最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
骸により、奈月が連れ去られて少しした頃、彼女がいたはずの自室には、いつものように眠りにきたランボが足を運んでいた。
「ナツ〜!オレっちだよ!ランボさんだよ!今日も一緒に眠りにきたもんね!」
明るい声音で笑顔を見せながら、ランボは奈月の部屋のドアを開ける。しかし、そこはすでにもぬけの殻となっており、夜風に揺らされるカーテンだけが、静かに踊っていた。
「……ナツ?」
いつもなら笑顔で迎えてくれている1人の女の子。誰よりも優しくて、誰よりもしっかり者で、自分にとっての大切な姉のような人。
だが、その人の姿は全くと言っていい程に見当たらず、ランボはキョロキョロと部屋を見渡す。
「ナツ〜?どこだもんね?ランボさん、一緒に眠りにきたよ〜?」
部屋の中へと足を運び、部屋の持ち主の名前を口にして、誰もいない奈月の部屋を探し回る。
ベッドの下を覗き込んでみたり、ウォークインクローゼットの中を覗き込んでみたりと、視線を巡らせる。
かくれんぼでもしているのかと思ったのに、やはりどこにも奈月はいない。
「ナツ……?ナツ、どこにいるもんね?ランボさん……来たよ……?」
何度呼びかけても、穏やかな女性の声は返って来ず、ただひたすら静寂だけが部屋を満たしている。
誰もいない静かな部屋……穏やかな温もりも全くないその部屋を見て、ランボは自身の視界が滲むのを感じ取る。
─────……ナツはどこ?なんでナツはどこにもいないの?ナツはどこにも隠れてない。
「っ……うぁあぁああああ!!ナツ!!ナツはどこに行ったもんね!?ランボさん来たよ!?なんでいないの!?」
優しく抱きしめてくれる温もりはない。泣きそうになったり、涙を流したり、悲しんでいたりしてる時、泣かないのと穏やかに話しかけてくるはずの大切な人は、どれだけ泣いても応えてくれない。
いつもの優しいあの子はどこ?抱きしめてくれるあの子はどこ?どうしてあの子はどこにもいないの?
大きな声で泣きながら、ぐるぐるとその疑問のみを巡らせる。どれだけ泣いていたとしても、彼が求めた温もりは、彼に返ってくることはない。
「ランボ君!?どうしたの!?」
「ちょっとアホ牛!あんた今何時だと思ってんの!?」
「─────!?」
わんわん泣き叫ぶランボの元に、彼が暮らしている家の住人達が走り寄ってくる。
心配する者、怒る者。様々な感情を表に出しながら、ランボの元へと集まってくる。
「………え……?」
「なっ……ちゃん…………?」
ランボの元へとたどり着いた住人達は、目の前に広がる景色に固まる。
開け放たれたことにより、入り込む夜風に遊ばれるカーテン……遮る物がなくなったからこそ、眩しく照らしつける月光。
普段は、少女が座っているはずのベッドの上は、先程まで少女が座っていたかのようにシワになっており、彼女の部屋に備え付けられていた金庫は開錠されてもぬけの殻。
「うそ……なっちゃん……?なっちゃん!?どこにいるの!?ねぇ!?」
「どうなってるのよ……!!普段はこの時間帯だと、ナツの部屋は綺麗に整頓されていて、窓だって開けっぱなしにされてないはずでしょ!?」
部屋の主がいなくなっている現状に、住人達はパニックに陥る。
周りがパニックになる中、遅れてやってきたアルコバレーノは、すぐに彼女のベッドに触れ、同時に窓の外を見る。
少しだけ残る温もりに、踏みしめられている床のマット……窓の外にある屋根の上……飛んできた砂や、埃などで少しだけ汚れているそこに残された足跡……。
それらを確認したリボーンは、少しだけ表情を歪めた。
