最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
いわゆる序章の話
霧の暗躍
数多くある中学校が夏休みを終える頃、並盛町の隣町にある中学校、黒曜中学校に、3人の転入生がやってきた。
その3人組は、黒曜中学校に存在している不良達を全て制圧し、確かな地位を確立したのち、かつて娯楽施設が存在していた黒曜ヘルシーランドを拠点に定めて行動を取っていた。
「骸さ〜ん。前からずっと使ってたアイツ、一緒に日本に来てませんけど、どうしたんれすか?」
暗がりの中、既に廃墟と化している黒曜センター内部の映画館があった部屋で3人のうちの1人、城島犬が口を開く。
彼が口にしたのは一つの疑問。自分達が行動を取る際、必ずと言っていい程に同行していたメンバーの1人がいないことに対する質問だった。
「ああ、彼ですか?目的としていたボンゴレの正体が全くわからなかった場合に利用するつもりではありましたが、どう言う偶然か、しらみつぶしに探し始める前に、ボンゴレ10代目の女性に僕は会ってしまったので別行動を取らせました。
他の連中にバレるまでの時間稼ぎにと陽動をこなしてもらってます。本来の計画を早めてきましたし、すぐに捕まるのは厄介ですからね。」
「ひゃ〜〜アイツいっちばんめんどくせー仕事押しつけられてやんの!下手したら死ぬんじゃないれすか?それ。」
「今となっては、彼がどうなろうと構いません。最後まで役割を全うしてくだされば、それだけでいいので。」
あっさりと切り捨てるような言葉を紡いだ骸に、犬はケラケラと笑い声をあげる。
揶揄うように、嘲笑うように、“捨てられて可哀想”だと口にして。
「……しかし、まさか、骸様が計画を早めてまで脱獄を行い、日本に行くとは思いませんでした。やはり、ボンゴレが見つかったからですか?」
そんな中、もう1人の転入生である少年、柿本千種が契約を早めた理由を骸に問う。
あれだけ時期なども含めて計算していた自分達のリーダーが、まさか契約を早めてまで日本へと来日するとは思わなかったのだ。
千種の問いかけを聞き、骸はキョトンとした表情を見せる。しかし、その表情はほんの一瞬で、すぐにいつもの雰囲気に戻る。
「それももちろんありますが、正直なところ、早く奈月に会いたかったんです。
彼女とは何度も精神世界で顔を合わせていますが、現実世界では会ったことがなかったので。」
“まぁ、そもそも会える状況ではありませんでしたが……”と呟く骸に、犬と千種は首を傾げる。
突然出てきた『奈月』と言う第三者のものと思わしき名前……聞いたことのない響きのそれを、誰のものだと聞くように。
「……奈月はボンゴレ10代目の女性の名前ですよ。沢田奈月……それが次代のボンゴレのボスの名前です。」
「「!?」」
「……何驚いてるんですか2人して。さっきから彼女の話しかしてないでしょう?」
「「…………」」
そこまで驚くかと言うような表情を浮かべながら問いかけてくる骸に、犬と千種は思わず無言になる。
しかし、すぐにくるっと彼に背を向け、ひそひそ話の要領で話し始めた。
「え?骸さん、ボンゴレのボスに早く会いてーっていってんの?」
「流れ的にそうに決まってるだろ。」
「それは、利用するため……だよな?」
「多分……?なんか違うような気もするけど……」
「ちょっと。2人して何ヒソヒソ話をしてるんですか?悪口でも言ってるのであればはっ倒しますが?」
少しだけ不機嫌な様子を見せる骸に、すぐに犬と千種は話を止める。
だが、いきなり提示されたボンゴレ10代目の名前に関してや、リーダーの言動の雰囲気がわからず、無言を続ける。
「……えっと、骸さん?ボンゴレに会いたいって言ってんのは、早く利用するため……れしょ?」
「は?僕は彼女を利用するつもりは毛頭もありませんが?」
「え゛!?」
その無言を破るように、犬は恐る恐る早くボンゴレに会いたいと言っていた意味を骸に問う。
しかし、その問いかけに返されたのは、ボンゴレ10代目を利用するつもりはないと言う衝撃的な言葉だった。
まさかの返答に言葉を失う犬。そんな犬の代わりに口を開いたのは千種だった。
「……当初は、若いマフィアのボスを利用することで、マフィアに対する叛旗を翻すと言う話しでしたよね?
