最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
雪合戦による大騒ぎから数日が過ぎ、今日は学校の開校記念日。
恭弥さんも今日は家でゆっくりすると言っていたため、風紀委員会の1人として制服を着て過ごす必要もないため、私服姿で時間を潰していると、携帯電話が鳴る。
携帯に表示されていたのは武の名前。朝っぱらから彼から連絡がくるのも珍しいと思いながら、通話ボタンを押す。
「おはよう、武。朝からどうしたの?……え?リボーンが?うん。うん……マジ……?それは……なんと言うかごめん。
彼が迷惑をかけて……え?迷惑ではない?むしろ、朝早くから待っててくれて嬉しいから気にしてない……?
そっか。でも、やっぱり申し訳ないからさ。今度、部活の時に差し入れでも持っていくよ。
いいのいいの。これはいわば私のケジメのようなもんだからさ。だから、とりあえず受け取ってくれると嬉しいな。
うん……うん。わかった。竹寿司にリボーンがいるんだね。すぐに迎えに行くよ。」
通話に出てみたら、武からリボーンが朝早くから自分を訪ねてきたことを教えてくれた。
そのことに謝罪しながらも、すぐに迎えに行くことを伝えて電話を切る。
そして、出かけるために部屋着から外出用の服装へと変え、コートを羽織って外に出た。
雪がまだちらつく時期だからか、まだかなり外は冷え込んでいる。
「……あとでホットのハニーレモンでも買うか。」
ジンジャーが入ったコーヒーもありだけど、コンビニには流石に売ってないから我慢我慢。
─────── 竹寿司 店内 ───────
「お、いらっしゃい奈月ちゃん!」
「おはようございます、おじさん。武。ごめんね、リボーンが迷惑をかけて。」
「あはは!気にすんなって言っただろ?にしても、小僧ってすごいのな。オレ、結構早く起きてバッティングセンターにいたんだけど、まさかその時間帯にいるとは思わなかったぜ。」
「だろうね……。正直私もかなりびっくりしてる。小さい分、体の動かし方が大人とは違うし、エネルギーの消費も高いから、どうしてもすぐに眠っちゃう傾向がリボーンにはあるからね。」
「むぐ……ナツ。オレのこと随分と観察してるんだな。」
「秘密の友達から、人間観察も時には必要だって教えてもらったからね。
それからはよく人を観察するようにしてるんだよ。情報はあればある程有利にもなるし。」
しばらく道を歩き、たどり着いた竹寿司。店内に入るための引戸に手をかけ、静かに開けて中に入れば、おじさんが話しかけてくる。
そんなおじさんに挨拶を口にしながらも、お寿司を呑気に食べてるリボーンと、そんなリボーンの側でにこにこ笑いながら挨拶をしてくる武の方に向き直った。
武の格好は制服……あ、これ忘れてるパターンだな。
「武。今日は並盛中学校の開校記念の日だから学校はお休みだよ?」
「え゛!?マジか。忘れてたのな……。」
とりあえず服装に関してツッコミを入れると、案の定彼はお休みであることを忘れていた。
彼が学校に出る前に合流できてよかったと少しだけホッとする。前世で友人が武と同じことをやらかして、めちゃくちゃ恥ずかしかったと吠えていたのを覚えていたからね。
そう言えば、あの子は漫画とか小説とかめちゃくちゃ好きな子だったけど、このSFなのかファンタジーなのかわからない世界の元ネタとかも読んでいたりしたのだろうか。
だとしたら、聞き流さずに真面目に話を聞いてあげたらよかったな……。基本、適当に相槌を打って終わらせていたものだから、少しだけ悔やまれる事態だ。
「で?なんでリボーンは朝早くから眠気と戦ってまで武のとこに?」
「ああ。伸び悩んでる様子の山本のトレーニングをしてただろうと思ってな。」
「……それはどっちの意味でのトレーニングかな?」
「……………どっちもだ。」
「おい。」
