最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 高濃度6972警報。
 付き合ってないけど、2人の心の距離がかなり近い上、骸が溺愛系男子になってます。

 ……なんかちょっとボカロ曲のmagnetみたいな2人になったな。


夢幻ノ共犯者

「……何やら疲弊してますね、奈月。大丈夫ですか?」

 

 ロンシャンの屋敷を壊滅にまで追い込んだ日の夜。

 賑やかなロンシャン達をしばらく預かることになってしまい、頭が痛い……とため息を吐きながら眠っていたところ、いつのまにか精神世界にわたしの意識は移動していたらしい。

 既に来ていた様子の骸が、桜の花と星が瞬く夜空を背景にして、わたしの顔を覗き込んでいた。

 顔立ちが整っているせいで、その姿はどこか絵画を思わせるもので、少しだけわたしは骸に見惚れてしまう。

 

「奈月?」

 

「……ああ、ごめん。ちょっと現実の方でいろいろあり過ぎてぼーっとしてた。」

 

「おやおや……。僕はてっきり見惚れてくれたのかと思っていたのですがね。」

 

「……読んだな?」

 

「クフフフ……まぁ、現在の僕と奈月は深く繋がっている状態ですので、筒抜けではありますね。」

 

 揶揄うように笑う骸を、むすっとしながら見据えていると、彼は少しだけ笑い声をこぼしながらも、わたしの方に手を差し伸べてきた。

 そう言えばまだ寝転がったままだった……と自身の状態を脳裏に浮かべ、差し伸べられた手に自身の手を重ねる。

 すると骸は、わたしのことを軽々と引っ張り上げ、勢いよく立ち上がったわたしのクッションになるように抱きしめてきた。

 

「と。大丈夫ですか?」

 

「うん。ありがとう。……よく軽々と持ち上がるよね。それなりに体重はあると思うんだけど。」

 

「そうでしょうか?僕からしたら奈月はとても軽いですよ。一応、それなりに体は作ってありますから。」

 

「なるほどね……。」

 

「まぁ、こっちの体に関しては今は置いておきましょう。今日は幻術の訓練をお休みにして、ゆっくりと散歩でもしましょうか。

 疲弊してる状態で使うものではありませんからね。自身の幻術で精神が汚染されてしまう可能性がありますから。」

 

「ん。」

 

 抱きしめるのをやめ、わたしの手を恋人繋ぎで繋ぎ止めた骸の手を軽く握り返し、散歩することを承諾する。

 こっちが握り返したことに、一瞬骸は驚いたような表情を見せるが、すぐに小さく微笑んで、ゆっくりと精神世界を歩き始めた。

 

「桜が綺麗ですね。星が瞬く夜空も相俟って、なかなか幻想的です。」

 

「こっちは今春だからね。桜の花が咲き誇ってるから、日中も夜も綺麗だよ。

 まぁ、もう葉桜に置き換わりつつあるから、満開の桜は精神世界の中でしか見ることができないけど。」

 

「それもまた味があって良いじゃないですか。僕は好きですよ、この景色。

 いつかは現実世界で、あなたと2人きりでお花見もしてみたいですがね。」

 

「いつになるかわからない願望だな。」

 

「クフフフ……そうですね。僕があなたの元に行けるのは、もう少し先になりそうですし。」

 

「だろうね。早くても、今年の夏の後半から秋くらいなんじゃない?」

 

「よくおわかりで。」

 

「現在のわたしと骸は深く繋がってるから筒抜だって言ったのはそっちだろ。」

 

「クフフフ……そうですね。」

 

 精神世界を桜が咲き誇る薄紅色の世界へと変えながら、のんびりと骸と散歩する。

 現実世界に、こんな桜だらけの森なんて存在していないけど、せっかく春なんだし、骸と初めて会った時のような、枝垂れ桜が少しある夜の世界じゃなくてもいいだろう。

 

「あ、奈月。あっちに行きましょう。せっかくですし、天と地、両方の夜桜を楽しみましょう。」

 

「ん?まぁ、構わないけど。」

 

「よかった。では、行きましょうか。」

 

