最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 相変わらず主人公に矢印を向けるリボーンの図がありますが、今回は控えめです!多分!


並盛町の夏祭り

 リボーンが呪解する術を得た日から一週間が経った頃。

 今日は、並盛町の夏祭り。近所の祭り……と言うにはかなりの大規模で、最後は花火大会で〆るという並盛町の一大イベントだ。

 もちろん、並盛町には沢山のイベントがある。この町は、並盛と言う名前の割には、そんなイベントがかなり集まっている場所なのだ。

 だからか、町の外からやってくる人も割といて、とても賑やかで楽しい祭りとなっている。

 

「ナツ〜!早く早く〜!」

 

「【楽しそうなものも美味しそうなものもいっぱい!ナツさん!早く周りましょう!】」

 

「はいはい。わかったからはしゃがないの。……父さんが必要経費以上の金額を口座に振り込んでるから、あまり制限はつけるつもりないけど、ちゃんと食べ切れる量を買うんだよ?」

 

「わかってるもんね!や・た・い!や・た・い!」

 

「【ありがとうございます、ナツさん!まずは何を食べるか悩みどころですね〜……】」

 

「【屋台は逃げないから、ゆっくりでいいよ。ていうかゆっくりにしてね。こっち、今日は浴衣だから早く動けないんだよ。】」

 

「【そうでしたね。じゃあ、ゆっくり探しますね!】」

 

 前世では夏祭りは母さんがいた時に行ったきりだったから、小4くらいから行ってないのか……なんて思いながらも、祭りを楽しむことができるこのひとときに、どことなく胸を高鳴らせながら、履いている下駄をカランコロンと鳴らして歩く。

 祭りに来ている人達からの視線を度々浴びてはいるが、こちらがたまにイーピンの国の言語で言葉を口にするのを見て、すぐにその視線は静かに外れる。

 外国の子なのか……なんて言葉が聞こえてくるけど、正真正銘の日本人です。

 いや、ジョットさんの血の影響で、どちらかと言うとイタリア人寄りの見た目になってるけどさ。先祖返りって怖……。

 見た目イタリア、しかし、時折使う言語が中国の系統……なのに着ているのは浴衣……うん、情報量が多すぎる。

 

 ちなみに、ジョットさん達は現在上空に避難している。仔猫の姿だと人に踏まれそうになるし、有幻覚を使った人型の器を利用すると、周りから視線を浴びたり、リボーンから警戒されたりする可能性があると言うことから、一番の安全策を取っている。

 

『夏祭り満喫したい……神輿担ぎたいし盆踊りにも参加したい……』

 

『できるわけねーだろ。オレ達一応死人だぞ。こうやっているけど。』

 

『夏祭りの賑やかさに紛れて霊的な何かが混ざっても別にいいだろう!?』

 

『よくありませんよ。何考えてるんですかプリーモ。』

 

『どんだけ日本バカなわけ、君。』

 

『ていうか参加できないのに日本の着物?着てるし……』

 

『少しくらい祭り気分に浸ってもいいだろう!?』

 

『プリーモは本当に日本が大好きでござるなぁ。日本が出身国の私からすると、なんとも誇らしい。』

 

『だが、究極に祭りに紛れるのはやめておけ、プリーモ。リボーンもいるのだからな。』

 

『うう……夏祭りぃ………』

 

 ……なんとなく視線を上空へと向けてみれば、初代組がなかなか愉快なことになっていた。

 まぁ、夏祭りは日本のお盆であり、一つの伝統行事だから、日本が大好きな彼かしたら、せっかく現世に降りてきたと言うのに、大好きな日本に伝統行事に参加できないのだから、かなり辛いようだ。

 ファミリーメンバーから総ツッコミ(一名喜んでいる)をされている。

 ……Dさんだけは、ツッコミと表情が合ってない気がするのは、多分、気のせいじゃないだろう。

 ジョットさんがしおしおなしわくちゃ電気鼠っぽくなっている姿を面白がっていると言うのがよくわかる。

 

「お、ナツじゃねーか。」

 

「ん?」

 

 ドンマイ、ジョットさん……と苦笑いをこぼしそうになっていると、足元から声が聞こえてきた。

 視線をすぐにそっちの方へと向けてみると、甚平を着ているリボーンの姿がそこにあった。

 

「やっほー、リボーン。祭り楽しんでる?」

 

「ああ。それなりにな。そっちはチビ達の子守りか?」

 

「うん。本来なら風紀委員会の仕事で、周りの屋台からショバ代の回収を行う予定だったんだけど、恭弥さんから、“奈月は夏祭りを楽しんでていいよ。風紀委員会の仕事は僕と役員で済ませるから。その代わり、浴衣を着てきて”って言われてね。