そんなことを思いながら、朝早くから武を訪ねていった理由をリボーンに問いかけてみると、武にトレーニングをつけるつもりだったことを告げられた。
そのトレーニングはマフィアと野球のどっちの意味でのトレーニングなのかと言う質問にはどっちもと返され、思わずツッコミを入れてしまう。
なんでよりによって両方なんだよ。せめて片方にしろ。むしろ野球だけにしろ。
「ナツの言いたいことはわからなくもねーが、やっぱり将来を考えると山本は必要な人間だからな。
ナツからしたら、自分以外の一般人を巻き込むことが御法度なのは理解している。
だが、山本がいねーと、多分、将来的に詰むことになる。だから、そこは理解してほしいんだ。」
「………ハァ……なんでよりによって一般から見繕うのが多いかな。みんなには、穏やかな日常を過ごしてほしいだけなのに。」
「……悪いな、ナツ。」
こっちの言葉に、本気で申し訳ないと思っているリボーンの謝罪が返ってくる。
その謝罪には、多分、私の意に反しなくてはならないことや、そうでもしないと私が将来的に詰んでしまう可能性の未来を回避することができないと言う心苦しさが含まれていた。
その言葉に私は無言になる。リボーン自身、悩みに悩んで出した結論であることが直感的にわかってしまったがために。
同時に舌打ちがしたくなる。自身の直感自体も、武は必要な存在であり、彼がいなければ将来的に厄介なことになると示しているために。
こう言う時、なんでこんな厄介な血縁能力を持ってしまったんだと言いたくなる。
これまで度々示されてきた道筋……超直感により感じ取ってしまったことは全て、正解への道筋ばかりだった。
そして、ことごとく正解への道筋を教えてくれた超直感は、武は私のファミリーにいなくてはならないと提示してきている。
つまり、武はファミリーに必要不可欠な存在であると、認識したくなくても認識せざるを得ないのだ。
『……すまない……ナツキ。』
『超直感ってことごとく正解への道筋を引き当てますからね。山本 武が必要だと直感したのであれば、そう言うことなのでしょう。』
『ったく……ナツキの心労が絶えねぇなぁ、こりゃあ……。』
『超直感って、最適解や、先に起こる出来事の可能性を直感する力だったよね。』
『ああ。そして、ナツキは山本 武は自身のファミリーに必要不可欠であると直感している。』
『つまり、山本 武はファミリーに入れなくてはならない……と言うことでござるな。』
『正しい道筋や、必要なことを直感し、備えることができると言う能力は、便利ではあるが、同時に先の答えの最適解を示すものでもあるがために、心では拒絶したいことを最適解として提示された場合、その道を進むのが正解に一番近いから巻き込まざるを得なくなる……究極に疲れる力だな。』
『嫌なことも直感してしまうからな。先回りができる利便性と同時に、そうあってほしくないと苦しくなる時がある。
ナツキはとても優しい女性だから、余計に辛いだろう……。』
『多分、辛いと思うものね。でも、ナツ、もう頭を切り替えてるみたいだよ。』
何度かの深呼吸のあと、私は静かに頭を切り替える。
必要だと判断したのならば、その判断に従うのみ。ただ、彼が無理をして、命を落とさないように願いながら、互いに互いを守れるように。
「わかった。トレーニングに付き合うよ。ただし、無理だけはさせないでよね。」
「ああ。そこはちゃんと約束するぞ。んじゃ、山本。今日は一日トレーニングだ。動きやすい格好をして、広いところ行くぞ。」
「ん?ああ、わかったぜ!ところで、ナツと小僧、なんの話していたんだ?」
「大人の秘密って奴だ。」
「あははは!なんだそれ!?ナツも小僧も両方とも子供じゃねーか!オレもそうだけどな!」
リボーンの大人の秘密と言う言葉に爆笑をかました武は、ちょっと待っててくれと言って、そのまま自室があるであろう場所へ向かって急足で立ち去っていく。
