最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
あれから数日間、私は恭弥さんの様子を見るために、同時にどれくらい仕事がたまっているのかを報告するために、並盛中央病院に通っている。
今日も放課後、草壁さんから言われたたまった仕事量を知らせるために恭弥さんがいる病室へと足を運ぶわけだが、今回は少しだけ仕事を持ってきていたり。
どうやら、院長から少しだけなら書類仕事をする許可が降りたらしく、これを機に提出日が近い書類を少しだけ終わらせたいとのことだ。
もちろん、無理をするわけにはいかないため、様子を見てストップをかけることができる私が彼の側に控えることになるけどね。
なんでも、私は唯一、恭弥さんに意見を言っても咬み殺されない人間なんだとか。
いったいいつの間にそんな大層な状態になったのやら。でも、これでようやく私が、たまに風紀委員会のメンバーや、並盛中学校の生徒に拝まれることがある理由を理解した。
……理解したくなかった気もするけどね。
「こんにちは。」
「こんにちは、沢田さん。ヒバリ君のお見舞いですね。」
「ええ。」
「かしこまりました。彼はいつもの部屋でお待ちですよ。」
すっかり顔馴染みとなってしまった看護師さんに挨拶をしながらも、私は恭弥さんが療養中の病室へと向かう道のりを歩く。
その際、看護師さん達から、「ヒバリ君の彼女さんがまたお見舞いにきてるわ」なんてほっこりしたような様子を見せている気がしたけど、ツッコむの疲れたから無視をした。
「恭弥さん。沢田です。一部、提出日が近い書類を見つけたので持ってきましたよ。」
「そう。ご苦労様。入っていいよ。」
「失礼します。」
すでに慣れた入室する際の挨拶を口にして、恭弥さんが療養している病室の中へと足を運ぶ。
……が、入った瞬間、なぜか彼のベッドのすぐ側で、数人程モブ顔の人が倒れていたため、思わず無言になる。
「奈月?どうしたの?」
「……何があったんです?それ。」
不思議そうな表情で動きを止めた私を見つめてくる恭弥さんに、私は視界に入り込んだ数人のモブっぽい人を指差しながら問いかける。
すると、恭弥さんは私が指差した方向へと目を向けては、「ああ…」と小さく声を漏らした。
「だいぶ体調も良くなってね。退屈凌ぎにちょっとしたゲームをしてたんだけど、みんな弱くて。」
「なるほど。ちなみに、ゲームの内容は?」
「相部屋になった人は、僕が寝ている間に物音を立てたらいけない。少しでも物音を立てたら咬み殺す。簡単なルールだろう?」
「……それ、多分ですけど私にしかクリアできないゲームじゃないですか?自惚でなければですけど。」
「それはそう。他の奴らだとどうも敏感になってしまってね。」
「ただの無理ゲー……どんだけ退屈してるんですか。」
「仕方ないでしょ?まだ若干喉の異物感があるんだから。鼻の調子も、まだ少し悪いし、院長ももう少し病院でゆっくりするように言われたんだよ。」
「恭弥さんは、風邪を引いたら割と長引くタイプなんですね。これに懲りたら、せめて秋の下旬から冬明けまで、屋上での昼寝はやめてくださいよ、全く。」
「……君に従うのは癪だけど、ここまで退屈になるとは思わなかったし室内で過ごすことにするよ。
その代わり、奈月は必ず応接室にきて。君がいるなら屋内で大人しくしてあげる。」
「いや、引き換えに私の自由がなくなるんかい……。まぁ、それで恭弥さんが風邪をこじらせなくなるなら、大人しく従いますけど。」
恭弥さんの言動に呆れながらも、私は学校から持ってきた書類を彼に手渡し、草壁さんから預けられた恭弥さんの印鑑とペンも渡す。
「草壁さんから受け取ってきました。」
「ありがとう。作業する準備、手伝って。」
「わかりました。」
テキパキと指示を出す恭弥さんに従いながら、彼が少しずつ本調子を取り戻していることがわかり、安堵する。
これなら、もうすぐで彼も学校に復帰することができそうだ。
「何か飲み物を買ってきましょうか?」
「……じゃあ、買ってきて。いつも通り冷たい緑茶でいいから。」
「はい。」
恭弥さんから手渡された緑茶分のお金を片手に、私は購買の方へと向かうため、恭弥さんの病室から外に出る。
「おや、沢田さんではありませんか。」
「こんにちは、院長先生。」