 後日、母さんから雲雀君から贈り物が届いていたわよって、今着てる浴衣が入った荷物を渡された上、夏祭りにこれを着てこなかったら咬み殺すよって手紙が荷物の中に入っててかなり困惑したけど。」

 

「……やっぱそれ、新しい浴衣だったか。ヒバリの奴……ちゃっかり桜奈に浴衣贈りやがって……。」

 

「うーん……いろいろ隠さなくなったなこの家庭教師……」

 

 軽く拗ねた様子を見せるリボーンに苦笑いをこぼす。あれからと言うもの、リボーンはアルコバレーノの姿であろうとも本格的に口説こうとしてくる様子を度々見せるようになった。

 アルコバレーノ姿のリボーンに、ときめくことは視覚的にないけれど、あのブレスレットをもらってから、度々夜毎に呪解して通ってくるようになり、嫌でも同一人物であることをハッキリと記憶させられてしまい、本来の性格も、周りに人がいないと表に出してくるようになってから、たまに本来の姿もチラつくようになってしまったものだ。

 特にドストレートな物言いで、自身の想いを伝えてきたり、女扱いをされてしまうと、その傾向は色濃く出てしまい、冷静を取り繕うのが少しだけ難しくなる。

 オマケに、今回みたいな時は、拗ねてますよ、妬いてますよをハッキリと見せてくると言った対応に、自身の前では本来の自分を見せてくれると言う、ちょっとした特別感は、どことなくこっちも少しだけ意識しそうになる。

 まぁ、わたし自身も、リボーンの前では素に戻って、本来のわたしを晒しているけどね。

 

「次に祭りの機会があったら、今度はオレが渡すからな。他の奴からもらうんじゃねーぞ。」

 

「独占欲〜……。リボーンって割とそれが強い人?」

 

「意外と嫉妬深いとは思うぞ。まぁ、独占欲が強いってのも強ち間違いじゃねーけどな。」

 

 サラッと肯定されたことに苦笑いをこぼす。すると、一緒に歩いていたリボーンが視線を一つの屋台に向けた。

 そこにあったのは射的の屋台。そう言えばリボーンって射撃の腕がかなりヤバい人だったな……と少しだけ思いながらも、その影響で射的に視線を奪われたのだろうと考える。

 

「……ペアテディ…………」

 

「ん?」

 

「……なんでもない。」

 

 不意に視線に映り込んだテディベアのセットに気づいたわたしが、ポツリと小さく呟くと、リボーンがこっちの反応に気がつく。

 すぐになんでもないとリボーンに告げれば、リボーンは景品棚に並んでいる景品を指を動かしながら確認しては、ぴょんっと射的屋のテーブルの上に乗る。

 

「一回やらせろ。」

 

「お、小さなチャレンジャーがきたな。一回500円だぞ。」

 

「500円か、割とたけーな。まぁ、別に構わねーが。」

 

 的屋の店主がリボーンから500円を受け取り、射的用のコルクを皿に入れてリボーンの側に置く。

 リボーンは、側に置かれたコルク弾を手に取り、何かを確認したのち、再び視線を景品へと向ける。

 側から見たら微動だにしていないように見えるが、リボーンと一緒に過ごすことが多いせいか、彼が景品との距離や、景品の傾き方などを既に計算していることがわかる。

 

「……まぁ、あれを取るのに必要なのは3つくらいか。他の景品に比べたら重そうだしな。」

 

 小さく呟いたアルコバレーノは、一瞬にしてヒットマンとしての気配を纏う。

 そして、射的用のコルク銃に弾をセットしては、一つの景品目掛けてそれを放った。

 放たれた弾は、景品の傾きや当たる位置を介して複数の商品を撃ち抜くように、次々と軌道を変えていき、三つ目の景品に当たったところで、その軌道は私が見ていたペアテディの方へと向かっていた。

 

「え?」

 

 常軌を逸脱した軌道の弾を見つめ、小さく声を漏らす。だが、すぐに驚くのはまだ早いと言うことがわかった。

 ……先程軌道を変えていた弾を追うようにして、時間差で現れた二つのコルク弾。

 そのうちの片方は、一発目と同じように、複数の景品を経由するように弾かれていき、最後のコルク弾は、真っ直ぐとペアテディの方へと向かっている。

 そして、一つ目のコルク弾が、人間で言う眉間の位置にぶつかり追撃で放たれていた二つ目のコルク弾が、その勢いを増やすように一発目へと当たったことによりペアテディは大きく揺れ、最後に放たれていた景品の経由を行ってない、真っ直ぐな軌道のコルク弾がペアテディの眉間にぶつかった瞬間、ぐらりと景品棚の下へと落下した。

 

「「「「すげぇ─────!!!?」」」」

 

「ありっこね─────!!?」

 

「うっそでしょ……何それぇ……」

 

 理解不能の射撃技術に、思わず声を漏らしてしまう。コルク弾が経由して景品も下に落としているし、何なんだこのヒットマン……!!