それで、一番年齢が若いマフィアのボスは、日本にいるボンゴレ10代目で、その立場や肉体を手中に収め、行動を始めるはずだったのでは?」
急な計画変更に、千種は困惑しながらも、ボンゴレを利用しないと言う骸の真意を知るために質問をする。
彼の質問を聞いた骸は、少しだけ考え込むような様子を見せたのちら静かに口を開いた。
「……ええ。元々はそのつもりでした。ですが、僕は奈月の力を利用するために手を出すのではなく奈月自身をこちらの陣営へ引き込むことを考えたんです。
なんせ彼女の人脈には目を張るものがありますからね。奈月を通じて、その人脈を利用することを視野に入れたんですよ。
精神世界で何度か奈月と話しましたが、どうやら彼女、大量のマフィアのボスと、その右腕に属する者達と繋がりがあるようで……。
確か、ネロファミリーにベッチオファミリー、ヌーボファミリー……他にも大量のファミリーが彼女のバックにはいるようですよ?」
「うげ〜……どんだけそいつ、人脈あるんれすか……」
「一度聞いてみたのですが、量があり過ぎてわからないと返されましたね。
ただ、間違いなくやろうと思えば、彼女の人脈だけでマフィア界を転覆させられそうなんですよね。
ボンゴレの9代目とも連絡を取り合っている時があるようですし、定期的にキャバッローネファミリーのボスとも話していると言ってました。
先程名を挙げたファミリーのボス達とも定期的に裏の情勢やらなんやらを含めた雑談を行っているとも聞いてますし、それで海外の言葉を勉強しているとも……」
「……ボンゴレ10代目ってオレらと年齢があんま変わんねーって話じゃなかったれすか?その年齢で持っていい人脈じゃねー……。」
「ええ。全くもってその通りです。ですが、利用のし甲斐があるでしょう?」
特徴的な笑い声を漏らしながら、ボンゴレ10代目の話をする骸。
彼の返答を聞き、どこか納得を得た千種は、再び静かに口を開く。
「骸様の目的はわかりました。計画を早めた理由も、ボンゴレ10代目をこちら側へ引き込むための籠絡期間を設けるためですね。」
「ええ。あながち間違いではありません。上手くすれば、彼女の人脈を手に入れることができるので。」
あっさりと肯定された作戦変更の理由。
しかし、それらの理由を理解することはできたが、やはり、わからないところも彼にはあった。
「……作戦をボンゴレを乗っ取ることから、ボンゴレを仲間に引き入れることにした理由は何ですか?