そこまで急がなくても……と一瞬思ったが、武のことだ。せっかく自分のために何かしようとしてくれているリボーンをまたせたくないのだろう。
「そうだ、奈月ちゃん。今日、タケシと遊ぶんだろ?だったら、弁当代わりに寿司でも持っていきな!おじさんの奢りだ!」
「え!?申し訳ないですよ!?」
「遠慮すんなって!いつもタケシと遊んでくれてるお礼って奴だ!」
「ええ……?ですが……」
「いいっていいって!おじさんのお節介と厚意を受け取ってくれや!」
「……ありがとうございます。では、いただきますね。」
「おう!」
こっちの言葉を聞くなり厨房に足を運んでいったおじさんの姿に少しだけ苦笑いをこぼす。
お寿司がお弁当って、普通じゃ絶対に経験しない出来事だと思うんだけど、お寿司屋さんの息子が友人にいて、親子共々人が良過ぎるとこんなことになるのか……。
まぁ、この世界だからこそ発生してしまうイベントなんだろうけど。
「待たせたな、ナツ!って親父は?」
「お弁当がわりにお寿司持たせてくれるって。おじさんの奢りだから持って行けって言われちゃった。」
「あはははは!親父らしいぜ!じゃあ、ちょっと待ってから出かけっか。」
「そうだね。」
「あ、親父!待ってる間、ナツに茶を出していいか?」
「おう!」
「ってわけで、茶でも飲んで待っとこうぜ。」
「うん。」
武に言われ、日本茶を淹れてゆっくりと飲みながら待つことを選び、それを淹れてのんびり過ごす。
最近、涼しいから余程のことがない限り痛んだりはしないけど、一応保冷バックか何かお借りできないかな。
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あれからしばらくして、おじさんにお寿司を弁当代わりに持たされた私達は、リボーンに案内されながらある場所にたどり着いた。
それは、リボーンがボンゴレに掛け合って作った訓練施設兼宿泊施設となっている場所だった。
前にディーノさんが連れて行ってくれた場所とはまた違う施設らしく、今回は庭のようなものがあるらしい。
……で、まぁ、その屋敷に移動したわけだけど………
「……広いな。」
「前、ナツが連れてかれた屋敷もそうだったけど、ナツの親戚って、めちゃくちゃ金持ちなのな。」
「……らしいね。」
マフィアの金っていったいどこから入ってるお金かわからないけどね。
ボンゴレは、まぁ、際どいことは滅多にしてないと言うか、倫理に反するような商売はしてないみたいだけど。
敵を徹底的に潰していること以外は、周りからあまり嫌悪されてないみたいだし。
「んじゃ、トレーニング始めっか。」
「変なトレーニングじゃないよね?」
「ああ。変なトレーニングは組んでないぞ。」
ならいいけど……と思いながら、お屋敷の中にお邪魔する。
移動する途中、リボーンから屋敷にある家具や家電は好きに使っていいって言われたから、武のお父さんからもらったお寿司は一旦冷蔵庫に入れておこう。
「荷物を置いたら庭に出るぞ。」
そう言って連れてかれた屋敷の庭。かなり広いそこには、遊具と思わしき物も存在している。
もはや一つの公園だな……そう思いながら庭に足を運んでみたら、リボーンと武がこっちを向く。
「ナツ!こっちだぜ!」
武に呼ばれたため彼の元に向かってみれば、なんだか嬉しげな笑顔を見せる。
普段より機嫌がいいような気がするけど……はて?何かあったのかな。
「なんか嬉しそうだね、武。」
「ハハハ!まぁな。だって、小僧は一緒だけど、それはそれとして、今ナツと長めに一緒に過ごせるのが嬉しくてな。」
「?いつも一緒に過ごしてるし、あんまり変わらなくない?」
「あはは……やっぱこれじゃ伝わんねーか。」
「ナツはハッキリ言わねーとわかんねータイプの女だから、アプローチするならハッキリと伝えるか、行動で示した方がいいぞ。」
「みたいだな……。」
武とリボーンが何やら意気投合しているような様子に首を傾げる。
この2人はなんの話をしてるのだろうか?
