最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
正一君と確かな約束を交わし、再び帰路につき、真っ直ぐと自宅の方へと歩く。
途中誰かと会うこともなく帰れたからか、自宅にはかなり早くつくことができた。
「ただいま〜………ん?」
帰宅帰宅〜……と思いながら、玄関の扉を開けた瞬間、ふわりと辺りにいい匂いが広がる。
どう考えてもご飯の匂いだが……はて……?なんか、普段よりいろんな匂いが混ざってるような?
「お、帰ったな、ナツ。」
「お帰りなさい、ナツ姉!」
「お帰りだもんね、ナツ!」
「お帰りなさい、ナツ。」
「!」
「ん。イーピンも出迎えてくれてありがとうね。……ところで、なんかすごく美味しそうな匂いがたくさん広がってるけど、何かあった?」
玄関に入るなり、出迎えてくれた居候5人組。全員に笑顔を見せながら、ただいまと挨拶を返した私は、すぐにいい匂いの正体に対して問いかける。
「ん?ああ、ほら、今日はバレンタインだろ?」
「うん。」
「イタリアの方だとな、バレンタインは恋人達の日とされており、恋人や夫婦が水入らずで過ごしたり、男から女に贈り物を贈ったりする日なんだ。」
「へぇ……外国と日本じゃ全然違うんだね。」
「まぁな。で……だ。今回のこの匂いの正体だが、キッチンに行ってみたらわかるぞ。」
「?」
リボーンの言いたいことがわからず首を傾げていると、まずは手洗いうがいを済ませてこいと言われた。
まぁ、外から帰ってきたんだから当然か、と思いながら手洗いとうがいを済ませれば、こっちだと言われる。
それに従ってキッチンに向かってみれば、そこでは母さんがすごく上機嫌にお料理をしていた。
テーブルの上にはすでにたくさんの料理が置かれている。しかし、彼女はまだまだ作る気満々のようで……。
「え?母さん、何があったの?」
「あ、なっちゃ〜ん!お帰りなさ〜い!」
「いや、包丁危ない!!」
包丁を持った手をフリフリ振ってくる母さんにツッコミを入れながらも、私はキッチンに足を踏み入れる。
「どうしたのこのご馳走……。」
「ふふ、実はね!父さんから素敵な贈り物をもらったのよ!!」
「素敵な贈り物?」
「ええ!リビングを見てちょうだい!」
「?」
母さんに促されるままに、リビングの方に足を運んでみれば、そこには赤い薔薇の花束と、その花束の中央に添えられるようにして置かれているメッセージカードがあった。
「これは……」
「なっちゃんも知っての通り、父さんは外国を飛び回っていろんな仕事をしているのだけど、どうやら外国の方だと、バレンタインって夫婦の時間や恋人との時間を過ごして、男性から女性に贈り物を贈る日になってるそうなのよ!