「……この足跡はベッドの下にあったナツの靴底と一致してる。ナツの奴……ここから外に出ていったな?」
「「!?」」
「何を言ってるの、リボーン君……?ここは2階なのよ?2階からなっちゃんが飛び降りるなんて……」
「……ナツの能力なら十分できるぞ。かなりの身体能力もあるし、何かしらのサポートがあったら、可能な範囲だ。」
「そんな……!?でも、どうして!?なんでなっちゃんが外に……!!」
涙声になりながら、どうしてと訴えてくる奈々。リボーンはそんな奈々に視線を一度向けたのち、再び外へと目を向ける。
「……最近のナツは、どこか考え込むような様子があった。もしかしたら、それが影響しているかもしれねーな。」
ポツリと呟くように告げられたか言葉に、奈々は両目から涙をこぼす。
悩んでいる娘のことに気づくことができず、いつものようにいろいろと手伝わせてしまっていたことを後悔するように。
「……今回のこれは、オレにも責任がある。ナツが悩んでいることに気づいていても、詳しく話を聞くこともせず、ずっと様子見だけに徹していたからな。」
ボルサリーノを深く被り、その表情を曇らせるリボーン。
そんなリボーンに近寄ったビアンキは、彼をそっと抱き上げる。
「でも、話を聞こうとしても、ナツが答えなかったんでしょう?まるで拒絶するような目を向けてきたって言ってたじゃない。
だからリボーンも詳しく聞かないようにしたんでしょ?あの子を傷つけないように……。」
「ああ……だが、こうなっちまうくらいなら、もう少し話を聞いておけばよかった。
何があったのか、問いかけることはいくらでもできたはずなんだ。ナツを傷つけないように、だけど悩みを吐き出させるように。」
回りくどくても話を聞くための手順を踏めば、いくらでも話を聞くタイミングはあったはずだと、後悔するように紡がれた言葉を聞き、ビアンキも表情を曇らせる。
彼女もそれは理解していた。奈月と言う少女は、初めて会った時に比べたら、周りに自身を打ち明けるようになっていたのだから。
だからこそ、自分でもできたかもしれないのに、リボーンから聞かされた、拒絶するような目を向けられたと言う言葉に、もし、自分も同じ目を向けられたらと思うと、怖くて聞き出すことができなかった。
─────……何が、あなたを妹のように思ってる……よ。肝心な時に話を聞いてあげることもできないくせに、悩みを聞いてあげることができなかったくせに……バカバカしいにも程がある。
表情を曇らせる最愛に、涙を流す大切な人達……様々な表情を視界に入れながら、ビアンキも表情を暗くする。
「…………。」
そんな中、リボーンは表情を曇らせながらも、奈月の靴のものと思わしき足跡を無言で見つめる。
彼の思考には、一つの疑問が浮かんでいた。それは、悩み混んでいたとは言え、奈月は家出する程思い詰めてしまうかと言う疑問だった。
最近まで感じていた嫌な予感は、本当に家出をするかもしれないと言う不安から来ていたものだったのかと。
─────……もしかしたら、桜奈に家出を仕向けた存在がいるのかもしれねーな。
これまで共に過ごしていたからこそ、リボーンは彼女が家出に至るまで悩みを抱えるとは思っていなかった。
確かに、最初のうちは1人で考え込むだろう。だが、考え込んで思考を回して、わからないと思った場合、間違いなく彼女の性格からして悩みを打ち明ける可能性の方が高い。
だからこそ、リボーンも待っていた。奈月が……桜奈が、打ち明けるのを。
─────……嫌な予感はこれじゃねー……。もっと別の何かから来ているものだ。桜奈は……いったい誰に唆された?