「ま、そっちは今は気にしなくていい。始めっぞ。」
「おう!今日は小僧にトレーナー任すからな。」
……武は理解してるのだろうか?
これが野球のトレーニングではなく、マフィアとしてのトレーニングであることを。
いや、理解してなさそうだな。きっと野球のトレーニングだと思ってるに違いない。
「さーて、何すっか?」
「まずはピッチングだ。」
そう言ってリボーンは小さなボールにしか見えない何かを取り出して武に渡す。
見た感じは小さな野球のボールに見えるけど、まぁ、間違いなく普通のボールではないのだろう。
「あの柱の印のところめがけて投げてみろ。」
「オッケー。ハハハ。可愛いボールだな。」
面白そうに笑いながら、武は柱の方を見る。それに倣うようにして視線を柱へと向けてみれば、確かに印が記されている柱がそこにはあった。
武は柱を確認すると、いつもの野球の投球フォームで手にしていたボールを柱へと投げる。
その瞬間投げられたボールからは明らかに異物でしかない金属の棘が出現し、そのまま柱を粉々にしてしまった。
「ええ……?」
「ん?」
困惑する私と不思議そうに首を傾げる武。リボーンは口元に笑みを浮かべたまま、先程のボールと同じボールを手に取って見せてきた。
「こいつがボンゴレ企画開発部に発注していた岩をも砕く“投の武器”、マイクロハンマーだ。」
「うん。ボンゴレの科学力 is 何?」
「……オレにもわからねーな。」
「わからないかぁ……」
ボンゴレファミリーの技術開発スキルがあまりにも意味不明過ぎてツッコミを入れたが、こればかりはリボーンにもわからないらしい。
まさか、リボーンでもわからない技術力を持ち合わせている組織だったとは……。
道理でDさんが私の幻術の触媒に使えるからって折り畳み式の大鎌を用意してきたわけだ。
意味不明な技術が使えるから、こんな武器も作れたんだね……。
「ていうか、武に武器持たせようとしてんの?明らかに破壊力がえげつないけどそれ。」
「………。」
「微妙な笑みを浮かべるんじゃない。」
そんなことを思いながら、呆れた表情を浮かべる。
しかし、その呆れにさらに呆れを重ねる出来事がすかさず発生した。
「ハハハ!あの柱、発泡スチロールでできてたんだな!一瞬ビックリしたけど、柱を壊せるくらいには早いピッチングができるって自信持たせてくれよーとしてんのかもな!」
「………ソーカモネー……。」
嘘だろ……と思った。なんでこの子、あの柱を発泡スチロールでできた柱だって認識したんだ。
明らかに発泡スチロールでできた柱じゃ聞くことがないような音がしていたんだけど……。
「次行くぞ。」
「おう!」
そんな私の心境などつゆ知らず、リボーンに言われるがままに行動を取ってる武の背中を見送りながら、先程の柱の元へと足を運ぶ。
もしかしたら本当に発泡スチロールだったのかも……なんて、あり得ないであろう淡い期待を抱きながら。
『明らかにコンクリートでできてるよね、この柱。』
『それをこんな小さなボールだけで粉砕するとはな。』
『100年も過ぎれば技術はガラッと変わるってよく聞くが、ボンゴレの技術力かなり向上してんな。』
『まぁ、私達が生きていた時代から、現在まで最低でも2世紀半から3世紀近く時代が進んでますし、当然と言えば当然のような気もしますが……。』
『その間ずっと精神を入れ替えながら生きてるD、何……?』
『全てはボンゴレのためですが?』
『その執着はいい加減なんとかならんのか。』
『うるさいですよナックル。』
『Dは相変わらずでござるなぁ……。』
「……うん、わかってた。わかってたことだけどね…………。」
淡い期待も目の前のコンクリートの柱のように粉々に砕かれてしまい、もはや遠い目をするしかない。
普通にコンクリートぶっ壊す投擲武器とか聞いたことないんだけど?あれか?ダビデ王と巨人の勝負か何かか?
