最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 主人公の一人称視点に戻りますが、最後に視点なしのなしとなります。
 そう言えば、原作ではディーノさんって他の10代目ファミリーメンバーは名前で呼んでなかったようですね。
 見た感じ、雲雀さんだけ?まぁ、こちらでは原作以上に主人公陣営に関わっているので、その分距離感が近いと言うことで一つ。


獄寺隼人は頼られたい Ⅱ

 “あなたのように、誰にでも寄り添うような方では間違いなくマフィアの世界ではいいように使われるだけ使われて利用され壊されるだけです”

 

 “むしろ、こちらの世界だと、前の世以上に酷い扱いを受け、傀儡にされてしまう可能性の方が高く、あなたの精神を必ず蝕むでしょう”

 

 “そのような生活でいいのですか?利用されるだけ利用されて、最後は捨てられる未来を抱えてまで生きていきたいのですか?”

 

 “思い出してください。あなたは本当にそうなるために誰かに尽くしていたのですか?誰かの幸せのために、自身が犠牲になることこそが自分の幸せだと?”

 

 “違うでしょう。あなたが本当に求めていたのは、そのようなものではなく、もっと単純なものだったはずです”

 

 “マフィアの世界に足を踏み入れるなど……マフィアのボスになるなどやめてください。その道は必ずあなたが求めていたものをことごとく破壊し尽くし、利用するためだけに牙を立てます”

 

 “お願いですから、考え直してください。あなたが本当に求めていたものを思い出してください”

 

 “それがあなたの目の前にあることを思い出してください。あなたはもう、誰かのための幸せを願う必要はありません”

 

 “どうか、自分だけの幸せを、自分のためだけの幸せを求め、目の前にあるマフィアの世界から離れてください”

 

 “もしも、あなたの平穏を脅かすものがずっと付き纏うと言うのであれば、僕が全て変えてあげます。僕が全て消してあげます”

 

 “かつての僕が行ったように、あなたを閉じ込めている世界を壊して、その手を引いてあげますから”

 

 “だから、どうか、ボスになるのはやめると、逃げたいと言ってください”

 

 “自身にかけた、あなたの世界を狭めるための暗示を解きたいと言ってください”

 

 懇願するように告げられた、骸の言葉があの日から離れない。

 今やっていることが、本当に自分が求めていたものだったのかと言う問いかけに、何も返すことができなかった。

 わたしは……みんなが笑顔になってくれるならそれで構わない。構わない……はずなんだけど……。

 

 ─────……本当に、それであなたは構わないのですか?

 

 ……わたしの心を覗くようにして、骸の声が頭に響く。

 本当に……それが求めていたものかと確かな疑問をぶつけてくる。

 わたしは……わたしが……求めていたものは……?

 

「なっちゃーん。回覧板持って行ってくれる?」

 

「回覧板?うん。いいよ。」

 

 ぐるぐると巡り、問いかけるように流れていく思考……それを止めるように、母さんから声をかけられる。

 考え込んでたらダメだ。いつも通りにしないと。そうしないとまたたくさんの心配をかけてしまう。

 そんなことを思いながら、わたしは自室から下の階に降りる。既に玄関の近くには回覧板が置かれており、それを手に取り玄関を開けた。

 

「オレはここにいます!」

 

「うん、いきなりどうしたのかな?」

 

 その瞬間現れた隼人に、わたしは一瞬だけ転けそうになった。

 ここにいますって何。意味不明なんだけど。

 

「来たか。」

 

「はい。」

 

「………何のやり取り?」

 

 目の前で行われている謎のやり取りに、思わず疑問の声を上げる。

 何と言うか……たまに隼人とリボーンのやらかしの意味がわからなくなる時があるけど、今日はいつにも増してなんかおかしい。

 隼人は……なんだろう?何かを待ってる?まるですぐにでも命令をしてくれと言わんばかりの雰囲気で、わたしの前に立っている。

 先程までぐるぐると考え込んでいたのに、それが一気に止められた。別になくなったわけじゃないけど、呆気に取られてフリーズだ。

 

