最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 ※物語の展開上、矛盾が生じる文章があったので、「とある死者達の小さな秘密」の一部文章を編集改変しました。
 さらに闇が深くなってる気がしますが、スルー……できないですかね……汗

 こちらの話はディーノさん視点、no sideの2種類でストーリーが進行します。
 少しだけ読みにくくなると思いますが、今回ばかりは線で区切るのが難しかったもので……ご了承ください。m(_ _)m


男達の水泳勝負 後

 水泳勝負の大まかな流れを決め、それぞれの第一泳者が位置に着く。

 それを確認したオレは、リボーンへと視線を向けた。

 オレの視線に気づいたリボーンは、どこからともなく競争などに使うことがある火薬を破裂させるタイプの銃を取り出して、側にいたロマーリオへとそれを手渡した。

 合図はお前に任せる……その意思を汲んだロマーリオは、小さく頷いて火薬のみのそれを受け取った。

 

「んじゃ、任せたぜ2人とも。」

 

「ケッ……言われなくとも……!!いいか跳ね馬!!てめーの指示を聞くのは今日だけだからな!!」

 

「まぁまぁ、カッカすんなって獄寺!ナツが待ってるし、早く済ませようぜ。」

 

「チッ……いいか山本。10代目のためにも一本目を落とすなよ。」

 

「任せとけ。」

 

「お前らは泳ぎに集中してくれ。なんかあったらちゃんとフォローすっからさ。」

 

「「おう!」」

 

 隼人と武が言い争いながらも、真っ直ぐと目の前に広がる海を見据える。

 絶対に負けてやるもんかと言う気迫を感じ取ることができるその姿に、オレは小さく笑ったのち、ロマーリオへと視線を向けた。

 

「水泳勝負一本目、開始!!」

 

 空へと高々と構えられたピストルが、火薬を破裂させる際の乾いた音を鳴り響かせた瞬間、砂浜に立っていた武と相手側の1人であるドレッドヘアの男が同時に走り出し、海の中へと消えていく。

 さぁ、水泳勝負の始まりだ。

 

 

 

 

 ………ディーノ達が見守る中、同時に走り出した第一泳者。

 波が揺れる青い海に飛び込んだ2人は、すかさずクロールを使って目印にしたたんこぶ岩を目指して泳ぎ始める。

 

「こちとら中坊とは鍛え方が違うんだよ!!」

 

 自身を追うようにして泳いでいる山本に対して、第一泳者の1人である青年、大倉は、鍛え方が違うと吐き捨て、さらにリードを広げようと前に出る。

 しかし、彼は山本を突き放すことはできなかった。

 

「そースか?日々のトレーニングなら、負けねーよ!!」

 

 一気にスピードを上げ、山本は大倉の前に勢いよく移動する。

 ギアを上げて泳ぎ始め、簡単に自身のことを追い抜いてきた山本の姿に、大倉は驚いたような表情を見せた。

 

 岸の方ではリードされていた山本が、一気に追い抜いたことを見たディーノと獄寺が口元に笑みを浮かべる。

 が、同時に大倉側の泳者達は、企むような笑みを浮かべていた。

 ……その企みが、簡単に潰えるものとなっていることも知らないで。

 

「よっしゃ!折り返し一番乗り!!」

 

「さて、折り返せるかな?」

 

 たんこぶ岩のすぐ横まで泳ぎきった山本が、一つ目の難関を越えることができたことに安堵するような笑みを浮かべる。

 だが、大倉はすぐに口元に笑みを浮かべ、そんな山本に話しかけた。

 しかし、山本はそれに怯むことなく、自身の後方を泳ぐ大倉へと目を向け、口元へと笑みを浮かべてみせる。

 

「折り返せるさ。ディーノさんが泳ぎに集中しろって言ってたし、何かあったらフォローするって言ってくれたからな!」

 

「?………!?」

 

 山本の言葉を聞き、何を根拠にと大倉は疑問の表情を浮かべる。

 だが、たんこぶ岩を回る際、見えてきた景色により、言葉の意味を理解することとなったのだった。

 

 

 