それで、お昼頃にね、母さん宛てにこれが贈られてきたの!そこのメッセージカードも見て見て!」
無邪気な笑顔でカードも見てほしいと言ってくる母さんの姿に、何度か瞬きを返したのち、花束に添えられているメッセージカードを開く。
そこにはどこかちょっと達筆な文字で、“愛しの奈々へ ハッピーバレンタイン”と言う文字と、家光と言う小さな文字が記されていた。
「はは……。父さんってば、随分と気障なことをしてんね。」
「それはお前もだと思うぞ。」
「……もしかして京ちゃん達とのやり取り見てた?」
「ああ。ついでに、獄寺や山本、ヒバリに学校の女子達にもしてるのを見ていたぞ。
まぁ、途中でビアンキからママンの様子がおかしいって言われて先に帰宅したがな。」
……見られて恥ずかしいと思えばいいのか、ジョットさん達とのことを見られなくてよかったと思えばいいのか。
なんにせよ、母さんの様子がおかしかったのは、間違いなくこれのせいであることはわかった。
でも……まぁ、こんなものを大切な人からもらったんだから、当然のことでもあるか。
しかも、この花の数は………
「……“いつもあなたを想ってます”……か。」
「え?」
花束となっている赤い薔薇の数を見て、小さく呟くように言葉を口にすれば、母さんが不思議そうな表情を見せる。
そんな彼女に、私は小さく笑みを浮かべては、呟いた言葉の意味を口にした。
「薔薇の花ってさ。贈る本数によっても意味合いが変わってくるんだよ。
で、父さんから母さんに贈られた薔薇の数は24本……これは、父さんからの想いのプレゼントでもあるってこと。
赤い薔薇の花言葉は情熱、愛、美、あなたを愛しています……そして、24本の薔薇の花束は、“いつもあなたを想っています”。」
「!!」
「赤い薔薇は、最愛の人に贈る花の代表格。父さんから母さんに贈られた赤い薔薇ならば、“最愛であるあなたを、毎日のように想っています。あなたのことをずっと愛しています”……ってことだと思うよ。」
私の言葉を聞いた母さんが、両目から涙を流しながら笑顔を見せる。
実際、そんな想いを込めてあの人は母さんに贈ってきたのだろう。
そう簡単に帰ることができるような立場じゃないから、直接想いを伝えることはできないから、せめて、贈り物に想いを込めて渡したいと想ったのだろう。
そう感じ取れたからこそ、私は母さんにこの言葉を伝えた。そして、私からも……。
「そうだ、母さんに、私からも贈り物があったんだ。」
「なっちゃん……?」
嬉し泣きをしていた母さんにそう伝え、私はキッチンにある私専用の鍵付き戸棚へと近寄り、鍵を開けてそれを取り出す。
私が取り出したのは、ピンク色のリボンと、折り紙のカーネーションを使ってラッピングしていた贈り物。
「父さんが外を飛び回って戻れない間も、ずっと私を育ててくれてありがとう。これは、私からの感謝の贈り物。
いつも頑張ってくれている母さんへと、私が贈るバレンタインの贈り物だよ。」
「!!」
私の言葉に、さらに涙を溢れさせる母さんの両手に、そっと私からの贈り物を握らせる。
「この贈り物の中に入ってるアイシングクッキーは、花のカタチになっているんだ。」
「……本当ね。すごく綺麗な白い花。」
「その花の名前はガーデニア。日本の言葉に直すと、クチナシだね。私は、その花にある花言葉と一緒に、母さんに贈りたいと思ってる。」
「花言葉?」
キョトンとした表情を見せる母さんに、小さく頷いて口を開く。
これは、私として生まれることができた、わたしからの言葉だ。
「クチナシの花言葉は、“私は幸せです”。」
「なっちゃん……。」
「母の日とかにも言ってるけど、私、母さんの娘として生まれてよかった。母さんから愛情を注いでもらえる娘になれてよかった。