「あー……とりあえず、回覧板持っていくからウチに上がってなよ。目の前に佇まれていると、ちょっとだけ大変だから。」

 

 なんだか邪魔と言えるような雰囲気じゃない隼人を見ながら、わたしはとりあえず部屋に上がっているように伝えておく。

 一瞬だけ隼人がショックを受けたような表情を見せたような気がするけど、今はやるべきことが優先だ。

 

 

 

 ……しばらくして。

 

「……で?急にどうかしたの?いきなり自分はここにいるって主張されて、何がなんだかわからないんだけど?」

 

 回覧板を隣の家に持って行き、自宅の方に戻ったわたしは、流石に部屋の主がいない上、異性でもあるわたしの部屋には勝手に上がらず、リビングにいた隼人と合流し、自身の部屋の方へと連れて行った。

 

「無論、何か困ったことがあったらいつでも頼ってもらえるようにするための主張です!

 なんせオレは10代目の右腕ですからね!何かお困りなことはありませんか!?オレ、なんでもしますよ!」

 

 玄関前に来たと思えば、オレはここにいると主張してきた隼人に、いったい何が言いたかったんだと問いかければ、困ったことがあったらいくらでも頼って欲しいから主張したのだと返された。

 その言葉にわたしは困惑する。別に、今は困っていることなど一つもない。

 ランボやイーピンはいい子だし、リボーンも無茶苦茶なことをしなくなったし、いつも通りの日常がただひたすら繰り返されているだけなのだから。

 ……あえて言うならば、わたしは、このままボンゴレのボスになるべきなのか否かがわからなくなってしまったことくらいだ。

 でも、これは全てわたし自身が答えを見つけ出し、どうしたいかを考える必要があることのため、誰かに話すつもりはないのだけど。

 

「……別に今は困ったことなんてないよ。夏休みの宿題はとっくの前に終わらせちゃったし、わたしじゃできないってことは、今のところないからね。」

 

「はぐ……!?そ、そっスか……」

 

 そんなことを思いながら、別に今は誰かに頼るべき困ったことなど一つもないことを隼人に告げれば、彼は再びショックを受けたような表情を見せる。

 そこまでショックか?と一瞬だけ疑問が過ぎったが、彼にとっては相当なことなんだろう。

 妙に張り切りすぎておかしな様子を見せているところから、誰かに何か言われて、自分は頼られていないはずがない……と焦っているから……と言ったところだろうか?

 別に、わたしは隼人を頼っていないわけじゃない。自分にできることをやってるだけで、全く頼りにしていないと言うわけじゃない。

 

「ん?……うっわ、どこから入ってきたんだあれ。ちゃんと掃除とかはしてるはずなんだけどな……」

 

 どうしたもんかと考えていると、わたしの部屋の壁を1匹の黒い悪魔が這っていることに気づく。

 ただでさえ、最近いろいろ考えているってのに、滅入る存在を見てしまったため、思わず舌打ちをしてしまう。

 

「(キタ─────!!さぁ、今こそオレを頼ってください、10代目!!)」

 

 視界の端で、隼人が期待に満ちた表情を見せ、ダイナマイト用のホルスターがあると思わしき場所に手を突っ込む。

 ……黒い悪魔な害虫如きに、ダイナマイト使われても困るんだけど。

 

「それ、必要ないから。」

 

「へ……?」

 

 隼人がかなりたじたじになりながら、わたしのことを呼ぶ。そんな彼の様子など気にすることなく、わたしはその場にあった適当な紙を丸め、その上でテープでぐるぐるに巻く。

 そして、手元にある硬さのあるそれを、武がよくやる投球フォームを自分なりにアレンジした動きで黒い悪魔めがけてそれを投げつければ、バシィンッと言う音を響かせて黒い悪魔に直撃する。