 天と地、両方の夜桜ってなんだ……?と少しだけ思いながら、骸について行くと、桜の森の中に突然拓けた場所が現れる。

 それは、大きな湖を囲うように配置された桜の木々がある場所だった。

 この世界は無風のため、湖は揺れておらず湖を囲う桜と、ポッカリと空いた桜木の穴から見えている星空が綺麗に写っている。

 

「……綺麗。」

 

「でしょう?少しだけ奈月の精神世界に干渉して、この場所を生成してみました。」

 

「勝手に人の精神世界に干渉しないでくれ……」

 

「でも、嫌いではないでしょう?」

 

「まぁね。」

 

 小さく笑いながら、骸の問いかけに答えれば、彼は笑顔を見せたあと、湖近くに生成されているベンチへと歩み寄る。

 そして、わたしをそこに座らせたあと、彼自身もわたしの隣へと腰掛けた。

 

「さて……せっかくゆっくりと過ごせるわけですし、脱獄を終えたあとのことを話しましょうか。

 実は、一つだけ提案したいことがありまして……。」

 

 湖に写る星空と桜……もう一つそこにこの景色が広がっているんじゃないかと思わせるようなそれを眺めていると、骸が静かに口を開いた。

 どうやら、骸は脱獄を終えたあとにどうするかの計画を練っていたようだ。

 

「提案したいこと?」

 

「ええ。」

 

 首を傾げながら、骸が口にした言葉を復唱すれば、彼は小さく頷いたあと、自身の考えを教えてくれた。

 

「僕は奈月と話したいと思っていて、奈月は僕の過去と向き合う機会を欲している……考えていることはあまり変わりませんし、衝突も最小限に抑えたいと互いに思っている……つまり、利害は一致しているわけです。

 なので、脱獄を終え、拠点となる場所を見つけたあと、僕が奈月を迎えに行けばいいのでは……と思いまして。」

 

 骸が口にした言葉に、一瞬だけキョトンとしてしまう。

 前に会った時、骸はあまり表立って動くわけにはいかないと言っていたはずだが、どうやって迎えに来るつもりなのだろうか。

 

「前にも言いましたが、僕は表立って動くわけにはいきません。奈月がいる場所には、僕のことを調べることができる人間がいますし、その人間が僕を見つけた場合、間違いなく僕は牢獄に逆戻りとなります。

 ですが、こうも言いましたよね?僕と奈月は精神を深く繋げることができる程に近い場所におり、同時に相性がいいのだと。ならば、それを使わない手はありません。」

 

 何度か瞬きをして、骸を見つめていると、彼は自分の立場とわたし達2人の特性を話す。

 同時にこちらに流してきたのは、わたし達の特性をどのように利用するのかの考えだった。

 それにより、わたしは目を丸くする。しかし、その方法が一番効率が良く、互いの望みを叶える一手であることを理解した。

 

「……なるほどね。準備が整ったら、わたしの精神世界に足を運び、わたしの体に憑依する……か。

 確かに、これなら周りを傷つけることなく、わたしも骸に合流することができる。」

 

「でしょう?なかなか良い案だとは思いませんか?」

 

「そうだね。この方法なら賛成だ。まぁ、別の意味でみんなを困らせそうな気もするけど。」

 

「まぁ、奈月が失踪するカタチになると思いますからね。こればかりは否定できません。

 ですが、この方法が一番手っ取り早く行動を起こせると思います。」

 

 “どうでしょうか?”と首を傾げる骸に対して、わたしは静かに頷き返す。

 無言でいなくなることになるから、恭弥さんやリボーン達がパニックになりそうな気がするけど、それくらいならば構わない。

 わたしは骸のことを知りたい。骸が抱えている過去や、想いに向き合いたい。

 だからわたしは……

 

「わかった。その提案に乗るよ。わたしは骸のことを知りたい。骸がわたしのことを知ってくれたように、わたしも骸と向き合いたい。

 いったい何を抱えて生きているのか……わたしに何を訴えたいのか……わたしに……どうしてほしいと思っているのか……その全てを教えてほしいから。」

 

 骸の提案を受け入れることを、言葉も併せて伝える。

 それを聞いた骸は、穏やかな笑みを浮かべて小さく頷いた。

 

