最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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スランプ状態の対処法

 それはある日の放課後の出来事。イタリアにダイナマイトを仕入れに行くからと離れた隼人に、タバコを使わないダイナマイトを研究してくれそうなヤツを当たってくると言って、これまたイタリアに行ってしまったリボーンにより、かつての二人にまだ会ってなかった時の自分状態になってしまっていた時のこと。

 つい、久々に一人だしと、図書室にある本……特に、ファンタジー小説を読み耽ってしまい、完全下校時間ギリギリになってしまい、参ったなと考えながら帰路につこうと校舎から出た矢先に、その姿を見てしまった。

 

「……あれは…………。」

 

 視線の先にいたのは、山本 武。私と同じクラスに通っている野球少年で、男女問わず人気者な男の子。

 今日も体育の時に男子メンバーで野球をしていて、かなりの実力を見せていた上、女子からも黄色い声援を向けられていた彼だが、何やら焦っている様子がある。

 

「(なんか危なっかしいな。ちょっと声をかけてみようか。)」

 

 なんとなく感じた感想のまま、私はグラウンドの中を真っ直ぐと走り抜ける。

 向かう先はもちろん、焦り気味の困ったさんがいる場所である。

 

「山本君。」

 

「!って沢田!?なんでここに!?」

 

「図書室で読書に耽ってたら時間が過ぎまくって、沢田さん!完全下校時間です!って追い出された。」

 

「え!?もうそんな時間だったのか!?」

 

「いや、気づいてなかったんかい。」

 

「あはは……ちと集中し過ぎてな。」

 

「集中のし過ぎよくない。まぁ、私も言えないんだけどさ。」

 

「だな。あ、ちょっと待っててくれ。流石に明るくても女子一人でこの時間帯を歩かせるのはよくないしな。」

 

「え、ちょ、ま……行っちゃったよ……。」

 

 こっちの制止など無視して走り去ってしまった山本君を見送り、一人グラウンドに残される。

 これ、このまま帰っちゃダメかな……と一瞬考えてしまったけど、もしかしたら焦りの原因がわかるかもしれないし、ひとまず彼を待つとしよう。

 

「よ!お待たせ。」

 

「ん?ああ。じゃあ、帰ろうか。」

 

「おう!」

 

 待つ間暇だしと、校門に背中を預けて小説を読んでいると、制服に着替えた山本が、私の元へと走り寄ってきた。

 それを確認した私は、普段から持ち歩いている栞を小説に挟んだのち、スクール鞄へと納める。

 そして、校門から外へと足を踏み出せば、山本も同じ方角へと歩き始めた。

 

「完全下校時間っていうと、確か6時半だったか?」

 

「そうだね。夏だから、そこまで暗くなってないし、制服のまま街を歩き回ってる生徒は結構いそうだけど。」

 

「はは!確かにな!沢田は放課後に遊んだりすることあるのか?」

 

「あるよ。部活には入ってないから、友達と一緒に街でお茶したり、ウィンドショッピングしたりって感じに。」

 

「沢田の友達っつーと、笹川や黒川だよな。最近だと獄寺もか。」

 

「まぁね。大半は京ちゃんと花の二人。隼人とはまだ遊びに行ったことはないかな。」

 

 帰路に歩みを進めた瞬間、話しかけてきた山本君。彼の質問に答えながら、ゆっくりと歩みを進める。

 話しかけてくる山本君は、楽しそうに笑っている。でも、どことなくぎこちなさも感じてしまい、ちょっとだけ気まずい。

 

「……ねぇ、山本君。ちょっと変なこと聞いても良い?」

 

「ん?何だ?」

 

「……なんか、ちょっとだけ焦ってない?何かあった?」

 

「!」

 

 その気まずさを払拭するため、ある程度話して、互いにガードが緩くなっている今をタイミングに話を切り出す。

 何というか、今のこの子は放っといたら危ないとおばさん(精神年齢)の勘が騒いでいる。

 まぁ、話してくれない可能性もなきにしもあらずだけど、試すだけ試してみよう。

 

「あ〜……わかっちまったか……?」

 

「うん。普段の君と違って、今の君はなんかぎこちないよ。周りは気づいてないみたいだったけど、私の目は誤魔化せない。」

 

「………そっか。そんな風に見えたのか。」

 

