最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
新学期初めの翌日。半日の授業を終わらせて、恭弥さんの仕事を手伝うために応接室へと足を運ぼうとしていたら、「ちょっとそこの風紀委員さん」と外の方から声が聞こえてきた。
この場にいる風紀委員は私だけ。念のため辺りを見渡したが、学ランリーゼントはやはりいない。
となると、私を呼ぶ声だったことが確定する。
「どうかなさいましたか?」
声の方へと目を向けてみれば、そこには並盛中学校の清掃を行っている女性がいた。
何か清掃中に不備でもあったのだろうかと思い、清掃員さんに近寄ってみれば、清掃員さんは一冊の授業用ノートを取り出した。
「お仕事中に悪いのだけど、2年A組の内藤君にこれを届けてくれないかしら?次は内藤君の番だって言って渡せば伝わると思うから。」
「…………はぁ。」
手渡されたノートを受け取りながら、マジか……と表情を曇らせる。
2年A組にいる内藤なんて、私が知る限りだと1人しかいないんだけど?
「は─────いはいっ!!沢田ちゃ────ん!マコてぃ────ん!」
受け取ってしまったからには渡すけどさ……と気が乗らない中、背後から聞こえてきたやかましい声に表情をさらに歪める。
噂をすれば影とはよく言うけど、何でタイミングよくくるんだよ。このタイミングでくるくらいならもうちょっと早くこい。
そしたら私が足止め食らうこともなかったんだから。
「ローン!シャンシャンシャンシャン!!どぇす!!こん……」
「やかましい。」
「ぶっ!!?」
相変わらずのハイテンションにイラっとしながら手元にあったノートを顔面にパイ投げの要領で勢いよく押し付けてやかましいロンシャンを黙らせる。
べちんっ!!と言う乾いたいい音が響いた。うん。割とスッキリ。
「頭が痛くなる。いつもいつもハイテンションじゃなきゃ対応できないのか内藤。」
「いててて……メンゴメンゴ……!沢田ちゃん、賑やかなんダメなんだ……。獄ちゃんとか割と賑やかだから大丈夫かと……」
「確かに隼人達と行動を取ってるけど、私自身が好んでいるのは静かな状態だ。そっちのハイテンションについていける技量はない。少しくらい静かにしろ。頭が痛くなる。不愉快だ。」
「……はい……ごめんなさい…………。」
ハッキリとうるさ過ぎるのが不快であることを告げれば、ロンシャンは縮こまりながら謝罪をしてきた。
他人の快不快に対してちゃんと反省することができるなら、まぁ、まだ注意しても話を聞かない連中よりはマシだろう。
「で?何の用?用がないなら私はさっさと仕事に戻らせてもらうけど。」
「あ、ちょっと待って沢田ちゃん!」
「何?」
「ちょっとだけマコてぃん紹介させてよ!実はこのマコてぃん、オレのマイ彼女なんだよね。」
「…………マジで言ってる?」
「マジのマジ!大マジなんだよねー、これが!」
呼び止められたかと思えば、とんでもない爆弾を投下してきたロンシャン。
あんたがマコてぃんって呼んでる人、どう見ても親と子くらいの年齢差がある気がしてならないんだけど?
「それじゃあね、内藤君。」
「あ、うん!交換日記ありがとねマコてぃん!」
信じられん……と言うようにロンシャンに視線を向ける中、目の前でわかれる2人組。
清掃員さんはにこやかな笑顔でロンシャンに手を振っていて、一応は事実であることを認識する。
しかし、私はそのことに対して、ある一つの引っ掛かりを覚えていた。
気のせいじゃなけりゃ、ロンシャンは昨日、別の女の子と一緒に過ごしていたはずなんだけど。
「……昨日、別の人といちゃついてなかったっけ?ほら、あのふくよかな体つきとつぶらな瞳をしていた女の子。確か、他の男子にも自慢してたよね?」
「え!?沢田ちゃん見てたの!?」
「たまたま校舎内から見えてね。手を繋いだり、君がラブコールを飛ばしたりと、仲良さげに見えたけど……。」
「まぁ、そうなんだけどね。もう別れちった!」
「は?あんなに仲良かったのに?」
まさかの事実に、思わず目を丸くする。あんなに好きが溢れていたのにわかれるとか何があったんだ?