たくさんの幸せと愛情をありがとう。これからも、私はいっぱい迷惑をかけちゃうかもしれないけど、大人になるその時まで、どうか、幸せ者でいさせてね。」
笑顔でそう伝えると、母さんからふわりと優しく抱きしめられる。
母さんの匂いに包まれて、母さんの温もりに包まれて、私は自然と目を閉じた。
「当たり前じゃない……っ!!あなたは母さんの、母さん達の大切な娘だもの!!むしろ、母さんの方こそありがとう。奈月が私達の娘として生まれてきてくれて、私達もすごく幸せよ……っ」
少しだけ服が濡れるのを感じる。まさか、そこまで喜ばれるとは思わなくて、閉じていた目を開けた私は、何度か瞬きを繰り返す。
しかし、すぐに小さく笑みを浮かべて、私より少しだけ低い母さんの体を優しく抱きしめた。
「もう……!父さんと一緒で、なっちゃんも母さんを喜ばせるのが本当に上手なんだから……!!涙でちょっと顔がぐしゃぐしゃになっちゃったじゃない……!」
「ごめん。でも、なんだか伝えたくなったんだ。なかなか帰れない父さんばかりに、かっこはつけさせられないからね。」
“そう言うところ……本当に若い頃のお父さんにそっくりなんだから”と穏やかに笑いながらも、母さんは涙を静かに拭う。
そして、少し顔を洗ってこなきゃと言っては、リビングを後にした。
「流石、初代ボンゴレの血を引いてるだけあるな。」
「本当ね。あそこまで情熱的な想いを伝えられたら、私も危ないわ。」
「ナツ姉、すごくかっこよかったよ!」
「ガハハハハ!ママン、顔が赤かったもんね!」
「─────!」
「イーピンも、あんな風に想いを伝えられたら照れるって言ってるぞ。」
「知ってる。私もわかるからね。」
そう言って、私は先程の戸棚へと戻り、赤紫や黄色、赤や緑と言った色のリボンでラッピングした贈り物が入ったバスケットを取り出し、戸棚の鍵を閉める。
私が取り出したものが何かわかったのか、目の前にいる4人は一瞬だけ目を丸くしたのち、顔を見合わせた。
「母さんだけじゃなく、みんなにも贈り物を用意していたんだ。」
手にしたバスケットから、まず私が取り出したのは赤紫のリボン。
これを贈る相手はもちろん……
「まずはビアンキ姉さんに。甘さめが好きって言ったから、ショコラマフィンとホワイトトリュフそれとアイシングクッキーが入ってる。」
「……私にも、花言葉を贈ってくれるの?」
「もちろん。ビアンキ姉さんに贈る花はベルフラワー。複数の花言葉のうち、“感謝”と“楽しいおしゃべり”と言う2つの花言葉を贈るよ。」
「感謝と、楽しいおしゃべり……」
復唱された花言葉に、小さく頷くだけで返事を返し、なぜその花言葉を選んだのかを説明するために口を開く。
「最初はかなり衝撃的な出会いだと思った。でも、ビアンキ姉さんと一緒に過ごすことにより、知ることができたこともたくさんある。
だからこそまずは、私と出会ってくれたことに感謝の言葉を。これからもいろんなことを教えてほしいな。
ビアンキ姉さんと交わすお話は、どれもためになるものであり、すごく楽しいひと時だから。」
「ふふ……そんな風に言ってもらえて嬉しいわ。ありがとう、ナツ。大事に食べるわね。
じゃあ、私からもあなたにこれをあげるわ。リボーンに渡したものよりかは安いものだけど、あなたの好みに合いそうだったから。」
私の贈り物と入れ替わるように、私の手元に渡される長方形の贈り物。
よく見るとそれは、ブランドもののチョコレートで有名なお店のもので、思わず目を丸くする。
「え?こんな高そうなチョコ、もらっていいの?確か、小さいものでも普通に5000円とか出るレベルのブランドだよね?」
「ええ。あなたにはたくさんお世話になってるもの。だから、私からも何かお返しがしたかったの。
リボーンと過ごせる時間を作ってくれて……一度はあなたを殺そうとしていた私なんかを住まわせてくれてありがとう。