すると、そこで院長先生と出会した。院長先生の背後には、1人ほど人がいる。
よく見るとその人達は、最初に恭弥さんのお見舞いにきた日に通り過ぎた病室にいた、パシリがどうこう言ってたメンバーの1人のようだ。
「あれ?どうしたんですか、その人。」
「実は、新しく彼がいた部屋にきた患者から、松葉杖を使えば動けるだろうと言われ、療養のために入院したのにこき使われたと言う苦情をもらってね……。」
「ああ……なるほど。現在、恭弥さんはお仕事中ですが、少しの息抜きをするのもたまには必要でしょうかし、ちょっとした相手をしてもらってください。あ、先住の方の回収もお願いしますね。」
「わかりました。では失礼しますね。」
「はい。そうそう、移動することになったあなたに言っておきますが、恭弥さんはかなり神経質なので、言動や態度には気をつけてくださいね。」
「は?」
「それでは、私は恭弥さんのお茶を買ってきますのでこれで。武運を祈ってますよ。」
「ちょ!?意味わからねーんだけど!?」
ギャーギャー言ってる移動患者さんのことは無視して、さっさと購買の方へと向かう。
療養のためにきてる患者をパシるなんて言語道断。いっぺん痛い目にあってこい。
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「恭弥さん、戻りましたよ。」
「お帰り。こっちにきて。」
しばらくして病室に戻った私は、恭弥さんに声をかける。私の声に気づいた恭弥さんは、すぐに側にくるように声をかけてきた。
それに従うように部屋に入れば、先程連れてこられていた人が床で伸びていた。
やっぱりダメだったかー……と言う気持ちと、ざまぁみろの気持ち、その両方を抱きながら恭弥さんに近寄り、緑茶のペットボトルを手渡す。
「お仕事はどんな感じですか?」
「普段よりペースは遅めだけどできてる。明日でいいから、これを草壁に渡して。」
「わかりました。」
サラサラと書類に必要事項を記入したり、確認したことを示す印鑑を押したりと、手際よく作業をこなしていく恭弥さん。
その隣で私は、持ってきていた複数の書類に目を通しながら、提出日が遅いものと近いものを分けていく。
「こんなものかな……。恭弥さん。とりあえず今日はこの書類までで大丈夫ですよ。
今のペースなら、全部の書類を遅れることなく提出することができます。
なので、今日はここまで終わらせて、あとはゆっくりしませんか?」
「……ふーん。手際いいね。確かに、奈月の言う通り、これだけしっかりと分けてあれば、なんとか全部余裕を持って終わらせることができそうだよ。」
「こう見えて自宅では親の家事を手伝いながら、宿題を済ませたり、親戚から預けられている子供達の面倒を見たりしてるので、段取りをしっかりと立てて、効率よく作業をこなすことが得意なんですよ。」
「へぇ……いいことを聞いたよ。」
…………余計なこと喋ったかもしれない。
まぁ、恭弥さんの負担が多少は減るなら、これをきっかけに何か始めるのも構わないけどさ。
「助かったよ、奈月。」
「これくらい当然ですよ。一応、私も風紀委員なので。」
恭弥さんが終わらせた書類と、恭弥さんの印鑑、それと恭弥さんのペンを回収したあと、持参していたファイルを荷物から取り出す。
「分けた感じだと、これを明日、これを明後日、これを明明後日に済ませれば残っていた仕事を終わらせることができます。
まぁ、その時の体調にもよると思うので、無理に全部する必要はないですよ。
一日二日程度なら、作業をせずにゆっくり休んでも先程のペースなら全て終わらせることができますので、ご自身の体調と相談しながら療養と仕事をしてください。」
「わかった。……ねぇ、奈月。」
「どうしました?」
組み立てた段取りや作業順の説明をしていると、恭弥さんに名前を呼ばれる。首を傾げながら返事をすれば、恭弥さんが軽く手招きしてきた。
素直に従って近寄ってみると、恭弥さんがベッドに横になる。そして、私の手の指先を少しだけ掴み、
「今日の分の作業は終わったし、少しだけ眠たくなってきたから、僕は寝るよ。
あとは問題ないから帰ってもいいけど、僕が寝るまではそこにいて。」
「……構いませんけど、指掴まれていたら帰ろうにも帰れなくなりそうなのですが?」
「気のせいじゃない?寝るまで帰ったらダメだよ。」