これまでなら計画をそのまま実行し、突然変更することはしませんでしたよね?」
それは、突然計画を変更するに至った経緯。長らく骸に付き従っていた千種だからこそ、どうしてもそれだけは理解することができなかった。
「言われてみれば、確かに骸さんが急に計画を変えるなんて珍しいな。」
千種の問いかけを聞き、ふと、犬も同じ疑問を抱く。難しいことはわからないが、これまでの骸であれば、確かに作戦を立てたら基本的に変えることはなく、しっかりとそれを実行していた。
しかし、今回は急に計画の方向を変え、別の作戦を実行しようとしている……不思議と言えば不思議である。
2人の質問を聞いた骸は、少しの間目を閉じて無言になる。
思い起こすのは奈月の記憶……奈月と言う少女として生まれ落ちる前の、都合の良い人間として、さまざまなことを任せられ、何の見返りも与えられることなく過ごしていた、1人の女性の記憶。
「……ただ、彼女を消費するのが嫌になったんです。かつては都合の良い存在として、その能力を利用するだけ利用して、何の見返りも与えてこなかった連中のように、奈月を使い潰したくなかった。
彼女は明確な被害者なんですよ。かつての僕らのように、消費され続けていた側の人間です。
さらに言うと、そのサイクルから結局抜け出すことができず、自らの命を壊す道を選び、一度は終わりを迎えた存在なんですよ。」
「「!」」
他人の幸せのために動き、その笑顔を見ることこそが自分の幸せであると、タガが外れた献身による自己犠牲の果てに、自ら壊れて海に沈んだ哀しき桜。
彼女は最期に見た景色だからこそ、常に自分の精神世界は海に沈んでいるのだろうと口にしたが、骸は別の解釈も行っていた。
それは、これまで泣くことができなかった涙……それが海になってしまったのではと言う解釈だ。
涙の海に沈み、そのまま生き絶えた彼女を、骸は外に連れ出してあげたいと思ったのである。
「僕自身もどうかしているとは思っているんです。前までの僕であれば、そんなもの僕には関係ないと唾棄し、そのまま利用していたはずですから。
ですが、彼女と話していくうちに、いつのまにか彼女を消費してきた者達と同じにはなりたくないと思うようになり、彼女をその海から連れ出したいと思うようになっていました。
それに……彼女の精神世界は、本当に綺麗で心地良くて、彼女の溢れんばかりの優しさで満たされているんです。
本当の望みや、本当に求めていたものを見失おうとも、その優しさだけは本物で……僕はそれを汚したくなかった……曇らせたくなかったんです。」
少しだけ暗い顔をしながらも、1人の少女のことを想う言葉を紡ぐ骸を見つめながら、犬と千種は言葉を失う。
これ程まで感情をあらわにした自分達が付き従う少年の姿は、初めて見たかもしれないと思いながら。
「だから僕は、彼女をこちら側へ引き込むことにしたんです。もう二度と誰にも彼女を消費させないために。
……彼女はもう、十分過ぎる程に誰かのために動いてきました。十分過ぎる程に他人の幸せを願ってきました。十分過ぎる程に誰かのために自身を犠牲にしてきました。
だったら、もういいでしょう?自分のためだけに生きたとしても。これまで自分ではない誰かのために向けていた博愛を、自身へと向ける自己愛へ変えても。
沢山の責任や重圧に背を向けて逃げて、自分のためだけの世界を歩んでもいいじゃないですか。
それだけ奈月は……奈月と言う存在として生まれ落ちる前の彼女は頑張ってきたのですから。」
自身の拳を握りしめ、吐き捨てるように、そして、誰かに訴えるように、骸は静かに言葉を紡ぐ。
「組織の責任や重圧が、奈月の逃げ道を塞ぐのであれば、僕はそれを壊し、奈月の手を引いて連れ出すまでです。
奈月に流れる忌々しいマフィアの血が、彼女を雁字搦めに捕らえようとするのであれば、奈月以外の血を根絶やしにしてしまえばいい。
……これまでの目的通り、マフィアは必ず殲滅します。かつての仕打ちに対する復讐を果たし、奈月の自由を確立するために。」
本来の目的に、新たな理由が加わったまでだ……そう紡ぐ骸の瞳には、憎悪と共に、新たに生まれた別の熱が宿る。
……犬と千種は、ボンゴレ10代目と呼ばれている少女のことを良く知らない。
だが、自分達が付き従い、忠誠を誓っているリーダーたる骸がここまで激情を見せるのであれば、彼にとって、奈月と言う存在が特別なものであることは理解できる。
