狂愛の成層圏 作:◆nfBCCxnKFit4
「ごめん、近くに来ないでよ。一緒に居ると気持ち悪いんだ」
──え……でも、昨日までは……
「悪いけど、本当に無理。一緒に居ると吐き気する」
──え!? ちょっと! どうして!? 待ってよ!
「本当にごめんね? でも、一緒には居たくないかな。じゃあね」
──そんな、そんなぁ!? 待って? 待ってぇ!?
ある日、いつも一緒に遊んでた友達に急に仲間外れにされた。近くに来ないで、だって。昨日までは一緒に楽しく遊んでくれたのに……。だけど、こんなのは今日だけで、明日からは普通に遊んでくれるよねってその時は思ったんだ。でも次の日も、その次の日も、俺はみんなに避けられる。俺が何をしたっていうんだよ……。
「……すまん、もう来ないでくれ。君から禍々しいものを感じるんだ。頑張ったけど……もう無理」
──え……禍々しいものって、何?
「私達が知ったことじゃないわよ。とにかく、今まで何とか耐えてきたけど、もう限界なの。どこか行ってくれない?」
──え、何で、どうして……?
「ご、ごめんね? でももういっぱいいっぱいなんだ。……さよなら」
──え、行かないでよ。どうして? 俺が何かした? ねえ、ねえってば!
あまりにもみんなに避けられるから、お父さんお母さんに頼んで違う地域に引っ越した。特別お金がある家って訳じゃないし、ダメだろうなあと思いつつ頼んだのに、意外にも頼みを聞いてくれたんだ。お父さんは「ボーナスでたんまりお金が入ってなぁ!」って言ってた。
……だけど、いざ引っ越してみても避けられるのは変わらなくて。頑張ってようやく友達ができたかと思えば、すぐにやっぱ無理って離れていく。場所が変わっただけで、結局は何も変わらなかった。
だから、お父さんお母さんに言ったら、じゃあまた引っ越そうって。お金は? って聞いたらお父さんが「大丈夫、いい仕事に就けたんだ」って言うんだ。俺は怪しさを感じたけど、でも疑ってても仕方ないし、深くは聞かずに今度は母国コスタリカを離れてチリに引っ越した。
──…………ただいま
「……え、こんなに沢山……いつもいつも、本当にいいんですか?」
「うん! なんたってあの子の為だからね! いっぱい使ってあげてよ!」
「は、はいぃ……ありがとうございます……!!」
チリでもみんなから避けられて。じゃあ今度はとイギリスに引っ越して、けどまたみんなから避けられて。悲しくなりながら家に帰ってみると、お父さんが誰かと喋っていた。見れば、俺と同じ背丈くらいの小さな女の子。黄色っぽい髪をツインテールにしていて、
「あ、ソリダスくん! おかえり!」
…………眩しい笑顔で、母国コスタリカでずっと慣れ親しんできた名前を呼ばれた。
「おい! 消え失せろって言ってるよな!?」
そして今度は、セルビアに飛んで。
──……でも、でも……昨日今日でこれだなんて……
「うるっせぇ!! お前が居るとゲボ出るんだよ!」
「吐き気すっからどっか行きやがれ!」
酷い言葉をこれでもかと投げ掛けられ。
──……グスッグス……酷い、みんなひどいよ……
「あーもう! 早く失せろ!」
ボカッ!
めがさめたら びょういんのベッドで ねていました。
つよくなぐられて いしきをうしなったみたいです。
おいしゃさんは のうみその だいぶぶんが きのうしていないのは じきになおるけど、 のうみその かいばってばしょにキズができていて、 それがもとどおりになおるのは ぜつぼうてきだっていわれました。
おとうさんも おかあさんも すごくないていました。
どうしておれが こうなったのかは おもいだせないけど、 でもおもいっきり なぐられたことだけは はっきりおぼえていて。
それでなにもできなかった よわいじぶんがイヤになって、 あたまのリハビリとどうじに ちからをつける どりょくをしました。
「……47、48、49、50!」
──……ふぅ、きゅうけいっと……まだまだ、全然かな……
「いや、全然凄いよ? 私は20回もできないんだから」
数か月後には、リハビリしたかいがあって頭もあるていど使えるようになったよ。海馬のキズは治らなくて、いつまでたっても物覚えが悪いままだけど……だから最近は、メモを取るようにしてるんだ。
トレーニングも、かんごふさんに手伝ってもらいつつだけどやっています。まだまだダメダメだけど、でもがんばれば強くなれるって信じて、毎日続けてるよ。
リハビリはこれでおわりで、病院を退院するけど、トレーニングはこれからもやっていくつもり。
──ただいまー…………あれ? お父さん? お母さん? ……あ、そっか……そう、だったよ……
だけど、お父さんとお母さんは俺のおみまいに来る時に、じこにまきこまれたみたいで。
──……うぅ……グスッ……ひっくっ……
……物覚えが悪い俺は、毎回忘れていて……それを知るたびに悲しくて泣いてしまう。
「……ソリダス、くん……」
──……なん、ですか…………
気が付けば、あの時の女の子がそばにいて。
「……ごめんね。束さん……ソリダスくんの両親、守れなかった」
よく分からないけど、あやまられた。
うさぎさんは、一人の少年に恋をした。