 こっちが投げつけた紙ボールをまともに食らった黒い悪魔はと言と、紙ボールがぶつかった勢いに失神したのか、そのまま床にポテンと落ちた。

 近づいてみれば、軽く動いているようだが、素早く動けるような状態ではないようで、いらない紙でさっさと包み、さらにその上から何十日に紙を巻くことで完全に封印する。

 

「外にあるゴミ箱に捨ててくる。自室のゴミ箱には捨てたくないし。」

 

 それだけ告げて、わたしはさっさと自室の外へと出る。

 二度と現れないように、あとでバ○サン焚いとこ。

 

 

「じゅ……10代目……流石です……」

 

「ナツはゴキ程度じゃ怯まねーからな。まぁ、そもそもオレがライフルを向けようとしたら、初見でそれ見抜いて足で押さえつけてくるような女が、ゴキ程度に怖がるわけねーけどな。」

 

 

 

 リボーンと隼人がなんか話してるけど、それを聞いている余裕はない。

 さっさと手にしてるこれを捨てて、今日やる予定をこなしていかないとね。

 ……何かやっていた方が気は紛れる。そうすれば少しは、気持ちに整理がつくはずだ。

 

 

 

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「あ、なっちゃん。ちょうどいいところに!」

 

「ん?どうしたの、母さん。」

 

 バ○サンどこに収めてあったっけ……なんて考えながら、黒い悪魔を封じた紙屑を外にあるゴミ箱に入れていると、リビングから顔を出した母さんが話しかけてくる。

 すぐに母さんの言葉に反応を返せば、彼女は少しだけ申し訳なさそうな表情を見せながら、静かに口を開いた。

 

「獄寺君がお客さんとしてきてるのはわかってるんだけど、ちょっとソファを運ぶの手伝ってもらえる?

 居間の掃除をしたいんだけど、母さんだけじゃ運べなくて。」

 

「なるほどね。それなら……」

 

 確かに居間のソファって重いから、母さんだけじゃ動かせないよね、と思いながら、そのお願いを聞いていると、ドタドタと上から勢いよく誰か……いや、隼人が勢いよく下に降りてくる。

 人の家を走るなよ……と少しだけ呆れながらも、隼人の気配がする方へと目を向けてみれば、彼は勢いよく姿を見せては、キラキラした目でこちらを見てきた。

 

「10代目!!10代目のお母様!!話は聞いてました!オレも力を……」

 

「うーん……流石にお客さんにこんなことはさせられないわ。」

 

「確かにね。申し出はありがたいけど、大丈夫だよ。」

 

 来客者である隼人に自宅の掃除を手伝わせるわけにもいかないため、母さんと2人でやんわりと断る。

 男手は確かにありがたいけど、流石に自分の自宅のことまで手伝わせると言うのは気が引ける。

 

「ママン、お掃除?オレっちもお手伝いするもんね!」

 

「【住まわせてもらっているのに、何もしないわけにも行きませんし、私達もこの部屋を汚したりしてしまってるのでお手伝いします!】」

 

「えっと……」

 

「自分達も居間を使わせてもらっているし、汚したりもしているから手伝うってイーピンが言ってるよ。」

 

「オレっちも!」

 

「うん。そうだね。ランボもお手伝いするって言ってるね。」

 

 わたしと母さんの2人から、大丈夫だと伝えられた隼人がフリーズする中、手伝いをしにきたランボとイーピンに目を向ける。

 どうやら2人は、自分達が居候させてもらっている家で何もせずに過ごすのは嫌なようだ。

 小さい子達だから、あまりお願いしたくはないんだけど、この2人ってそれなりに頑固なところが少しあるから、大丈夫と言ってもしばらくは食い下がってくるだろう。

 

「じゃあ、ランボ君とイーピンちゃんも手伝ってくれる?」

 

「はーい!」

 

「【はい!わかりました!】」

 

「オレも手伝うぞ。ソファを運ぶんだったな。」

 