「うん。まぁ、話したくないなら話さなくても良いけどさ、試しに誰かに相談してみ。知ってる?相談ってのは、ある種の気持ちの整理、心の整理の一つだ。

 解決してもらえるって期待は程々にして、ちょっとした気持ちの整理として試してみない?一人だけじゃわからないこともあるだろうしね。」

 

 今の山本君が、私の目にどう映っているのか教えれば、彼は少しだけ無言になったあと、静かに口を開いた。

 

「なぁ、ちょっとだけ、話を聞いてもらえるか?」

 

「ん、いいよ。じゃあ、その前にちょっとコンビニ寄ろうか。」

 

「コンビニ?」

 

「そ。せっかくだから、なんか軽食になりそうなものや飲み物を買って、それを口にしながらだべろうじゃないの。あ、夕飯が入らなくなったらヤバいから、程々にはしないとだけどね。

 優等生も、人気者も、今だけは買い食いしちゃう悪い子になっちゃおうじゃん。息抜きだよ息抜き。」

 

「……ぷ……あはは!!なんだそれ!!」

 

「たまには許されるって!ほら、コンビニ行くよー。」

 

「ちょ、ま、押すなって沢田!」

 

 声を出して笑いながら、目の前にいる野球少年の背中を押してコンビニへと向かう道のりを歩く。

 さてさて、この子はいったい何を抱えているのかね。

 

 

 *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀

 

 

 コンビニでそれぞれお菓子や菓子パン、飲み物を買い終えたのち、このコンビニから近い位置にある河原へと山本君を連れて行く。

 川が見える高い位置。斜面となっている草原の上。そこに一旦腰をかけて、その場で飲み物を少し口にした私は、菓子パンを頬張り始める山本君と向き直り、本題を切り出す。

 

「さて、それじゃあ、話を聞こうかな。どうして焦ってんの?」

 

「ん……実はな……ここんとこ、いくら練習しても打率は落ちるばかりだし、守備も乱れるばかりでさ……このままじゃ、野球を始めて以来、初めてスタメン落ちしそうでよ。

 オレって、沢田みたいに頭が良いわけじゃないから、野球が唯一の取り柄みたいなもんなんだ。

 だから、その野球でもダメになっちまったら、どうすりゃいいんだってなってんだよな。」

 

 どうやら、山本君は現在、スランプに陥っている状態だったらしい。なるほど。何かを頑張る人間がたまに陥る現象だ。

 私も、前世で陥ったことがある。確か、あれは剣道をやっていた時。地域大会でベスト8にすらなることができず、初戦敗退が重なっていたっけ。

 あの時は本当に苦しかった。まるで、心と体が別物になったかのような状態で、どうして?と疑問に頭をぐるぐるさせながら、がむしゃらに剣道の練習をしまくって……顧問にストップをかけられたっけ。

 

「なるほど。いわゆるスランプに陥ってるってやつね。」

 

「スランプ……」

 

「そ。心身共にお疲れ気味って奴だよ。最後にまともに休んだのいつ?」

 

「……そういやぁ……調子が悪くなってからは、あまり休んでなかったような気がするな。」

 

「はい、アウト。何やってんのさ。そんなんじゃ、体に疲労がひたすら蓄積されるばかりで、気持ちに体が追いつかなくなるよ。そんで、追いついてきてくれない体に、今度は精神が摩耗する心労累積状態に陥っていく。

 まさに、今の君のような状態だね。心と体の両方が悲鳴を上げている。」

 

「……!」

 

 私の言葉に、山本君がハッとしたような表情を見せる。こちらが言葉にしたことにより、ようやく自覚をした感じかな。

 真面目すぎるのかね、この子。たまには真面目ちゃんなんてやめて、だらっと息抜きなりすれば良いのに。

 

「こういう時は、息抜きでもして一回心身ともに休ませた方がいいよ。スタメン落ちが怖いと思ってるんだろうけど、気を張りまくって頑張りまくるってのが、スタメン落ちをしてしまう可能性の道に君を引き摺り込む原因になっている。

 頑張るなとは言わないけどね。たまには休んでリラックスすることも必要なことだよ。

 もちろん、頑張るのも努力するのも悪いことじゃない。だけど、ハードルを高く設定し過ぎて、体を壊したら元も子もない。

 というわけで、しばらくは部活終わりの居残りは無しにして、一旦休憩してみようか。体力が有り余ってるってなら、気晴らしに一緒に街に行ってみる?」

 