 

「ぬいぐるみは重さがあるが、上の方を狙えば十分揺らすことができるんだ。だが、コルクを撃つためのこの銃の構造上、早撃ちをするにはいささかラグがあり過ぎる。

 だからコルクの弾のうち、一発目、二発目は景品の経由を利用することにより弾をセットする時間を稼ぎ、殺した勢いを増強するための力に変え、三発目の弾丸を真っ直ぐと景品にぶつけることで、ペアテディの重心を後ろにずらしたんだ。

 そうすれば……まぁ、この通りだな。こいつがほしかったんだろ?ほら、やる。」

 

「多分、それができるのはリボーンだけだよ。……ありがとう。すごく嬉しい。」

 

 リボーンの射的講座に苦笑いをこぼしながらも、わたしは手渡されたペアテディを抱きしめる。

 サイズ感はリボーンと同じくらいで、ペアテディと言われているだけあって、手が縫い付けられているそれは、とてもふかふかで触り心地がいい。

 

「にしても、相変わらずナツはぬいぐるみが好きだな。」

 

「ん?ん〜……まぁ、それもあるんだけどね。」

 

「?」

 

 他にも理由はあるんだよ、と、少しだけ含むような物言いをすれば、リボーンは静かに首を傾げる。

 だけど、わたしは、そんな彼に最後まで理由を伝えることはせず、黒とレモン色の2色のテディベアを抱きしめて口を閉ざした。

 だって言えないでしょ?“ちょっとだけカラーリングがわたし達みたいだったから、一瞬だけ視線を向けてしまったんだ”……なんてね。

 

「残りの弾はどうするの?」

 

「そうだな……。目的は果たしちまったし、適当になんか取るか。」

 

 そう言ってリボーンは二つの弾丸を適当なお菓子に当てて終わらせる。

 

「うう……全撃ちされねーだけマシだったがかなりの痛手に……。昨日は流行りの引ったくりに売り上げ全部盗られるし、散々だぁ……」

 

「引ったくり……?」

 

「ん?ああ……実は最近、ここいらをよくうろついてるんだ。特に、祭り内の屋台がしょっちゅう売上を狙われちまうって話でな……。

 今のところ、個人が狙われた話は聞いてねーが、一応、お嬢ちゃんも気をつけておけよ。

 せっかく綺麗な浴衣を着てんだ。汚したりしたら大変だからな。」

 

「……ありがとうございます。気をつけますね。」

 

 おじさんの忠告を聞き、素直に感謝を述べれば、気をつけろよと見送られる。

 それを聞いたわたしは、すぐに頭を静かに下げて、射的屋の前から立ち去った。

 

 ……引ったくり……去年もこの時期に犯罪3兄弟とか言うくだらない名前を持つ3人組が騒動を起こしていたけど、あの3人は叩けば叩く程余罪が見つかって、それなりの年月を牢獄で過ごさなくてはならなくなってたから、まだ出てきていいはず……。

 となると、別の誰かが引ったくりをしていると言うわけか……。恭弥さんも知ってるのかな?

 いや、あの人なら把握してそうだな……。

 

「引ったくりか……。外国程じゃねーが、割とこっちの方も物騒だな。」

 

「まぁ、場所が場所だし、時期が時期だからね。犯罪者が行動を取るには絶好のタイミングだろうし、発生しやすいのは否めないかな。」

 

「だな。」

 

 リボーンと言葉を交わしながら歩いていると、ナツさん!と外国の言葉で紡がれた自身の名前が聞こえてくる。

 すぐに視線を声の方に向けてみれば、そこには笑顔のイーピンがいた。

 

「【どうしたの、イーピン。もしかして、何か欲しいものかやりたいものが見つかったかな?】」

 

「【はい!あそこにある、チョコバナナと言う食べ物を食べてみたいです!】」

 

「【チョコバナナだね。わかったよ。】」

 

 どうやらイーピンが欲しいものを見つけたらしい。チョコバナナとは、なかなかいいものを選ぶもんだね。

 あれは基本的に、リンゴ飴やキャラクターカステラのように、祭りなどのイベントの屋台などでしか食べることができないものだ。

 そんなことを思いながら、チョコバナナの屋台へと足を運ぶ。

 しかし、すぐに屋台の方角からあまりにも覚えのある気配を感じ取ってしまい、何度か瞬きをしてしまう。

 

