最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 またもや高濃度ヒバナツ注意報。
 桜クラ病にかかるかかからないかを考えた結果、かからないルートになりました。
 その代わり、雲雀さんの恋慕が結構爆発する話になりますが、まぁ、ある種の弱点発生にもなりますよね……って話です。(先の話を読み返しながら)


薄紅下の争奪戦

 互いに譲るつもりはないと言わんばかりに睨み合い、火花を散らしている隼人達と恭弥さん。

 こっちが開始の合図を出すまでは、両者共に手を出すなと言ってあるので、今はまだ比較的に落ち着いている。

 

「おーおー……野郎が見事なまでにいがみ合っちまって、むさっ苦しいことこの上ないねー。」

 

「ウゲッ!!まだいやがったのか!!このヤブ医者!!変態!!スケコマシ!!10代目に近寄るんじゃねぇ!!」

 

 そんな中聞こえてきた男性の声に、隼人が怒鳴りつけるように罵倒を口にし、私は静かに視線を動かす。

 そこにいたのは仕事があるわけでもないのに、白衣を羽織ったままのシャマル先生の姿があった。

 その片手には酒瓶が一つある。コップが見当たらないため、直飲みしているのだろう。

 

「おはようございます、シャマル先生。長期休暇の中、急遽お呼び立てしてしまい申し訳ありません。」

 

 そんなことを思いながら、静かにシャマル先生へと声をかけると、彼は私の方を見るなり、デレっとした締まりのない表情を見せる。

 相変わらずだなこの人……と思わず呆れの眼差しを向けるが、本人はそんなこと気にならないのか、ヘラヘラと笑いながら私の元へと近寄ってきた。

 

「奈月ちゃ〜ん!ひっさしぶり〜!!いやぁ、まさか、奈月ちゃんから桜を見ないかって誘われるとは思わなかったよ〜!

 オジさんが恋しくなっちゃったか〜?いやぁ、女の子にモテモテなんて罪な男だよ全く!ほらほら、こっちおいで!再会のハグとチューしよう!」

 

「シャマル先生。未成年の子供に大人が手を出すのは犯罪とされています。そのような言動をされるのはいかがなものかと。」

 

「おー……相変わらず冷めてんねー……。でもそんなところも奈月ちゃんの魅力だな、うん!

 それに、ツンとした氷を纏ってるようなレディが、徐々に男に絆されて心を溶かし、最後は熱くて甘いエンディングを迎え、相手の男に惚れて求めていくのも一つの愛の形だよな!

 オレも奈月ちゃんの心を溶かせるように、もっともっと頑張るかぁ。」

 

「……いきなりご自身の性癖暴露するのやめてもらえますか?ものっっっっっすっっごく反応に困るので。」

 

 いつも通りシャマル先生に冷めた反応だけで対応する。

 流石に13歳に手を出そうとするのはマジでどうにかした方がいいと思うんだよね、この人。

 せめて学生には手を出すな。それだけはハッキリ言いたい。

 まぁ、無理矢理どうこうするようなあの変態狂人ストーカー暴漢に比べたら何倍もマシな性格ではあるけどね……。

 シャマル先生は性癖はアレだけど紳士的な人だし、本気で相手が嫌がったり、拒絶反応を見せるようであれば手出しはしない人だし。

 

 それに、学校でもナンパしたりキスを求めたりと学校勤めの人間にあるまじき姿を度々見せるが、彼が問題を起こした話は聞いたことがない。

 さり気なく今の保険医はどう思うかと女子生徒達に聞いてみたら、悪い評価はあまり聞かなかった。

 ナンパ癖とキス魔っぷりに対しては、方々からかなり引かれていたみたいだけど、それが本気ではなく挨拶代わりのものであると判断している生徒が大半を占めているし、なおかつ女子生徒達からは割と評判な保険医だ。

 癖さえなんとかなれば、本当に女性のことを考えてくれている先生だと言われている程に。

 

 彼にお世話になった女子生徒達曰く、こっちの不調には真摯に向き合ってくれるらしい。

 特に、女の子の日と俗に言われている体調変化に関してはしっかりと向き合ってくれている上、保健室に行けばその際に必要な日用品各種を用意してくれているから助かっていると聞いている。