「え……」

 

「スランプってのは、心と体のSOSの一つであり、ゆっくりしようよっていうお誘いだってこと。

 頑張り過ぎる君への警告であり、ご褒美タイムだよ。だから、ちょっとだけ多めに休憩して、肩と気持ちの力を抜こうじゃない。

 悪くないと思うよ?時折ゆっくりできる一日を作ってみるのもさ。」

 

「沢田……」

 

 かつて、剣道の顧問から言われた言葉の一部を変更しながら、山本君に伝えれば、彼は虚をつかれたような表情を見せる。

 こんなこと言われるとは思わなかったようだ。まぁ、普段はプレッシャーがかかりそうなことしか言われてないだろうし、休めって言ってくるようなやつはいないよね。

 

「……なんかそう言われてちょっとスッキリしたわ。そっか。たまには休んでみても良いんだな。考えたこともなかったや。」

 

「まぁ、大体はそうだと思うよ。でもね、疲労を引きずったまま行動するってのも、取り返しのつかない出来事への一歩になるんだよ。

 怠惰怠慢ばかりの生活も良くないけど、たまにダラッとする程度なら、適度な息抜きと休憩になるから心身共にリラックスできて、余裕を持った生活を送れると思うから、試してみてよ。休んだ分の練習とか、付き合ってあげるからさ。」

 

「ああ。サンキュな!」

 

 にぱっと明るい笑顔を見せた山本君に、小さく笑みを返した私は、手にしていたお菓子をさっさと食べ切る。

 そして、座っていた地面から立ち上がり、スカートについた土をパタパタと払ったのち、彼の方へと目を向けた。

 

「んじゃま、帰りますかね。だべってる間にどっちも食べ物食べきっちゃったし。」

 

「だな。あ、送ってくぜ。」

 

「んえ?別に良いんだけど……まぁ、いいか。じゃあ、お言葉に甘えますかね。」

 

「おう!」

 

 私のことを送ると言う発言に、一瞬断りを入れようとしたけど、なんか食い下がりそうだったから、素直に甘える。

 山本君はそれで満足したのか、笑顔を見せて立ち上がり、制服のズボンについた土をパタパタと叩き落とす。

 

「沢田の家ってどっちだ?」

 

「こっち。ああ、あと、こんだけ一緒に話したり、お菓子食べたりしたんだから、もう沢田なんて他人行儀の呼び方しなくても良いよ。」

 

「そうか?じゃあ、ナツって呼んで良いか?よく、みんなからそう呼ばれてるだろ?」

 

「ん、まぁ、そこら辺は好きに呼んでくれて構わないよ。」

 

「じゃあ、ナツで!ナツも、オレのことは下の名前で呼んで良いからな!」

 

「なら、今日から武って呼ばせてもらうよ。」

 

「ああ。じゃあ、帰ろうぜ、ナツ。」

 

「ん。じゃあ、送ってもらうよ、武。」

 

 互いに互いの名前を呼び合い、顔を見合わせて笑い合う。

 今まで苗字呼びだったのに、名前呼びに切り替えたから、少しだけくすぐったかったんだけど、武も同じだったみたいだ。

 でも、すぐに頭を切り替えては、帰路を辿る間に、互いに話題を見繕っては、それについて話し合うのだった。

 

 ……あ、せっかく仲良くなったわけだし、武の勉強とか見てあげるのもありかな?

 確か、補習とかに捕まると、部活ができなくなる時あったしね。

 

 

 




 沢田 奈月
 完全下校時間になるまで図書室に入り浸っていた結果、居残りまでして練習をしている山本と遭遇した転生者な10代目。
 なんだか危なかっしいと感じた結果、ストップをかけるために話しかけた。(おかげで山本の骨折回避に繋がったことには気づいていない)
 話を聞いたら、スランプに陥ってることを聞かされたので、自身の経験談からやった対処法を彼に教えた。

 山本 武
 スランプに陥っていることに気付かぬまま、焦りのままに練習を重ねていた野球少年。
 奈月の指摘により、ようやく自身の心体共に疲労していることに気づき、一旦心と体を休ませることを決意する。
 奈月から勉強見てあげようか?と提案された時は、食い気味にお願いした。

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