「ありがとうございます、奈月。僕の提案を聞き入れてくれて。これでようやく、僕の計画を本格的に動かすことができる。」

 

 繋がりからも感じ取ることができる嬉しいと言う骸の感情。ハッキリと感じるそれに、わたしは微笑み返す。

 すると、わたしが笑っていることに気づいたらしい骸が、一瞬だけキョトンとしたあと笑い声を漏らした。

 しかし、すぐにその表情は真剣なものへと変わり、他にも言いたいことがあるのだと気づく。

 

「……次に話すのは、あなたの周りにいる人間の邪魔が入った時の話です。」

 

 表情と感情から、少しだけ口にするのを躊躇っていることがわかる。

 それによりいくつか予測を立てたわたしは、彼が口を開く前に口を開いた。

 

「邪魔が入るようであれば、それ相応の対応をする……ってことかな?

 例えば、邪魔しようとしてきた対象の動きを封じるために攻撃を仕掛けるとか、骸が持ち合わせている切り札を利用して、その意識を封じるとか……そんな感じの対応。」

 

 わたしの言葉に骸が驚いたように目を見開く。

 しかし、すぐにその表情は真剣なものとなり、頷きという肯定動作を彼は見せた。

 その反応に、わたしは少しだけ目を伏せる。できることならば、そんなことはしてほしくないのだけど、多分、こればかりはどうすることもできないだろう。

 それなら……。

 

「……その時は、わたしの体を利用して妨害しても構わない。わたしを探すであろう人は、大凡予測をつけることができるからね。

 そんで、その邪魔をしてくるメンバーは、基本的にわたしを傷つけることができないと思うから、それを利点に、せめて被害を最小に抑えてほしい。」

 

「奈月………。」

 

 こちらの返答を聞き、骸が一瞬だけ辛そうな表情を見せる。

 だけど、わたしの記憶から、この言葉が真実であることを把握できたのか、骸は少しだけ目を伏せたのち、静かに目を開けて頷いた。

 

「……わかりました。そのようなことがあれば、奈月の体を使わせてもらいます。

 クフフフ……まさか、あなたと共犯者になるとは思いもよりませんでしたね……。」

 

「……これは偶然じゃなく必然だよ。わたしが、骸を知りたいと思った時点で、共犯関係になると言う道はほとんど定まっていた。」

 

「そうですね。言われてみれば、これは必然的だったのかもしれません。」

 

 ベンチに座ってる間も繋がれている骸の手に力が篭もる。応えるように握り返せば、彼はわたしの方に一度視線を向けたあと、静かに体を寄せてきた。

 

「僕と共犯者になったら、あなたは厄介な連中に目をつけられる可能性があります。

 その時はどうか、僕のことを切り捨てて、あなただけは逃げてくださいね。

 何かしら目をつけられて言われたとしても、絶対に共犯だったことは口にせず、全ての罪を僕に預けてください。

 そうすれば、あなたには前科はつかず、目をつけられて監視されることもない。」

 

「……わかった。その時はちゃんと切り捨てる。しばらくの間、引きずるの確定だし、なかなかキツいものがあるけど。」

 

「クフフフ……優しいですね、奈月は。でも、だからこそあなたには罪を背負うことはしないでほしいです。

 全て僕のせいにして、奈月は何も知らないままでいいんです。そうすれば、奈月は僕のことを想ってくれるでしょうし、僕も奈月に罪を残すことなく立ち去ることができる。」

 

「……骸は逆に残酷な優しさを残して行くね。」

 

「これが僕ですから。ああ、でも、僕は常に奈月の味方でいるつもりですので、必要とあらば僕を呼んでください。

 例えどれだけ暗く冷たい場所に堕ちることになろうとも、奈月のためならば必ず助けに行きますから。」

 

 囁くように紡がれた言葉に顔を上げる。わたしに体を寄せていた骸は、わたしのことを甘い熱を宿した穏やかな眼差しで見つめ返してきた。

 深く繋がっている精神の繋がりからは、絶え間なく恋慕が伝わってくる。

 そのことに気恥ずかしくなってきたわたしは、自身の顔が見られないように、骸から視線を逸らして寄りかかるように体を預けた。

 すると骸は、繋いでいた手を離し、わたしの肩を優しく抱き寄せる。それにより体は密着し、現実世界でもないのにハッキリと感じ取ることができる互いの熱を分かち合う。

 ゆっくりと流れる静かで穏やかな時間。眠っている間しか、こうすることができないのは、少しだけ寂しいものだ。

 