一時的に思い浮かべたのは、彼女が告げる秘密の友人。自分には視えず、桜奈には見えていた幽霊のような状態の者達。
だが、桜奈から話を聞いたところ、その友人達は桜奈の意思を尊重し、桜奈の道を照らしているとの話だった。
だとしたら、彼らが桜奈に悩んでいるなら家出をしてしまえばいいと言う可能性は極めて低い。
むしろ、その悩みに対する答えかヒントを提示して、桜奈の悩みを解決するように動くだろう。
─────……ディーノと家光に連絡してみるか。もしかしたら、何かわかるかもしれねー。
「……少し席を外す。」
「リボーン……」
「ビアンキ。お前はママンとランボ、それとイーピンを落ち着かせておいてくれ。今回のナツの失踪は、誰かに唆された可能性がある。」
「!?誰かに唆されたって……誰に……?」
「……わからねー。だが、少しだけ思い当たる節がある。」
リボーンが口にした、思い当たる節……それは、僅かに感じ取っていた、何者かによる桜奈への干渉の気配だった。
明らかに異質で、だけど鮮明には感じ取れなかった妙な気配……ここ最近、何度か眠っている桜奈から感じ取ることができたそれは、共に眠ることがあったリボーンの安らぎを妨げるには十分過ぎるものだった。
もし、その気配を持っていた人間が、桜奈を唆したのであれば、自体はかなり深刻だろう。
「しばらくの間、家を空ける。オレ個人でもナツは探してみるから、ビアンキはママン達を頼む。」
「……わかったわ。私も、自分の人脈を使ってナツを探してみる。」
リボーンがハッキリとそう言うのであればと、ビアンキは彼の申し出を引き受ける。
自分も人脈を使って探すと告げてきたビアンキに、リボーンは小さく笑い返したのち、必要なものだけを手に取ってその場から立ち去った。
愛しいと感じている、大切な少女を探し出すために。
───── イタリア・CEDEF本部 ─────
何度も愛娘に連絡するが、今度はコール音すら鳴らなくなった携帯を見ながら、家光は表情を曇らせていた。
─────……どうしてナツは電話に出ない?さっきまではずっと、電源はオンになっていたはずなのに。
連絡手段すら途絶えられ、愛娘の安否を確かめることができない……。
予想だにしなかった繋がりの切断。嫌な予感は未だに消えず、家光は焦りを抱く。
「っ……クソッ……オレは、奈々とナツに、ずっとこんな思いをさせていたのか……!!」
自身の感情を爆発させ、子供のように泣きじゃくりながら、どうして連絡すらくれなかったんだと怒鳴りつけてきた愛娘を思い出し、家光は自身の拳を握りしめる。
どれだけ心配をかけていたのか……どれだけ辛い思いをさせていたのか、今になってようやく理解したのだ。
どうして連絡を返してくれないんだと言う疑問、無事でいるのかと言う心配、どうして声を聴かせてくれないんだと言う、僅かな怒りと強い焦燥……まさか、自分がやっていたことが、今になって返ってくるなんて……少しの息苦しさを覚えながら、家光は再び携帯の連絡先を開く。
……だが、彼が愛娘の連絡先を再び押すことはできなかった。
突如鳴り響く着信音。画面に映り込んでいるのは、愛娘の名前ではなく、愛娘の元へと送り込まれている旧友の名前だった。
「……リボーン!?」
まさかの人物からの着信に、家光は一瞬目を丸くする。しかし、すぐに彼は頭を切り替えて、通話ボタンを急いで押した。
「リボーン!!ナツに何か起こってないか!?最近、ずっとナツに対する嫌な予感が絶えないんだ!!」
【いきなり耳元で叫ぶんじゃねーぞ、家光。まぁいい。……ナツに対する嫌な予感か……。やっぱりお前もボンゴレの血縁だな。開花することがなかった超直感が、嫌な形で働いたか。】
「!?」
リボーンの言葉に家光は目を見開く。開花することがなかった超直感……なり損ないであったはずのそれが、嫌な形で働いた……その言葉が意味することを、家光はすぐに把握する。
「ナツに何かあったのか!?」
怒鳴りつけるようにリボーンに問う家光。
電話の向こうでは、彼が表情を歪めているであろうことは予想できていたが、今の彼にはそんなことを気にしている暇はない。
【……ナツが失踪した。しかも、何者かに唆された可能性が高い。】
「!?」
リボーンから告げられた言葉に、家光は言葉を失う。
─────……何者かに唆されて失踪……?いったい誰が、何のために?
─────……誰かに唆されて姿を消してしまう程に、何かしらの異変を抱えていたのか?