それならばと、2人は彼の意見を尊重するように小さく頷く。
自分達のリーダーとは、また違った意味でその少女が特別なものへと変わることも知らずに。
「……準備も大体整いましたし、今日中にでも、奈月を迎えに行きます。
しばらくの間、奈月にはこちらで過ごしてもらうつもりなので、2人も彼女のことをサポートしてあげてください。
僕ら側に引き込む計画へと移行した以上、顔合わせと交流は必要ですからね。
……確かに奈月はマフィアですが、奈月はその立場に似つかわしくない程に、穏やかで優しくて世話焼きな女性ですから、2人もきっと気に入りますよ。」
穏やかな笑みを浮かべながら、そう告げる骸に、犬と千種は何度か瞬きを繰り返す。
「……すぐに迎えに行きます、奈月。できることなら、僕の手を取る道を選んでくださいね。」
……時を同じくして、イタリアの某所、表向きは一般企業として成立しているボンゴレファミリーに属していながらも、独立した諜報機関、門外顧問組織CEDEFにある一室にて、1人の男性が渋い顔をして、手元にある写真に視線を落としていた。
男性の名は沢田家光。ボンゴレ10代目候補として名を挙げられている中学生の少女、沢田奈月の父たる存在だ。
彼は、自身の手元にある写真…… 一時的に日本へと帰国していた際、久しぶりに家族が揃ったのだからと、最愛の妻たる奈々に言われ、家族と、自宅に住み着いている居候達と共に撮ったそれを見ながら、考え込むような様子を見せていた。
彼の視線が真っ直ぐと捉えているのは、穏やかな笑みを浮かべ、居候中の小さな子供2人を抱っこし、肩に自身の昔馴染みを乗せている愛娘の姿。
微笑ましくもあり、重たくないのだろうかと心配したくもなるような様子を見せているその姿を見つめていると、彼は妙な胸騒ぎに襲われる感覚を覚えていた。
「………だぁあ!!くそっ!!何なんだよ最近!?何でこうもナツに胸騒ぎを覚えてんだ!!いっでぇ!?」
バンッと勢いよく仕事用のデスクを叩きつけ自身でダメージを受ける家光。
痛みに表情を歪めるが、すぐに頭を抱えてデスクに突っ伏す。
「お館様……いかがなさいましたか?」
「おい、家光。さっきの物音は何だ?と言うか何をしてるんだお前は。」
そんな彼の元にやってきたのは、彼の秘書であるオレガノと、同僚であるラル・ミルチの2人。
頭を抱えていた家光は、やってきた2人に一時的に目を向けたのち、手にしていた写真を2人に見せる。
「これは……家族写真ですね。確か、こちらの女性が奥様で、こちらの方が娘さんの奈月さん……ですよね?」
「この写真がどうかしたのか?まさか、家族に会いたいから荒れていたとか言わないだろうな。」
「んなわけあるか!いや、家族には会いてーけど!オレがこうなってるのはそう単純なもんじゃないんだって!!」
「「?」」
自身の言葉に首を傾げるオレガノとラル・ミルチの2人のことなど気にしていないのか、気にする余裕がないのか、家光は再び頭を抱える。
彼が感じていた胸騒ぎ……それは、彼が稀に口にすることがあるなり損ないの超直感からやってくるものだった。
これまでは、奈月がボンゴレ10代目の候補として挙げられた際に、ボンゴレに継承されている指輪……ボンゴレリングが視界に入っている時に、感じ取る程度のものだったが、なぜか最近、仕事の合間にたまに眺めていることがある写真に写る愛娘の姿を見るたびに、それを感じ取るようになったのだ。
しかも、それは指輪を見ている際に感じたものとは比べ物にならないレベルの強さで感じ取ってしまう確かな嫌な予感であり、本能的に何かが起こってしまうとわかってしまう程のものだった。
「っ……少し席を外す!!」
これ程までに感じ取る嫌な予感は、初めて感じ取るものだった。
あまりにもひどい胸騒ぎ……あまりにも強い嫌な予感……それを解消するために、家光は部屋から走り去る。
「……お館様………。」
「……家光も、一応はボンゴレの血縁だ。代々伝わる奇跡とも言えるレベルの直感力の端くれを持ち合わせていてもおかしくない。
……おかしくない……はずだが。家光自身も自負するレベルで、なり損ないの超直感……超直感と呼ばれるまでに至らない直感力だったはずだ。なのに……あの狼狽え方と焦燥は何だ?」