「それ、ご自身の神経質さを理解している上で言ってるなら相当質が悪いですよ。」
呆れながら恭弥さんに文句を言うが、彼はどこ吹く風と言わんばかりに小さく笑いながらこちらの言葉を無視する。
この人、たまにそう言うところあるよな……とため息を吐きたくなったが、まぁ、病気とはほぼ無縁そうな人だったから、急に体調を崩して、少しだけ精神的に弱っているのだろうと割り切る。
「いつもお仕事お疲れ様です。ゆっくり休んでくださいね。」
ベッドに横になったまま私を見てくる恭弥さんに、労りの言葉をかけながら、枕に乗せられている彼の頭を優しく撫でる。
うっわ、めっちゃ髪の毛サラッサラ……。ひたすら羨ましいなこのキューティクル……。
「……まさか、誰かに頭を撫でられるなんてね。」
「あ、すみません、つい。嫌でした?」
「別に、嫌じゃない。」
「それならよかったです。」
「やめるの?」
「いやぁ……続けていいものかと……」
「さっきくらいなら、別に気にならない。」
「そう……ですか?では……」
……なんだろう。すごく甘えられている。こんな恭弥さんを見ることになるとは思わなかったな。
そんなに疲れていると言うのか、それとも、治りかけだけど風邪だから普段より甘えたくなっているのか。
どうなんだろう?と首を傾げながらも、ゆるゆると睡眠の邪魔にならない程度の力で頭を撫で続ければ、静かな寝息が聞こえてきた。
そっと手を離してみれば、すやすやと眠る恭弥さんの姿が視界に入り込む。
よく見ると、私の指先を掴んでいた手からも力が抜けているようだ。
これならと、静かに恭弥さんの手から自身の手を離し、椅子からゆっくりと立ち上がった私は、恭弥さんから渡された書類をスクールバッグの中に入れる。
そして、入れ替えるようにある箱を取り出し、その箱の中身を確認する。
箱に入れていたのは一つのストラップ。いつもの天然石の店に行った時に見つけた、四葉のクローバー型のベースアクセサリーに、アンバーとグリーンファントムクォーツを嵌めて、レジンによる固定を行ったものだ。
根付となっている紐には、黒と紫の糸を使ってある。
“恭弥さんが少しでも早く回復しますように”、“回復したあとも、彼がストレスや疲労を溜め込みすぎませんように”……そんな願いを込めて、ここ数日間、ずっと睨めっこしながら作っていた。
───……いらないかもしれないけど。
そんなことを考えながら、私は恭弥さんが寝ているベッドのサイドテーブルにそれを置き、恭弥さんへと言う宛名と、いらなければ捨ててくださいと言う短い文字を記した紙を置き、病室から静かに退室するのだった。
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……翌日。
退院できたから仕事は学校に持って帰ったと言うメールを受け取った私は、放課後応接室へと足を運ぶ。
「失礼します。」
「やぁ、奈月。」
「こんにちは、恭弥さん。退院おめでとうございます。」
「別に、いちいち言われなくてもいいよ。それより、少しだけ書類の整理を手伝って。病院で君がわかりやすくわけてくれたから、仕事がやりやすかったから。」
「わかりました。すぐにやりますね。」
そこには元気そうな恭弥さんの姿があった。
昨日は本当に治りかけだったらしい。そのことに安堵しながらも、私は恭弥さんの仕事を手伝う。
まぁ、私がやるのはあくまで効率よく作業を終わらせることができるようにするための仕分けであって、書類を手伝うわけじゃないけど。
前世でそれなりに上の立場で作業していてよかったよ。その時のスキルがこんなところで役立った。
まぁ、取引先の若手社長に目をつけられて、自分の秘書にならないかとヘッドハンティングされるだけはあったってことか。
私がいた会社が、それを許すことはなかったけど。
そう言えば、あの時の若手社長、ちょっとだけ雰囲気は恭弥さんに似ていたな……見た目はディーノさん寄りの正統派なイケメンさんだったっけ……なんて、前世のことを思い出しながら、もし、会社の意向を無視して、その会社の若手社長さんの元に行っていたら、多少は違う生活になっていたのだろうか、なんてすでに終わったことを考える。