 

 ……たんこぶ岩と称された岩の向こうに武達が消えるのを見届け、しばらくした頃。

 第一泳者だった2人は先程の順位を維持したまま、こっちに向かって折り返してくる姿が見えてくる。

 

「「な!?なんであの中坊がそのまま……!?」」

 

「武達はただ泳いでいただけだろ?なんでそこまで驚いてんだお前ら?」

 

「「っ………!!」」

 

 武が順位を維持したまま折り返してきた姿を見て、異様なまでに驚く対戦相手に、素朴な疑問をぶつけるように、いつも通りに話しかける。

 その瞬間、2人はオレの方を見て、苦虫を噛み潰したかのような表情を見せては海の方へと目を向けた。

 

「……ボス。あっちに待機していた奴らから連絡だ。やっぱり岩の上に仲間が待機していたらしいぜ。」

 

 そんな中、ロマーリオがオレに耳打ちをするように小さな声で向こうの状況……正確には、向こうにいた部下達から流れてきた話を報告してくる。

 

「だろうな。さっきも言ったように、オレ達からしたらかなり幼稚な作戦だぜ。で?あっちにいた奴らはどうした?」

 

 予想通りの作戦に、やっぱガキだな……と相手側に呆れながら、向こうにいた連中とはどうやってケリをつけたかを問いかける。

 するとロマーリオは口元に笑みを浮かべたのち、ジェスチャーで金を渡したことを伝えてきた。

 

「なるほどな。」

 

「まだ、学生やってるような連中なら、万札をいくらかチラつかせりゃ勝手についてくるもんさ。

 簡単に買収されてくれたし、二度とこんなことはしねーと約束してくれたぜ。」

 

「はは。やっぱりな。……先にきたねー手を使ってきたのはあっちなんだし、こっちは悪くねーよな。」

 

「だな。まぁ、こっちのもある意味きたねー方法ではあるがね。」

 

「それこそ今更だろ。オレ達はお利口な一般人じゃねーんだから。」

 

「そりゃそうだ。」

 

 暴力に出ないだけまだマシだろと思いながらも、ロマーリオから報告を最後まで聞いたオレは、そろそろ武が戻ってくることを考えてロマーリオに元の位置に戻ることを指示する。

 オレの指示を聞いたロマーリオは、すぐに持ち場に足を運んだのち、海の方へと視線を戻した。

 

「よっしゃ、一番乗り!!」

 

「よくやった山本!!あとはオレがやってくる!!跳ね馬の出る幕なんざねーよ!!」

 

「へーへー、わかったからさっさと位置につけって隼人。」

 

「うっせ!!気安く名前を呼ぶんじゃねー!!」

 

「ナツには呼ばせてんのに?」

 

「10代目はいいんだよ!!」

 

「はは。相変わらずだな。」

 

 ロマーリオが視線を向けると同時に戻ってきた武。トップを維持しながら泳いできた武に珍しく褒め言葉をかけながらも、隼人は自分の位置につく。

 

「おい。あいつらはどうしたんだ……!?」

 

「わかんねーよ……!!たんこぶ岩の裏側に行ったらもぬけの殻だった……!!」

 

「ハァ!?あり得ねーだろ……!!あいつらはオレ達の言うことを必ず聞く奴らだぞ……!?」

 

「でも本当にいなかったんだって……!!」

 

 だが、相手側の第二泳者がまだつかない。先程の第一泳者の奴に言い寄ってるようだ。

 小さい声で話してるようだが、まぁ、内容は簡単に予測がつく。

 どうせ、岩の後ろに控えさせていた奴らが何もしなかったことに関して聞いているんだろう。

 

「既に買収済みだっつの……」

 

「なんだ、買収の方を取ったのか。軽くボコらなかったのか?」

 

「んなことしたら向こうと同レベルになっちまうだろ。流石に部下に一般人を殴らせる真似はしねーって。」

 

「買収はさせるのにか?」

 

「買収はいいんだよ。ちゃんとした取引だし、穏便に済ませるのにちょうどよかったしな。リボーンだって使う時は使うだろ?」

 