様々な疑問が脳裏を過り、そして次々と消えていく。
そんな家光の様子を知ってか知らずか、リボーンは再び口を開いた。
【最近、ナツはやけに考え込んでいることがあった。何かを探すように、何かを思い出そうとするように。
だが、何度か、何を考えているのか聞いたことがあったが、ナツは拒絶するように答えようとしなかった。
そんな女に無理矢理話を聞く気にはならなくてな。ナツから話してくれるまで、待つつもりでいたんだ。
でも、どうやらその待つ時間につけ込まれたらしい。今日、ランボがナツの部屋に向かった頃には、すでにナツはいなくなっていた。】
すまない、と告げてくる旧友に、家光は何で話を聞かなかったんだと怒鳴りつけたくなる衝動に駆られる。
しかし、リボーンがもし、聞き出そうとして、愛娘を傷つけることになったとしたら、今度はそれに怒ってしまうだろうと考えた家光は、黙り込むことしかできなかった。
「……ナツがいなくなる前、何か変わったことはなかったのか、リボーン。」
様々な感情が渦巻く中、失踪する前兆のようなものはなかったのかとリボーンに問う。
すると、リボーンは少しだけ無言になったのち、静かに口を開いた。
【……ナツの周りに、失踪を唆すことができるような人間はいなかった。ナツが言う、秘密の友人って奴らも、話を聞く限りじゃそんなことはしないタイプだ。
むしろ、ナツの悩みにいち早く気づき、その悩みの答えの方へと誘導するタイプの存在だろう。
ナツが進む道のりのしるべ……それがそいつらのようだからな。だか、ナツの失踪を手助けしそうな奴に、一つだけ心当たりがある。】
「心当たり……?」
心当たりがあるのであれば、早く教えてくれと家光は望む。もし、その心当たりに手を伸ばすことができるのであれば、捕まえることができるのであれば、すぐにでも行動を移したいと。
【だか、オレも完全に確証があるわけじゃねー。もしかしたら違うかもしれねーんだ。だが、こっちの考えていることが当たりだとしたら、ナツは厄介な人間に目をつけられている可能性がある。】
“確証は持てないが、話を聞くか?"と静かに問いを返してくるリボーンに、家光は肯定の言葉を返す。
確証はなくとも、本当にそれが原因であるのであれば、早く情報を集めたいと、理由を共に告げながら。
【わかった。だが、本当に確証はねーぞ。……ナツは、たまに意識がどこか遠くに行っている時がある。
同時に、その際ナツからは、明らかにナツとは違う何者かの気配が混ざり込んでんだ。
まるで、
「何かに……取り憑かれたかのように……?」
そのワードに、家光は少しだけ心当たりがあった。
かつて存在していたあるマフィアが、そのような状態を引き起こすことができる禁忌を犯したことを思い出したのだ。
しかし、リボーンの言っている通り、それは確証を持てる話ではなかった。
なぜならその禁忌はすでに途絶えている。だからこそ、今の時代、そのようなことができる存在はいないはずだと頭が否定する。
【ああ。お前も心当たりがあるだろう?だからこそオレも、正直言って確証が持てない。
だが、もし、あのファミリーの生き残りがこの世にいて、
そこまで告げ、口を閉ざするリボーン。
家光は、旧友が何を言いたいのかすぐに汲み取り、静かに口を開いた。
「……調べりゃいいんだな?あのファミリーの生き残りがいるかどうかを。」
【……話が早くて助かるぞ。このことに関しては、ディーノにも協力してもらうつもりだ。
オレと家光だけじゃ全部調べきれねーし、2人より3人の方が早めに情報を得ることができるはずだからな。】
電話越しに聞こえる旧友の声が、どことなく明るくなったことを確認する。
家光は、それくらいわかると言うように、口元に一度笑みを浮かべる。
しかし、すぐに表情を真剣なものへと変えては、再び口を開いた。
「ディーノにはオレから連絡をつけておく。あと、9代目にもな。もし、本当にあの
【そうだな。んじゃ、オレは他にも自分の人脈を使ってナツを探してみる。見つけたらまた連絡するぞ。
そっちも、なんかわかったことがあったら教えてくれ。今回のこれは、オレ達としても、ボンゴレとしても、かなり大きな山になる。】
「ああ。わかった。」
リボーンとの通話を終え、家光は通話終了ボタンを押す。
しかし、すぐに連絡先を開いては、ある1人の人物へと連絡を入れるのだった。
── イタリア某所・キャバッローネアジト ──
「クソッ……完全に電源が切られてる……!!」
キャバッローネファミリーが拠点としている某所。
そこにあるアジトの一室にて、ディーノは表情を歪めながら、携帯電話を見つめていた。
彼もまた、何度も日本にいる奈月に連絡を入れ、返ってこない返事を待ち続けていたのだ。
しかし、再び連絡を入れてみれば、電源が入っていないと言う無機質な声だけがスピーカーを通して聞こえるのみで、終ぞ少女の声を聞くことはできなかった。
─────……何があったんだ、ナツ……!!
