狂愛の成層圏   作:◆nfBCCxnKFit4

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Episode 1: 少年は、日本へ越して何を得るか
Part 1: 少年は、平穏求め日本に飛ぶ。


──え、日本に……ですか? 

 

「うん! 日本はいいところだよ~?」

 

 

 母国、コスタリカを離れて早5年。今までチリ、イギリス、セルビア、サウジアラビアと転々としてきて、今はオーストラリア。 そろそろ次に行く国を決めなきゃって思っていた所で、親の代わりとしてよく面倒を見てくれる束さんに相談している所。

 

 

──えっと、その……お気持ちは嬉しいですが……千冬さんは大丈夫なんですか? 

 

 

 束さんは一緒に暮らそうって言ってるけど、その時に必ず千冬さんストップが入るのがいつもの定番。だけど、今日はその千冬さんが珍しく一緒に居なかった。

 

「大丈夫大丈夫! 束さんが何とか説得したから!」

 

──そ、そうなんですか? 

 

 

 どうやらどうしても一緒に住みたい束さんが説得したみたい。それくらい俺と一緒に住みたいんだ。止める必要が無いから、今日は千冬さんは来ていないのかな? 

 

 

「だからね、一緒に暮らそうよ! ね!?」

 

──そ、そこまで言うなら……いいですよ

 

やたっ!! いつ行く? 今? 今? 今!?

 

──さ、流石に早すぎますってば。ある程度引っ越し準備は済ませてますけど、それでもまだありますから早くても明日ですね。束さん手伝ってくださいよ? 

 

「もっちろん! 手伝うよ!」

 

 

 そうしてその日は束さんと一緒に荷造りしたり、各役所に書類を提出するなどして残りの引っ越し準備を済ませて、次の日は束さんのにんじんロケットで日本に飛び立った。

 

 

「てことで日本にとうちゃーく! ぱちぱちぱちー」

 

 

 そしてすぐに日本に到着。束さんのロケットは優秀だから、飛行機だと8時間から10時間くらい掛かるところを、なんと30分で着けちゃう。だけど……

 

 

──た、束さん……気持ち悪いです……うっぷ

 

「え!? ソリダスくん!? 乗り物酔いしちゃう人だったの!?」

 

 

 ……乗り物酔いが酷い俺からすれば、30分に短縮された移動時間は拷問でしかなくて。

 

 

──は、はい……すっごく弱いです。あ、駄目ですもう我慢できません

 

「待って!? 耐えて!! 吐かないでギャー!?

 

 

 つまり、何が言いたいのかというと…………束さんを、汚しました。

 

 

「シクシクシク……束さん、もうお嫁に行けないよぅ……」

 

──ごめんなさい束さん。でも、こればっかりはどうしようもありませんから……

 

 

 汚されちゃった束さんは、シクシクと泣き出して……

 

 

「うぅ……この汚されちゃった束さん、誰か貰ってくれないかなぁ……チラッチラッ」

 

──束さん、ウソ泣きはやめてください

 

 

 ……いる振りをして、いつも通り俺に結婚を吹っ掛けてくる。本当に油断も隙もない。確かに束さんの姿はタイプだし、束さんの事が好きだよ。でも好きは好きでもそういう好き(愛してるって意味)じゃないんだ。

 

 

「ぶぅー……、そこは責任取って貰ってあげますって言うべきところだよぉ?」

 

──『束と結婚したら絶対に禄な事がない』って千冬さんが言ってましたから

 

「えー? きっと脳みその怪我のせいで、変な風に覚えたんだよー」

 

──メモも取ってますよ? ほら、ここです

 

「……くそぅ、ソリダスくんってば頭はバカなのに、こういう事は抜かりないなぁ……」

 

 

 まあ、そんなやり取りをしながら、束さんのラボに着いた。……え、ラボ? 

 

 

──えーっと……何でラボなんですか……? 

 

「言ってなかったかな? 束さん、ISを作った人なんだよ?」

 

──…………え゛っ? 