 個人差があるそれに対して、特に口出しをすることはしないし、本気でしんどいと思っている時は、側にいてくれると助かる男性として認識されていた。

 なんでも、体を冷やさないようにと毛布を引っ張り出してくれたり、ホットココアやスープなども用意してくれるのだとか。

 他にも、しんどくてベッドで寝ている時、度々様子を見にきてくれる上、してほしいことはないか聞いてくれるんだとか、してほしいことがあった時、それを伝えたら本当にしてくれるんだとか、あの癖さえなければ恋人に欲しいなとか、結構な反応をもらっている。

 

 その影響なのか、シャマル先生にお世話になった女子生徒が度々シャマル先生の隠れファンになったりガチ恋勢気味になったり、ちょっとした溜まり場に利用したりと、かなり信用されている。

 ………あのナンパ癖やキス魔っぷりさえなければと繰り返し言われているが。

 

 なんにせよ、シャマル先生のナンパ癖とキス魔っぷりに対して、私は嫌悪感を抱くことがない。

 学生……さらに言うと中学生の生徒に対してこれらの行動を取るのはどうかと思うけど、ちゃんと問題が起きない範疇でやっている上、私につきまとっていたあのストーカー野郎や、嫌悪感の塊と言わんばかりの道場破りのような、暴力的な気配や、狂気を感じないからだろう。

 

 そんなことを思っていると、ふわりと私の肩に何かがかけられる。

 よく見るとそれは、恭弥さんの学ランだった。

 

「あまり奈月に近寄らないでくれる?彼女は僕のところの役員だから。」

 

「ん〜?あー……暴れん坊の坊主が。何何?もしかして奈月ちゃんのことが……?」

 

「だったら何?」

 

「おっと……嫉妬+の殺気は結構厳しいんで、勘弁してくれ。にしても……奈月ちゃんは奈月ちゃんで罪な女の子だねぇ……。」

 

「……うるさいです。」

 

 シャマル先生の言葉に少しだけ言い返す。さっきの恭弥さんの目や発言から、これまで私が彼にちょっかいを出されていた理由とか、特別扱いされていた理由が、骸から向けられていた感情と同じものからだって悟ったばかりだからつつかないでいただきたい。

 そんな思いを込めて、ジト目でシャマル先生を睨みつければ、彼はカラカラと笑う。

 

「唾付きの女の子も時にはいいが、そっちの坊主がちょいと怖いんで、多少控えるかね。

 そういや、奈月ちゃん。オレを呼んだ理由って花見をしようってだけの話じゃねーよな?」

 

「ええ。実は……」

 

 話題を逸らしてくれたシャマル先生に、私は彼を呼び出した理由を話す。

 ことの発端が恭弥さんとリボーンの衝突であること。それを早めに解決するために、恭弥さん達にゲームをしようと提案したこと。そのゲームに勝った方の意見を聞き入れるから、負けた方は口出しをしないこと……。

 一部始終を説明し終えたら、シャマル先生は納得したような表情を見せた。

 

「なるほどな〜……奈月ちゃんもなかなかすげーこと言ったな。私のために争わないでじゃなくて、私を賭けて勝負しろなんてさ。」

 

「否定はしません。」

 

 衝突を最小限に抑えようとした結果、恥ずかしいことを口走ってしまったことを改めて確認することになり、再び顔に熱が溜まりそうになるが、なんとか気合いで堪えながら、否定はしないとシャマル先生に告げる。

 そして、改めてシャマル先生をここに呼び出した理由を口にするため静かに口を開いた。

 

「シャマル先生は男性を診ない……それは重々承知しています。ですが、念のためにお呼びしました。

 治療が必要になった場合、その時は私が怪我人を診るので、その際の助言役として協力してください。

 私の知り合いの中で、しっかりとした医療知識を持ち合わせているのはあなただけですから。

 ……シャマル先生は、女である私に助言をするだけでいい……私は助言を受けながら男性を治療する……いわゆる適材適所ですね。

 まぁ、結果としては男性を間接的に治療することになりますが、私に協力すると言う体で、ここは一つ、お力添えをいただければと……。」

 

 真っ直ぐとシャマル先生を見据えながら、そう問いかけてみると、彼は一瞬びっくりしたような表情を見せる。

 しかし、すぐに考え込むような仕草を見せ、私と恭弥さん達へ目を向けては、やれやれと肩を竦めた。

 

「間接的なのもあまり好きじゃないんだが、今回は可愛い奈月ちゃんのお願いだ。

 女の子のお願いを断るなんてことはオレにはできないし、奈月ちゃんのためにも協力するかね。

 感謝しろよ野郎共。奈月ちゃんにお願いされたから、治療の方は問題ねーぞ。」

 

