ステータスが見える少年が行く 作:睡眠欲求
〇月×日
今日から日記を付けようと思う。高校に進学するという節目だからだ。思えば、中学生活は色々と合った。生まれ持った能力のおかげで随分と苦労させられた。
人の能力を数値で見る能力。そんなオカルトみたいな力を俺は授かった。幼少期はだいぶ病院を連れ回されたが、人は自分と違うものを排斥したがる性質の化物だと知った。
高校に4月から入学するわけだが、少し楽しみでもある。人の数値は変わるし、高校生はそれが大きい。短期間で変動するが故に、数値で人を見なくても済む。だから、高校生活は結構楽しみなのだ。
〇月×日
高度育成高等学校それがこれから通うことになる国立高校だ。最新設備を備え、毎月電子マネーが支給される特典があり、卒業生は希望する進路をほぼ100%認められるというふれこみで有名。町一つに相当する広大な敷地を有しており、その中で生徒に生活させるかわりに外部との連絡を禁じている。………胡散臭いにもほどがある。その予感は的中。この学校、監視カメラが多すぎる。その上、10万ポイントを支給し実力で生徒を測るという方針の開示。極めつけは、クラスごとにステータスが偏っていることだ。Aクラスの人間は、学力や身体能力の平均が高水準だった。比較してCクラスやDクラスの平均はやや低め。おそらく、能力順でクラスを決めたのだろう。しかし、問題は支給額が一律なこと。入学のお祝い的な?
〇月×日
ビンゴだ。先輩のポイントを7000ポイントで見せてもらった。AクラスとDクラスで、開きがある。支給額が異なっているのだ。
おそらく、何かしらの結果を残した学生はポイントを得れるのだ。去年、全国大会に行ったDクラスの学生は、高ポイントをもっていた。
〇月×日
入学3日目。これまでの検証と仮説を掻い摘んで、教師とそこに居合わせたAクラスの生徒に話した。
銀髪の可愛い女の子だったから、懇切丁寧に説明してあげた。すると、彼女は薄く笑い俺の説に付け足した。この学校には0ポイントで購入できる商品があり、学校側の救済であること。学生同士の賭けでポイントの移動ができること。ポイントで評価すらも買えるという推測。俺が情報収集のために使ったポイントを聞き、自分は0ポイントで推測を立てたことを強調して、憐れんできた。その後、どや顔で帰っていった彼女はあまりにもムカつく女だった。
あのガキ、わからせてやるぞ。
鬼龍院藍色
学力:100
身体能力:170
知力:189
対人力:80
精神力:50
その他:300
状態:普通
備考:特になし
鬼龍院藍色は、自分の頭上に表示されている数値を見る。そして、斜め前に座る男子生徒の数値を閲覧する。
葛城康平
学力:100
身体能力:100
知力:100
対人力:100
精神力:100
その他:120
状態:普通
備考:優等生っぽいよね
その後、銀髪の少女の数値を見る。
坂柳有栖
学力:200
身体能力:10
知力:やべえ
対人力:すごい
精神力:パンパねー
その他:びっくり、見た目だけ可愛いロリ、中身はクソガキだな
状態:良好
備考:お前じゃ勝てなさそうだからやめとけ
相変わらず、備考欄がおしゃべりだがはっきりしたことがある。自身と坂柳有栖との間には、能力的な距離と心理的な距離がそれなりにあるということだ。昔から、格上かつ心理的な距離がそれなりにあると数値が正しく表示されないのだ。好感度とレベルが足りていないから、見れないというわけだ。
どうやら彼女にとって、鬼龍院藍色という学生は大した存在ではないらしい。腹が立つことこの上ない限りだ。しかし、入学時は全く見えなかったのに対し、学力と身体能力が見えているという観点から職員室で先生に披露した推理で、興味を持ったようだ。
そして、本日この仮説が正しかったかが開示されるようだ。
あれからあっという間に月日が過ぎ、気づけば5月になっていた。
「今日はお前たちに重要な報告がある」
そう切り出して、真嶋先生は黒板にABCDっとアルファベットを書き連ねていき、それぞれの横にそれぞれ970などの数字を記入、最後のDの横には0と書き込まれている。
「これは1ヶ月間、お前たち達一年生の授業態度や成績を各クラス毎に評価し、それをポイント化したものだ」
周りがざわついていくのを聞きながら、再度ポイントを見る。やはり、このクラス分けは能力順だったってわけだ。
「諸君は書いてある通り970。見ればわかるが、各クラスの中で最高の評価だ。これは誇るべき数字だ、この高度育成高等学校の歴史の中で、一年生の最初で減点をこれだけ抑えられるのは稀だ」
先生は、嬉しそうに語る。だが、そもそもこのことに気づけていない生徒がかなり居るようだ。意味が分からないという顔の生徒が何人もいる。分かっているのは、坂柳と藍色の推理を聞いていた生徒もしくは自力で辿り着いた生徒のみだ。
「簡単に言えば、諸君は優秀な生徒でそれが評価されたという話だ。だからこそ、君達には今月、97000ポイントが振り込まれた」
そう、全員今日の朝起きてポイントを確認すれば10万ポイントではなく97000ポイントが振り込まれていた。何かの不具合ではないか、と大半の人間は愚痴っていたが坂柳に近いものと藍色は冷静だった。
焦りを浮かべる生徒が叫ぶ。
「せ、先生!優秀な生徒なのに俺らは10万以上のポイントをもらえないんですか?」
「高校の一生徒に毎月10万。そんな大金を学校が無償で与えているとでも?」
うまい話には何かしらの裏があるものだ。もちろん例外がないとは言えないが。
「君達には入学して、各クラス1000ポイントを与えていた。1ポイントは100プライベートポイントと同じ価値を持つ、だからこそ10万ポイントが与えられていた。それがこの1ヶ月で30ポイント減少しただけだ」
「ポイントは、この1ヶ月間の行事で減点されるが、ポイントが増える行事は無かった。つまり、入学してからの1ヶ月は、如何に減点を抑えられるか、という試験だったということだ」
有栖と藍色は同時に答えに行きつく。
「真嶋先生、では、これからは何らかの試験で増えることもあるのですね?」
「流石だ、坂柳。その通りだ。直近で言えば中間テスト。優秀な君達なら最初の1000ポイントを超えることも容易だろう」
その言葉に皆安堵しほっとする者が多数いるのが見える。
「諸君の頑張りしだいでは、かなりプライベートポイントは増えていくということだ。さて、残りの時間は自由に過ごしてくれ、何をしてもかまわない」
そう言って、先生は教室から出ていく。その瞬間、クラスの静寂は大きく崩れる。クラスの何人かが立ち歩き、葛城と有栖のところに分かれていく。
二分されていく人間を見ながら、藍色は数値を睨む。葛城は飛躍的な成長を遂げる必要がある。そうでなければ、坂柳には勝てないだろうと藍色は確信している。やはり、彼は数値で人を判断する悪癖を抱えたままだった。