声が聞こえない携帯電話を睨みつけながら、ディーノは焦りを見せる。
完全に電源が切られた瞬間、彼の胸中に強くなった嫌な予感がひたすら渦巻いていた。
─────……どうして出ない?何があった?いったいお前は、何に苦しんでいる?
沢山の疑問が脳裏を過り、消えては過るを繰り返す。早く奈月の声が聞きたい、悩みを打ち明けてほしい……懇願にも似た焦燥感に苛まれながら、何度目かわからない連絡を入れようとする。
だが、その電話が奈月の携帯電話へと電波を飛ばすことはなかった。
「……家光?」
携帯電話の画面に映し出された、沢田家光の名前。
まさかの人物からの連絡に、ディーノは一瞬だけ思考を止める。しかし、すぐに向こうから連絡が来ると言うことは、余程のことがあったのだと判断し、通話ボタンを押した。
【よぉ、ディーノ。ナツのことでちょっと連絡があってな。今、時間あるか?】
「………!?……ああ、大丈夫だ。ナツに何かあったのか?」
連絡にでた瞬間、自身が愛しく思っている1人の少女の名前を告げられ、ディーノはすぐに話を聞く体勢に入る。
電話越しでもわかる真剣な声音に、少しの嫌な予感を感じ取りながら。
【さっき、リボーンから連絡があってな……。ナツが、自宅から失踪した。】
「な!?ナツが失踪した!?」
告げられた言葉に、ディーノは驚きを露わにする。大切な少女が、何らかの理由から自宅から失踪する……その言葉は、かなりの衝撃だった。
同時に、最近、奈月のファミリーから度々聞いていた、少女の様子がおかしいと言う話を思い出す。
まるで、何かに悩むような、どこか遠くを見ているような、明らかにおかしい状態に陥っていると言う報告……それが、嫌な形となって問題を発生させたのだ。
【オレも最初は驚いた。だが、リボーンが確かにナツが自宅からいなくなっていると知らせてきたんだ。】
「何でだ!?何でナツが……!!」
【落ち着け。いや、落ち着けないのは理解してる。オレもかなり動揺したし、こう見えてかなり焦ってるんでな。だが、話は最後まで聞け。】
「っ………」
家光から宥められ、ディーノは口を閉ざす。考えてみれば、自分以上にパニックになっているのは、電話の先にいる、奈月の父親である家光であることを思い出して。
本来ならば、向こうの方が取り乱したいはずだと言うのに、それでも話をしようとしているのだから、最後まで話を聞かなくてはならないと頭を冷やす。
【……落ち着いたか?】
「……ああ。なんとかな……。一番取り乱してーのはアンタの方だってのに、悪かった。」
【気にすんな。まぁ、実際のところ、早く日本に戻って、全国をしらみ潰しに周ってでもナツを探したいところだがな。
そんなことをするより先に、やらなきゃならないことがある。】
「やらなきゃならないこと?」
この人なら本気で日本全国を周りかねないな……と、少しだけ苦笑いをこぼしたくなりながらも、ディーノは家光が口にした、やらなきゃならないことがあると言う言葉を復唱する。
彼の復唱を電話越しに聞いた家光は、そうだとディーノに告げながら、自身がリボーンから聞いた話を口にした。
【……ナツが何かに悩んでたことや、考えていたことは知ってるだろ?】
「ああ。ナツのファミリーから同じような報告が上がってる。だが、その話を聞こうとしたら、確実にナツから拒絶するような言葉と表情を返されるから、最後まで聞き出すことはできなかったって聞いてるぜ。」
【そうか……。ナツのファミリーすら気づく程に、ナツは様子がおかしくなっていたのか……。
だとしたら、確かに、つけ込まれちまってもおかしくねーってわけだな。】
「……は?」
家光が告げてきたつけ込まれると言う言葉に、ディーノは一瞬だけ思考を停止させる。
─────……つけ込まれる?ナツが?誰に?