「【ナツさん?どうかしましたか?】」

 

「【あ〜……ちょっとね。屋台の方からあまりにも覚えのあり過ぎる気配を感じ取ったものだから……。】」

 

「【ナツさんが気配を感じ取る……と言うことは、私達の知り合いの方ですね。

 ですがどなたでしょう?屋台を開きそうな大人の方は、あまりいないような気がするのですが……】」

 

「【んー……これは大人ってよりは……まぁ、行ってみればわかるよ。行こうか、イーピン。】」

 

「【はい!わかりました!】」

 

 イーピンを引き連れて、チョコバナナの屋台へと足を運ぶ。

 そこには、やはりと言うか、かなり見慣れた二人組の姿があった。

 

「チョコバナナ一本ください。」

 

「あいよ!うちは頼まれてからフランス製のチョコを塗るからね!」

 

「ベルギー製つってんだろ!おらy……って10代目ぇ!?」

 

「へ!?ナツ!?」

 

 何やってんだこの2人……と思いながらも、チョコバナナを注文してみれば、すぐに完成したチョコバナナが差し出される。

 だが、チョコバナナを受け取りにきていたのがわたしだと気づいた瞬間、見慣れた2人……隼人と武の2人が、かなり驚いたような様子を見せた。

 

「アッハハハハ!!2人とも驚きすぎでしょ!!近所の祭りなんだから、私がくる可能性は高いだろうに!」

 

 あまりにも面白い反応を見せるため、思わず笑い声を上げてしまう。

 すると、隼人と武は顔を真っ赤にしては、困ったような笑みを浮かべた。

 

「失念してたぜ……。」

 

「オレもだ……。」

 

「嘘でしょ君ら。」

 

 まさかの失念発言に、再び笑い声を漏らす。まぁ、見た感じ、仕事をしていたみたいだし、2人のやり取りからして、それなりに衝突しながらの接客だったみたいだから、わからなくもないか。

 

「はい。400円。チョコバナナはもらうよ。」

 

「はいっス!あー……その……10代目。」

 

「ん?」

 

「えと……浴衣、すっげーお似合いです……」

 

「あ、おい、獄寺!オレが先に言おうとしたのに!」

 

「!よっしゃ!オレの方が先!10代目の右腕なら、これくらい当然だっつの!」

 

「意味わかんねーよ!えっと、ナツ。すっげー可愛いな。髪型も綺麗に結われてて、一瞬誰だかわかんなかったぜ。」

 

「ありがとう、武。隼人もね。この髪、母さんに結ってもらったんだ。せっかく綺麗な浴衣を着るんだから、髪も結っていきなさいってね。」

 

「そうだったんだな。」

 

「その髪型も10代目によく似合ってます!ところで……髪につけてるのは……?」

 

「ん?ああ、これ?簪だよ。つい最近、リボーンと一緒にショッピングモールに行ってね。お前に似合いそうだからって、買ってくれたんだ。

 明らかに、通常のアクセサリーショップで買うようなものじゃない専門店のもので、かなりのお値段がしそうなものだけど、着ている浴衣の夜桜柄にもぴったりで、母さんにつけてもらったんだよ。」

 

「へぇ……小僧がナツに簪をあげたんだな。」

 

「流石はリボーンさん!10代目のことをよく見ていらっしゃる!」

 

「当たり前だぞ。ナツはオレの大切な生徒だからな。ところでお前ら。男が女に簪を贈る意味は知ってるか?」

 

「「?」」

 

「わかんねーか。気になったら調べてみろよ。どう言う意味かよくわかるからな。」

 

「ちょっと、リボーン……!!」

 

「まぁ、これに対する答をナツからもらうのはもうちと先になりそうだがな。」

 

 隼人から手渡されたチョコバナナをイーピンに渡しながら、リボーンが口にした言葉に、わたしは思わずツッコミを入れる。

 隼人達に何てこと言うんだこのヒットマンは!!

 

「そういやナツは知ってたな。教えてやったらどうだ?」

 

「ニヤニヤするんじゃない!」

 

 面白がるようにわたしに話しかけてくるリボーンに、笑うなと告げれば、彼は軽く笑い声を漏らす。

 その姿に少しだけムッとしながらも、キョトンとする隼人達に視線を向けた。

 

「そんなことより、何で隼人達が屋台をやってんの?」

 

 話題を変えるように、先程から感じていた疑問を口にする。

 普段の夏祭りだと、10代の屋台展開は禁止されており、出すことはできないと思ったのだけど……。

 

「ああ、それに関してだが、実は最近、町内会から請求書が届いてな。ほら、七夕の時、獄寺が余計なことをした上、山本が公民館の壁をぶっ壊しただろ?