部屋から飛び出した家光を見送りながら、オレガノは心配そうに家光を呼び、ラル・ミルチは疑問を口にする。
そんな2人のことなど気に留めることなく部屋を飛び出た家光は、自身の携帯電話を取り出し、連絡先に登録してある奈月の日常使いの携帯電話へと連絡を入れる。
しかし、何度かコールを繰り返すが、当本人は出てくることがなく、声を聞くことができなかった。
「頼む……っ……電話に出てくれ、ナツ………!!」
普段なら出るはずの愛娘が出てこず、無機質な電子音のみが響く中、家光は表情に焦りを浮かべる。
継続的に感じる嫌な予感が晴れる様子はない。
……家光が奈月へと連絡を入れ、焦りの表情を浮かべる中、同時刻、イタリアにあるキャバッローネファミリーのアジトにて過ごしていたディーノも、奈月へと連絡を取ろうと携帯を開いていた。
しかし、家光と同じで何度かコール音が鳴り響くだけであり、なかなか少女は出てこない。
「……なんっか嫌な予感が晴れねーんだよな。ナツが連絡に出てこないとか、滅多になかったはずなんだが………。」
履歴に残る奈月の名前。何度もかけているからか、どんどん積み重なっていく。
山本と獄寺の2人から告げられた、最近の奈月の様子がおかしいと言う言葉。
かつての師であるリボーンからも、最近の彼女の考え込みは異常だと言われてしまうレベルでボーッとしていると聞いていた。
しかし、その嫌な予感を晴らそうと連絡をしても、奈月はなかなか出てくることがなく、ディーノも異常を感じ取る。
まるで拒まれているような感覚を覚え、その端正な表情を顰める。
「……ナツ……いったい何があったんだ?」
話しかけるなと言わんばかりの沈黙。
明るい少女の声がどこか遠くに離れていくような、そんな錯覚にディーノは陥る。
真面目なナツだからこそ、誰かに頼ることが苦手なナツだからこそ、何かを抱え込んでいるであろう状況に、ディーノは少しだけ寂しげな表情を見せる。
初めて会った時に比べたら、自身の状態変化に気づき、自ら変化を報告してきたり、甘える姿を見せてくるようになってはいるが、本当の意味で苦しんでいる時には、助けを求めてこようとしない奈月。
本当の意味で助けてほしい時こそ、話してほしいと思うのに、どれだけ離れていようとも、すぐにでも駆けつけたいと思うのに、一番苦しい時こそ、誰にも言わず我慢してしまう様子の彼女に、どうしてと言う疑問を浮かべる。
「ナツ……何かあったのなら、話してくれよ……。一番大変な時は話せない程、オレは頼りないのか……?」
何度目かわからない連絡のつかない携帯電話。
その先にいるはずの愛しい少女に、ディーノは懇願するように目を瞑る。
何かに悩んでいるのなら、ちゃんとオレに話してくれと。
複数の感情が交錯し、1人の少女へと向けられる。
様々な感情を向けられている少女……ボンゴレ10代目、沢田奈月は、手元にある携帯電話に目を落としながら、ベッドに座って無言になる。
何度目かわからない外国からの着信。ディーノと家光の名前が交互に浮かぶそれを眺め、閉じていた口を静かに開いた。
「……今は……誰かと話す気にはなれないな。」
ポツリと呟いた言葉と共に、着信を知らせるランプが消える。
それを確認した奈月は、すぐに携帯電話の電源を切り、自室の鍵を静かに閉めた。
彼女の脳裏に浮かんでいるのは、骸から行われた一つの問いかけ。
あなたにとっての幸せは、本当に周りの笑顔を見るために、自身を殺すことなのかと言う言葉。
「………。」
何度言葉を繰り返そうとも、奈月は答えが出せなかった。
自分にとっての本当の幸せ……自分にとっての本当の望み……それらを考え続けても、靄がかかったかのように、何かが抜け落ちたような状態だった。
「……わたしが……本当に求めていた幸せは?」
獄寺のように、すぐに答えを出せないまま、奈月は再び無言になる。自分が求めていたものは……何だったのだろうと。
「……わからない。わたしが本当に欲しかったものは何だったんだろう……。」
ベッドの上に倒れ込み、ポツリと呟くように紡いだ言葉。しかし、彼女の言葉に反応を返す者はいない。
普段ならば、彼女にしか視えない初代ファミリーが答えることがあるのだが、この日に限って彼らは席を外していた。
《奈月。》
「!」
ボーッとしながら過ごしていた奈月の頭に、1人の少年の声が響き渡る。
それに気づいた奈月は、一瞬だけ驚いたような表情を見せたが、すぐに強烈な眠気に襲われ、そのままベッドに横たわる。