まぁ、可能性として挙げるなら、交際を暴露されたくないタイプの女の子だった……って感じだろうけど。
「ま!テルミの話はこれくらいにして!新学期だし、2年になったんだし、同じマフィアのボス同士、何か新しいこと、始めてみない?」
「は?」
急に何言ってんだこいつと言わんばかりの視線を向ける。
新しいことを始めないかだって?風紀委員長補佐なんて役職を与えられて更に忙しくなってるこの時期に?
「マフィアは否定しないけど、新しいことなんか始める時間、私にあるわけないだろ。」
「そう言わないでさ!ほら、仕事の合間にできる気分転換的な?そんなのを沢田ちゃんも増やしてみたらどーよ?
ずっと仕事ばっかとか、絶対に息が苦しくなると思うし、そんなのをスカッと発散できるようなもの始めてみない?
せっかくだからこのウキウキ春気分に便乗してさ。一緒になんかやってみようよ!
ちなみにわたくし、去年の春にはドe…もが!?」
「ストップストップスト─────ップ!!ストップですぞロンシャン君!!
流石にそれは!!それは以上は言ってはなりません!!目の前にいるのは男子ではなく、立派なレディです!!
ボンゴレと言う立場は持ち合わせておりますが!!対抗すべき相手ではありますが!!それだけは!!絶っっっっ対に言ってはなりません!!
流石にこのマングスタでもそれ以上の発言は見過ごせませんからね!?」
「……必死の形相で止めてるところ悪いけど、あんた、ただでさえ背高のっぽで手が大きいんだから、両手で力一杯押さえると鼻まで覆われて、内藤が窒息しそうになるよ?」
「あ……」
……なんとなく、マングスタの発言と思春期男子ならやらかしそうなことを脳裏に浮かべてしまい、ロンシャンが何を言おうとしたのかを察する。
前世で学生やっていた時、男子が学校に女子がいるにも関わらず盛り上がっていたからね。
多分……まぁ……そう言うことなんだろう。
それはそれとして、流石に目の前で生徒が窒息しそうになってるのは風紀委員としても見過ごせないため、離してやれと伝えれば、マングスタは慌ててロンシャンから手を離し、ゴホンッと一つ咳払いをこぼした。
「失礼、ボンゴレ。今回ばかりは、こちらのボスが失礼しました。これに関してはしっかりと指導しておきます。」
「……うん。その方がいいだろうね。間違いなくそのままだと女にドン引きされるボスになっちゃうから。内藤の将来も考えてしっかり教えてあげて。」
ロンシャンの頭をガッツリとヘッドロックし、謝罪させるためか無理矢理頭を下げている。
……一応、モラル的な方面はしっかりしてんのね、このおっさん。まぁ、自分のボスが異性がいる中で下ネタまがいのことを口走ろうとしたんだから当然か。
「……口出しするタイミングを一瞬見失っちまったが、まぁいいか。
やるとかやらないとかは関係なしに、とりあえず見聞を広げてみることにはいいと思うぞ、ナツ。
試しにちょっとうろついて、息抜きでもしてみたらどうだ?ヒバリは今応接室にいねーしな。」
「…………。」
そんなことを思っていると、すぐ側から聞き慣れた声が聞こえてくる。
視線を声の方へと向けてみれば、そこにはなぜかスフィンクスのコスプレをして鎮座しているリボーンの姿があった。
「レッツビギン!」
「……………………。」
「……おい、ツッコむか疑問を口にするかしてくれナツ。無言はかなり傷つくぞ。」
「……何がしたいわけ?」
「オレも新学期にピラミッドパワーを始めようと思ってな。」
「アホくさ。」
「……………。」
あまりにも馬鹿らしくて冷めた反応を返すと、リボーンは無言で私を見つめたあと、ごそごそと着ていた着ぐるみを脱ぎ、いつものスーツとボルサリーノ姿に戻り、私の肩に乗ってきた。
「……何をすればナツみたいなタイプの女が喜ぶのかもうちょっと勉強しときゃ良かったな。」
「めちゃくちゃ落ち込むじゃん。」
