最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 チラッと主人公の過去が出たり、ディノナツ傾向が強くなったり。
 ちなみに、主人公の槍の見た目は、テイルズシリーズに出てくるハスタを調べたらわかります。
 アレの色違い+装飾違いなので。


争い終わりの静かな夜に

 抗争は幕を閉じ、平和を取り戻したマフィアランド。

 そこにあるホテルの最上階……スイートルームと呼ばれている、本来ならば高過ぎて手を伸ばすことなど不可能な部屋に、私はいた。

 なぜそんな部屋にいるのか……その金はどこにあったのか……それに関しては、今回の抗争が一つ原因であると言っても過言じゃない。

 

 今回の抗争……カルカッサファミリーによるマフィアランドの侵略……それを止めるために動いたマフィア連合……そのリーダーを務め、負傷者は出したが、死亡者は一人も出さなかっと言う功績は、連合を組んでいたマフィア達からすると、かなりのものだったようで、そのお礼と言わんばかりに、各ファミリーから多額のお金を貰ってしまったのである。

 

 あまりの大金に、どうしたらいいかわからず、困惑していたら、そこにマフィアランドの経営陣とホテルの支配人がやってきて、よかったらスイートルームに泊まったらどうかと提案されてしまったのだ。

 それならと、私はその金額を使ってスイートルームに泊まらせてもらうことにした……と言うのが理由である。

 

 もちろん、母さん達の部屋もグレードアップしてもらった。スイートルームの一つ下……セミスイート、またはジュニアスイートと呼ばれている部屋だ。

 最上級とされているスイートルームと部屋の構造に違いはあれど、ゆっくりと休める場所部屋になるだろうとスパなどのプランも付け加えてお願いした。

 ホテルコンシェルジュには、母さんから部屋に対する質問をされた場合、今回の抗争をイベントと勘違いしているだろうから、そのイベントでディーノさんと一緒に好成績を残したから、そのご褒美として選べたプランだと伝えるように告げて。

 最初、コンシェルジュは不思議そうな表情をしていたが、母さんに自分の立場……マフィアのボス候補として名を挙げられている人間であることを知られたくないんだと真剣に伝えたら、承諾してもらえた。

 

 ……本当は、母さん達にスイートルームを使ってもらおうかと思っていたんだけど、リボーンから最高の功績を残したのはお前自身だからお前が使えと言われたので、こっちに行くことになってしまった。

 まぁ、その代わりにスパプランを付け加えればいいってアドバイスされて、そのプランを追加したんだけど。

 

「にしても、この携帯電話どうするかな……。」

 

 色々あったなぁ……と思いながら、私は一つの携帯電話を取り出す。

 それは、今回連合として組んだマフィア達のボスと右腕に当たる人達の連絡先が入っている携帯電話だ。

 

 最小限の被害で抗争を全て終わらせたのは、私の作戦があったからこそ。命を失わずに終わらせたのも、ドンナの尽力があってこそ。

 あなたは我々の恩人だ。ドンナが必要とした時は、自分達は惜しむことなく力を貸す。

 

 連合を組んでいたマフィアのボスと右腕全員がそんな理由で連絡先を渡してきたのである。

 私はまだ候補であり、完全にボンゴレを継いだわけじゃないと言ったけど、ドンナならば、必ず10代目となりボンゴレの女王になると押し切られてしまったのは記憶に新しい。

 

「……まさか、リボーンが報告を入れたその日に、9代目からマフィアの連絡先を入れておくために使いなさいって文言と共に携帯電話が送られてくるとは思わなかったな。

 しかも、9代目とその右腕の方にも直接繋がる連絡先まで入ってるし、リボーンの仕事用の携帯の連絡先まで……。」

 

 まぁ……それらがあるにも関わらず、父さんの連絡先だけは入ってないんだけどね。

 

「……“君の父親である家光君の連絡先も登録しておこうと思っていたのだが、頑なに登録しようとはしなかったんだ。

 おそらくだが、連絡先を知ってしまった場合、居ても立っても居られなくなり、連絡をしてしまうと思ったのだろうね。

 私は、大切な愛娘に連絡を入れることは悪いことではないと思うのだが、彼は、これまでずっと、奈々さん1人に子育てを任せてしまっていたり、娘である君に奈々さんのことを全面的に任せてしまったことに対する負い目があるのか、話すことができないのかもしれないな。