そんな武器を武に渡そうとするんじゃない。
『ナツの目が死んでるものね……』
『まぁ……気持ちはわからなくもねーな………。』
『……ナツキ、大丈夫か?』
「あはははー………ダイジョーブダヨー………。」
『大丈夫ではありませんね。』
同情の眼差しを向けてくるランポウ君とGさん。心配そうな目を向けてくるジョットさんに、もはや抑揚すら消えた声で返事をすれば、Dさんから大丈夫じゃないとツッコまれた。
そして、私の側にいたアラウディさんが、慰めるかのように無言で頭を撫でてくる。
気持ちいいけど、それよりもリボーンの考えが理解し難くて泣きそうだった。
「10代目─────っ!」
「あ、隼人。」
『いや、切り替え早っ!?』
そんな中聞こえてきた隼人の声に気づき、私の意識は現実に引き戻される。
隣にいたランポウ君から素っ頓狂な声が聞こえてきたけど、とりあえず今はスルーして、隼人の方へと目を向けた。
「リボーンさんから話を聞いてきました!とうとう山本クビっスか!?」
「現実と願望を混ぜるんじゃない。」
「あだ!?」
合流するなり自分の願望と現実を混ぜて作り話をでっち上げてきた隼人の頭を軽く叩く。
できることなら武には一般に戻ってもらいたいし、ファミリーに混ざらなくてもいいよって言いたいけど、そうもいかないんだって。
「私がトンファーを持ってるように、隼人がダイナマイトを持ってるように、リボーンは武にもそろそろ身を守るための武器を持たせようとしてるんだよ。
それで、私はリボーンが変なものを武に渡したりしないか見張も兼ねてこの場にいるって感じかな。」
「なっ!?リボーンさんと10代目が山本のために!?」
ショックを受けて固まる様子の隼人に、相変わらずこの子は武を一方的に敵視してるなと苦笑いをこぼす。
しかし、すぐにこっちに近寄ってきているリボーンと武の気配に気づき、苦笑いを消して武達に視線を向けた。
「ちぇ〜……結局獄寺も合流するのな。」
隼人の姿を見るなり、苦笑いをこぼす武。
隼人はそんな彼を一度キッと睨みつけたのち、下に生えている草を見ては、それをむしって武の方へと投げつける。
「山本は生えてる草を投げる攻撃とかいいと思います。」
「隼人ってダイナマイト投げるのに、武が何かを投げる武器にしちゃったら武器属性被りするけど、それでいいわけ?」
「ハッ!?いやいやいやいや、こんな野球バカと被りなんて死んでもイヤっスよ!!」
「じゃあ、草投げは却下だね。」
軽く拗ねてる様子の隼人を見ながら、やれやれと肩をすくめながらも、私はリボーンに視線を向けた。
次に行くとか言っていたし、多分、武用に別の武器も考えているんだと思うから。
「さっき、他にもありそうな口振りだったけど、まだ何かあるわけ、リボーン?」
「ああ。次はこいつだ。」
私の問いかけを聞いたリボーンは、頷いて肯定したあと、懐から何かを取り出す。
それは、明らかに赤ん坊の姿であるリボーンの懐に収まるには長く、大きな銀色のバットだった。
「……なんでそれ懐に入ってたの?」
「オレにも謎だ。」
「リボーンでもわからないPart.2かぁ……。」
それもボンゴレの謎の技術力なんだろうか……。懐が四次元ポケット化してるリボーンを見ながら考える。