リボーンの反応に困惑する。まさかここまでしょんぼりするとは思わなかった。
どれだけあれに自信持ってたんだこのお目付役。ていうか、何でいちいちコスプレしてくるかなこの人は。
別にそんなことしなくても……。
「……私はいつも通りのリボーンの方が好きだし、別にコスプレしなくてもいいっての。」
「!……そうか。いつも通りの方が好きなんだな。」
あまりの落ち込みように、少しだけ申し訳なく思いながらも、私は自分の本音を口にする。
するとリボーンは一瞬こっちを見たあと、頭に被ってるボルサリーノを片手で下げて目元を隠してしまった。
……少しだけ、リボーンの耳が赤くなっているのは、気のせい……ではなさそうだな。
「何照れてんの。」
「別に、オレは照れてねーぞ。」
「ふぅん?」
こっちの指摘を即行で否定してきたが、赤い耳はあまり隠せていない。
珍しい反応をするもんだから少しだけ揶揄いたくなったけど、流石にそんなことをしたらリボーンが怒りそうだと思い、スルーしておくことにしよう。
「……えーっと沢田ちゃん?誰よそのカワイイベイビーは。」
自身の悪戯心を抑えながらリボーンから視線を外していると、困惑気味ロンシャンが話しかけてくる。どうやら、リボーンと私が話していたから、話しかけるのを躊躇っていたらしい。
で……まぁ、彼の視線の先にいるのは、ベイビーの言葉の通りリボーンなわけで……
「オレか?オレはナツの家庭教師のリボーンだぞ。まぁ、最初はビシッとボスらしく育て上げるつもりだったんだが、ナツはスペックがとんでもレベルだったんでな。
最近じゃ、家庭教師って言うよりは、ナツを見守るお目付役になっちまった。」
リボーンはすぐにロンシャンの質問に答える。先程までボルサリーノを目深に被って照れ顔を隠していたくせに、なかなか切り替えが早いものである。
「うっそ、すげー!!こんなにちっさいのに、沢田ちゃんのお目付役なんてやってんだ?」
「まぁな。」
ロンシャンの褒め言葉に対して、当然だと言うように肯定するリボーン。
そんな中、こっちに話しかけてくる者が1人いた。
「侮ってはいけませんぞロンシャン君!!彼こそボンゴレ一の殺し屋ですぞ!!」
そう、マングスタだ。さっきはあっさりとロンシャンの非を認めて謝罪をしていた彼だが、やはりリボーン……と言うよりは、ボンゴレと張り合うのは当たり前になっているようで、ぷんぷん怒りながらロンシャンに注意する。
マングスタの背後にいる2人組は一度も言葉を発してないけど、何なんだろ、あの2人。
「沢田ちゃん沢田ちゃん。」
「何?」
「いやぁ、オレのファミリー見て首を傾げてたからさー!もしかして、あの2人が気になっちった?」
「まぁ、一言も話さないからね。」
「あははは!それはそう!!何も話さねーから気になっちゃうよね?そうだなぁ……オレが言えることって言ったら、パンテーラの方は無口で、もう1人のチビの方は富士の樹海に一年に一度だけ咲く花を渡した人にしか心開かないってところ?」
「……難しい性格をしてるファミリーだな。」
まだ意思疎通がしっかりできる分、隼人達の方が扱いが楽な気がする。
まぁ、隼人も隼人でちょっと短気で、すぐに喧嘩をふっかけたりするし、武は武でド天然過ぎるところが気になるけど……。
忠誠心が高かったり、フレンドリーに接して場の空気を軽くしてくれたり……いいところもいっぱいあるけどね。
「それはそうと、新学期に新しい事を始めるのは私も賛成です!!ここは部活なんてどうですか、ロンシャン君!!」
「おー!部活!ど真ん中!いいじゃんいいじゃん!」
「……頭痛くなるから騒がしくしないでもらえる?」
「あ、メンゴメンゴ!つい癖で!」
「……ロンシャン君。ボンゴレにあっさりと謝罪するのはどうかと思いますぞ。」
冷静なツッコミをロンシャンに入れるマングスタ。しかし、ロンシャンはそんな彼を気にしていないのか、笑顔で私に謝罪をした。