「……このままここでお花見をするのも悪くないですが、せっかく歩くことができる場所にいるのですから、散歩を再開しましょうか。

 今、僕が伝えたかったことは全て伝えることができましたし、次は奈月の話を聞かせてください。」

 

 骸が自由になれるのはいつになるのだろうか……そんなことを思っていると、彼はわたしの肩から静かに手を離し、ベンチから腰を上げる。

 同時にこちらへと手を差し伸べて、首を傾げながら散歩を再開しようと誘ってくる彼に、わたしは小さく頷き返し、差し伸べられた手に自身の手を重ねた。

 

「……少しだけくっついてもいい?」

 

「少しと言わずいくらでも。奈月にくっついてもらえると言うのは、あなたに恋慕を抱く者として、嬉しい以外の何物でもない。」

 

「……サラッとそう言うこと言ってこないでくれる?恥ずかしい奴だな。」

 

「わざとですよ。初めての恋なんですから、どうせなら自分に堕としたいじゃないですか。」

 

「わたしにはよくわからないな。恋なんてしたことないし。」

 

「だったら僕と始めてみませんか?立場は複雑ですが、そんなこと関係なしに、僕はあなたを愛せますよ。」

 

「……気が向いたらね。」

 

「クフフフ……少し悪くないと思ったくせに、素直じゃないですね、奈月は。」

 

「うるさい。」

 

 揶揄うような声音で話しかけてくる骸に、短く素っ気ない言葉を返しながらも、自身の腕を彼の腕にそっと絡ませて腕を組む。

 くっつきたいと言う言葉の意味を、多分、骸は理解していたと思うけど、それでもわたしがこんなことをするなんて予想外だったのか、少しだけ驚いたような様子を見せていた。

 しかし、驚きによる体のわずかな硬直はすぐになくなり、くっつくわたしに視線を向けたあとゆっくりと歩き始めた。

 

「最初の質問に戻りましょうか。かなり疲弊してますが、現実世界で何かありましたか?」

 

「うん。実はね……」

 

 わたしの歩幅に合わせてくれる骸と並びながら、今日までにあったことを話し、目を覚ますまでの時間を過ごす。

 同じクラスになった少年がなかなかに賑やかだったこと。その同級生に付き纏われてちょっと参っていたこと。今日、その同級生の家に訪ねてかなりのいざこざを起こしたこと。いざこざによって家がボロボロになってしまったため、修復までの間、その同級生を自宅に泊める必要性が出てしまったこと。

 他にも、新学期が始まってから起こったことなどをポツポツと骸に話す。

 それを聞いた骸は、ロンシャンのことをかなり個性的な同級生だと笑い、独占欲を隠そうともしない恭弥さんのことは、少しだけめんどくさい男だと口にした。

 

「骸は、独占欲は強い方?」

 

「そうですね……。僕自身も恋は初めてしましたから、正確にはわかりませんが、雲雀恭弥程ひどくはないと思います。

 僕は奈月が誰と仲良くしようとも、その行動を制限するつもりはありませんから。

 まぁ、雲雀恭弥程ひどくないと言うだけであって、それなりにそう言った欲は持ち合わせている自覚はありますがね。」

 

「なるほどね。」

 

「奈月はどうなんですか?独占欲。強かったりします?」

 

「わたしは……多分、強くないと思う。その人が幸せになれると言うのなら快く送り出すし、別れ話が出てきたとしても、自分よりも大切な人ができたんだって思うか、無意識に何かしちゃったみたいだなって納得する気がするよ。」

 

「……意外とあっさりしてますね。」

 

「そう?まぁ、骸がそう思うってことはそうなんだろうね。」

 

 あっさりとした返答が意外だったのか、骸は少しだけ驚いた様子を見せる。

 しかし、すぐに小さく微笑んで、わたしの頬に優しく触れてきた。

 