「そうだけど、大丈夫?」

 

「問題ねーぞ。アホ牛に任せたら、ナツ達の仕事が増えそうだしな。だったらオレがやる方が最適だろ。」

 

「なんだとぉ!?」

 

 ……格下には興味ないとか言っていたはずのリボーンが、どこか子供じみた挑発を行い、ランボが少しだけ憤慨する。

 喧嘩するなと言うように、2人の頭に手を置けば、2人はわたしによ視線を向け、互いに一度顔を合わせたのち、ケンカした子供のように同時に顔を逸らす。

 

「……リボーン。君、いったいいくつなのさ。」

 

「まだ1歳だぞ。」

 

「いや、違うでしょ……。」

 

 わたしに恋慕を向けるようになってから、度々ランボを挑発するようになったリボーンに苦笑いをこぼしながらも、わたしは行動に移す。

 とりあえずソファを運んで、あとは予定通りにやることを済ませるだけだ。

 

 

「……………。」

 

 

 隼人が、どことなく表情を曇らせながらも、何かしら考え込むような様子を見せている。

 ……これは、作業を終わらせたあと、いったい何があったのかを聞くべきかな。

 

 

 *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀

 

 

「……で?今日の隼人、何かあったわけ?やけに張り切ってるし、逆にちょっと怖いんだけど。」

 

「怖っ!?こ、怖かったっスか?オレ。」

 

「いろんな意味でね。」

 

 あれから母さんの手伝いを済ませ、作業の合間に休憩を挟みながらやることをこなし、早くも夕方。

 今日はいっぱい頑張ってくれたから、夕飯は全部母さんが作ると言ってくれたため、わたしは隼人と共に自室の方へと戻っていた。

 話を聞くならば、今のタイミングがいい……そう判断したわたしは、今日の隼人の妙な張り切りについて、隼人本人に問いかける。

 わたしの怖いと言う発言に、隼人は傷ついたような表情を見せたが、すぐに考え込むような様子を見せ、静かに口を開いた。

 

 曰く、どうやら今日、昼頃に隼人は、9代目から直々の指名として、現ボンゴレファミリーの幹部のうちの一つ、第6幹部への昇進の話を、ディーノさんから聞かされたらしい。

 最初、かなりの大きな話を喜び、すぐにでもわたしに報告をしようと考えていたらしいが、その後に告げられた、話を受けるのであれば、今日中に荷物をまとめて、明日にはイタリアに帰らなくてはならないと言う話になったんだとか。

 それを聞いた隼人は、すぐにその話を蹴り、わたしの右腕としての道を選ぼうとしていたようだが、ディーノさんから言われた、“自身の協力により、ボンゴレを繁栄させることができれば、のちに10代目を引き継ぐことになるわたしのためになる”と言う言葉により、迷いが生まれた。

 そこで、リボーンに相談したところ、今日中にわたしから頼りにされたら日本に残り、頼られない、もしくは手を貸す必要がなかった場合、イタリアへ帰る……と言う話をしたようだ。

 

 ……隼人の将来のことを思えば、きっと、今になって、1人の男の子の言葉により、マフィアのボスになることに関しての迷いを生んでしまったわたしの元に置いておくよりは、もっと実力を発揮することができる可能性が高い、イタリア本土にあるボンゴレファミリーに送り出すことがいいのだろう。

 肝心なところで迷いを生じさせ、自身の道がわからなくなっているわたしなんかよりも、真っ直ぐと確かな芯を持っている場所へと送る方が、きっと彼ものびのびと過ごせる。

 でも、彼の気持ちは?話としてはかなりいいものだし、受けるべきだと言いたくなるけど、彼自身の想いは?

 このまま……行ってきたらいいじゃないかと伝えてもいいものなんだろうか?

 

 ─────……隼人にとっての幸せは?