……心なしか、マングスタも若干静かになった気がする。一応は、静かにしてくれるのか。
「うむ!!いいではないか!!」
そんな事を考えていると、背後からよく通る声が聞こえてくる。
すぐに視線を声の方へと向けてみれば、そこには了平さんがいた。
「ボクシング部に入ってしまえば!!」
「……了平さん。ボリューム落としてもらえます?かなり近い位置にいるのに大音量で騒がれると耳が痛いです。」
「む!?す、すまん!つい、部活の癖でな……」
顔を顰めながら、大きい声に対して指摘すれば、了平さんは反省したように謝罪をする。
そのことに少しだけため息を吐きながら、彼に視線を向ける。
「……了平さん、卒業式の時にやらかしたって話を聞きましたけど。」
「ああ。その話か。実はな。卒業式に出席した時、卒業生代表として皆の前に立とうとしたんだ。だが、オレは自身が忘れる程に2年だったのだ!」
「……なるほど。それで京ちゃんが恥ずかしそうにしていたのか。」
「う、うむ……!!京子にはかなり悪い事をしてしまったと反省している!だが、今年ことそんなことはない!ちゃんとメモにも残したからな!
さぁ、今年こそ3年!どうだ、奈月!ボクシング部に入る気は……」
「いや、無理ですよ?恭弥さんが許可を出してないし、今年から私は風紀委員会委員長補佐として仕事をこなすことになりましたから、新しいことを始めるのは難しいんです。
まぁ、一応見学だけはさせてもらいます。今、恭弥さんは応接室にいないようですし、そこにいる赤毛の彼が、新学期に便乗して新しいことを始めたいようですし、付き添い程度に。」
「よし!!では我がボクシング部の部室の方へと向かうぞ!!」
行くぞ!とやる気に溢れた様子で部室の方へと向かう了平さんの背中を見つめながら、私はロンシャンの方に目を向ける。
私の視線に気づいたロンシャンは、すぐにこっちへと視線を向けてくる。
「行くよ、内藤。新しいことを始めたいんだろう?探すことくらいは手伝ってあげるから。行くよ。」
「おー!ありがとねー!沢田ちゃん!でも、せっかくなら沢田ちゃんも一緒に新しいことを始めようよ!」
「……気が向いたらね。」
“まぁ、やるつもりはないんだけど”……と言う言葉は飲み込みながら、了平さんの背中を追うように歩みを進める。
「……もしかしたら、トマゾファミリーの特殊弾を見ることができるかもしれないかもな。」
そんな中、私の肩に乗っていたリボーンがポツリと呟く。
それを聞き私は視線を彼に向ける。
「トマゾファミリーにも特殊弾が?」
「ああ。今のところ、トマゾファミリーに危険性はねーが、ずっと続くかと言われたらわからねーからな。念のため、頭の中には入れておく方がいいと思うぞ。」
リボーンの言葉を聞いて小さく頷く。彼が言ってることは一理ある。
今は同じ学校の同級生と言う立場にあるけど、先の未来まで、軽い調子で相対することができるかと言われたらわからない。
情報も一つの武器。危険性がないとしても、未来で何かしらの力として使えるかもしれないな。
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しばらくしてたどり着いたボクシング部の部室。そこでは、部員達が汗水流しながら、ボクシングの鍛錬に励んでいる。
たまにこちらをチラチラと見ているけど、その度に了平さんが集中するように指示を出し、私達の方へと視線を向けてきた。
「ボクシング部はいつも、サンドバッグや、ペアを組んだ者が持つクッションを利用して鍛錬に励んでいる。
だが、入部始めは基本的に走り込みや筋トレといった基礎体力などの向上を行うため、すぐにサンドバッグなどを使うわけにもいかんがな。
おおよそ、1ヶ月くらいは筋トレと走り込みを繰り返し、ボクシングの基礎的な技を身につける時期を設けている!