別に、この世界がつまらないわけじゃないし、むしろ前に比べたらかなり自由だから、気が楽なんだけど、もしかしたら、自分の道をその時決めていたら……私は、終わりを選ばなかったかもしれないな。
「こんな感じですかね。恭弥さんのペースなら、今日中にこちらを終わらせて、明日はこれを、明後日はこっちをやれば、十分な休息を取りながら、仕事を済ませることができます。
退院が許されたからと言って、すぐに本調子に戻れるわけではないので、参考までに。」
「ワォ、やっぱり奈月はすごいね。来年度は、もう少し違う仕事につけてもいいかな。」
「違う仕事ってなんですか、違う仕事って。」
「来年のお楽しみ。悪いようにはしないよ。」
「それ、来年度も強制的に風紀委員会に入れるって言ってません?」
「それは決定事項だけど、何?」
「………そーですよね。恭弥さんはそんな方でした。」
少しだけ前世に懐古しながらも、整理した書類や、効率のいい方法をいくつか参考として提示し、判断を恭弥さんに任せる。すると、仕事よりも私の作業に対して恭弥さんが反応した。
どうやら、来年度も私はこの風紀委員長様に振り回されることになるらしい。
ここまで気に入られるとは思わなかったよ……。
「そう言えば奈月。」
「何ですか?」
「このストラップ、僕が使っていた病室のサイドテーブルに置いていたよね。」
そう言って恭弥さんが見せてきたのは、昨日私が退室する際に置いていた四葉のクローバーの根付ストラップだった。
アンバーが一つ、グリーンファントムクォーツが三つ、ハート型に整えられていた大粒の天然石で四葉、黒と紫の根付により、ファスナーや止める場所があればつけることができるストラップ。
「ええ。趣味の一つとして、アクセサリーや、そう言った小物を天然石やビーズを使って作ることがありまして。
だから、恭弥さんが早めに回復できるように、そして、少しでもストレスや疲労を溜め込まないようにと、願いを込めて作りました。」
「ふーん……奈月が作ってくれたんだ。」
感心したように言葉を紡いだ恭弥さんは、自身の携帯電話を取り出しては、そこのストラップをつけることができるところに、私が作ったそれを止める。
「普段はこんなものもらわないからね。せっかくだし使わせてもらうよ。色合いも僕の携帯につけてもあまり目立たないしね。天然石以外はだけど。」
「あはは……。でも、アンバーとグリーンファントムクォーツって、健康祈願になる天然石でもあるんですよ。
アンバーは色合いから、金運祈願に見られがちで、実際、そう言った意味で使われることがよくありますが、生成される過程から、生命力が溢れる石ということから、健康祈願としても贈ることができます。
だから、同じく健康祈願として使われることがあるグリーンファントムクォーツと合わせて、そのデザインに落ち着いたんですよ。」
「そこまで聞いてないけど、奈月の気持ちはよくわかったよ。」
携帯電話についたことにより、ゆらゆらと揺れるクローバーのストラップ。
なるべく小さめのものにしたけど、結局チャームは2センチくらいになってしまった。
でも、まぁこれくらいなら多分そこまで目立たないはず……と思いながら見つめていると、恭弥さんと目が合う。
「……少しは気に入ってもらえましたかね?」
つけてくれると言うことは、多少は気に入ってもらったと思いたいけど、恭弥さんならもらったからつけただけで気に入ったわけじゃないと思ってしまうこともあるかもしれない。
少しの不安を抱きながら、恭弥さんに声をかければ、彼は一瞬だけキョトンとした表情を見せる。
しかし、すぐに小さく笑みを浮かべ、
「気に入らなかったら、そもそも貰わないし、つけたりもしないよ。」
私の質問に対して、穏やかな声で答えるのだった。
沢田 奈月
雲雀に早く元気になってほしいと願い、天然石を使った根付ストラップを作成し、彼に渡したボンゴレ10代目。
前世では若手の社長に目をつけられる程の有能な人材だったのだが、それは彼女が過ごしていた会社も同じだったため、断るように言われて断った過去がある。
雲雀 恭弥
奈月に対して特別な感情を抱いている風紀委員長。
自身が甘える姿を見せたのも、ちょっとした意地悪をしたのも、全てその感情があるからこそのものだった。
奈月が作ってくれたストラップに対しては、彼女が自分のためだけに作ったことが重要であるため、意味は正直二の次である。