脳裏に浮かんだ疑問を、ディーノは家光に告げようとした。だが、その言葉はすぐに遮られる。
【ナツは、誰かに唆されて失踪した可能性が高い。おそらくだが、無理に話を聞いて、傷つけたくねーって考えから黙っていた周囲の人間を掻い潜って、ナツに接触した誰かがいる。】
「!」
推測ではあるが、ナツが失踪する原因を作り出せるような人間が、この世の中のどこかにいる……提示された可能性に、ディーノは目を見開いた。
「それって……ナツがよく口にすることがある、秘密の友人……って奴か?」
自身に知識を与えてくれたのだと、度々奈月が告げてくる言葉を思い出し、ディーノはその友人が原因なのではと考える。
だが、その質問に対して返ってきたのは、否の一つだった。
【リボーンの話によると、ナツが口にする秘密の友人って奴らは、失踪を促すような輩じゃないらしい。
むしろ、ナツが何かに悩んでいたり、考え込んでいたりすると、真っ先に答えやヒントを与えて、先に進ませるタイプの連中らしいぞ。】
─────……じゃあ、いったい誰が、なんの目的で?
ハッキリと紡がれた、秘密の友人達のせいではないと言う否定の言葉に、ディーノは再び思考を回す。
【これも、リボーンから聞いた話なんだがな。最近のナツにゃあ、何かが度々干渉している節があったらしいぞ。
まるで、
「取り憑いて……!?……まさか!?」
家光の取り憑くと言う言葉に、ディーノはかつて、マフィアの世界を追放された一つのファミリーを思い出す。
……エストラーネオファミリー。作り出した特殊弾により、非道な行いを繰り返していたマフィア史上最悪と言っても過言ではないファミリーだ。
そのエストラーネオファミリーが作った特殊弾の効能は、条件を満たした存在の体に憑依し、その存在の全てを支配すると言うものだった。
「でも、アレはすでになくなったはずの技術だろ!?何で今になって!?」
【ああ。オレも同じことを思っている。だが、万が一生き残りがいて、その技術を持ち合わせた奴がいたとしたら?
エストラーネオファミリーは、確かに全て終わったはずのファミリーだが、もし、終わる前に、もしくは終わった直後に生き残りがいて、その技術を持ち出していたとしたら?