そして、2ヶ月目辺りから、本格的な鍛錬やスパーリングをしていく形になるぞ!
だが、本格的な鍛錬とスパーリングはすぐにこなせるものではない。1ヶ月の筋トレと走り込みで向上できる能力は、個人差もあるが、基本的には微々たるものだからな。
鍛錬と走り込みは毎日欠かさず部活始めにやる流れとなっている。」
見学をすると言う言葉を使ったからか、了平さんはボクシング部の部室にいる部員達の様子を見ながら、ボクシング部に入ったらまず何をやるかを教えてくれた。
……了平さんって熱血漢だし、猪突猛進一直線!!って感じのタイプの人かと思っていたけど、どうやらそれは偏見だったらしい。
「了平はかなりしっかりしてるな。暴走気味になるのが玉に瑕だが、ちゃんと基礎を守り、なおかつしっかりと指導することができ、時には自身の意思をしっかりと貫き、はっきりと発言できる存在が1人でもいると、ファミリー全体を円滑に回すための潤滑剤として機能する。
ナツの人身掌握術と合わせれば、かなり強固なファミリーになると思うぞ。」
「……だからリボーンは、了平さんも私のファミリーに加えようとしてるんだね。」
「ああ。まぁ、今はまだ候補って感じだけどな。」
リボーンから、なぜ了平さんをファミリーに引き入れたいと思ったのかを教えてもらい、少しだけ納得する。
前世でも、割とそう言ったタイプの人が組織を回すことがあったからね。確かに、了平さんのようなタイプがいるのといないのとじゃ、組織の回転率が違う。
まぁ、だからと言って、了平さんをマフィアの世界に入れることに賛成できるかと言われたら、ちょっと賛同し難いけど。
「ボクシング部!なかなかいいんじゃない!?一緒にやってみようよ沢田ちゃん!」
「……いや、私、部活禁止されてるんだけど。」
「ルールなんてたまには破るもんだって!それに、ボクシングなら沢田ちゃんも仕事のストレスをスカッと発散できるんじゃない!?」
「発散はできるかもしれないけど、入らないから私は。やるなら1人で入りなよ。」
ストレス発散にも使えると思うし、一緒にボクシングをやろうと言ってくるロンシャンに、入らないの一点張りを返す。
なんせストレスの発散は、割とやってたりするからね。恭弥さんから指示を出された不良を殴り飛ばすって方法で。
「ご安心をロンシャン君。私が願いを叶えてみせます。」
「は?」
そんなことを思っていると、マングスタが懐から銃を取り出し、そのまま了平さんを撃ち抜いてしまった。
一瞬のうちに行われたゼロ距離発砲に目を丸くする。しかし、すぐに意識を現実に引き戻しては、マングスタに目を向けた。
「ちょっと!?あんた何してんの!?」
「おい、マングスタ!!まさか……!!」
ロンシャンと一緒にマングスタに詰め寄るが、マングスタは知らん顔。
顔を青くしてどうするべきか思考を回す。だが、不意に聞こえてきたジッパーを開けるような音に、その思考は霧散した。
何が起こった……?と思いながら、背後の方へと目を向けてみれば、了平さんの体がまるでパーカーになってしまったかのように割れ、中から変なものを眉間に生やした、パンイチの了平さんが出てきた。
「もうお先真っ暗コゲ……過去も真っ暗コゲ……」
「………………は?」
涙を流しながら、そんなことを呟く了平さんの姿が理解できず、完全に思考回路が停止する。
え?パンイチで泣いて、何で過去まで悔やんでんのこの人……。
「わかっている……。ボクシングはまだまだマイナーなスポーツだ……。妹の京子など、未だにパンツ一丁で鍋つかみを手につけて戦っていると思っている……」
「……京ちゃ〜ん……………。」
まさかの発言に思わず遠い目をしていた。いや、まぁ、あの子の性格からして、可能性としてはありえるんだけど……。