 今更どのような顔で、どのような声で、どのような話をすればいいのかわからないのだろう。

 だから、連絡先を教えてくれなかったのかもしれないね”……か。」

 

 携帯電話と一緒に届いた一通の手紙に記された文字を読み上げて、私は軽く舌打ちをする。

 今更どのような顔で、どのような声で話せばいいかわからないだって?ふざけるのも大概にしろ。

 家族ならそんなくだらないこと考えていないで、さっさと連絡すればいいじゃないか。

 確かに私は、こっちの世界でもまともに父親と話すことができなくて、いろいろ言いたいことだってあるし、殴り飛ばしたいと思うことだってある。

 だけど、向こうの父親とあなたには明確な違いがある。向こうの父は“わたし”を見てくれないどころか、“わたし”を最終的には置いて行った。

 でも、こっちの父は……私の父親であるあなたは、ちゃんと私のことも母さんのことも見えてるでしょう?

 

「だったら……くだらない話でもいい。適当な話でもいい。少し声を聞かせてくれるだけでもいいんだから、連絡先くらい教えてくれてもいいじゃないか……!!」

 

 少しだけ泣きそうになりながら、吐き出すように言葉を紡ぐ。だけど、この部屋に今いるのは私だけで、誰もこの言葉に何かを返してくることはない。

 昼間までいた初代組は、Dさんがあまりにも合流してこないもんだから、何かやらかしてるんじゃ……?と言ってこの場から離れているため、応えてこない。

 

「…………風呂に入って、このモヤモヤを取り払ってくるか。」

 

 手にしていた携帯電話を、こっちが設定したパスワードをかけて電源を切り、ベッドのサイドテーブルへと置き、備え付けの風呂場へと足を運ぶ。

 少しだけ、自身の視界がぼやけているのは、きっと気のせいだ。

 

 

 *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀

 

 

 ホテルの支配人が用意した、明らかにお高いであろうシャンプーやコンディショナー、ボディソープを使って汚れを落とし、ゆっくりと湯船に浸かって数十分。

 しっかりと顔も洗い、先程のもやもやを払拭した私は、のぼせる前にと風呂場から出て、寝巻きに袖を通したのち、部屋に戻ると、そこにはディーノさんがいた。

 

「ディーノさん、戻っていらしたんですね。」

 

「まぁな。部屋に入ったらナツがいなかったから、ちょっとビックリしたぜ……。」

 

「すみません。何か手紙を書いておけばよかったですね。」

 

「気にしなくていいぜ。ゆっくりできたか?」

 

「はい。お風呂がとても気持ちよくて。うっかり眠りそうになっちゃいました。」

 

「うん、風呂で寝るのは危ねーからやめような?下手したら寝るだけじゃ済まねーから。」

 

「はい。気をつけます。」

 

 ホッとしたような様子を見せるディーノさんに、少しだけ苦笑いをこぼしながら謝罪をする。

 どうやら、部屋に入ってみたらもぬけの殻だったからビックリさせてしまったようだ。

 それは申し訳ないことをした。今度からはちゃんと置き手紙とかを残すとしよう。

 

「にしても、まさかナツと同室にされるとは思わなかったな……」

 

「ホテルの支配人さん、私とディーノさんが恋人関係だと思っていたようですね。

 もしかしたら、同じ船に乗船していた人がそんな話をしちゃったのかも……」

 

「あり得るな。違うって否定したかったけど、奈々さんが盛り上がってるわ、ホテルのコンシェルジュ達も恋人関係にある2人組が抗争を鎮めたヒーローになるなんてドラマみたいだって盛り上がるわで、訂正する余地もなかった……」

 

「あの時のリボーンと隼人の顔、めちゃくちゃ怖かったですね……」

 

「だな……」

 

「とりあえず、ホテルの人達にはこのことは内密にって誤魔化すことにして、母さん達には誤解であることを伝えて……あれはあれでかなり疲れた気がします……」

 

「抗争の疲労と、精神的な疲労……休暇のためにきたはずなんだが、1日目はなかなかに散々だったよな。」

 

「ですね……。」

 

 私は部屋に戻ってきたディーノさんとそんな話をする。

 そう、私と彼が同じ部屋に放り込まれたのは、これらの内容が原因だった。

 マフィアランド防衛戦を張った連合軍の中に、私達と同じ船に乗船していたファミリーはかなりいたようで、私とディーノさんのやり取りから、恋人だと思った者もかなりいたのだ。