「まぁな。」

 

 肩に乗ってきたリボーンと言葉を交わしながら、オレは相手側へと視線を向けて口を開く。

 さっさと済ませて、ナツの様子を見に行きたいしな。

 

「お前らの第二泳者は誰だ?さっさと位置について準備しろよ。それとも、ギブアップするか?」

 

「っ……!!誰がするかよ……!!」

 

 おちょくるようにギブアップするかと問いかければ、相手側の第二泳者と思わしきスキンヘッドの野郎が隼人の横に並ぶ。

 それを見た隼人は、小さく鼻で笑い飛ばしたのち、すぐに準備に取り掛かった。

 

「ケリつけるんだろ?負けんじゃねーぞ、隼人。」

 

「ったりめーだ!!10代目を傷付けるような奴に負けてたまるかよ!!」

 

 オレの出る幕はないと言ってきた隼人に、ちゃんとやれよの意味を込めて話しかければ、すかさず言い返してくる。

 そのやる気に笑みを浮かべたオレは、すぐに先程立っていた位置に戻っては、ロマーリオへと視線を向けた。

 オレの視線に気づいたロマーリオは、静かに頷いてピストルを上に向ける。

 

「水泳勝負、2本目。開始!!」

 

 

 

 

 ……乾いた火薬の破裂音が響く中、獄寺は相手側と同時に海へと走り出し、山本同様クロールを使ってたんこぶ岩の方へと向かうために海を泳ぐ。

 ディーノの部下が行った買収により、自分達の言うことを大人しく聞いていた仲間が使えないことなど知らない相手は、少しの焦りもあってか、獄寺より後ろを泳いでいる。

 

「随分と動揺してるじゃねーか。使えるはずの仲間がいなくなってそんなに焦ったかよ。」

 

「!?」

 

 そんな中言葉を口にした獄寺に、相手側は目を見開き一瞬だけ動きが止まってしまう。

 しかし、すぐに頭を切り替えて、獄寺のあとを追いかけ始めた。

 

「なんの話だ?」

 

「とぼけんな。てめーらみてーな一般人が考えそうなことくらい簡単に予測がつく!

 大方、あの岩影にでも仲間を控えさせて、山本を負傷させて勝つつもりだったんだろ。」

 

「っ………!!?」

 

 獄寺の指摘を聞き、言葉を失う第二泳者。

 それを見た獄寺はフンッと一つバカにするように笑ったのち、再び前へと向き直る。

 

「わりーが、オレ達の代理はそのくらい既に先読み済みだっつの!!気に食わねーが確かな手腕は持ち合わせてやがる野郎だからな!!クッソムカつくが!!

 だが、てめーらみてーなクソ野郎どもに比べたら何倍もマシだぜ!!」

 

 吐き捨てるように言葉を紡ぎ、獄寺は折り返しに入る寸前でギアを上げて泳ぐ。

 相手側の第二泳者は、表情に焦りを浮かべながらも、なんとか折り返し地点に入る。

 そろそろ仲間が目の前にいる中坊を海中へと引き摺り込むはずだと思案しながら。

 ……しかし、終ぞその機会は一度も起こることはなく、目の前にいる獄寺はなんの妨害を受けることなく、一気に折り返し地点を通り過ぎるのだった。

 

 

 

 

 第二泳者が折り返し地点であるたんこぶ岩の後ろへと隠れ、見えなくなった頃。

 無言でそこの様子を見ていると、先程までの緩やかなスピードではなく、勢いつけたスピードで岩の後ろを回ってきた隼人の姿が視界に入る。

 

「よっしゃ!!獄寺リード!!」

 

「まぁ、隼人が一般人に負けるわけねーからな。当然の結果だぜ。」

 

「「っ………!!?」」

 

 折り返しをリードしながら越えてきた隼人の姿に、武と一緒になって笑っていると、相手側の連中の表情が驚愕と苛立ちに歪む。

 張り巡らしていたはずの妨害作戦……それがことごとく潰えてしまったことに、絶望したのだろう。

 負傷を狙って妨害して、卑怯な手を使っての勝利を掴もうとしていた奴らが、何を絶望してんだか。

 自分達はよくて、相手にやられるのは許せねーとか言う傲慢な考えでも持っていたのかね。

 

