを補うバイパスよ。見た目はアレなんだけどね」
テイルレッドは呟きながらそっと目を反らすのを愛香がフォローするが、その目はほかのメンツと同じく胡乱な視線だった
その様を見たまもりも思わず漏らす。
「その、やっぱそういう人ってどの世界にもいるんでしょうか?」
「あ~、こっちにもいたな。責められれば責められる程固くなってく奴」
「こっちにもお尻蹴飛ばされないと発動しない方が………」
「こっちにはいねえぞ、多分………」
流子とまもりの呟きに磐田が思わず突っ込む。
「夜露さんとのどかさんの降下を確認、どうやらある程度の高度まで上がってこないと攻撃してこないタイプみたいですね」
「フタどころかセキュリティまで用意してんのか………これで脱出艇の類で脱出ってのは無理なのが分かったな」
トゥアールが二人の無事を確認する中、磐田が苦々しい顔を浮かべる。
「こちらにももっと遠距離攻撃出来る装備があればいいんですが………」
「無理だろ、アレは。スナイパー仕様のギアでも、あそこまでの射程は出せねぇ。さっきの長距離射撃も連続は無理みてぇだしな」
トゥアールも思案するが、磐田の視線は先程の攻撃でエネルギーを使い果たし、二人そろってグロッキー状態で変身を解除した慧理那と総二に向けられる。
「だが、何か有るはずだ。それを見つけられれば………」
何とか立ち上がった総二が、上空を見つめながら呟いた………