狂愛の成層圏 作:◆nfBCCxnKFit4
「初めまして、虹紫 無量大数くん?」
──…………は、初め……まして…………
「……いや、
──…………!?
そこは、本当に殺風景な部屋で、水色という中々見ない髪色の俺と同年代くらいの子が、どういう訳か俺のコスタリカでの……最初の名前で呼ばれて。
「まだまだあるわね、デイビッド・シアーズ、イーライ・オセロット、ハンス・ストーン、スネーク・ジャクソン、ジョン・ディヴィス……どう呼ばれるのがいいかしら?」
──……何で、知って……
「調べ上げたからに決まってるでしょう? それはもう徹底的にね」
それどころか、俺の今までの名前を全て言われる始末。この人、怖い。
「観光地のど真ん中で、白昼堂々ビルを爆破するなんて中々大胆なことをするわねぇ?」
──…………知りま……せん…………
どうして、こうなっちゃったんだろう?
──それでは、行ってきますね
中学3年生で5月にある行事といえばもちろん修学旅行。束さんに教えてもらった。行き先は広島。『げんばくどーむ』? とか『やまとみゅーじあむ』? を見に行くんだって。
「ソリダス様、行ってらっしゃいませ」
──あれ、束さんは?
「束様なら今朝、愚痴をこぼしながら出掛けていきました」
──……そっか、今日は忙しいんだ。
束さんはたまに忙しくしてる時があるんだ。何をしてるのかは、俺には難しすぎてよく分からない。束さんに見送ってもらえないのはさみしいけど、忙しいなら仕方ないよね……。
「お腹が空いたからって知らない人について行かないようにね、だそうです」
──だ、大丈夫ですってば。今度は一人じゃありませんから……
「そうでしょうか? 束様がある程度対処なされたとはいえ、私は心配です」
あれから、束さんが本当に色々してくれたから、いじめは大体無くなった。前みたいに席を取られることも無くなったし、給食を用意してくれないなんてことも無くなった。……だけど、クロエさんが心配するように、それでもまだちょっとみんなが冷たい。
まあでも、流石に修学旅行の間は大丈夫じゃないかな?
……この時は、何もおかしくなかったはず。強いて言うなら、朝に束さんが居なかったくらい。でも、それだけ。
「ふーん? あくまで、しらばっくれるつもりなのね?」
──……本当に、知りませんってば……
「そんな言い訳、通用すると思うかしら?」
──…………
他に、何か変な事はなかっただろうか?
──おぉ~、焼き牡蠣だ! ちょっと買ってもいいかな!?
「い、いいけど……」
広島で集団で色々回ったあと、班で自由行動ってなって広島を回るってなった時に、その道中で焼き牡蠣を見つけた。広島の食べ物といえば、やっぱりこれともみじ饅頭だよね。お好み焼き? そんなの、どこにでもあるよね?
──ありがとう! すみませ〜ん、焼き牡蠣を5人分くださーい!
「「「「!?」」」」
「5つですね。2,500円となります」
──クレジットで!
「「「「!?!?」」」」
見つけた焼き牡蠣を衝動買い。それも班みんなの分。みんなで食べたほうが美味しいって束さんも言ってたからね。
──みんなの分も、買ってきちゃった!
「い、いや良かったのに……」
「流石に悪いってば……」
──俺がいいって言うんだから良いんだよ! ほら!
「…………分かった、そこまで言うなら……」
「も、貰っておくよ……」
──いただきまーす! あむっ…………うん、美味すぎるっ!
「……確かに、美味しいけど……」
「うん、黒いクレカは流石に衝撃だった……」
「虹紫くんって、たまに凄いズレてるところあるよね……」
? 束さんから預かったお小遣いだってのに、何でそれくらいで騒いでるんだろう?
この時も、何か変な事はなかったはず。カードは束さんからお小遣い代わりに預かったものだし、焼き牡蠣は美味しかった。……お腹が空いてくるね。
「目撃証言だって、沢山あるのよ? 嘘が通じると思わないことね」
──…………
「だんまり、かしら。認めるって事でいいのね?」
──いいえ……認めません…………
「強情ねぇ……潔く罪を認めた方が、刑が軽くなるわよ?」
──結構です。……俺は、やってませんから……
「…………嘘をついてるようには、見えないわね」
こうなったのには、絶対に何かあるはずなんだけど……でも、思い出せない。
「本気でやってないって言ってるんだろうけど、残念ながら証拠写真があるのよ」
そう言って、1枚の写真を見せられる。こ、これって…………!
──…………置いて行かれちゃった
思いっきり楽しみながら広島を巡ってたんだけど、ふとトイレに行きたくなって、帰ってきたら班のみんなに置いてけぼりにされてしまった。
どうしよう、みんなどこに行ったのか分からないよ。先に集合場所に行っておこうかな? ……地図持ってないから集合場所がどこか分からない。
「あ、もしかして修学旅行で来られましたか?」
──はい、そうですけど……?
ちょうど一人になった所を狙うかのように、カメラとかマイクとか持った人たちが俺に話し掛けてきた。テレビの人……かな? ちょっと何か、
「私達ウソテレビの『いきなりクイズ』という番組のものなんですけど……」
──き、聞いたことないです…………
ウソテレビ? いきなりクイズ? ……初めて聞いたよ。BS放送とかかな? そう思ってると、回答ボタンにしてはやたら小さいスイッチを渡される。
「そうですか、それでは問題です!」
──うわぁ本当にいきなりだ!?
「ここ、広島といえば原爆ドームですが、広島といえば何でしょうか?」
…………うん?
「ここ、広島といえば原爆ドームですが、広島といえば何でしょうか?」
ピンポーン
──…………原爆ドーム?
ピンポンピンポンピンポーン
「正解です! おめでとうございます!」
なんだろう、この頭が痛くなる問題。どっかの政治家が似た言い回ししてるのを、何かのテレビで見たことある気がする。
ドカーン
──うん!? え、何今の音!?
「演出ですよ?」
演出で花火? を上げるなんてやたら豪華だね。これ、そこらへんの人を捕まえてクイズ出すだけだよね? それなのにすごいお金掛けてるんだね。
──…………これ、ウソテレビのいきなりクイズって番組の撮影を受けた時の……
「ウソテレビ? いきなりクイズ? そんな番組、存在しないわよ?」
…………絶対あの時のだ。あれ、花火演出なんかじゃなくて、ビルの爆破音だったんだ。そりゃ真っ昼間なのに花火ってどう考えてもおかしいけどさ……。
しかもあれ、1回だけじゃなくて3回くらい爆破音起きてたよね? さらに、問題が全部頭が痛くなりそうな感じだった。だからこそ答えられたってのもあるけど……。
それにこの写真、明らかに場所が違うし、爆発の大きさも全然違う。顔もなんだか悪い表情にされてないかな? 俺こんな顔した覚えないよ??
「証拠写真もこうやってある訳だけど……これでも認めない気かしら?」
──……はい、認めません
「……そう、残念だわ」
だって、本当に知らないんだもの。そう言うと、目の前の人は部屋を出て行って、俺は牢屋に入れられた。
「ソリダスくん! 助けに来たよ!」
数十分後に束さんが助けに来て、俺は牢屋から抜け出したんだけど。
「……ソリダスくん。明日から、学校行かないでおこうね」
──……は、はい…………
テロリストとして指名手配されたこともあって、次の日から俺は学校に行かなくなった。
暗部の長は、尋問に少年を掛ける。