ため息を吐きたくなりながら頭を抱えていると、肩に乗っていたリボーンが私の頬をペチペチと優しく叩いてきた。
「何?」
「ああ。さっき、あののっぽが了平に撃った奴が特殊弾だ。」
「………予想はしていたけど、やっぱりか。効果としては……まぁ、言わずもがなかな……」
「だな。トマゾファミリーが撃つアレは、間違いなく嘆き弾だ。噂によると、撃たれた者は一度死んでから、自分を嘆きながら生き返るって話だぞ。
どうやら、この噂は本当だったみたいだな。ポジティブが取り柄の了平でさえこれだ。」
「嘆きながら生き返ることにより、その悲惨な嘆きを聞いた人間の同情を煽り、自分の味方につける……または、有利な方へと働きかける……って感じかな。
ボンゴレファミリーの死ぬ気弾が、撃たれた本人への肉体へと作用させる強化型の弾丸だとしたら、嘆き弾は周りに作用する精神へと語りかける精神攻撃型って感じ。」
リボーンと小声で話しながら、トマゾファミリーの特殊弾の概要を冷静に分析する。
その間も、了平さんは両目から滝のように涙を流し、その場で縮こまっていた。
「マイナーなスポーツだからこそ……!!奈月も見所のある後輩も首を縦に振らぬ!!どうせ才能のある奴はメジャースポーツがいいのだろう!?」
「…………。」
えっと……なんて答えりゃいいのこれ?ていうか、才能があるって。
……いや、否定できないなこれ。ジョットさん達がめちゃくちゃ褒めてくるし、本心からの言葉であることも
冷静に考えれば、それぞれの技術者のエキスパートから本心のベタ褒めを引き出せるって相当だな。
……やっぱ、私は一般人じゃなくて逸般人なのか。
「沢田ちゃん!!オレ、たまんなく可哀想だよ!!部に入ってあげて、ボクシングの良さを周りに拡散していこうよ!!」
「……………。」
自分の能力値を冷静に思い出しながら遠い目をしていると、ロンシャンがボクシング部に入って良さを多くの人に教えてあげようと言ってくる。
……嘆き弾の持ち主ファミリーのボスでもこれって効くのか。
「……了平さんだって才能があるじゃないですか。ボクシングに一途に向き合って、それをひたすら極めていくことができるんですから。
人によっては、そのスタートラインに立つことすらできないんですよ。
大好きなボクシングのために一途に走ることができて、なおかつ夢中になれると言うのも、立派な才能です。
嘆く必要なんてないですよ。あなたは立派な先輩であり、立派なボクシング部の主将です。
残念ながら、私は部活をやる以前に、風紀委員として、委員長補佐として仕事をこなさなくてはならないので、入ることはできません。
ですが、了平さんの真っ直ぐとボクシングに向き合う姿勢は、多くの人を惹きつけるきっかけになると思いますから安心してください。
定期的にボクシングに興味がある生徒の見学を募ってみてはどうでしょうか?
今日、私達にしてくださったように丁寧な説明をして、ボクシングの良いところを教えてみてください。」
「奈月……。オレにできると思うか……?」
「きっとできます。バレンタインの時に言ったでしょう?ボクシング部に入るつもりはありませんが、ボクシングに向き合う了平さんの姿はかなり尊敬していると。
誰にも負けないボクシングへの情熱……それに突き動かされてひたすら向き合う快活な姿勢……その姿は、見ていてかっこいいと思っていると、ね?」
「奈月……!うぉお─────っ!!極限に燃えてきたぞ─────っ!!」
「うるさ!?」
「む!?すまん!!だが、ありがとう!何やら気分が一瞬落ち込んだような気がしたが、奈月の言葉のおかげで、極限に気力が湧いてきた!」
「お、お役に立てて何よりです……」
「うむ!では、早速、ボクシング部の見学会を開けないか聞いてこなくては!