 その修理費を払ってくれって言われたんだ。いわゆる弁償って奴だな。

 そこで、今回は特別に町内会の長老達から金を稼ぐために店を出す権利をもらったんだ。」

 

「なるほど……。それで屋台か。」

 

 こちらの疑問に答えたのはリボーンだった。ボンゴレの名前を使ったこともあり、いろいろと皺寄せがこっちに回ってきたとの話らしい。

 わたしがリボーンの話を聞いている間、隼人と武の2人が気まずそうな表情を浮かべる。

 自分達のやらかしの結果、皺寄せを被ることになったこっちに対して、申し訳ないと言う気持ちが見てとれた。

 

「売り上げ目標は?」

 

「あ、はい!バナナ500本ス!」

 

「となると、修理代は20万かかったってことか……。出そうと思えば私が出せるけど、今回は隼人達が悪かったしな……」

 

「「ゔ………」」

 

「一種の社会勉強としてこのままやらせとけ。自業自得によって起こったことまで、ナツが責任を取る必要はねーぞ。

 今回、明確に誰が悪いのかわかってんだからな。それをカバーするようなことをボスがしたら、部下に甘えを生むことになるぞ。」

 

「……それもそうか。いい反省の機会にもなるだろうしね。」

 

「「………はい……。」」

 

 しょぼんとした2人に、わたしは何度か瞬きをする。しかし、リボーンに言われた通り、今回の責任は主に2人の方にある。

 本人達の明確なミス……それに対して所構わず手を貸すと言うのは、いささかどうかと思うし。

 

「……まぁ、やり遂げるのは隼人達だけど、少しくらいはアドバイスしてあげるよ。

 まず、この客の流れからして、この調子で500本はまず難しいんじゃないかな。」

 

「「え゛!?」」

 

 わたしの言葉を聞き、隼人と武の2人が固まる。その姿を見て、わたしは本気でこの状態でいけると思ったのかと呆れを抱く。

 店頭に並ぶのは、何も塗ってないまっさらなバナナ。客側から見たら、寂しい見た目な上、全くと言っていい程インパクトがない。

 さらに言うと、美味しそうにも見えないのだから、買いに行こうと言う気力を一切抱けない。

 

「まず、店頭が寂し過ぎる。注文を受けてから塗るのは別に構わないけど、どんな品物か見た目がわからなきゃ買いたくもないだろ。

 なんだよまっさらな皮が剥かれた棒付きバナナって。こんなの美味しそうに見えないだろ。」

 

「「あ……」」

 

 こっちの指摘に、気づかなかったと言わんばかりの表情を見せる2人に再度ため息を吐く。

 家族が揃っていた時のように、本格的に祭りを楽しむと言う気持ちは、とうの昔に忘れてしまっていたけど、祭りの景色は、時期によっては常にテレビ番組で放映されていた。

 その時に見た屋台の商品の数々は、どれも完成され華やかなた姿で店頭を飾り、客を呼び込むための一つの看板としての役割を果たしていた。

 ここはそれができていない。こんなんじゃお客さんなど入ってくるわけないだろうに……。

 

「レストランなどにある食品サンプルと同じだ。どんな食べ物があり、どんな見た目をしているのかがわかるからこそ、客層は店へと足を運ぶ。

 まずは、店頭にいくつか完成されたチョコバナナを飾って。見た目もしっかり華やかにして、食品サンプルの看板として使うんだ。」

 

 こちらの指示を聞き、隼人と武は急いで3本程完成したチョコバナナを店頭に並べる。

 ……ちょっとだけチョコにムラがあったり、カラースプレーチョコにムラがあったりするけど、まぁ、そこら辺まで指摘しなくてもいいか。

 屋台の商品は、基本的にその場のみのもの。その日のうちに食べきってしまうから、深く考える必要はない。

 

「あと、隼人の接客態度が最悪過ぎる。武は問題ないけど、隼人の言動は小さい子も大人も怖がらせるよ。

 特に、チョコバナナは子供や若い人に人気のある食べ物だ。だからこそ余計にやってこない。

 お客さんはまず、商品の見た目や華やかさを見て、次に売る側の様子を見る。

 それにより行くか行かないかを決め、行動を取るのだから、その態度はただただマイナスだ。

 売るどころか脅しになるからね。しっかりと笑顔を作れとまでは言わないけど、もう少し態度を和らげて。

 そうしないと入ってくる客も入らない。結果、また売上は遠のいていくと言うわけだ。」

 