 その結果、そのファミリーの人達がホテルの人にそのことを告げてしまったようで、私とディーノさんは2人してスイートルームに放り込まれ、2人きりで夜を過ごすことになってしまったのである。

 

「まぁ、ディーノさんとは一緒にお昼寝したこともありますし、この部屋で2人、のんびりと過ごしましょうか。

 ディーノさんと同室なのは、嫌じゃないし、なんだか安心できますから。」

 

「……お前な。あんまそんなこと他の奴らには言うなよ?食われるぞ。」

 

「こんなことディーノさんぐらいにしか言いませんよ?だってディーノさんは中学生の女に手を出すような節操なしの方じゃないことを理解していますし、本当に恋人になったとしても、ちゃんと相手のことを考えて大切にできる誠実な人だとわかっているので。」

 

「なんで食われるの意味わかってんだよ……」

 

「何回か下半身でしか物事を考えられない変態に付きまとわれたことがあったので、この流れの食われると言う意味がそっち系であることくらいわかりますよ。」

 

「サラッととんでもない経験暴露しないでくれ……!!て言うか女がそんな言葉使ったらダメだろ!!」

 

 目の前でorz状態になり、切実な声音で訴えてくるディーノさん。

 まぁ、お下品なのは理解してるけど、食われるの意味を理解している理由は本当にこれだから仕方ない。

 前世の記憶のせいで、それらに関しての知識はあるからね。経験はないけど。

 付きまとってきた彼らに暴かれることはなかったし、未遂で終わったあと彼らは見事に豚ばk……刑務所の方にブッ込まれたから、私以外の被害者は出なかったんだよね。

 

「あの変態達、去勢されて無理矢理女にされちゃえばいいのに。なんなら他の囚人のオモチャにされて痛い目に遭えばいい。」

 

「ちょっと落ち着けナツ!!前の限界迎える寸前のお前みたいな状態になってるから!!

 いや、今回の出来事がかなりの疲労になったせいで限界寸前まで一気にいっちまったのかもしれねーけど!!」

 

 とりあえずエンツィオを預かっといてくれ撫でていいから!!と連れてきていたらしいエンツィオを押し付けてきたディーノさん。

 視線をエンツィオに向けてみると、どことなく焦っているような様子のエンツィオと目が合った。

 無言でエンツィオを受け取れば、ディーノさんは苦笑いをこぼしたあと私の頭を優しく撫でる。

 

「抗争でオレも汚れちまったし、風呂入ってくるな。そう言や、コンシェルジュが冷蔵庫に飲み物をサービスで入れてあるから飲んでいいって言ってたぜ。

 この部屋の料金にそれらのサービスも含まれてるらしいから、何か飲んだらどうだ?」

 

「……そうします。」

 

「おう。何かあったら呼べよ。」

 

 ポンポンと軽く頭を触ったのち、ディーノさんは風呂場の方へと立ち去っていく。

 その背中を見送った私は、彼に言われた備え付けの冷蔵庫の方に足を運び、冷蔵庫の扉を開けた。

 

「……ジュースにお酒、牛乳やお茶もある。」

 

 お酒のアルコール度数は3%から9%……数としては5%以上の度数が多目のようだ。

 子供じゃなかったら、ディーノさんと一緒にお酒を飲むこともできたんだけどな……なんて、少しだけ残念に思いながらもグラスとお茶を手に取る。

 ジュース……も考えてはいたけど、この時間帯から飲むのはちょっとな……。

 

「ん?どうしたの、エンツィオ。」

 

 そんなことを考えていると、ディーノさんから預かっていたエンツィオがウゴウゴと少しだけ動く。

 何かあったのかと質問してみれば、エンツィオは一回私の方を見た後、スイートルームの応接間に頭を向けた。

 視線の先を辿ってみれば、そこにはフルーツの入ったカゴがあった。

 

「……果物食べたいの?」

 

「♪」

 

 もしやと思い、エンツィオに声をかけてみれば、肯定するように足をばたつかせた。

 少しだけお腹が空いてしまったらしい。一応、リボーンやコロネロのようにペットを連れてくる来島者もいると言うことから、ペット専用メニューの食事も食べていたはずだけど、カメも人みたいに小腹が空くことってあるんだ……。

 