奈月が入ってくれないことはやはり残念だが、今はいい!もし、気が向いたならば、言ってくれ!」
「ええ。気が向いたら。部活の見学会、および説明会を開きたいのであれば恭弥さんや先生方に相談してみますので、了平さんは見所があるからと後輩に強引に迫ったらダメですよ。
それにより苦手意識を持った生徒が、部活やその競技自体を苦手になってしまうことも十分あり得ますから。
だから、まずはちゃんと、ボクシング部の活動内容や、いいところの説明する行動を挟んでみてください。
それで、興味を示した生徒を部室に案内して、詳しく丁寧に説明をすると、部員が増える可能性が高いです。
説明するための資料などが必要であれば、用意できますので、必要性を感じたら言ってください。」
「うむ!何から何まですまない!では、オレは部活に戻るとしよう!少しでもボクシングに魅力を見出してくれる生徒が増えるように極限に鍛えるぞ!!」
そう言って部室の方へと引っ込んでいく了平さんを見送りながら、私はその場から離れる。
「……え、あ、ちょ、沢田ちゃ〜〜ん!?」
「な、なんと言うことだ!!嘆き弾の効果を無効化するでなく、打ち消すなど……!?
くっ!!これがボンゴレ10代目か………!!」
背後がなんか騒がしいけど、とりあえずスルーしよう。
……にしても、もうちょっと早く部員を増やすための方法を教えておけばよかったな。
とりあえず、先生方に部活紹介の時間みたいなの挟めないから相談してみるか。
他の部活にもありそうだし、前世で学生してた時は、1時間程部活の紹介を行う総合の時間あったからな……。
あとは、1年を中心に、部活見学ができる時間みたいなの作れないかも聞いてみよう。
「嘆き弾の嘆きをもとに、アドバイスを挟むなんてよく思いついたな。」
なんてことを思っていると、リボーンが感心したように言葉を紡ぐ。
その言葉に反応し、視線をリボーンに向けてみれば、彼は私のことを真っ直ぐと見つめて笑っていた。
「……思ったことを口にしただけだよ。何かに夢中になって頑張れることは素敵なことだし、かっこいいことだからね。
だから、諦めてほしくなかったし、挫折してほしくなかった。例え、あれが嘆き弾の効果によるものだとしても、了平さんには自信を持ち続けてほしかったし、好きを走り抜いてほしいんだ。」
「……それは、お前が隠してる本当のお前が、何かをかつて諦めたからか?」
「……………さぁね。」
リボーンからの指摘に、一時的に口を閉じる。しかし、すぐに肯定も否定もしない言葉を使って返事をして、もう少しだけ息抜きをするために歩みを進める。
学校の敷地内を歩く、感じ慣れた気配の元へといくために。
まぁ、背後からも既に覚えてしまった生徒の気配が近づいてきてるけどね。
沢田 奈月
了平の嘆きを聞き、励ましの言葉とアドバイスを告げることにより立ち直らせたボンゴレ10代目。
何かに夢中になっている人を挫折させたくないと言う思いが強く、そんな人がネガティブになっていると放っておけないタイプ。静かな場所が好き。
リボーン
奈月の様子から、自分にも隠し続けている過去にかつて何かを諦めたことがあることを見抜いたお目付役ヒットマン。
薄々と気づきつつはあるようだが、本人が口にするまではしつこく聞くつもりはない……が、話して欲しい気持ちはあるため、不意に問うことはよくしている。
奈月からいつものリボーンが好きと言われたことには正直照れてしまったのだが、言われた当人はそれを否定する。
内藤 ロンシャン
奈月が賑やかなところや人を得意としていないと知り、極力騒がしくしないことを決めたトマゾの8代目。
沢田ちゃんと友達になりたい一心で一緒に何か始めたいと思っているのだが、なかなかうまくいかない様子。
マングスタ
相手を励まし、嘆きを取っ払うと言うとんでもないことをやってのけた奈月にかなり衝撃を受ける。
ボンゴレは気に入らないが、女性に対してあまりにも非常識な言動をしようとしたロンシャンをしっかりと叱る常識は持ち合わせていた。
女性に対して何を言おうとしてるんですかロンシャン君……!!(滝汗)
笹川 了平
嘆き弾の被害者その①
奈月の励ましとアドバイスのおかげで嘆き弾により発生するマイナス思考から気持ちを立ち直らせ、部活に戻っていった。
後日、奈月の働きかけもあり、部活をアピールする機械を用意されたので。頑張って資料を作ったが、容赦なく奈月によりダメ出しと添削をされてしまい涙目になった。
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