「ボス。水中に隠れてた奴らも買収できたとよ。金だけで切れる縁とは、随分とまぁ呆気ないことで。」

 

「全くだな。慕われてなかったのか、それとも金の方に目がくらむような連中しか率いてなかったのか……。まぁ、人望はそれなりにあったんだろうが、結局のところその程度だったんだろ。」

 

「まぁ、日本には類は友を呼ぶって諺があるくれーだし、そう言うことだろうな。」

 

 ロマーリオの言葉に確かになと小さく返す。

 さて、あいつらが買収した奴らにはしっかりと自白してもらって、あとは言い逃れできねー証拠なんかを入手して、そんで管理人に突き出すか。

 怠慢なバイトを雇うのは、海水浴場の運営者としてはどうかと思うから気をつけろっつー忠告と一緒に。

 

「ディーノ。あいつらが仲間に妨害の指示を出していた証拠は押さえておいたぞ。

 あまりにもわかりやすい場所で指示を出してたもんだから、拍子抜けだったがな。」

 

「……リボーン。お前、仕事早過ぎねーか?」

 

「オレを誰だと思ってんだ?」

 

「狙った標的(ターゲット)は必ず息の根を止める最強ヒットマンだろ。」

 

「そう言うことだ。元凶をキッチリ仕留めるために準備はしっかりしておくもんだぞ。」

 

 いつのまにかオレの肩に乗り、USBメモリーをチラつかせるリボーンに対して、思わず苦笑いをこぼす。

 ここまでハッキリとした行動を取るリボーンを見たのは何年振りだろか。

 

「っしゃあ!!オレの勝ち!!」

 

「やったな獄寺!!」

 

「これくらいできねーで10代目の右腕は名乗れねーよ!」

 

 そんなことを考えていると、隼人と武の2人が盛り上がっている声が聞こえてくる。

 視線をそっちの方へと向けてみれば、笑ってる武とそれに突っかかる隼人の絵面が繰り広げられており、かなり賑やかなことになっていた。

 そんな2人を見ながら、小さく笑ったオレは、すぐに2人の方へと歩み寄り、背後からその肩を思い切り組む。

 

「「うお!?」」

 

「流石、ナツの未来の両腕だな。任せて正解だったぜ。」

 

「このっ!!馴れ馴れしくすんじゃねー!!」

 

「あはは!びっくりしたなぁ……!!」

 

 2人して全く違う反応を見せる姿に小さく笑い声を漏らしながら、その頭をぐしゃぐしゃにする勢いで思い切り撫でつける。

 隼人からはやめろと言う声が、武からはびっくりしたような声が聞こえてくるが、気にせずに2人から静かに離れる。

 

「勝負のルールは、3本勝負のうち、2本先取した方が勝ちだったよな。どうやら、今回のこの勝負は、オレ達の勝ちらしいぜ。」

 

「「「………っ」」」

 

 現実を突きつけるように、こっちが勝ったことを告げれば、目の前の3人は悔しげに表情を歪める。

 だが、勝負は勝負。待ったなしの3本勝負だ。

 

「誰か─────っ!!うちの子を助けて─────っ!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

 これで穏便に全て解決する……そう思った矢先、海水浴場全体に響き渡る大きな声にオレ達は全員反応する。

 叫び声の方に目を向けてみれば、そこには1人の女性がおり、海の方を見て顔色を青くしていた。

 続けて視線をその方角へと向けてみれば、1人の小さな子供が浮き輪に乗ったまま沖の方へと流されている姿が見えた。

 

「待ってろ!!すぐに向かう!!」

 

「気をつけろよボス!!」

 

「わかってる!!」

 

 すかさずオレは流されている子供を助けるために、海の中へと飛び込む。

 様子からするに、間違いなくあの子供は離岸流に巻き込まれて沖の方へと流されたカタチだ。

 浮き輪がある分、直ぐに溺れることはないかも知れねーが、体力が尽きたら間違いなく溺れ死ぬ。

 ここの海の沖の方は、かなり深かったはず……水中に落ちたら助けることがかなり難しくなる!!