「んにゃろ……っ!!」

 

「あははは!流石はナツだな!いろんな奴を味方につけちまう!」

 

「どうでもいいよ。僕には無縁だしね。さっさと始めよう。」

 

 シャマル先生に突っかかろうとする隼人に、いつも通りの武と恭弥さん。

 そんな彼らを見つめた私は、小さく頷いたあと、肩にかかってる学ランに触れる。

 

「恭弥さん。あの、学ラン……」

 

「ん?ああ、それ、奈月が預かってて。」

 

「え……?わかりました……。」

 

 学ランを返そうとしたら、預かっとくように言われてしまい、私はそれを羽織ったまま、恭弥さん達から距離を取る。

 すると、恭弥さんは私の方に一度視線を向けたあと、隼人達と向き直る。

 

「じゃあ、始めようか。どっちが先にくるんだい?まぁ、どっちがこようとも、結果はわかりきってるけど。」

 

「チッ……余裕ぶりやがって……!!おい、野球バカ!!オレが先に行くからな!?」

 

「わかってるって。」

 

 恭弥さんを睨みつけながら、前に出てきた隼人。どうやら、最初は彼が恭弥さんと勝負をするようだ。

 どんな勝負になるのやら……無言で隼人の出方を伺っていると、彼は私服の下につけていたらしいダイナマイトホルダーから複数のそれを引き抜く。

 同時にダイナマイトの導火線に火がつき、バチバチと音を立てていた。

 タバコを使わないダイナマイトを作るように言って半年以上。いったいどんな仕組みを利用して火種を使わずダイナマイトに点火してるのかと思っていたけど、なるほど……。

 隼人がダイナマイトを持ち歩くために使用してるホルダーの中に、摩擦で火を起こす着火装置が組み込まれていたのか。

 確かにそれなら、ダイナマイトを取り出すのと同時に火をつけることができる。

 

「てめーだけは絶対にぶっとばす!!」

 

 よく考えられた道具だと思っていると、隼人は地面を蹴り飛ばし、そのまま恭弥さんに殴りかかる勢いで距離を詰めた。

 誰が見ても真っ直ぐとしか言えない攻撃。恭弥さんも同じことを思ったのか、愛用しているトンファーを構える。

 

「いつも真っ直ぐだね。わかりやすい。」

 

 間合いに入った瞬間、恭弥さんは隼人を殴り飛ばそうとトンファーを振り下ろした。

 ……が、恭弥さんのその攻撃を、隼人はすかさず身躱しを行って回避し、すり抜けるようにして体を捻り、手にしていたダイナマイトを恭弥さんの周りに滞空するように投げつけて、彼の背後へと回り込んだ。

 

「ボムスプレッズ……オレの新技だ。果てな!!」

 

 吐き捨てるかのように隼人が言葉を紡いだ瞬間、恭弥さんの周りにあったダイナマイトが一斉に爆破する。

 燃え尽きた導火線の長さが長かったものは、爆発したダイナマイトを火種に誘爆されていく。

 辺りに大きな爆発音。普通なら、ここまで行くと心配するべきなんだろうけど、爆発が起こる寸前、恭弥さんが直撃を避けるようにして滞空していたダイナマイトの弾幕から抜け出していたのを確認していたため、特に動くことはしなかった。

 

「ナツが変な奴に付き纏われていたことがあったって聞いて、獄寺の奴はナツをしっかり守れるようになりたいって言ってたんでな。

 それなら、遠距離と近距離の両方をスピーディに切り替えることができる技を作ってみたらどうだって言ってやったんだ。

 そしたら、何度もオレのところにきては特訓をつけてくれって頼み込んできたんだぞ。

 そんで完成させたのが、攻撃を回避しながら、ダイナマイトの置き土産をその場に残すボムスプレッズだ。

 最初のうちは、獄寺の奴、体がちとかてーせいでなかなか上手くいかなかったんだ。

 でも、今は活用できるレベルに成長してるぞ。ちなみに獄寺は他にも技を考え中だ。」

 

「そう……。」

 

「……ナツ。ヒバリの心配をしてねーな?」

 

「してないよ。だって、恭弥さんはあれ食らってないもん。」

 

 リボーンの言葉にそう返すと同時に、トンファーが風を切る音が聞こえる。

 

「で……?続きはないの?」

 