1人の女として……あなたの姉貴分として……私はあなたに感謝しているわ。」
穏やかに笑いながら、頭を撫でてくるビアンキ姉さんに、私は笑顔を見せる。
お互い相手に感謝していたんだと思うと、なんだか心が温かくなる。
「次に、ランボとイーピンの2人だね。2人にも、ビアンキ姉さんと同じように、ショコラマフィンとホワイトチョコのトリュフ、それと、アイシングクッキーを用意したよ。」
「わはー!ありがとうだもんね!」
「謝謝!」
両手を伸ばして待機している2人に笑いかけながら、緑のリボンをランボに、赤のリボンをイーピンに渡す。
「2人にもバラバラの花を渡そうと思ったんだけど、結局は同じ花になっちゃった。
その代わり、2人には特別に2枚のクッキーを入れたんだよ。」
「2枚?」
「?」
「まぁ、子供相手にはそうなってしまうわよね。いくら過ごした時間が長くとも、小さい子供に合った花言葉なんて、たかが知れてるもの。」
「そう言うこと。」
ビアンキ姉さんの補足に、私は少しだけ苦笑いをこぼす。
いやはやごもっとも意外何も出てこない。実際、子供組には花を被らせるほかなかったからね。
「ランボとイーピンに贈りたい花言葉……まず、紫色の花であるデュランタ・タカラヅカから、“あなたを見守りたい”……だね。」
「見守る?」
「???」
不思議そうな表情を見せるランボとイーピンに小さく頷き、花言葉に込められた意味を口にする。
「ランボとイーピンはまだまだ子供だ。中学生の私よりも、はるかに小さな男の子と女の子だからね。
それはつまり、ある程度道が決まってくる私よりも、ずっと長く成長する期間があると言うことになる。
だから私は、2人の成長を、これからも姉のような存在として見守っていきたいと思ってる。
一緒に入ってるブルーベリーの花のように、たくさんの“実りある人生を”歩むことになるからね。
可能ならば、私は2人の成長をずっと見守りたいと願っているよ。」
「それって、これからもオレっち達は、ナツと一緒にいっぱい遊んで、ナツと一緒にいっぱい食べて、ナツと一緒にいろんなことをしていいってことー?」
「うん。いつか巣立ちをしてしまうであろうその時まで、私の側でたくさんの成長を見せてほしいな。」
「うん!!オレっち、これからもナツといっぱい過ごすもんね!」
「!」
私の言葉を聞いて、ランボとイーピンは笑顔で頷いた。
「次にフゥ太。君にはランボ達と同じデュランタ・タカラヅカの花と花言葉を……そして、オキザリスの花言葉を贈らせてもらうよ。」
「オキザリス?この、鮮やかな花の名前だね。」
「うん。」
2人の姿をしばらく見つめた私は、次にフゥ太へと目を向け、水色のマフラーをもしたリボンでラッピングした贈り物を手渡す。
その際、ランボ達とは違う花が一つあることを伝える。
「オキザリスの花言葉は、“決してあなたを捨てません”。」
「え……?」
私の言葉に、フゥ太は驚いたような声をあげる。当然だ。急にそんなことを言われたら、誰だって驚いてしまう
でも、どうしても私はこれを伝えたいと思った。多くの人に狙われる彼だからこそ……。
「フゥ太は多くの人に狙われやすいからね。だから、君が私の側にいたいと思い続ける限り、私は君を絶対に見捨てない。
例え、この先暗くて深い闇が、君を飲み込み、それにより君が崩れ落ちそうになったとしても、本心から君が私といたいと思うのであれば、私は必ずその手を取る。
だから、もし、何かあったらすぐに助けを求めてね。必ずその手を引っ掴んで、君を連れ戻してあげるから。」
穏やかな声音でそう伝えれば、フゥ太はしばらくアイシングクッキーを見つめたあと、無邪気な笑顔を見せてくれた。
「うん!ありがとう、ナツ姉!僕、ナツ姉の元にきてよかった。ナツ姉と出会えてよかった!