 最悪、命を落とすこともあり得る!!

 

「チッ……ヒーロー気取りかよ……。海は甘くねーぞバカが……!!」

 

「!!」

 

 泳ぎ初めに聞こえてきた声に、オレは一瞬目を見開く。だが、その声がナツ達を苦しませた元凶の声であることに直ぐに気がついたオレは、自身の中で何かがキレる感覚を覚える。

 

「目の前の命を助けるどころか、他人の命を蔑ろにしてまで女のケツばかり追うことしか考えてねーガキが口出しすんじゃねーよ!!」

 

「「「!!?」」」

 

「ナンパだけを目的にして、命なんざ賭けねーで!!高みの見物しかしねー上、女を傷付けることしかできねーようなてめーらに、命の重さなんてわかんねーだろ!!

 自分が可愛けりゃそれでいい!?だったらライフセイバーなんて大層なもんになってねーでナンパだけしてりゃいい!!

 肩書きを利用することしか考えてねーてめーらが、いちいち茶々入れしてくんな!!

 虫唾が走るんだよ!!てめーらみてーな奴を見てると!!」

 

 ナツを傷つけた連中を怒鳴りつけながら、オレは急いで沖の方へと流されていた子供の元へと向かう。

 

「助けて─────っ!!」

 

「直ぐに行くからもう少し耐えてくれ!!」

 

 離岸流の動きを感じながら、調節することにより勢いよくその流れに乗って子供の元へと辿り着く。

 流されないように浮き輪ごと子供の体を抱き寄せれば、捕まえた子供が驚いたような表情を見せた。

 

「もう大丈夫だ。すぐに岸に連れて行くからな。」

 

「う……うん……。」

 

 落ち着かせるように笑いかければ、子供は小さく頷き、オレのことを真っ直ぐと見つめてくる。

 その瞳から感じ取れるのは、不安と安堵、それと、わずかな疑問と期待のようなもの。

 なんか、あらぬ誤解を受けちまってるような気がしなくもねーが、今は離岸流からなんとか抜け出して、流れがない場所へ行かねーとな。

 

 ……離岸流は、オリンピックなんかに出ている水泳選手であろうとも、流れに逆らって泳ぐことは不可能だとされている。

 流れが早いため、いくら戻ろうとしても、流れに押し負けて岸からどんどん離れて行くため、パニック状態に陥り、体力も尽きて溺死する可能性が高い。

 ある地域では、竜巻やサメの被害による死傷者を足した数であっても離岸流による事故の死傷者は越えられないと言われており、海水浴の中で、最も命を落とす原因とされているくらいだ。

 いくら体力に自信があるオレでも、これに逆らって泳ぎ切る自信はない。ならば、正攻法で抜けるのみ。

 

 ……離岸流により、沖に流された場合、まず海岸線と並行になるように泳ぎ、波が砕けるところに抜ける必要がある。

 流れに逆らうのではなく、流れを横切るようにして、真っ直ぐと泳ぎきる。

 それにより、波が徐々に砕けてくるから……よし、ここだな。

 

 波が砕けた場所まで移動できたオレは、子供を落とさないようにしてしっかりと抱きしめ、砂浜の方へと泳ぐ。

 時折不安そうにしている子供に対して、「大丈夫」「落ち着いて」「必ず助けるから任せろ」と声をかけ、不安にせないように笑いかけるを繰り返せば、子供の表情からは、すっかりと恐怖がなくなった。

 そのことに安堵しながら浅瀬まで泳ぎ切り、静かに足を地面につけて子供を離せば、子供の両目から涙がポロポロとこぼれ始める。

 

「お母さ〜〜〜〜んっ!!」

 

「ああ……!!よかった……!!怪我はない!?」

 

「うん……っ!!キラキラの王子様が助けてくれたの……!!」

 

「キラキラの王子様……」

 

「よかったじゃねーか。王子様だとよ。」

 