うん。わかっていたことだけどさ……。本当になんでもありだなこの世界。
私がよく知る日本やイタリアじゃ全くと言っていい程おかしな内容があちこちに点在している。
「へ───。トレーニング用のバットか。お?ウェイト入ってら。結構重いな。」
「重いの?」
「ああ。ほら。」
「……うわ、かなりずっしり。」
「だろ?」
武に手渡されたバットをマジマジと見ながら某緑髪の歌姫のネギ振りダンスみたいに軽く振る。
……バットだからか、それともバットに何か仕掛けがあるのか……私がDさんからもらった大鎌になるスティックに比べてかなりの重さがある。
これ、本当にバットなのかな?バットに擬態してるカモフラージュ武器のような気がしてならないんだけど。
「グリップの先を覗いてみろ。」
「?なんだ望遠鏡か────。」
「いや、多分それ、ただのおまけだと思うけど。」
「流石リボーンさん!山本にぴったりだ!」
思った以上に絵面がシュールだからか、隼人が笑いながらリボーンを褒める。
リボーンがこんなヘンテコなものを渡すとは思えないんだけど……なんて、疑問を脳裏に浮かべながら、武の様子を見つめる。
しかし、不意に空気の動きを察してしまい、私はその場でバックステップをして後退した。
同時に武の足元に銃弾が着弾し、特有の音を響かせる。
「……私まで反射的に動いちゃった。」
「ナツもボス力に磨きがかかってきたな。秘密の友達とか言う奴らの教育が上手いのがよくわかる。
……本来ならば、オレがそれをこなすつもりだったんだがな。」
『『『『……………。』』』』
『プリーモ達が同時にそっぽを向いたものね。』
『奈月にいろいろ教えてるのはプリーモ達でござるからな。』
『立場を奪ってしまったことを究極に反省しているようだな!後悔はしてないようだが!』
『後悔する必要性がありませんから。』
『教えるのがなかなか楽しくてな。』
『ナツキの成長が見れて飽きないから。』
『オレも後悔はしてねぇな。』
初代組の言葉を聞き、無言で彼らを見つめる。
しかし、すぐに意識はリボーンへと戻し、先程の狙撃について尋ねるため口を開く。
「今の狙撃、ディーノさん達の気配がなぜか感じ取れる方角から飛んできたような気がするんだけど、何したの?」
「お。やっぱナツはわかったか。実はディーノ達に依頼して、500m先から狙撃してもらったんだぞ。」
「自分の教え子に何依頼してんの。ディーノさんにも仕事あるはずだよね?」
「ん?今はディーノが出なくても問題ないことばかりだから、あいつ暇してるんだぞ。
部下がいるから仕事も早く終わるしな。だから手伝えって依頼しておいたんだ。」
「ディーノさん、暇人だと思われてるよ……。」
それでいいのかキャバッローネ……と思わず表情が少し引き攣る。
いや、まぁ、マフィアのボスが忙しいって状態は、それだけ環境がやばくなってることを示すだろうから、ディーノさん側からしたらむしろ暇だと思われている方が平和って考えかもしれないけど。
何度も日本に呼び寄せて大丈夫なんだろうか……。旅費とかどうしてんの……?
ちゃんとリボーン、移動手当て出してあげてるのかな……?