 その音が聞こえる方へと目を向けると、恭弥さんがトンファーを回すことにより発生する風を利用して、爆風を吹き飛ばしていた。

 その表情は、違う行動を取ったくせにその程度かと言わんばかりのもので、つまらないんだけどと今にも口にしそうだ。

 

「なっ!?トンファーで爆風を!?」

 

 ダメージを受けていない上、奪った視界すらも即時回復されてしまったため、動揺を見せる隼人。

 その姿に思わず呆れてしまう。隼人は自身が殺し屋だったことや、手にしている武器に対して慢心し過ぎだ。

 相手は言ったら悪いけど、遥かに隼人より格上の能力を持ち合わせている恭弥さんであることを念頭に置いておかなくては意味がない。

 ダイナマイトの火力を考えれば格上相手でも一撃で終わるとでも思っているのだろうか?だとしたら甘いにも程がある。

 恭弥さんが一撃で終わるわけがないだろう。攻略するには一撃だけでなく、二撃、三撃としっかり攻撃を放たなくては、恭弥さん勝つどころか、膝をつかせることすらできるわけないだろ。

 

「普段なら二度と花見ができないようにするところだけど、今日は気分が良いからね。」

 

 恭弥さんと何度も手合わせをしているからこそ隼人の判断は間違いだと、目を伏せながら考えていると、恭弥さんが恭弥動き出す。

 彼は口元に笑みを浮かべながら、地面を強く蹴り上げて、隼人との距離を一気に詰めた。

 

「少しだけ、加減をしてあげるよ。」

 

 恭弥さんがトンファーを振りかぶれば、隼人はそれを回避する流れで地面に膝をつく。

 同時に恭弥さんは二撃目を放ち、隼人の顎に当たるスレスレで寸止めに留め、完全に彼に尻餅をつかせた。

 

「……膝をついたから君の負け。これで僕が1勝だ。」

 

「っ………くそっ……!!」

 

 隼人が悔しそうに表情を歪めて、短い言葉を吐き捨てる。

 そんな彼を見据えてため息を吐いた私は、すかさず隼人に近寄った。

 

「隼人。自身の力に自信を持つことは大事なことだけど、過剰に信じ過ぎて慢心してしまう癖はなんとかしないとダメだよ。」

 

「10代目……」

 

「確かに、ダイナマイトの威力はかなりのものだし、それが当たれば相手に大きなダメージを与えられる。

 でも、格上を相手にするならば、一撃だけでなく、二撃、三撃と複数の攻撃を組み合わせなければ通用するはずもないだろう?

 隼人は確かに強い。だけど、恭弥さんはそれ以上に強く、技術も能力も洗練されている人なんだよ。

 これから先、恭弥さんみたいに格が上な存在は、たくさん現れると思うし、いくつか状況を想定した上で戦闘することをすすめるよ。本命だけでなく、複数の状況を想定した上で戦闘できるようにしてごらん。

 そうすれば、隼人でも恭弥さんに喰らいつける実力を身につけることができるはずだから。

 ……私を守ってくれるんでしょ?その気持ちは嬉しいし、できればお願いしたいから、これらを踏まえてこれからも頑張ってね。」

 

「!はいっス!!10代目の期待に応えられるように、これからも右腕として精進します!!」

 

 隼人にある悪い癖を指摘しながら、それを良い方向へと転じさせるために必要なことを伝えれば、彼は目をキラキラさせて私の言葉に頷く。

 経験が少ない私が、偉そうにこんなことを言うのもどうかとは思ったけど、これから先、隼人の命を守るためにも必要なことだからと割り切って、しっかりと伝えられてよかったかな。

 ……一撃だけじゃなく、二撃、三撃と攻撃を重ね、複数の事態を想定する……これは、私がアラウディさん達から教えてもらった戦術の基礎だ。

 これができるとできないとでは、遙かに状況が変わってくると、戦闘技術を教えてくれてる初代組とDさんから言われている。

 それには私も賛成だった。複数の事態を想定し、状況に応じて行動を変えることができると、一般的な仕事でもかなり楽に作業ができるようになったから。

 だからこそ私は技術を身につける。状況に応じて使える手札が多ければ多い程、想定できるものが増えたから。

 

「うっし。次はオレだな。」

 

「あまりこんなことは言いたくねーが、オレの代わりにヒバリの野郎ぶっ飛ばせよ、山本。」

 

「ぶっ飛ばすことはできるかわかんねーけど、せめて一矢は報いてーなぁ。」

 