「食べたいのは何?ブドウ?パイナップル?バナナ?……どれも違う?じゃあ、リンゴ?」

 

「!」

 

「そっか。リンゴが食べたいんだね。ちょっと待ってて。確か、スイートルームに備え付けられていた食器棚に……あった。果物ナイフとお皿。

 ……そう言えば、エンツィオってスポンジスッポンだけど、フルーツの果汁って大丈夫なの?」

 

「!」

 

「……なるほど。少量の水分じゃ変貌しない感じ……なのかな。それなら大丈夫だね。」

 

 備え付けられた果物ナイフを手に取り、ショリショリと丁寧にリンゴの皮を剥いていく。

 すると、テーブルの上に下ろしておいたエンツィオがリンゴの皮の端っこに噛みつき、もぐもぐと皮を食べ始めた。

 まさかの事態に一瞬驚くが、皮もエンツィオにとっては立派なオヤツになるのだと理解し、そのまま皮を剥き進める。

 

「……普段は皮が残るけど、エンツィオがモシャモシャ食べたから皮がなくなった。」

 

 綺麗に皮を剥けたリンゴを、コロコロとした一口サイズに刻み、皿の上にエンツィオ用のリンゴを入れてエンツィオの前に置けば、エンツィオはすぐにリンゴを食べ始める。

 それを見つめながら、もう一個リンゴを手に取った私は、今度はうさリンゴを量産していく。

 

「ん?なんだ。リンゴ切ってたのか?」

 

 すると、お風呂に入っていたディーノさんがインナーと細身のパンツと言うかなりラフな格好になって戻ってきた。

 彼の問いかけに頷きながら、完成したうさリンゴを皿に並べる。

 

「ディーノさんもどうぞ。エンツィオが食べたがっていたので、ついでに私達用のもの切っておきました。」

 

「ありがとな、ナツ。なんでウサギにしたのかはわかんねーけど。」

 

「………なんとなく?」

 

「なんとなくかぁ……。」

 

 首を傾げながらうさリンゴにした理由を口にすれば、ディーノさんは笑いながらうさリンゴを一つ手に取った。

 私もそれに倣ってうさリンゴに手を伸ばし、もぐもぐとそれを食べる。

 あ、蜜いっぱいで甘くて美味しい。

 

「ナツって可愛いものとか動物が好きな割に、ウサギ型のリンゴは結構サラッと食うんだな……。」

 

「ん?まぁ、お菓子とか作っていると可愛らしく仕上げたものを食べることに抵抗はなくなりますね。

 これまで結構作ってきましたけど……こんな風に。」

 

「……どれも美味そうで腹減ってきた。」

 

「今はうさちゃんリンゴで我慢してください。」

 

 リンゴをもぐもぐ食べながら、小腹はリンゴで抑えてくださいと告げれば、ディーノさんは苦笑いをこぼしてリンゴを食べる。

 なんか、可愛らしい見た目と可愛らしい呼び方をしてる割に容赦ねーとか言ってるけど、まぁ、スルーしておこう。

 

「そうだナツ。今のうちにこれ渡しておくぜ。」

 

 リンゴうま……と3つ目のうさリンゴに手を伸ばしていると、ディーノさんが一旦荷物置き場に足を運び、その中から一つの箱を取り出した。

 それは、10センチには満たないであろう長方形の箱。リンゴの果汁がついてしまった手を拭いてそれを受け取り、その箱を開けてみると、中には一本の装飾が施されたスティックが入っていた。

 すぐにそれが何かわかった私は、先程晴らしたはずのモヤモヤを再び感じながらも、静かにそのスティックのスイッチを押す。

 無機質な音と共に姿を見せたのは三叉に枝分かれしている槍。形状からして、真田幸村や森長可などが使っていたとされている十文字槍に近いようだ。

 ただ、前世持ちの私からすると、どっかで見たことある形状の槍だ。なんだろう……どこぞの自称窓辺のマーガレットさんな赤い殺人鬼と同じ形状に見える。

 あっちは赤い槍でこっちは白銀、持ち手の部分はシンプルなものではなく、綺麗な銀装飾が施されているけど。

 

「……そう言えば、父さんが私の槍を新調しておくとか言ってましたね。

 届けてださりありがとうございます。父に会った時にでも、お礼を伝えておいてください。

 “あなたの娘は、この槍を大切に使うと言っていた”と。」

 

「ナツ?」

 