「んじゃ、次のトレーニング内容を説明するぞ。と言っても、飛んでくる弾を躱すんだ。
あ、でも安心しろよ。ディーノの部下に撃たせてる弾丸は特殊なスタン弾で、当たっても怪我が発生しない特別製だ。
通常の弾丸みてーな勢いで飛んできても、人体に当たりそうになったらセンサーが反応してその場で弾丸が破裂し、体を痺れさせる液体が少量飛び散るだけの代物で、仮に浴びちまっても数分程度ですぐに抜ける麻酔薬みたいなものだからな。」
「だからボンゴレやマフィアの技術力!!!」
「オレでもわかんねー謎だ。」
「はいはい、わからないPart.3ね!!」
リボーンの反応にツッコミを入れながら、武に目を向ける。
弾丸が飛んできた方向を見つめる彼は、口元に小さく笑みを浮かべていた。
「なるほど。動体視力と反射神経を鍛えるんだな。」
「心配ならナツも一緒に行動していいぞ。」
「言われなくても。武が間に合わない時はこっちがカバーするつもりだったし。」
「お、サンキュー、ナツ!」
私の言葉を聞いて、楽しげに笑う武。そんな彼をしばらく見つめた私は、少しでも彼が危ない目に遭わないようにと死ぬ気モードを使用する。
「じゃあ、始めようか。」
「おう!あ、ナツのことはオレが守るからな。」
「じゃあ、武のことは私が守ろうかな。」
「あははは!何だそれ!」
笑顔を見せる武に小さく笑いかけると、まるで私と武を離そうとするかのように弾丸が間に撃ち込まれる。
びっくりして目を丸くしていると、すぐ側から武の笑い声が聞こえる。
「ハハハ!なんか引き裂くような感じに撃ち込まれたな。」
「うん。明らかに引き離すための弾丸だった。」
「ディーノの奴……ちと大人げねーな。」
「ん?」
「こっちの話だ。」
リボーンの言葉に首を傾げるが、再び弾丸が複数撃ち込まれたことにより、意識はそちらへと移動する。
「なるほど、あそこからもだな。どうやら複数箇所から狙われてるみたいだぜ。」
「らしいね。気配が複数の位置に点在してる。全部ディーノさんの部下のものだ。」
「ナツってそんなことまでわかるんだな?」
「うん。私も最近知った。」
「ハハハ!そっか!じゃあ、躱すのは問題なさそうだぜ!他にもわかることはあるのか?」
「いろいろと訓練を積むようになって、空気の動きはある程度把握できるから、武が感知しづらい位置からの狙撃や攻撃はそれなりに理解できるかな。」
「すげーな!?じゃあ、オレが把握できなかった時は頼んだぜ。」
「任せて。」
武と言葉を交わしながら、地面を蹴り上げる。
なるべく武と距離が離れすぎないように、死ぬ気のコントロールを行いながら屋敷の庭を走り抜ければ、武はすぐに隣に並んできた。
「気をつけて、複数箇所から同時に空気の動きがある!」
「みたいだな!ナツ!こっちだ!」
武の言葉にすかさず反応して回避すれば、自分がいた場所の足元に弾丸が着弾した。
それを確認して、武に視線を向けてみれば、彼は笑顔で頷き回避を行いながらディーノさん達がいる方角を見据える。
「10代目!!避けてください!!」
「いや、なんか追加されたんだけどデジャヴ?」
「そういや前もあったなこんなこと。まぁ、オレとナツなら大丈夫だって!行くぜ!!」
「はいはい。」
すると、背後から隼人の声とダイナマイトが投げつけられる気配を感じ取り、少しだけため息を吐いた。
しかし、武の言う通り、私と武の空間認識力や反射神経を合わせれば、全て回避できるものばかりだ。
「ダイナマイトと弾丸……両方の音のせいで少しだけ認識が鈍るな……。まぁ、空気の動きは意識を集中させれば判断できるし、別にわからなくなるわけじゃないけど。」
「だな。っと、ナツ、こっちだ!!」
「了解。まぁ、すぐに右からなんかきてるけど。」
「あははは!確かにな!と、次は左だぜ!」
「みたいだね。」
武と情報を交換しながら弾丸やダイナマイトを次々と躱していく。
あれ?こうしてみると私だけじゃなくて、武も逸般人化して行ってない?何?この世界の人ってそうなっていく運命でも持ち合わせてるの?