 やっぱり、複数の手札はどの界隈でも持ち合わせておくべきだな……なんて、これからのことを考えていると、いつでも準備万端の恭弥さんの前に、武が一歩踏み出てくる。

 片手にはリボーンが彼に渡した刀に変形するバットが握られており、それで恭弥さんに挑むつもりであることがわかった。

 

「結果は変わらないと思うけどね。」

 

「アハハハ!わっかんねーぞ。こっちも小僧にいろいろ手伝ってもらってたしな。」

 

 いつも通りの2人。どんな時でも普段通りに行動を取ることができると言うことは、余程のことがない限り、どこでもリラックスした状態でいることができると言うことだから、かなりのものだ。

 まぁ、ゲームと称している分、気楽にやり合っている……と言うのもありそうだけど……。

 

「ふぅん?じゃあ、どれだけいけるか見せてよ。」

 

 今回、最初に仕掛けたのは恭弥さんだった。彼は、すぐに地面を蹴り上げ、武にトンファーを振り下ろす。

 すると武は目つきを鋭くさせたのち、手にしていたバットで応戦し、恭弥さんの攻撃を刀で受け止めた。

 

「へぇ……やるね。」

 

 “結構本気を出して殴りかかったんだけど”……と不敵に笑う恭弥さん。

 武はそんな恭弥さんの姿に少しだけ冷や汗を流すが、すぐに頭を切り替えて、手にした刀を振り下ろす。

 

「っと、やっぱ簡単には膝をついてくれねーよな。」

 

「当然。」

 

 あ、恭弥さん、少しだけ楽しそう……と、数回瞬きをしながら考える。

 自分の攻撃を受け止められたから、久々にちょっと火がついたのかも……。

 リボーンから聞いたけど、初めて顔を合わせた時、隼人も武も恭弥さんの攻撃に対して長く持たなかったらしいし、そんな2人がちゃんと対策を持って挑んできたのが嬉しいのかもしれない。

 基本的に恭弥さんの攻撃に対処できる人なんていなかったしね。

 

 ……恭弥さんは、武に対して鋭い攻撃を連続で放ち続けるが、武はそれを全て防ぎながら、時にはしっかりと反撃している。

 私が隼人にしたアドバイスを聞いていたのか、どうやら武はそれを実行しているようだ。

 一撃がダメなら二撃、三撃と複数の攻撃を組み合わせている。これは、武器が刀であることも関係していそうだな。

 どんなゲームであれ、剣のような攻防のバランスの取れた近接武器は、連撃を放つことや掃討力に長けている。

 武の動体視力も考えると、リボーンが彼に刀を渡したのは、ある意味正解だったのかもしれない。

 ………一般の人に刀を持たせるのはやっぱりどうかと思うけど。

 

「前に比べたらかなり強くなってるし、楽しめるようにはなってる。でも、やっぱりまだ弱いね。」

 

「!」

 

 そんなことを思っていると、武となかなかの攻防を繰り広げていた恭弥さんが、少しだけ残念そうな声音を出し、武が振り下ろした刀をトンファーで止める。

 彼と同じ武器を持っているからこそ、私は恭弥さんが真正面から刀を受けた理由を察することができた。

 

「僕の武器には、まだ秘密があってね。」

 

「秘密……?」

 

 恭弥さんが口にした秘密と言う言葉に、武が疑問の声を上げる。

 その瞬間、恭弥さんはトンファーの持ち手部分を軽く捻り、武の刀の刃が触れている場所より上の方にある仕掛けを発動させた。

 そこから飛び出てくるのは鉤爪のよう突起。仕掛けの発動と同時に出てきたそれは、武の刀の刃をガッチリと挟み込む。

 

「!?(仕込み鉤!?)」

 

 咄嗟のことに動揺しながらも、武はすぐに離れようとするが、仕込み鉤が刀を押さえ込む力は強く、恭弥さんとの距離を取ることができない。

 それを見た恭弥さんはそのまま武を刀ごと引き寄せたのち、仕込み鉤の仕掛けを解除する。

 

「い!?」

 

 急に拘束を解かれたことにより、武はその場でバランスを崩す。恭弥さんは体勢を崩した武の足元に、自身の足を引っ掛けて、そのまま完全に武を地面へと転倒させてしまった。

 

「いで!?くっそ〜……転倒しちまった……」

 

「何やってんだよ野球バカ!!」

 