 自分でもどこか冷めた声を出した自覚はある。だが、それだけ今の私は、少しだけ私の父に思うことがあり、どこか喜ぶことができないのだ。

 もちろん、武器を得ることができるのは嬉しい。見た目の割にこの槍は軽量化されており、Dさんからもらった大鎌よりも扱いやすそうだから。

 でも、それはそれとして、武器を渡すよりも、やれることはあったはずだろうと思ってしまうのである。

 

「……よし、ナツ。リンゴとか食った分、ちゃんと歯を磨いてから今日は休むぞ。」

 

「え?」

 

 槍をスティックに戻しながら、少しだけ伏せ目がちに下を向いていると、ディーノさんから声をかけられる。

 驚いて顔を上げれば、彼は口元に笑みを浮かべながら、手についたリンゴの果汁を拭き取った。

 

「いろいろあってナツも疲れただろ?だったら、早く寝て体を休めるのが一番だ。

 髪もしっかり乾かさねーと、せっかくの綺麗な髪が台無しになっちまうし、やること済ませて、今日はもうベッドで横になろうぜ。な?」

 

 緩やかに首を傾げながら、そう言ってくるディーノさんを見つめて瞬きをする。

 だけど、確かに今日は色々あって疲れているし、少しだけ体も重くなってきた。

 

「そう……ですね……。私も、ちょっと疲れました。」

 

「じゃあ決まりだな。洗面所行くか。」

 

「はい。」

 

 ディーノさんに促されるままに洗面所へと足を運び、歯磨きと髪の乾燥を済ませる。

 この過程の中、体の疲れは少しずつ増していき、終わらせる頃には眠気も伴っていた。

 

「ナツ。」

 

 一眠りすれば、このモヤモヤも晴れるかな……なんて思っていると、ディーノさんから名前を呼ばれる。

 静かにディーノさんに視線を向けてみると、彼は穏やかな笑みを浮かべたまま、誘うようにこっちに手を差し伸べていた。

 無意識のうちに、私はその手に自身の手を伸ばし、静かに重ねる。同時にディーノさんに優しく手を引っ張られ、彼の方に倒れ込むようにしてベッドに雪崩れ込んだ。

 

「……やっぱりな。今のナツ、なんかおかしいと思ったんだ。家光のことでなんかあっただろ?」

 

「………………。」

 

「無言ってことは、そうなんだな。」

 

「………………。」

 

 ディーノさんの問いかけに無言だけを返していると、彼は苦笑いをこぼした。

 そして、そのまま私をころんとベッドの上に優しく転がし、布団を被せてきた。

 

「リボーンに見られたら怒られちまうだろうが、こっちの方が、今のナツは眠りやすいんじゃねーか?」

 

 そして、彼も私の隣に入り込み、腕枕をしながら優しく頭を撫で始める。その温もりは、どこか落ち着くものがあって、それに縋るようにディーノさんにくっつけば、小さな笑い声が聞こえてきた。

 静かに視線をディーノさんに向けてみれば、彼は微笑んで私のことを見つめている。

 

「……こっちが落ち込んでること、なんでわかったんですか。」

 

「雰囲気と声音だろうな。奈々さんがいる時とかは、若干覇気がないように見えたが、奈々さんに心配をかけないように自身の疲労にそれを紛れ込ませることで疲労を感じている以外を悟らせないようにしている。

 それがあまりにも自然体過ぎて、オレも今回は騙されかけた。でも、槍を見た瞬間、一気に疲労に隠していた本当の感情が顔を出して、ナツの雰囲気に変化を出した……ってところだ。」

 

「………隠そうとしていたんですけどね。」

 

「だろうな。……詳しいことは聞かねーけど、家光ならちゃんとナツ達のことを想ってるよ。

 オレにナツへ武器を渡してくれって言いにきた時に話したが、めちゃくちゃナツや奈々さんの自慢話を聞かされたから、それは保証する。

 でも、やっぱり娘としては、少しくらい父親の声を聞かせろって思うし、顔をたまに見せてくれてもいいだろって言いたくなるよな。

 ナツは、奈々さんが寂しい思いをしていたことも、自分が寂しいって思ってることも知ってんだから。」

 

 ディーノさんの言葉に小さく頷けば、ディーノさんは小さく笑い声を漏らし、優しく体を抱き寄せてきた。

 先程よりも強く、包み込んでくれるような温もり。それに縋るように目を伏せて、ディーノさんの胸元あたりに額をくっ付ければ、彼の少しだけ早い鼓動を感じ取る。

 