 

 骸から問われた、わたしにとっての本当の幸せ……わたしのための幸せは何かと言う言葉を思い出し、少しだけ同じ疑問を浮かべる。

 この場で送り出すことは、隼人にとっての幸せなの?隼人にとっての幸せって何?

 ……わたしは、わたしはまだ、骸から問われた自分にとっての幸せがわからない。

 誰かが幸せになるためならば、どんな協力も惜しまない……その人が幸せになるのであれば、どれだけ大変なことがあっても、協力することがわたしの幸せ……そう、ずっと思っていた。

 でも、今の自分はわからない。自分にとっての幸せが、何だったのかが見えなくなってしまった。

 だからこそ、そんなわたしが言うのは、お門違いだと思うのだけど……

 

「……隼人はどうしたい?」

 

「え?」

 

 ポツリと呟いた言葉に、隼人が一瞬驚いたような様子を見せる。

 そんな姿を見て、わたしは再び口を開く。彼にとっての幸せを、彼が抱いている大切な思いを知るために。

 

「わたし個人としては、隼人が幸せになれるのであれば、いくらでも巣立ちを祝福したいし、一緒に喜びを分かち合えたらと思ってる。

 だから、幹部になることが君にとっての幸福であると言うのであれば、笑顔で君を送り出す。

 でも、それは結局わたし個人の意見だし、隼人にとっての最善かどうかまではわからない。

 君にとっての幸せは?君が抱いている想いは?君が心から望んでいるものは何?

 ……わたしは、それに素直に従うことや、直感に従うことも大事だと思う。

 もし、君の耳に少しでも君自身の心の声が、心からの望みが聞こえているのであれば、それをしるべにして歩く方がいいんじゃないかな。」

 

「……10代目…………。」

 

「…………。」

 

 隼人からはどこか感激したような目を……リボーンからはどこか探るような目を向けられながらも、隼人にどうしたいのかを問いかける。

 わたしの問いかけを聞いた隼人は、少しだけ考え込むような様子を見せたあと、真っ直ぐとわたしを見据えてきた。

 

「オレは……今も、これから先も、ずっと10代目にお仕えしたいです!オレにとっての幸せは、10代目のお側で10代目を支えることですから!

 オレは、今回の話をしっかり断ります!やっぱり、10代目以外の人間に仕える想像がつかないし、10代目のお側にいることが、オレの心からの望みですから!!」

 

 

 ────── 翌日 空港 ────────

 

 

 獄寺に幹部の話を持ってきていたディーノは、空港のエントランスにて部下と共に立っていた。

 そんな彼の元に、1人の少年がキャリーケースを押しながら近寄っていく。

 

「来ました。」

 

 部下の言葉を聞き、ディーノはすぐに少年の方へと視線を向ける。

 しかし、そこにいたのは彼が予想だにしていなかった存在だった。

 

「なんかイタリア旅行連れてってくれるって聞いたんスけど。」

 

「な!?武!!?」

 

 ディーノの方に近寄ってきたのは、彼が昨日言葉を交わした少年、獄寺隼人ではなく、獄寺と共に、当たり前のように奈月の側にいては、いつも仲良くしているもう1人の少年、山本武だった。

 まさかの人物に、ディーノは一瞬混乱する。しかし、すぐに自分があの話をした時の本題を思い浮かべ、静かに口を開いた。

 

「隼人はどうした?」

 

「いかねーって伝えてくれって。」

 

「……そっか。」

 

 山本の言葉にディーノはホッとする。

 こちらが本来の目的としていたこと……それの最悪な事態は免れたことに安堵して。

 

「よかったな。嫌な殺しをせずにすんで。」

 

 そんな彼の背後に現れたリボーンは、静かな声音でディーノに話しかける。

 話しかけられたディーノは、一瞬だけ目を丸くしたのち苦笑いをこぼした。

 

「ちぇっ……知ってやがったのか。」

 

 かつての師からの指摘に、相変わらずだと言うように言葉を紡ぐ。

 ……実のところ、ディーノが9代目から頼まれたことは、獄寺の昇進を伝えることではなく、もっと暗い頼まれごとだった。

 