「獄寺も山本もそれなりに能力が向上していたし、連戦ならヒバリの膝を地面につけることくらいはできると思ってたんだが、やっぱ、そう簡単にはいかなかったか……。」

 

「悪ぃ、小僧。」

 

「すみません、リボーンさん。10代目との時間は、守れなかったっス……。」

 

 武が転倒したことにより、軍配は恭弥さんの方に上がる。かなり残念そうにしてる隼人と武には申し訳ないけど、ルールだからなぁ……。

 

「お疲れ様です、恭弥さん。学ラン、お返ししますね。」

 

「うん。持っててくれてありがとう、奈月。……さて、これでゲームは終わって、奈月は僕のところにくることになったわけだけど……それなりに楽しめたし、いくつか条件を変更してあげるよ。」

 

 とりあえず恭弥さんに学ランをお返しして……と肩にかけていたそれを外していると、恭弥さんが突然そんなことを言う。

 急なことに、私含め、隼人と武もポカンとした表情を返す。しかし、恭弥さんはそんな私達全員を見回したのち、リボーンの方に目を向けた。

 

「花見の場所。僕が最初に使っていた場所を使っていいよ。僕と奈月もその付近で過ごすから。

 ただし、雪合戦が終わったあと、保健室内で取れていた距離は取ること。あれだけ距離があれば、奈月と僕だけのペアと君らの群れで分けて考えられるから、気分も悪くならないしね。

 それと、ある程度なら君達も奈月と話してもいいよ。要件は3分以内。雑談は5分以内で済ませて。

 言っとくけど時間はしっかり計るからそのつもりで。話し終わったら最低でも20分間は奈月に話しかけないことも条件だから。」

 

「「……マジか。」」

 

「ヒバリの性格から考えると、かなり妥協された破格の条件だな。」

 

 まさかの妥協案が恭弥さんから出てきてしまい、隼人達が驚いて固まる。

 正直言って、私もかなり驚いてしまった。どちらかと言うと独占欲が強いタイプの恭弥さんが、そんなことを口走るとは思わなかったために。

 

「珍しいですね。恭弥さんが妥協案を提示するなんて。しかも、かなり内容が優しいし……。」

 

 何度か瞬きをしたあと思ったことを口にすると、恭弥さんは一瞬キョトンとする。

 しかし、すぐに小さく笑ったのち、私の頭に手を乗せて、緩やかな手つきで撫でてきた。

 

「奈月が少しだけ寂し気だったし、久々に体を動かすことができて楽しかったからね。

 だから、これくらいはしてあげようと思ったんだ。こうすれば、奈月も少しは寂しく無くなるだろ?」

 

「………ありがとうございます、恭弥さん。」

 

 ちょっとの表情変化がバレてたのかと苦笑いをこぼしそうになる。でも、恭弥さんがここまで妥協してくれたのはすごく嬉しくて、自然と笑顔が浮かんでいた。

 

「あ、なっちゃん達いたよ。」

 

「本当ですね!!ナツさーん!!場所取れましたかー!?」

 

 恭弥さんに頭を大人しく撫でられていると、遠くの方から京ちゃんとハルの声が聞こえてくる。

 すぐに視線を声の方に向けてみれば、声の2人とちびっ子達、そして、母さんとビアンキ姉さんの姿がそこにはあった。

 

「こっちだよ。」

 

「おっ!可愛いらしいレディ達がたくさんきてるじゃないか!」

 

「シャマル先生のために呼んだわけではありませんがね。」

 

 すぐにでもナンパしようとするシャマル先生に静止の声をかけながら、京ちゃん達を見据えていれば、程なくして彼女達がここに合流する。

 全体的に桜が見えるこの場所は、女性達にとっては最高の場所だったようで、全員が目を輝かせている。

 

「わー!特等席じゃないですかー!」

 

「うん。恭弥さんが過ごしていた場所なんだけど、使わせてくれるみたいでね。」

 

「そうだったんだね。ありがとうございます、ヒバリさん!」

 

「……別に。僕は奈月にお願いされたから聞いてあげただけだけど。」

 

「はひ〜……なんと言うか、クールな人です………。」

 

 感謝の言葉を述べる京ちゃんと、ぶっきらぼうに言葉を返す恭弥さん。

 ハルは、初めて顔を合わせることになった並盛中学校の生徒に、少しだけたじたじになりながら言葉を紡ぐ。

 

「あなたは確か、並盛中学校の風紀委員長さんの雲雀恭弥君ね。」

 

「そうだけど……」

 