可能性は限りなくゼロに近いはずだが、完全にないとは言い切れない。】
家光の言葉に、ディーノは無言になる。
彼が言う、万が一の可能性……それは、この世界であれば確かにあり得る話だった。
エストラーネオファミリーの終わりは、何者かによりファミリー全体が惨殺され、特殊弾の製造方法もろとも火の海へと消えたことにより告げられた。
だが、結局あのファミリーを壊滅させたのは誰だったのかわからず終いだったのだ。
もし、その犯人がまだどこかにいて、その技術を持ち出し、使用したのだとしたら……。
そんな可能性が過った瞬間、ディーノは言いようのない寒気に襲われる。
「……その技術を持ち出した誰かに、ナツがちょっかいを出されたのだとしたら、かなりヤバいんじゃないのか?」
話に伝え聞いた程度ゆえに、詳しいところまではわからない。だが、もし、この仮説が当たりで、奈月がそれに巻き込まれたのだとしたら……間違いなくまずい状況になる。
その技術を持ち合わせている存在が、もし、奈月に接触し、条件を満たせさせ、憑依していたのだとしたら、その何者かが、ボンゴレの転覆を目論んでいたのだとしたら、巻き込まれた奈月自身も、ただでは済まない。
【もし、リボーンが立てたこの仮説が当たりだった場合、間違いなくナツ自身も危ないし、ボンゴレも危険に晒される。
だから、これに関しては9代目にすでに報告してある。秘密裏にな。ただ、ボンゴレ10代目候補が失踪したことだけは、ボンゴレ全体に知らせてある。
それにより、9代目からある指令が下された。】
そこまで話し、家光は一つ深呼吸をする。
そして、自分とディーノに下された指令を、静かに告げた。
【門外顧問組織CEDEF、および、キャバッローネファミリー……そして、アルコバレーノ、リボーンは、早急にエストラーネオファミリーの生き残りの調査、および、ボンゴレ10代目候補、沢田奈月の捜索に当たれ。
一つでも怪しい情報や、奈月の情報が見つかれば、逐一ボンゴレ9代目に報告し、奈月の保護へと取り掛かれ。】
「………了解。」
二つの組織と、一人に下された指令。それを聞いたディーノは、すぐに承諾の言葉を紡ぐ。
通話終了のボタンを押し、一度だけ目を閉じる。程なくして目を開けたディーノのゴールドオーカーの瞳には、強く鋭い光が宿っていた。
「キャバッローネファミリー総員に告ぐ!!ボンゴレ10代目候補、沢田奈月が原因不明の失踪状態に陥った!!
いくつかのチームに分かれて、奈月の捜索にあたれ!!少しでも奈月の情報が入り次第、逐一オレに報告をしろ!!
同時に、ある一つの可能性を調査する!!何人かはオレについてきてくれ!!」
そして、自身が率いるキャバッローネファミリーの部下達に、奈月の現状とともに、捜索命令を下すのだった。
リボーン
夜中にも関わらず大声で泣いていたランボの声に反応し、奈月の自室に向かったところ、奈月が失踪したことを知ることとなったアルコバレーノのヒットマン。
最近の彼女の様子や、明らかに彼女がしないであろう行動の痕跡から、何者かに唆されたことにより行動に至ったことをすぐに把握し、家光とディーノに連絡を行った。
奈月の捜索と、奈月を唆した人物を割り出すために、単独の行動を開始する。
沢田 家光
最悪の形で超直感が発動してしまった奈月の父親である門外顧問。
リボーンからの連絡により、奈月が失踪したことを知り、かなりの動揺と焦りを見せるが、彼から提示された、万が一の可能性を聞き、9代目とディーノに知らせる。
9代目より奈月の捜索、および万が一の可能性の立証にあたるため、自身が率いるCEDEFを動かす。
ディーノ
嫌な予感を抱く中、家光から奈月が失踪した話を聞き取り乱したキャバッローネファミリー10代目ボス。
本当は一番取り乱したいはずの家光から、落ち着くように宥められ、冷静さを取り戻す中、彼から一つの仮説を告げられた。
9代目から下された指令に従い、すかさず奈月の捜索、および万が一の可能性の立証にあたるため、キャバッローネファミリーを動かす。
なお、本人は指令がなくとも動かすつもりでいたのだが、指令と言う形で下されたことにより、自由に動けるなったもよう。
ランボ
何で?何でナツがいないの?ナツはどこ?あの優しい温もりは……どこ……?
沢田 奈々
奈月がいなくなったことにかなりのショックを受けた奈月の母親。
どうして何もしてあげられなかったの……?と後悔に苛まれる。
ビアンキ
リボーンから沢田家を任され、承諾した毒サソリ。
ナツ……早く帰ってきて……。
物語に関係ない好奇心からのネタ質問です。主人公に好意的な感情を向ける男キャラは、これから先も増えるのですが、主人公のファーストキスは誰が一番奪いそうだと思いますか?
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リボーン
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大人リボーン
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獄寺隼人(事故チュー)
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山本武(事故チュー)
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雲雀恭弥
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六道骸
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ディーノ(事故チュー)
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ディーノ(意図してキス)
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XANXUS
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ベルフェゴール
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白蘭
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古里炎真(事故チュー)
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させないよ?(女性陣の壁)