 それは、獄寺の忠誠心を試してほしいと言うものだ。かつての獄寺は、誰にもなつかず、手のつけようのない狂犬のような存在だったがために、次代のボンゴレを担うことになる奈月に、本当に忠誠を誓っているのか否かを見定めるために、ディーノは試験官を任された。

 もし、今回の嘘の昇進の話を獄寺が引き受けてしまい、イタリアへと帰るようであれば、その命を奪うように命じられていたのである。

 

「まぁ、もしあのバカが来たら海外へ逃すつもりだったがな。」

 

 やれやれと言わんばかりに、懐からディーノが取り出したのは、本物の銃に似せた水鉄砲。

 その引き金を引けば、けたたましい銃声ではなく、ただ間抜けに水が噴水のように噴き出る。

 

「オレは最初から結果がこうなるってわかってたぞ。まぁ、今回の場合は、ナツの問いかけもかなりの一因だっただろうがな。」

 

「ナツの問いかけ?」

 

 少しだけ疲れた様子を見せるかつての教え子を見ながら、リボーンは小さく笑みを浮かべる。

 脳裏に浮かぶのは、昨日の夕方に今の教え子であり、自身にとってかけがえのない愛し人の言葉だった。

 

「ああ。ナツは獄寺にこう聞いたんだ。お前はどうしたいんだってな。」

 

「お前はどうしたい……」

 

「そうだぞ。幹部として歩むこと、それがお前にとっての幸せならば、自分は喜んで見送るつもりでいる。

 でも、本当にそれはお前にとっての幸せなのか?自分が求めてる幸せは?

 もし、少しでも自身の心の声が、心からの望みが聞こえているのなら、それに従うことが一番だって言っていたんだ。」

 

 少しだけ疲れている様子のかつての教え子を見たリボーンは、その口元に小さく笑みを浮かべ、奈月が紡いだ言葉を、大雑把に噛み砕きながらディーノに伝える。

 それを聞いたディーノは、驚いたような表情を見せ、しかし、すぐに穏やかな笑みを浮かべながらなるほどなと相槌を打つ。

 

「そんなこと言われたら、オレもきっとすぐにナツの側にいるって言うだろうな。

 だって、仮に似たような状況に置かれたとして、ナツからそんな風に問われたら、間違いなくオレもいい話なんざ蹴っ飛ばす。

 オレにとっての幸せは、少しでもナツと長くいることだしな。」

 

「……オレも、きっとナツからそんな風に聞かれたら、どんなにうまい話があっても、全部蹴っ飛ばしてナツの側にいるだろうな。

 オレの幸せなんてものは、今まで考えたことなかったが、今ならいくらでも考えられる。

 ……ナツの側にいて、ナツを支えて、願わくばナツと最期の時まで……オレにとっての幸せは何か……考えた瞬間出てくるのがこんな答えになっちまうくらいに、オレはナツを愛してる。」

 

 ハッキリとした声音で言葉を紡ぐリボーンに、ディーノはこれまでかと言う程に目を見開いた。

 まさか、あのリボーンからそんな言葉をハッキリ聞くことになろうとは思わなかったのだ。

 しかし、すぐにその表情はムッとしたものへと変わり、ディーノは自身の足元にいるかつての師を睨みつける。

 

「負けねーからな、リボーン。」

 

「吠えてろ青二才。ナツは必ずオレが振り向かせる。」

 

 妙に張り詰めた師弟の空気。蚊帳の外となっているディーノの部下と山本は困ったように苦笑いをこぼす。

 しかし、山本は2人が度々口にしているナツと言う言葉にふと、何かを思い出したように口を開いた。

 

「そう言えば……最近ナツの様子がどっか変なんスよね……。何か嫌なことがあったのかなって声をかけたかったけど、何でもないの一点張りで、相談とか全然なくて……。

 ディーノさんはなんかナツから聞いてませんか?オレや獄寺じゃ、どうも深く聞けなくて……」

 