 そんな中、母さんが恭弥さんに声をかける。恭弥さんは何度か瞬きをしたのち、話しかけてきた母さんに返事をする。

 恭弥さんの返事を聞いた母さんは、にこにこと人懐っこい笑顔を見せて言葉を紡いだ。

 

「奈月からよく話を聞いてるわ。いつもお世話になってるみたいで……」

 

「別に。僕が好きでやってるだけだし、僕も奈月には普段から手助けしてもらってるから気にしないで。」

 

「ふふ!奈月の言っていた通りの男の子ね。物静かで、どこか落ち着く雰囲気がある。これからも、私の娘をよろしくお願いしますね。」

 

「……ええ。」

 

 どうやら、母さんは恭弥さんに挨拶をしたかったようだ。

 母さんから挨拶をされた恭弥さんは、彼女が口にした娘をよろしく頼むと言う言葉に小さく頷き口元を緩めた。

 

「さ!みんなお花見をしましょ!雲雀君も一緒にどうかしら?」

 

「僕も?……じゃあ、少し離れた位置に邪魔させてもらうよ。」

 

「あら……」

 

「ごめん、母さん。恭弥さんって、大人数の中にいるの、ちょっと苦手で……。少し離れた位置にいるだけなら問題はないみたいなんだ。」

 

「そうだったのね。じゃあ、なっちゃんは雲雀君の隣にいてあげてね。」

 

「うん。」

 

「はい。なっちゃんが作っていたお弁当とサンドウィッチね。シートも複数持ってきたから、これ使いなさい。」

 

「ん。」

 

 母さんから自分が作った弁当とサンドイッチが入ってるバスケットを受け取り、恭弥さんの側に近寄れば、彼は私の手元からシートをさっと取り、母さん達が準備してる位置から、それなりに離れた場所にそれを敷いた。

 それを確認したのち、シートに腰を下ろせば、恭弥さんもすぐ側に座ってくる。

 

「……いい場所を取ってくれたお礼に、ナツに私の弁当を分けてあげようと思ったんだけど、ナツとヒバリの時間を邪魔をするのはよくないわね。」

 

 ……ビアンキ姉さんになんか勘違いされたような気がするけど、ポイズンクッキングを回避できそうだから、そのままスルーしよう。

 そんなことを思いながら、母さんから受け取った2人分の割り箸を恭弥さんに手渡す。

 

「どうぞ。料理はお菓子作り程得意ではないので、恭弥さんのお口に合えばいいのですが……。」

 

「ありがとう、奈月。」

 

 私から割り箸を受け取った恭弥さんは、私が作ってきた弁当を食べ始める。

 サンドウィッチはあまり食べてない様子から見ると恭弥さんは和食の方が好きなのだろうか。

 あ、ハンバーグ食べた時、めちゃくちゃ嬉しげな表情した。ハンバーグ好きなのか。

 もぐもぐとサンドウィッチを食べながら、そんなことを思っていると、恭弥さんと私の視線が絡む。

 

「……見過ぎだよ、奈月。」

 

「すみません。お弁当を夢中で食べている恭弥さんがちょっと可愛かったもので、つい。」

 

「あまり嬉しくないよ、その言葉。」

 

 じっと見つめていたせいで、恭弥さんに気づかれてしまったようだ。見過ぎだと注意されたけど、可愛いかったから仕方ない。

 そんなことを思いながら、恭弥さんにお茶入りのコップを差し出すと、彼はそれをすぐ受け取って飲んだあと、小さく笑う。

 

「料理はお菓子作り程得意じゃないと言っていたけど、そんなことないよ。すごく美味しいから。可能なら、新学期から作ってきてほしいくらいだね。」

 

「……そう……ですか?」

 

「うん。だから自信を持って。」

 

「……ありがとうございます。」

 

 普段の私だと、そんなことはないですよ、って言うところだけど、恭弥さんはお世辞を言うような人じゃない。つまり、これは本当にそう思ってくれたと言うことだ。

 それが少し嬉しくて、私は笑って恭弥さんにお礼を言う。まぁ、恭弥さんなら別にって言うんだろうけどね。

 

「別に、思ってたことを言っただけだよ。」

 

 ほら、やっぱり。

 恭弥さんならそう言うと思ったと、小さく笑い声を漏らしてしまう。

 

「……私、普段からお弁当を作って学校に行くので、1人分増えたところで状況はあまり変わりません。作ってきましょうか?」

 