「オレはそんな柄じゃねーよ……」

 

 母親に抱きつきながら、そんなこと言う子供に、オレは苦笑いをこぼす。

 リボーンはそんなオレが面白かったのか、プクスッと笑い声を漏らしながら揶揄うように話しかけてくる。

 

「あの、ありがとうございました!娘を助けてくださって……!なんとお礼を言ったらいいか……」

 

「気にしないでくれ。目の前で危ない目に遭ってる一般人を助けるのも、ある種の仕事みてーなもんだからな。」

 

 揶揄うように笑ってくるリボーンを睨みつけ、笑うのやめろよと告げていると、先程の子供の母親がオレに走り寄ってきては感謝の言葉を述べてくる。

 すぐに一般人を助けるのはある種の仕事のようなものであることを笑いながら告げれば、目の前の母親は顔を赤くした。

 

「王子様!」

 

「と、オレのことか?」

 

「うん!」

 

 そんな中、先程助けた子供がキラキラした目を向けながら、オレの足元に駆け寄ってきた。

 こんだけちいせーと、流石に立ったままじゃ怖がらせるかと思い、静かにしゃがみ込めば、子供はどこか頬を赤くしながら、オレのことを真っ直ぐと見つめてくる。

 

「どした?痛いとこでもあんのか?」

 

「ううん!違うの!私、王子様にお礼が言いたくて……」

 

「お礼?」

 

「うん!助けてくれてありがとう!私、大きくなったら王子様のお嫁さんになる!」

 

「おっと……そうきたか……」

 

 王子様じゃねーんだけどな……と思いながらも、話を聞いてみれば、これまで何度かかけられたことがある言葉が降りかかってくる。

 とは言え、不意打ちで口にされた言葉だったため、少しだけ驚いていると、子供の母親が慌てたような様子を見せる。

 

「ちょっと!何言ってるの!すみません、うちの子が……」

 

「いいっていいって。よくあることだからな。」

 

 慌てて謝罪をしてくる母親の方に軽い調子で返事をしながらも、目の前にいる子供に視線を向ける。

 その目は憧れと好きが混ざっているような、よくある子供の無邪気な好意に溢れており、やれやれと少しだけ肩をすくめた。

 これまでは大きくなったらな、とか、大人になるまでその気持ちが変わってなかったら、とか、軽く受け流すように返答していたし、大きくなってから、そんな感情を持ち越した女がいたこともなかったからよかったが、今だと少し違う。

 嘘であっても期待させるようなことはあまり言いたくねーし、オレにはオレの想いがある。

 

「小さなお姫様の申し出は嬉しいんだが、わりーな。オレにはもう、大切にしたいと想っている、世界でたった1人のお姫様がいるんだ。

 だから、その想いに応えることはできねーんだ。」

 

「王子様には、もうお姫様がいるの……?」

 

「ああ。仮に毒林檎や糸車の針に込められた魔法で眠りに落ちてしまったとしても、絶対にオレのキスで目を覚まさせてやれる自信があるお姫様が1人な。」

 

「!」

 

 オレの言葉を聞いて、目を丸くする子供に微笑みかけ、その頭を優しく撫でる。

 悪いな、と短くもう一度謝りながら。

 

「ディーノさん!みんな!大丈夫ですか!?悲鳴が聞こえてきましたけど!!」

 

「「ナツ!?」」

 

「10代目!?お体はもう大丈夫なんスか!?」

 

「大丈夫。みんながいろいろとサポートしてくれたおかげで回復できたよ。心配してくれてありがとう。」

 

「よかった……」

 

「ああ。かなり体調が悪そうだったからな。でも、回復したならよかったぜ。」

 

 すると、偶然ではあるだろうが、まるでタイミングを見計らったかのようにナツが姿を現した。

 水着の上からは、相変わらずオレが貸していた上着を羽織っており、軽く抱きしめるように前でクロスさせて走ってきている。

 オレが貸した上着と言うこともあってか、どことなく頼りにされてるような優越感。

 そのことに胸を高鳴らせていると、下の方から視線を感じ取る。

 すぐに視線をそっちへと向けてみれば、さっきの子供がオレとナツを見比べながら、口を開いた。

 