混乱しながらも、弾丸とダイナマイトを全て躱していると、リボーンの気配が武のすぐ側にまで移動したことに気づく。
「死ね、山本。」
「え、ちょ、リボーン!?」
私の声になど反応することなく、リボーンは手にしていた銃の引き金を引く。
それに気づいた武は、彼が発砲すると同時に手にしていたバットを反射的に振り下ろした。
鋼と鉛がぶつかるような音が辺りに響き、ダイナマイトによる爆風で舞い上がった砂埃が晴れた時、武が振り下ろしたバットは1振の刀へと姿を変えていた。
「ん─────?」
「おっふ……立派な刀が1振………。」
「アハハハハ!!意味わかんねー!!おもしれーこれ!!」
「ええ………?」
まさかの事態に混乱する私とは裏腹に、バカウケしている武はどうなってんだこれと、手にあるものをバットに戻したり、刀に変化させたりと遊び始める。
それ、遊び道具にしたらダメな武器だからやめなさいと言いたくなったのは言うまでもない。
「……何、これ?」
「そのバットこそ、見た目はバットで普段は望遠鏡。だが、本当はヘッドスピードが300km/hを越えると刀に変形する“打の武器”なんだ。名づけて“山本のバット”。」
「……もうちょっと良いネーミングはなかったの?ていうか、打ってよりは斬なんだけど?」
「……言われてみればそうだな。」
リボーンと私の間に妙な空気が流れる。こっちのツッコミがある意味で正論じみたものだったからだろう。
ネーミングの方は……まぁ、その人個人のものだし、とやかく言うつもりはないけど、刀を打の武器と言われるのはなんか微妙な気分だから訂正してもらおう。
竹刀ならまだ打撃武器でも行けたと思うけどね。
「いやぁ、今回も面白かったな。」
「……まぁ、武がそう思ったならそれでいいよ。」
「至近距離の弾丸の速さについていけるとは、流石だな、山本。ナツのファミリーとして不足なしだ。
んじゃ、もうちょいトレーニングをするぞ。弾丸を斬りまくれ。」
「あいよっ!」
リボーンが撃ってる弾丸をひたすら斬りまくる武を見つめながら、私は苦笑いをこぼす。
一般人を巻き込みたくないって気持ちは変わらないけど、なんか、武がファミリーに入ってくれたらいろんな困難が乗り越えられそうな気がするのだった。
沢田 奈月
山本の能力の高さにかなり引いていたボンゴレ10代目。
一般人を巻き込みたくない気持ちは相変わらず存在しているが、山本は自分に必要な存在であると直感したため、彼が少しでも怪我をしないように、隣に並んで戦うことを決める。
山本 武
奈月と一緒に過ごせると思ったら、途中で合流した獄寺や、奈月と2人きりで過ごせないことに少しガッカリしていた野球少年。
しかし、奈月と並んで庭を走り抜けることができることは楽しかった。
リボーン
奈月との約束を守り、命を奪う弾丸ではなく、動きを抑制するための弾丸を使って山本のトレーニングを行ったヒットマンなお目付役。
時折奈月と山本の間を割くように飛んでくる弾丸を見て、大人げねーなディーノ……と思っていた。
獄寺 隼人
山本の武器を厳選するために動いていた奈月とリボーンの姿を見て、かなり拗ねていた右腕候補。
奈月と並んでトレーニングに臨んでいた山本を見てさらに拗ねてフェードアウトした。
ディーノ
奈月と山本の距離が近いと言う理由から大人気なく2人の間を邪魔するように度々弾丸を撃ち込ませていたキャバッローネファミリーの10代目ボス。
部下から呆れられるほどイラッとしている様子を見せていた。
初代組&D・スペード
相変わらずの仲良し一行(奈月がいる場合のみ)。
リボーンの役割を取ったことは反省しているが後悔は全くしていないお兄さん(お爺さん)'s。