「はぐ!?」

 

 ショックを受けたように固まる隼人。態度が最悪と言うわたしの言葉がグサっときたのか、それとも売上が遠のくと言う言葉にショックを受けたのか、はたまたそれの両方か。

 なんであれ、相当ブッ刺さってしまったことに変わりはない。

 

「とりあえず見てて。私のようにしろ……とまでは言わないけど、接客の手本を見せるから。」

 

「「え?」」

 

 2人が不思議そうな表情をする中、わたしは数回深呼吸をして、自身の頭を切り替える。

 そして、表情に穏やかな笑みを浮かべては、両手を口元に添えた。

 

「いらっしゃい、いらっしゃい!甘くて美味しいチョコバナナはいかがですか?小腹のおともに!食後のデザートに!甘くて美味しいチョコバナナはいかがですか?

 食べ歩きにも最適!見た目も華やか!楽しい祭りをさらに特別な思い出にしてみませんか?

 注文と同時にチョコレートを塗るので、出来立てのチョコバナナが食べられますよー!」

 

 一本400円でーす!と明るい声音と笑顔を見せながら、祭りに参加している人達に声をかければ、多くの人がこちらの方へと注目する。

 

「ママ!私チョコバナナ食べたい!」

 

「わー……美味しそう!」

 

「なら、一本買っていくか?」

 

「買う買う!」

 

 さりげなく店頭からずれた位置に立ち、完成したチョコバナナを看板として見せながら、何度か声を張り上げれば、こっちに注目していた祭りの参加者が次々とこっちへ足を運び始める。

 

「ほら、隼人、武!2人とも仕事仕事!」

 

「「了解!」」

 

「いらっしゃい、いらっしゃーい!出来立てのチョコバナナはいかがですかー!

 食べ歩きにも最適なチョコバナナはいかがですかー!甘くて美味しいチョコバナナ!お祭り限定のチョコバナナ!一本400円からお買い求めいただけまーす!小腹のおともにもいいですよー!」

 

 これ好機と考え、客の呼び込みを行なっていけば、隼人達が切り盛りするチョコバナナの屋台は、あっと言う間に人集りができていく。

 これはちょっと忙しくし過ぎたかな?と少しだけ反省しながら、2人の作業のフォローに回れば、スムーズに商品の受け渡しが可能になった。

 時折お札が紛れているが、すぐに支払われた分から引いたお釣りを取り出して返却し、そのあとチョコバナナを手渡せば問題ない。

 

「隼人。武。いくらか小銭をお客さんの手が届かない範囲に100円を6枚ずつ重ねた山を作って。

 お札による支払いが入った場合渡すから。500円玉を渡された時は、売上金の入れ物から100円玉をすぐに取り出して。私が何円手渡されたか教えるから。」

 

「はいっス!」

 

「わかったぜ!」

 

 隼人と武に指示を飛ばしながらも、チョコバナナを次々売り捌いていく。

 その際、リボーンの気配と、なぜか大きなイーピンの気配を感じ取ったが、次々と売れる中、それを確認する暇はなかった。

 

「……流石ナツだな。大盛況じゃねーか。」

 

「私の出番はなかったかな?」

 

「みてーだな。」

 

 喧騒に紛れて聞こえてくるリボーンと大きなイーピンの会話。

 やっぱり大きなイーピンがいるのは気のせいじゃなかったのか……と少しだけ苦笑いをこぼしたくなったが、なんとか堪えて呼び込みと受け渡しを繰り返していく。

 そんな中、不意に見覚えのある女の子2人組が視界に入り込んだため、わたしは小さく口元に笑みを浮かべ、その2人組を見つめながら口を開く。

 

「おーい!そこの可憐で華やかなお嬢さん方〜!せっかくの夏祭りなんだし、チョコバナナ買ってかな〜い?」

 

「へ!?」

 

「はひ!?」

 

 わたしの言葉を聞き、その2人が驚いたような表情を見せる。

 その姿を見て、イタズラ成功と小さく笑って、ひらひらと手を振って見せれば、声をかけた2人組……京ちゃんとハルが目を丸くする。

 しかし、すぐにパーっと明るい笑みを浮かべては、足早にこっちに向かってきた。

 

「「うわ!?」」

 

「おっと。大丈夫かいお2人さん。」

 

 だが、寸前のところで同時に足をつまずかせてしまったのか、軽くバランスを崩してしまった2人をすかさず自身の体幹と両腕を使って受け止める。

 ……履き物の鼻緒が切れたわけじゃないみたいだから安心したよ。

 