「あのお姉ちゃんが、王子様のお姫様?」

 

 素朴な疑問に少しだけ目を丸くする。だが、すぐにオレは小さく笑って、ナツの方へと視線を向けた。

 

「ああ。オレが世界一愛してる大切なお姫様だ。綺麗なお姫様だろ?」

 

「うん!お姫様もすっごくキラキラ!」

 

「だろ?自慢のお姫様なんだぜ。」

 

「そっかぁ……じゃあ、私は王子様のお姫様になれないね……」

 

「……悪いな。」

 

「ううん!お姫様と王子様、すっごくキラキラしてるもん!おとぎ話の2人みたい!」

 

 子供が無邪気な笑顔を見せながら、オレとナツのことを明るく褒める。

 その無邪気さに、先程まで荒んでいた気持ちが晴れて行く気がして、オレは小さく笑う。

 

「……?なんの話ですか?」

 

「ん?ああ、オレにはナツってお姫様がいるから、小さなお姫様の想いには応えられねーって話をしてたんだよ。」

 

「ぶ!?なんてこと言ってるんですかディーノさん!?」

 

「いいじゃねーか。ナツとオレは恋人だろ?」

 

「もう!!」

 

 少しだけ揶揄うように声をかければ、ナツが拗ねたように頬を膨らませる。

 その姿があまりにも可愛くて、思わず顔を緩めていると、スパンッと背後から頭をはたかれた。

 

「いっでぇ!?何すんだよリボーン!!」

 

「ムカついたからはたいただけだぞ。」

 

「はぁ!?」

 

「お前が王子なら、オレは王子から姫を奪う竜になってやる。絶対ぇにお前にゃナツは渡さねーぞ。」

 

「この……い゛った!?」

 

 言い返そうと口を開いた瞬間、リボーンがオレの肩を思い切り蹴り飛ばしてナツの方へと移動した。

 わざと痛みが入るように跳びやがったな……とリボーンを睨みつけるが、リボーンはそんなオレのことど気にしていないのか、そのままナツの方に視線を向けた。

 

「いくら体調が良くなったとは言え、念には念をだ。今日は近くの温泉にでも泊まって明日帰るぞ。

 ナツだけじゃねー。京子とハルの2人も最悪な1日になっちまっただろうからな。

 温泉にでもゆっくり浸かって、しっかりとリフレッシュするぞ。」

 

「え?」

 

「予約はもうディーノが取ってるからな。早めに着替えて向かうぞ。まぁ、その前に、最悪な1日をプレゼントしてきやがったあいつらにキッチリお灸を据えてやるがな。」

 

「……えっと……一応、一般人だから、ほどほどにね?」

 

「コッテリ絞ってもいいと思うぞ。まぁ、ナツがそれでいいならいいけどな。」

 

 そして、オレのことなんか無視したまま、これからの予定をナツに告げるのだった。

 

 

 




 ディーノ
 代理ボスとして指示を飛ばしながらも、キッチリとマフィアらしい裏工作を部下にさせていたキャバッローネファミリー10代目ボス。
 ナンパ目的でライフセイバーになり、肩書きだけ利用してナンパしかせず、他人の命を蔑ろにする奈月のトラウマ再発元凶を怒鳴りつける。
 奈月を世界一愛してると言うのは真実であるため、堂々と周りに宣言する。
 賄賂による買収は汚くないのかって?正当な取引だし、先に汚い手を使ってきたのは向こうだし問題ねーよ。オレ達は利口な一般人じゃねーんだからさ。

 リボーン
 知らぬ間に元教え子が男になってることに軽く危機感を抱き始めている奈月のお目付役ヒットマン。
 何堂々と奈月を愛してる宣言してやがんだへなちょこのくせに。(ゲシッ

 山本&獄寺
 ディーノとディーノの部下の援護もあり、無事にライフセイバーチームからリードを奪い勝利した次期ボンゴレの双腕。
 体調が回復した奈月の姿を見て、かなり安堵して力が抜けた。


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