 

 

 拝啓、天国にいるお父さんとお母さん。束さんは時代を作った凄い人でした。敬具。

 

「今日、束さんがソリダスくんをここに連れてきたのは、大事なお願いがあってね」

 

──お、お願い……ですか? 

 

 

 束さんが改まって僕にお願いするなんて、本当に珍しい。いつもは無理やり押し切ろうとして千冬さんストップが炸裂するのに。

 

「うん、お願い。えっとね? その〜……」

 

 

束さんと結婚して、男性操縦者になってよ!

 

 

──えっ、けけっ、結婚? 

 

 

 本当に、束さんは油断も隙もないよ。まさか今度はド直球で来るなんて。何気に真っ直ぐな告白は初めてかもしれない。

 

 

「うん、結婚。まあ、ソリダスくんまだ14歳だからまだ結婚は出来ないけどね」

 

──え、えっと結婚ってのも衝撃的ですけど、男性操縦者って……男にはISは動かせないんじゃ

 

「普通はね。だけど、束さんがソリダスくんでもISを動かせるようにしたんだ! ほら、ソリダスくんの為のISだって作ってあるんだよ? クーちゃん」

「はい、束様。……ソリダス様、こちらになります」

 

 

 そう言われて奥からどっかで見覚えのある銀髪の女の子が出てきて、ロボットみたいな……ISを持ってきた。

 

 

「じゃーん! これがソリダスくん専用機『束さんとソリダスくんの子』だよ!」

 

 

 ネーミングッ!! ネーミングが酷いってレベルじゃないッ!! 何で!? 何でそんな名前になったの!?!? 

 

 

「た、束様……流石にネーミングが酷過ぎますってば。ソリダス様もドン引きしておられますよ?」

「むむむ……完璧な名前のハズなのにぃ……どうして2人共分かってくれないのかなぁ?」

 

 

 これを完璧と言い張るなんて……束さんのネーミングセンスを疑った瞬間だった。

 

 

「まあまあ、細かいことは置いといて〜」

「束様、全然細かくありません」

「い、いやそんなこと言われても……とっ、とにかく! ソリダスくん、これに触れてよ!」

 

──え? あ、はい。……これに、触れるんですね? 

 

 

 束さんに言われるがままに、ISに触れる。すると耳鳴りのような音がしたと思えば、色々な情報がドバッと入って来て、頭が割れるんじゃないかってくらい痛くなる。

 

 

──あ、がっ……!? ……あ、あれ? 

 

 

 だけどその痛みはほんの一瞬で、気が付けば俺は目の前にあったはずのISを身に付けていた。

 

 

「うんうんっ! ちゃんと乗れたね! それじゃあ早速、初期設定(フィッティング)最適化(パーソナライズ)を始めようか!」

 

 

 そう言って束さんはパソコンを繋げてキーボードをズダダダッと打ち込む。まるでゲームセンターで格闘ゲームやってる人みたいだった。……いや、文字打ちガトリングがボタン必死に連打してるように見えたってだけで、スティックとか無いけどさ。

 

 

「……はい、完了ー!」

 

──え、あ、え? も、もう終わりですか? 

 

 

束さんのキーボードガトリングを眺めていたと思えば、『ぱーそならいず』も『ふぃってぃんぐ』も終わっていて。本当に束さんはやることなすこと全部が早いよ。

 

 

「うん、もう終わりー。ささ、取り敢えず飛んでみてよ!」

 

──は、はい。…………

 

「…………」

 

──……………………

ピョーン

 

 

 飛んでみてって言われたけど、どうやったら飛べるか分からないからその場で大きく飛んで(ジャンプして)みた。

 

 

「…………あの、束様……」

「……ソリダスくん、飛ぶってそういう意味じゃないよ」

 

──分かってます、飛び方が分からないんです…………

 

「そういえば、飛び方教えてないね。こう、クイッて感じで、フワッてなって、そのままヒュイーンだよ」

 

──…………???? 

プシュー

 

 

俺が束さんから貰ったISを使いこなせるのは、まだまだ先かもしれない。




うさぎさんは、少年求め日本に呼ぶ。
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