「家光に会った時、なんか言っといてやろうか?」

 

「……そうですね。私と母さんを放っておいたことに負い目を感じてる暇があるなら、とっとと連絡しやがれクソオヤジって言っておいてほしいです。

 こっちは気まずいとか、何を話したらいいのかわからないとか、そんなくだらないこと考えてないし、ちょっとした雑談をするだけでも、それだけで寂しさが紛れるし安心できるから。」

 

「わかった。ナツに無事武器を渡すことができたことや、大切に使うって言ってたことを伝えるついでにそれも伝えとくぜ。ナツが寂しがってたことや、甘えたがってたってこともな。」

 

「……後半2つは伝えなくていいです。」

 

「一回伝えてみてもいいと思うけどな、オレは。それだけ家光は、ナツのことをちゃんと想ってる。それがハッキリわかるくらいに、たくさんの話をしてくれたぜ。」

 

 ディーノさんの言葉に偽りはない。でも、だからこそ余計に、それなら話をするくらいいいじゃないかと怒鳴りたくなる。

 こっちは、父さんがこの世界の人間であることを把握してから、いつも心配で仕方ないんだ。

 もう2度と、父親に置いていかれたくないし、失いたくないのだから。

 

「………可能だったら、あのクソオヤジを1発殴っといてください。9代目には言っとくので。」

 

「いや、ハードな注文してくるなよ……。しかも9代目に言っとくって……」

 

「だって、送られてきた携帯電話に入っていたんで。9代目の連絡先。」

 

「マジか……。」

 

「マジです。しれっと連絡先の一番最初にありました。9代目の右腕の人と思わしき方の連絡先も。」

 

「すげーな……。その携帯、学生の間はリボーンに預けとけよ。」

 

「言われなくてもそうするつもりです。今の私の手には余り過ぎる連絡網なんで。」

 

 ……自身の思いの丈をぶつけ、吐き出したからか、意識が霞がかってくる。

 目蓋は重く、眠りに落ちる兆候がきていることを悟っていると、静かに両目を温もりが覆う。

 それがディーノさんの手であることは、眠気に飲まれかけている私でもすぐに判断することができた。

 ちょうどいい温度の大きな手のひら。その温もりを感じ取りながら、静かに目蓋を閉じれば、意識は徐々に遠のいていく。

 

「Buona notte, Natu. Sogni d'oro……」

 

 聞こえてきたディーノさんの囁くようなおやすみと、額に触れた僅かな温もりを感じ取りながら。

 

 

 




 沢田 奈月
 ディーノと2人でスイートルームに放り込まれたボンゴレ10代目。
 前世の父親のこともあり、軽く父親に対する感情に拗らせている節がある。
 本当は甘えたいし、寂しいと吐きたい中学生だが、父親の立場も理解しているため、素直に吐き出せず、それを伝えることもできなかったのだが、ディーノを通じて伝えることを決める。
 ちゃっかり9代目と繋がりを得てしまった上、マフィアだらけの連絡網携帯はリボーンに預けられることとなった。

 ディーノ
 奈月の変化にいち早く気づくキャバッローネ10代目。
 彼女と2人でスイートルームに放り込まれた時はかなり困惑したが、そのおかげで彼女が隠そうとしていた感情に気づき、甘やかすことに成功した。
 奈月が眠りに落ちる直前、その額に優しくキスを落とし、彼女が眠ったことを確認したのち、その小さな体を優しく抱きしめて眠りに落ちた。

 9代目
 奈月の活躍をリボーンから聞き、その日のうちに彼女が受け取らざるを得なくなった大量のマフィアの連絡先をまとめられるように新しい携帯を自身の名義で契約し、奈月に送った張本人。
 後日、奈月からメールで、“キャバッローネの10代目が父親を殴り飛ばしても怒らないでください、こっちの気持ちも知らないで仕事ばかりしてる彼に対する一つの訴えです”と言うメールがイタリア語で送られてきてかなり驚いたが、メール内に記されているその理由を見て、これくらいは仕方ないかと苦笑いをこぼしながら黙認することにした。

 沢田 家光
 後日、奈月に武器をしっかり渡しておいたと伝えにきたディーノに1発ぶん殴られそうになることを知らない。


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