だから、ナツ姉。これからもどうか、僕をお側においてください!ナツ姉の側は、すごく居心地がいいから!」
元気な声で言ってくるフゥ太に微笑みながら頷き、そのまんまるな頭を優しく撫でる。
フゥ太はそれが気持ちよかったのか、へにゃっと破顔して笑った。
「最後にリボーンだね。」
「お目付役を最後に置く奴があるか。」
軽く拗ねたような様子を見せるリボーンの姿に少しだけ笑いそうになる。
でも、笑ったら間違いなく拗ねてしまうだろうから、なんとか堪えきり、バスケットの中に入っていた黄色のリボンと、ボルサリーノやカメレオンをかたどった折り紙でラッピングしていた贈り物を差し出す。
「リボーンは、あまり甘過ぎない方がいいって言ってたからね。ガトーショコラとビターチョコナッツトリュフ、それと、2つのアイシングクッキーが入ってる。」
「ん?オレにも2つくれるのか?」
「だって、リボーンは絶対、ランボが2つももらってることに納得したりしないだろ。
……本当は、ビアンキ姉さんや母さんにも2つ作ろうと思ったんだけど、贈りたい想いを乗せられそうなものがなかったから、1つだけになったんだよね。」
「あら、そうだったの?」
「うん。母さんとビアンキ姉さんにも、たくさん伝えたい想いはあったからね。
でも、探していたら間に合わないと思って……。」
「フフ……ありがとう、ナツ。その気持ちだけで十分嬉しいわ。」
母さんとビアンキ姉さんに2つ作れなかった理由を伝えると、ビアンキ姉さんは穏やかな笑みを浮かべたのち、私の頭を優しく撫でた。
気にしなくても大丈夫だからと言うかのように。
「……ところで、この花はなんの花だ?見たことがある花ではあるんだが……」
優しく撫でられ、少しだけ無言で大人しくしていると、リボーンから声をかけられる。
視線を彼に向けてみれば、どことなく不思議そうな様子でアイシングクッキーを見つめていた。
「ブルーデイジーと花菖蒲だよ。」
「ブルーデイジーと花菖蒲……花菖蒲は、どこかアイリスの花に似ているな。黄色が差し色になっていて、違うものだってのはわかるが。」
「確かに、アイリスと花菖蒲はどことなく似てるところがあるね。実際は似ているようで似ていないけど。」
アイシングクッキーを見つめながら呟くリボーンに、少しだけ相槌を打ちながらも、私は静かに口を開く。
「ブルーデイジーには“恵まれている”って花言葉があって、花菖蒲には“あなたを信じます”って花言葉がある。
まず、ブルーデイジーの花言葉である“恵まれている”……と言う花言葉は、リボーンを含めた私の周りを示す言葉だよ。
……その中でも、私が一番恵まれた出会いは、間違いなくリボーンとの出会いだと思ってる。」
静かに紡ぐ言葉に、誰も途中で口を挟まない。
そのことに少しだけ微笑みながらも、私は言葉を紡ぐ。
「全ての始まりは、リボーンが私の前に現れたことが起因している。私がマフィアの子孫であることを知ったあの日から、多くの出会いや楽しみを得ることができた。
もちろん、これから先、楽しいことばかりじゃないと思う。たくさん傷つくし、たくさん悲しむし、何度も挫けそうになることがあると思う。
むしろ、そっちの方が多いのかもしれない。でも、例えどれだけ悲しくて辛い茨の道であろうとも、きっとみんなが……お目付役であるリボーンがいるからこそ、乗り切ることができるんじゃないかと思ってる。
だから私は、これからどんな道があろうとも、花菖蒲の花言葉のように、リボーンのことを“信じて”歩いて行きたいんだ。」
真っ直ぐと黒の瞳を見据えながら、そう告げれば、リボーンは口元にニッと小さく笑みを浮かべる。
そして、私の方へと真っ直ぐ視線を向けて静かに口を開いた。
「ああ。お目付役として、最後まで全うしてやるさ。だから、安心してオレや、オレ達を信じてくれ。」
*:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀
“そういや、お前宛にも贈り物が来てたから自室の方に持って行ったからな”と言われ、ようやく戻った自室。
そこには、2種類の薔薇の花束が置かれていた。片方はピンクの薔薇の花束で、14本まとめられている。
もう片方は赤い薔薇の花束で、24本まとまっているようだった。
勉強机の上に置かれていた2つの薔薇の花束とメッセージカード……まず、ピンクの方の薔薇の花束に添えられているメッセージカードを手に取れば、そこにはイタリア語で文字が記されている。
この文字はどう見ても、父さんが書いたものだった。
「……確か、ピンクの薔薇に含まれてる花言葉は、上品、気品、恋、かわいい人……だったかな。
それで14本の薔薇の花束は、“あなたを誇りに思う”って意味があったはず……。」
呟くように言葉を紡ぎ、イタリア語で“愛娘へ”と記されているメッセージカードを静かに開く。
“話はリボーンから聞いている。辛い道であっても歩き続けるナツのことは、本当に誇らしいと思っている。流石は、オレと母さんの娘だ。
だが、たまにはリボーンにも甘えてやれ。いつも、キャバッローネの若造や、それ以外に甘えてばかりいるって拗ねてたぞ。
確かに、リボーンは赤ん坊にしか見えないが、あれでも一応は1人の大人だ。
無理して隠す必要はない。甘えたいと思う時は甘えてもいい。だから、体を壊すんじゃないぞ。”
「……それはこっちのセリフだよ。バーカ。」
小さく呟くようにして、私は軽く父さんに悪態をつく。全く……リボーンってば、私がイタリア語を身につけたこと父さんに話しやがったな……。
て言うか、連絡取り合ってんならもう少し手紙くらいよこせっての……なんて少しだけ文句を言いたくなりながらも、ピンクの薔薇の花束を軽く撫でる。
「こっちの赤い薔薇は………。」
そして、静かにもう一つの赤い薔薇の花束に添えられているメッセージカードに手を伸ばす。
そこに書かれていたのもイタリア語によるメッセージ。しかし、その文字は父さんのものと比べ物にならないくらい流麗な文字で、かなり読みやすかった。
“正月以来だが、元気にしてるか?元気にしてるならいいが、あんまり無茶はするなよ?