「「!」」

 

 山本の言葉に、ディーノとリボーンは反応を示す。しかし、すぐにその表情は曇り空へと変わり、少しだけ暗くなる。

 

「聞いて……ない感じっスか?」

 

「……ああ。一応、話を聞こうと昨日連絡を入れてみたんだが、どうも連絡がつかなくてな。

 ナツが普段使いしてる方の携帯電話にかけてみても、全然出てくれないんだ。」

 

「そう……ですか……。んー……マジでナツ、最近どうしちまったんだ?やっぱ誘うべきだったかな……。気分転換にもなってたと思うし……」

 

 困ったようにポリポリと頭を掻く山本を見つめながら、ディーノとリボーンは無言になる。

 何かが起こりそうな嫌な予感……自分達が愛してやまない1人の少女に忍び寄る嫌な影の気配。

 何事もなければと彼女の異変に気づいている者達は祈り続けるが、深く暗い確かな濃霧は、着実と少女を飲み込まんと、その影を静かに伸ばし始める。

 

 

 

 

 




 沢田 奈月(桜奈)
 骸に言われた、本当の幸せと望みを思い出せと言う言葉と、マフィアの世界は確実にそれを蝕み壊していくだけであると言う忠告に、本当にこのままでいいのかと言う疑問を抱き、自身の幸せと望みは何だったかを思い出さんと思考を巡らせている。
 わたしが……本当に求めていたものは…………?

 獄寺 隼人
 奈月から自分自身はどうしたいのか問われ、自分自身の幸せとは何かを問われた次代の右腕。
 彼女に問われ、出てきた答えに導きを得て、ずっと奈月の側に支えたいと言う望みを口にし、幹部の話を一蹴した。

 ディーノ
 9代目よりなかなか嫌なタイプの仕事を引き受けてしまったキャバッローネファミリー10代目。
 相変わらずリボーンとは奈月に関することで同じ意見を抱き、恋敵らしく睨み合っている。
 獄寺と山本、2人から聞かされた奈月の状態に、嫌な予感に襲われている。

 リボーン
 ディーノが引き受けた仕事の概要も、その結末も全てお見通しだったアルコバレーノなヒットマン。
 ディーノとは相変わらず桜奈関連で火花を散らしているが、桜奈から自分の幸せは何かと問われたら、桜奈のことを最期まで支えて、永遠にその側で過ごすことであると告げる自信を師弟揃って持ち合わせている。
 桜奈関連で嫌な予感がおさまらない状態に襲われており、頼むから何も起こらないでくれと願っている。

 六道 骸
 奈月の献身の原因を知り、壊れた理由を知り、暴走へと至った経緯を知る唯一の理解者たる囚人。
 誰かを助けたいと強く願うようになったのは初めてだが、ベクトルは違えど、同じ消費され続けた者でありながら、その世界から抜け出すことができず、最後は壊されてしまった奈月に、もしかしたらあり得たかも知れない自分自身を重ね、現世でも誰かの幸せのために自分を殺す彼女に手を伸ばす。
 もう……あなたは誰かのために生きなくてもいいんです。自分のために生きてください。
 それを邪魔する全ては、かつての閉じた世界を壊した時のように、僕が壊してあげますから……。

物語に関係ない好奇心からのネタ質問です。主人公に好意的な感情を向ける男キャラは、これから先も増えるのですが、主人公のファーストキスは誰が一番奪いそうだと思いますか?

  • リボーン
  • 大人リボーン
  • 獄寺隼人(事故チュー)
  • 山本武(事故チュー)
  • 雲雀恭弥
  • 六道骸
  • ディーノ(事故チュー)
  • ディーノ(意図してキス)
  • XANXUS
  • ベルフェゴール
  • 白蘭
  • 古里炎真(事故チュー)
  • させないよ?(女性陣の壁)
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