「いいの?じゃあ、お願いしようかな。」

 

「わかりました。」

 

 こんな料理でも構わないのであれば、と恭弥さんにもお弁当を作ってくると口にすれば、彼は一瞬だけキョトンとしたのち、作ってきてほしいと告げてくる。

 それを了承するように頷けば、恭弥さんは穏やかな笑みを浮かべたのち、再びお弁当を口にし始める。

 

「好きなものや嫌いなもの、食べられないものがあれば教えてください。」

 

「和食は全般的に好きだよ。あとはハンバーグも好きだね。ただ、芽キャベツだけは苦手でね……」

 

「わかりました。」

 

 お弁当は基本的に和食が中心になるわけだけど、もう少しレパートリーを増やして、週に1、2回はミニハンバーグも入れようか、と一週間のお弁当構成を考えていると、恭弥さんが割り箸を納める姿が視界の端に映り込む。

 どうやらお腹いっぱいになったらし……って、よく見ると弁当の大半が恭弥さんに食べられてんだけど。

 大人用の弁当箱買っておくか……。

 

「ごちそうさま。新学期、楽しみにしてるからね。」

 

「わかりました。まぁ、期待はそこまでしないでいただければ助かるんですけどね。」

 

「謙遜する必要はないと思うけど。」

 

 いやいや、謙遜はしますって……と苦笑いをこぼしていると、恭弥さんが座り込んでいる私の膝に頭を乗せてくる。

 

「……賑やかだし、眠ることができないと思うのですが。」

 

「知ってるよ。」

 

「知ってるならなんで……」

 

「気分。」

 

「気分ですか……」

 

 相変わらずマイペースな猫みたいな人だと思いながら、恭弥さんの頭を左手で軽く撫でれば、彼は一度私の方に目を向けたあと、小さく笑った。

 そんな恭弥さんに笑い返した私は、パンクズを落とさないようにするため、サンドウィッチをバスケット内で一口大にちぎって食べる。

 

「……あんにゃろぉ…………。」

 

「羨ましいよな……」

 

「今回は仕方ねーな。大人しくこっちで花見をするぞ。」

 

「おーおー、いっちょまえに嫉妬してんな。」

 

「ていうかなんでいるのよこいつが。」

 

「奈月ちゃんに呼ばれたんだって。まぁ、結局、奈月ちゃんが場を収めたからオレの活躍はなかったんだけど。

 まぁ、いいか!何もしなくてもこーんなに魅力的なレディ達とお花見できるんならただのご褒美だ!

 奈月ちゃんがいないのはちょっと残念だが、あの暴れん坊の坊主が目を光らせてっから何もできないわ。」

 

「今のヒバリは邪魔してやんなよ。間違いなく殴り飛ばされるぞ。」

 

「そん時はそん時でこっちも反撃すりゃいいってだけだが……奈月ちゃんも楽しそうだし、そんな野暮なことはしねーよ。」

 

 離れた位置で話しているメンバーもいたけど、比較的に穏やかな時間が流れる。

 同時に私は、恭弥さんから本当に特別な身内扱いをされているのだと改めて認識する。

 甘い熱を宿す瞳を向けてくる恭弥さんの今の意識は、完全に私だけに向けられているのだから。

 

 

 




 沢田 奈月
 ようやく雲雀の特別な好意に気づき、彼の中での自分の位置や立場を理解することができたボンゴレ10代目。
 これから先、自分が彼にとっての特別になることが、雲雀ともう1人の特別の勝敗を決めることになることはまだ知らない。

 雲雀 恭弥
 ようやくこちらの感情を理解した様子の奈月に、気付くのが遅いと呆れながらも、グイグイ迫り始めた風紀委員長。
 奈月と言う特別が本当の意味でできてしまったことが、これから先に起こる1人の少年との戦いの勝敗を分ける原因になることをまだ知らない。

 リボーン、獄寺、山本
 雲雀にジェラった3人組。獄寺と山本はこれから先、雲雀ばかりに有利を取られたくないと2人で特訓するつもりであり、リボーンはそれを監督するつもりでいる。

 ビアンキ
 奈月に対する雲雀の感情を把握したので、邪魔をしたら悪いわね、と持ってきた弁当は獄寺達……ではなくシャマルにぶつけることにした。

 Dr.シャマル
 嫉妬する獄寺達をからかっていたが、のちにビアンキからポイズンクッキングをお見舞いされた。
 なお、普通に防いだ模様。


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