さて、本題だが、イタリアの方だと、バレンタインってのは男から女に贈り物を贈る日なんだが、知ってたか?
贈り物はもっぱら薔薇の花や花束でな。オレからもナツに贈りたくて、この花束を贈らせてもらったぜ。
オレからの贈り物が、少しでもナツのバレンタインを彩れますように。近々日本に行く予定があるから、会うのが楽しみだ。
その時、無茶してねぇか聞くから、覚悟しておけよ?”
最後に記されていたのはディーノと言う文字。どうやら、この花束をくれたのはディーノさんだったようだ。
「……まさか、母さんだけじゃなく、私まで“いつもあなたを想ってます”って言葉を、花束と一緒にもらうとは思わなかったな。
母さんは父さんからで、私は兄弟子であるディーノさんからって違いはあるけど。………私にも、そんな風に想ってくれる人が、できるんだね。」
少しの胸の高鳴りと、温かくなる自身の心を感じ取りながら、2つの花束を潰さないように優しく抱きしめる。
「ありがとう、ディーノさん。ありがとう、父さん。私のことを想ってくれて……ありがとう………。」
……さて、この2つの薔薇、どこに飾ろうかな。こんなにたくさん薔薇をもらうなんて、これまで一度もなかったから、どうすればいいかわからないや。
何かしら大切にできる方法を探さないといけないね。
沢田 奈月
人生初の花束を2つも貰ってしまったボンゴレ10代目。
このあと、どうやればもらった薔薇の花束を台無しにしないで済むか検索しまくった。
リボーン
最後に渡されたことはちょっとイラっとしたが、彼女から告げられた、自分を信じて歩き続けると言ってもらえたことはすごく嬉しかった。
なお、自分の教え子が奈月に薔薇の花束を渡したことはかなり気に入らない様子。
ビアンキ
可愛い妹分から素敵な花言葉とともに、バレンタインの贈り物をもらえてすごく嬉しかった毒サソリ。
奈月がリボーンに贈り物をすることは別に気にしておらず、むしろリボーンにも贈り物は当たり前よねと思っていた。
ランボ&イーピン
奈月からもらった贈り物がすごく嬉しかったちびっ子2人組。
これからも側にいていいと言われたこともすごく嬉しかったし、自分達が大人になるまで見守りたいと言う奈月に笑顔で返事を返した。
フゥ太
どんな闇が自分を傷つけようとしても、一緒にいたいと願う限り、助けてほしいと求める限り、決して見捨てたりしないと言われ、少しだけ泣きそうになった情報屋。
力強いその言葉は、間違いなくこれから先の自分を照らし、守ってくれると安心できる笑顔を咲かせるものだった。
沢田 奈々
大切な愛娘と最愛の夫からダブルパンチをくらい、嬉し泣きで少し顔をぐしゃぐしゃにしてしまった奈月の母親。
奈月のこの行動は、奈月が生まれる前の若い頃の父親にそっくりだと、幸せに溢れた笑顔を見せた。