「全く……。見ての通り接客中だし、私自身が呼んだんだから急がなくても逃げないって。」

 

「はひ〜……ナツさん、ストロングです……」

 

「なっちゃんすごいね。私達2人を同時に受け止めるなんて……」

 

「これくらいできなきゃ、並中の風紀委員はやっていけないって。」

 

 びっくりしたようにわたしを見上げてくる京ちゃんとハルを見て、わたしは笑顔を見せながら、緩やかに後頭部をそっと撫でる。

 

「2人とも、浴衣がすごく似合ってるね。まるでお城から出てきたお姫様みたいだよ。」

 

「はひ!?ちょ、ちょっとナツさん!いきなり恥ずかしいこと言わないでください〜〜〜〜!」

 

「私は本当のことしか言ってないよ?」

 

「それでもだよ!なっちゃんってばいっつもそうなんだから!サラッと褒めてくるから私達が照れ臭いよ〜〜〜!!」

 

「ごめんごめん。でも、嘘は言いたくないし、可愛いとか、綺麗とか、似合ってるって言葉だけをかけるのは物足りないんだよ。

 それだけ2人が可愛らしいからね。だから我慢して。これが私だから。」

 

「「も〜〜〜〜っ!!」」

 

 少しだけ拗ねたような表情を見せる2人が可愛らしくて、思わず小さく笑い声を漏らす。

 相変わらずこの子達は目の保養だ。何を着ても可愛くて華やかで、所構わず癒される。

 

「でも、ナツさんもすごく浴衣がお似合いです!」

 

「夜桜……って言うのかな?落ち着いた黒の生地に描かれてる桜と月と雲と川……?水流かな……?

 なんだかいつも以上に大人っぽくて、落ち着いた雰囲気があってカッコいい!」

 

「ありがとう。すごく嬉しいよ。」

 

「はひ〜……ナツさんを照れさせちゃおう作戦失敗です……」

 

「なっちゃんには敵わないなぁ……」

 

「フフ……残念でした。」

 

 ちょっと意地悪っぽく笑えば、京ちゃんとハルが軽く拗ねる。しかし、すぐに小さく吹き出しては、鈴の音色のように綺麗な笑い声を漏らした。

 

「「チョコバナナくださ〜い!」」

 

「オーケー。隼人。武。チョコバナナ2本追加ね。」

 

「わかったぜ!」

 

「わかりました、10代目!」

 

 2人して口にしてきたチョコバナナのオーダー。すぐにそれを隼人と武に伝えれば、2人はすぐに商品を仕上げ始める。

 その間に、京ちゃんとハルの2人から代金の400円を受け取り、売上金の入れ物へと入れていると、京ちゃんがわたしの腕に抱きついたまま、背後の屋台へと目を向けた。

 

「すごいね。屋台をやってるんだ。」

 

「あ!京子ちゃんだけずるいです!ハルもナツさんに抱きつきたいのですが!?」

 

「こっちが空いてるよ。」

 

「!じゃあ、お邪魔します!」

 

 ちょっとだけ拗ねたハルに、京ちゃんの反対に位置する自身の隣が空いていることを教えると、すぐにギュッと抱きついてきた。

 

「学生が屋台を出すのって、本来はダメだった気がしますが、何かあったんですか?」

 

「うん。ほら、七夕の時にちょっとしたトラブルがあったでしょ?当日はまぁ、なんとかなったけど、後日にその問題に関しての通達がきてね。

 これは、やらかした側が反省することも考えて、社外勉強兼反省会として屋台を出させてもらったらしいよ。」

 

「なるほど!そうだったんですね!」

 

「?七夕の日にトラブルがあったの?」

 

「実を言うとね。まぁ、一応は解決してるから、詳しいことは話さないけど、いつも張り合ってるこの2人が、ちょっとご迷惑をかけちゃったんだ。」

 

「そうだったんだね。なっちゃんも一緒にお仕事中?」

 

「ちょっとした手助けだよ。目標を達成するには時間がかかりそうだったから、少しでも早く終わらせるようにね。」

 

「流石ナツさんです!こんなに盛り上がってる屋台、ハル、初めて見ました!」

 

「でしょ?」

 

 結構、早く食いついてきたな……とハルの行動に苦笑いをこぼしそうになったが、なんとかそれは堪えて、京ちゃん達の質問に答える。

 その間も隼人と武は、2人分のチョコバナナにチョコを塗って、カラースプレーチョコを振りかけていた。

 

「おらよ。」

 

「できたぜ!」

 

「わ─────!美味しそう!」

 

「ありがとうございます!」

 