「となると、あなたを長く繋ぎ止めておくには、僕に溺れさせる勢いで手を出さなくてはならないようですね。どのように溺れさせ、依存させましょうか。」

 

「怖いことを言うんじゃない。」

 

「クフフフ……冗談ですよ。2割程は。」

 

「8割方本気になるのやめろください。」

 

 引きつった笑みを浮かべながら、8割は依存させる気満々である骸にツッコミを入れれば、彼は笑い声を漏らしながらわたしの頬から手を離した。

 

「まぁ、奈月を僕に溺れさせ、依存させるのは生身で会える時まで取っておきましょうかね。

 精神世界はタイムリミットが存在している限定的な世界ですから、今ここであなたを深く愛したところで、泡沫となり消えてしまう。

 ああ、でも、精神世界で過ごす間も、じわじわと溺れさせると言う手もありますか。」

 

「精神の繋がりのせいで、どろっとした甘ったるい高濃度の蜜みたいな感情の洪水がやばいからそれ以上はストップ。」

 

「おやおや……」

 

 骸から暴露された感情と、同機するように発生した甘ったるい蜜のような恋慕の洪水がとんでもないものだったため、慌ててそれにストップをかける。

 危なかった……。下手したら飲み込まれてしまいそうな感情の波だった……。

 

「て言うか、深く愛したところでって台詞んとこに含まれていた感情、どう考えても劣じょ……」

 

「景色をどこかの部屋にでもして、押し倒して実行してあげましょうか?」

 

「やめろバカ。」

 

「冗談ですよ。今はまだ……。」

 

「コノヤロー………」

 

 いつかは手を出すと言われたようなもののため、ひくっと少しだけ表情をひくつかせる。

 恭弥さん以上にノンストップなんだけどこの囚人。下手したらこっちの貞操が危ないかもしれない。

 

「クフフフ……そう怒らないでください。確かに僕は、あなたにそう言った感情を度々抱くことがありますが、無理矢理どうこうしようとは毛頭も考えていませんよ。

 だって、一方通行の恋慕と劣情だけでは返ってくるものがありませんからね。

 そのような関係になるのは、相手側からも強く想われてからの方が何倍もいいでしょう?」

 

「……まぁ、強姦とか正直クソだからね。」

 

「未遂の被害者側ですもんね、奈月。」

 

「しかも、それが同期と後輩と上司の3コンボってね……。マジであの3人地獄に堕ちろ。」

 

「今ごろ地獄にいるかもしれませんよ。衆合地獄辺りに。」

 

「淫欲の罪を犯した連中が堕ちる場所だっけ、それ……」

 

「よくご存知で。」

 

「とある漫画に地獄がモチーフの話があったからね。」

 

「なるほど。どんな漫画か読んでみたいですね。」

 

「わたしの前世の記憶にあると思うよ。その漫画に出てくる獄卒の鬼って言う設定の補佐官な主人公の行動とか、ストーリー全体の流れがなかなか笑えるし、スカッとすることもあるから、休日とかにアニメや漫画に目を通してたんだ。

 主人公の声が、バリトンボイスないい声だから余計に笑えちゃったんだよね。」

 

「そうなのですか?それはちょっと楽しみですね。題材が地獄と言うところに目を伏せればですが。」

 

「そういや骸は地獄道を巡った経験ありだった……」

 

「人間道よりはまだマシですけどね。」

 

 頑なに人間道を嫌っている骸を見て、いったい何が原因でこんなに拒絶反応を見せることになったんだ……と困惑する。

 まぁ、六道……地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天界道の6つの世界を考えてみると、人間道が一番めんどくさい感情とか欲が渦巻く世界のような気もするし、嫌いたくなる気持ちもわからなくもない……かな……?