《僕の言葉を聞いて、随分と悩んでくれたようですね。でも、答えを見つけることができていない。
そんなあなたに一つ提案したいことがあります。大丈夫。あなたの答えを見つけるための、ちょっとした手助けになるものですよ。》
完全に意識を手放す前に、奈月は再び骸の声を聞く。
しかし、維持できていた意識は、霧に飲み込まれていくように、海へと沈んでいくように、次第に遠くへと離れていく。
《……あなたを迎えに来ました、奈月。僕と一緒に自由になりましょう。》
“僕ならば、あなたをどこまでも遠くへと逃すことができますから……"意識が完全に無くなる前に、そっと届いた穏やかな誘い。
同時に奈月は優しい温もりに抱きしめられる感覚を覚え、残りの意識を完全に手放した。
沢田 奈月(桜奈)
骸の問いに対する答えが出せず、ずっと悩んでいたボンゴレ10代目。
彼の意思一つで、その意識を精神世界へと引き摺り込まれてしまう程に骸に強い繋がりを許してしまった結果、骸の呼び声を聞くと同時に、精神世界へと意識を落とされた。
六道 骸
奈月の精神世界に溢れる優しさや温もりを感じ、ボスである奈月を利用するのではなく、自分達側に引き込む道を選んだ脱獄者。
奈月の前世を知るが故に、これまで誰かのために自身の自由を手放して尽くしてきたのだから、奈月として生まれた今は、自由に手を伸ばして逃げてもいいじゃないかと言う考えを持ち、自身の復讐と、彼女の自由のためにマフィアの殲滅を企てる。
城島犬&柿本千種
骸と共に脱獄を果たし、日本へと来日した彼の従属者達。
自分達が忠誠を誓う骸の話から、奈月は彼にとっての特別であると判断し、彼の意思に従うように、奈月を引き入れるための準備に取り掛かる。
沢田 家光
家族写真を見ていた際に、なり損ないであったはずの超直感が発動し、大切な愛娘の身に何かが起こることを直感し、嫌な予感に苛まれるままに連絡を入れたが、全く取れず焦りを浮かべる。
ディーノ
獄寺や山本の発言により、嫌な予感を本格的に抱き、奈月へと連絡を取ろうとするが、肝心の相手が全くと言っていい程に応えてくれない現状に、何があったんだと強烈な不安に襲われている。
物語に関係ない好奇心からのネタ質問です。主人公に好意的な感情を向ける男キャラは、これから先も増えるのですが、主人公のファーストキスは誰が一番奪いそうだと思いますか?
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リボーン
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大人リボーン
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獄寺隼人(事故チュー)
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山本武(事故チュー)
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雲雀恭弥
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六道骸
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ディーノ(事故チュー)
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ディーノ(意図してキス)
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XANXUS
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ベルフェゴール
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白蘭
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古里炎真(事故チュー)
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させないよ?(女性陣の壁)