 程なくして完成したそれを、隼人と武が京ちゃんとハルに手渡す。

 2人は完成したチョコバナナを見て、明るい笑顔を見せながら、一口パクッと頬張った。

 

「「美味しい─────!」」

 

「最高の笑顔だね。」

 

「だな!」

 

「……割と嬉しいもんっスね。こうやって喜んでもらえんの。」

 

「うん。だから、頑張ってもっといろんな人を喜ばせようか。今の調子なら、隼人を怖がるような人も少ないだろうしね。」

 

「はいっス!」

 

 2人の笑顔を見て、少しだけ嬉しげな隼人達に、笑顔を向けながら頑張ろうと口にすれば、隼人達はすぐに頷いた。

 そして、わたしがやっていた接客方法を自分流にアレンジしながらも、お客さんを次々と呼び込み、注文が入るたびにチョコバナナを作り上げていく。

 

「この調子なら、みんなで一緒に花火は見れるかな?」

 

「多分ね。2人のモチベーションと、客足の量にもよると思うけど、今の調子ならなんとかいけるかも。」

 

「楽しみ!頑張ってね、なっちゃん!何かお手伝いできることがあったらすぐに手伝うから!」

 

「ハルも手伝います!」

 

「ありがとう。でも、2人の尻拭いを他の人に任せるわけにもいかないから、その気持ちだけで十分だよ。

 君らはいっぱい夏祭りを楽しんできて。屋台の様子を見て、問題がなさそうならわたしも合流するから。」

 

「そう?じゃあ、私達は行くね。」

 

「頑張ってくださいね、ナツさん!」

 

「うん。頑張るよ。」

 

 わたしに手を振って立ち去っていく京ちゃん達に、わたしもヒラヒラと手を振りかえし、2人が人混みに紛れたのを確認したのち、再びチョコバナナの屋台のフォローに入る。

 ……タイミングを見計らって、2人には休憩に行ってもらうか。結構忙しくなっちゃってるし。

 

 

 




 沢田 奈月(桜奈)
 ヒバリから送られてきた夜桜モチーフの浴衣に、リボーンが買ってきた華やかな枝垂れ桜と蝶をモチーフにした簪を身につけ、夏祭りに参戦していたボンゴレ10代目。
 みんなと花火を見たいので、しばらくはチョコバナナの屋台でお仕事を手伝うことにした。
 射的の景品だった、黒とレモン色のペアテディを見て、一瞬だけ自分とリボーンの色合いだ……と思うほどには、ちょっとリボーンを意識している。

 リボーン
 相変わらず桜奈に矢印を向けているアルコバレーノなヒットマン。
 男が女に簪を贈る意味の話題を口にして、桜奈から咎めるように声をかけられたが、もちろん、これはわざとで、彼なりの牽制だった。
 桜奈がチョコバナナの屋台に参戦した姿と、彼女が接客し始めたことにより増えた客足に、まぁ、お前が呼び込みしたらそうなるよな……と少しだけ呆れながら、客寄せパンダになりやがって……とちょっとだけ拗ねていた。
 桜奈のほしいものは絶対に手に入れる派だし、ものはたくさん買い与える派。
 雲雀が浴衣を贈った話を聞き、次は絶対にオレが贈ってやると決意する。

 山本&獄寺
 七夕のやらかしに対する反省も込めて屋台を切り盛りする次期双腕。
 奈月の浴衣姿を見て、マジで一瞬誰かわからなかったが、特徴的な髪色と瞳の色から奈月であることを理解し、顔を真っ赤にしてしまうが、すぐに張り合うように彼女を褒めた。
 奈月のアドバイスのおかげでチョコバナナが飛ぶように売れていくのでかなり戸惑ったが、的確な指示を出してくる彼女に従い、次々と商品を売り捌き始める。

 京子&ハル
 夏祭りにきてみたら、大好きな奈月がチョコバナナの屋台で呼び込みしていたのでかなりびっくりした上、城から出てきたお姫様発言に照れてしまった女子組。
 奈月を見つけたらくっつきたくなるのは、すでに彼女達の癖である。


物語に関係ない好奇心からのネタ質問です。主人公に好意的な感情を向ける男キャラは、これから先も増えるのですが、主人公のファーストキスは誰が一番奪いそうだと思いますか?

  • リボーン
  • 大人リボーン
  • 獄寺隼人(事故チュー)
  • 山本武(事故チュー)
  • 雲雀恭弥
  • 六道骸
  • ディーノ(事故チュー)
  • ディーノ(意図してキス)
  • XANXUS
  • ベルフェゴール
  • 白蘭
  • 古里炎真(事故チュー)
  • させないよ?(女性陣の壁)
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