 いや、やっぱりよくわかんないわ……。

 

「奈月?百面相なんかしてどうかしました?」

 

「……人間道を嫌う理由をなんとなく想像していたけど、頭がこんがらがってわかんなくなってきた。」

 

「クハハハ!奈月程聡明な女性でも、わからないことはあるものなんですね。でも、確かにこればかりは僕の経験に基づいたものですから、理解が難しい……と言うのも頷けます。

 ですが、これは僕だけが知っていればいいことですから、奈月は考えなくても大丈夫ですよ。」

 

「……これも、六道骸(きみ)って存在を知るためには必要だと思っていたけど………。」

 

「その気持ちだけで十分嬉しいですよ。……でも、そうですね。いつか、本気で理解者が欲しいと思うようなことがあれば、真っ先に奈月に話しましょうか。

 ただし、これを知ると言うことは、奈月も僕と同じ暗闇へと堕ちていくことを意味します。

 二度と、光の中を歩めなくなる可能性が高いですから、その時は覚悟していてくださいね。」

 

「……思った以上に重い……けど、なんか、もしも、本当にそんな時がきたら、覚悟しそうな自分がいるな。」

 

「…………全く……あなたと言う女性(ヒト)は……。」

 

 “そこまで行くと手遅れですよ……”と、困ったような……だけど、確かな喜びを感じ取ることができる笑みを浮かべる。

 事実だから仕方ないと返せば、呆れたような感情を向けられてしまったけど、あえてわたしはそれを無視して、骸との散歩を続けた。

 

 しかし、不意に、先程まで無風だったはずの精神世界に風が吹き始めたことに気づき、わたしは何度か瞬きを繰り返す。

 どうやら、目覚めが近いらしい。

 

「タイムリミットかな。」

 

「そのようですね。もう少し奈月と話したかったのですが、どうやら難しいようです。」

 

 ポツリと呟くように、タイムリミットだと口にすれば、骸が少しだけ寂しげな声音で言葉を紡ぐ。

 静かに視線を向けてみれば、どことなくその表情にも寂しさが浮かんでおり、名残惜しいと言わんばかりに歪んでいた。 

 

「また、次の夜も精神世界(ここ)にくるよ。幻術のことも教えてもらいたいし、穏やかなこの時間は、わたしの好きな時間の一つなんだ。」

 

「……ええ。お待ちしております。奈月に幻術を教えることはもちろんですが、僕にとっても奈月と一緒に過ごせるこの時間は一番好きな時間ですから。」

 

 わたしの言葉により、少しだけ表情の歪みが取れた骸は、眉をハの字に下げながら、静かに足を止めた。

 一緒にその場へ止まれば、ふわりと優しく腕を引かれ、そのまま彼の胸元へと誘われる。

 抵抗することなく体を委ねれば、骸はわたしの体を強く、だけど痛みがないように優しく抱きしめた。

 

「おやすみなさい、精神世界の奈月。夜にまた、ここで会いましょう。」

 

「うん。おやすみなさい、精神世界の骸。なかなか降りてこなかったら、その時は迎えにきてよ。」

 

「クフフフ……ええ。わかりました。その時は迎えにきますね。」

 

 互いの温もりを分け合うように……この時間を最後まで楽しむように……目を閉じて挨拶を交わす。

 同時にわたしの意識は遠のき、小鳥の声が聞こえてきた。

 

 

 

 




 沢田 奈月
 さらっと暴露したが、3回ほど無理矢理襲われそうになったことがある前世持ちのボンゴレ10代目。
 あの時はトラウマレベルにクソッタレな人生だと吐き捨てていたし、今でもそう言う人間が大嫌いだが、骸の劣情と恋慕、溢れんばかりの溺愛精神に関しては、自身が心から大切にされていることを繋がりで把握しているため恐怖を抱いていない。
 むしろその想いを自ら受け取りに行くくらいには骸に気持ちを許しており、骸が本気で望むのであれば、彼が言う深い暗闇へと堕ちる未来……暗闇の中を歩く旅すら受け入れることができると自覚している。
 骸はわたしの共犯者。

 六道 骸
 奈月に対してはもはや溺愛レベルに想いを寄せている囚人の術士。
 あっさりとした性格の彼女を繋ぎ止めておくのは依存させるレベルに溺愛する必要があると誰よりも先に気づいた。
 本気で望めば、奈月が自分に寄り添う道を歩んでくれることは繋がりから把握済みであり、本当に寄り添ってもらいたいと自身が思うようになった時は、遠慮することなく奈月に手を伸ばすつもりでいる。
 自分が考えた計画をあっさりと受け入れてくれた上、共犯者になってくれた奈月にはいろんな感情が爆発した。
 奈月は僕だけの共犯者。

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