最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
Mukuro side.
奈月のキャリーケースを持ち出し、タクシーを何とか拾った僕は、彼女の体を借りたまま、拠点としている黒曜センターから離れた位置にある下宿屋へと足を運んでいた。
この下宿屋は、たまたま見つけることができた場所だ。あまり客が入らないからと、施設の経営者のご厚意により、長期間の滞在を許してもらった場所である。
流石に、奈月にあの雨は凌げても風は凌げないような場所で過ごさせるわけにはいきませんからね。
運良くこの下宿屋を見つけることができてよかったです。まぁ、食事等は自分達で用意しなくてはならないのですが、贅沢は言えませんね。
一応は、僕、犯罪者ですし。牢獄暮らしよりは何倍もマシです。
「……こうやって見ると、なかなかにシュールですね。」
そんなことを思いながら、僕はある一室に足を運ぶ。
そこにあるのは、意識をなくしている僕自身の姿。眠っていると思われたのか、この下宿屋の経営者が布団をかけられたらしい。
まぁ、いくら意識が抜けているとは言え、肉体への負担はそのまま返ってきますから、ありがたいと言えばありがたいのですが。
「……奈月は……もう少し眠らせてあげましょう。憑依してわかりましたが、それなりに疲労を溜め込んでいるようだ。」
何でこうまで無茶をするのでしょうか……と呆れと疑問を抱きながらも、僕はその場に座り込む。
同時に奈月への憑依を解除して、自身の体へと戻っては、力無く倒れ込む奈月の体を素早く抱き止める。
折角眠っているのですから、何かしらの衝撃で目を覚ますなんてことになったら可哀想ですからね。
今はゆっくりと眠って、その疲労を回復させるのが優先です。
「あら、目を覚ましたのね、蓮君。よく眠れたかしら?」
抱き止めた奈月の頭を自身の太ももへとそっと乗せていると、部屋の前を通りがかった、下宿屋の経営者である初老の女性が話しかけてくる。
……蓮……と言う名前は、ここに来た時に名乗った自身の偽名だ。自身の影武者として利用している駒の男に意識が向けられるように用意していたそれを使って、僕は今ここにいる。
「ええ。ゆっくり休むことができました。」
「それはよかった。転校早々、生徒会長さんの代理を引き受けて仕事をこなしてるって聞いたから、心配していたのよ。」
「ご心配をおかけして申し訳ありません、スミレさん。もう、大丈夫ですよ。」
「それなら一安心ね。」
穏やかな笑顔を見せながら、優しく話しかけてくる下宿屋の経営者であるスミレさんと言葉を交わしながら、僕は眠る奈月の頭を撫でる。
彼女のことは、あとから合流する自分の友人であると紹介していたため、この女性が急に増えた新たな居候者に疑問を抱くことはない。
まぁ、沢田奈月と言う名は、少々不良達の間で有名になり過ぎていたため、事前に偽名を作っておきましたが、奈月ならちゃんと説明したら納得してくれるはず……。
「じゃあ、私は達彦さんのところへ行くわね。いつも通り、ここにある道具は好きに使って構わないから。」
「ありがとうございます。早く旦那さんの容態が良くなるといいですね。」
「ふふふ……ありがとう。それじゃあ、この建物のこと、お願いね。」
「ええ。お任せください。」
そんなことを思いながら、部屋から出て行くスミレさんを見送る。
……僕らの長期滞在……それが許されている理由はこれにある。この下宿屋の経営者は、長らく伴侶である男性が病床に伏せており、ここを1人で維持することができないと言うことから、本当は閉める予定だったのだ。
そこに、家事などは自分達で行うし、ここを維持するための掃除なども手伝うから長期の滞在を許してほしいと頼み込んだことにより、自由に過ごせる場所となった。
もちろん、最初のうちは彼女もどうしたものかと僕らの言葉に頭を悩ませていた。
だが、下宿するための場所がなく、困っていることを伝えたら、それならと住まわせてくれたのである。
まぁ、同情を誘えるように演技をしましたからね。少しでも奈月がゆっくりと休める場所を確保しておく必要があったので。
嘘偽りのみでできた作り話は、先程の女性を惑わすには十分すぎる効果を得ることができた。
彼女程の年齢の人間は、割と若者に甘い傾向がある。そこに少しだけつけ込んで、今の現状を手に入れた。
「……奈月には、しばらくの間、
申し訳ないとは思いますが、これもまた、こちら側で過ごしてもらうためには必要なこと。
本来の名前ではない名前を名乗らせるのは気が引けますが、慣れてもらいましょう。」
誰に聞かせるまでもなく、ただ1人で言葉を紡ぐ。
ああ……早くあなたとお話ししたい。僕のことを知ってほしい。できることならば、このままここで、僕だけを見てほしい。
様々な感情を抱きながらも、それを我慢するように、穏やかに眠る愛しい少女の頭を撫でる。
あなたを理解できるのは僕だけです。あなたを逃がしてあげることができるのも僕だけです。
どうか……どうか、僕を選んで。僕の隣で、ただの女の子に……。
「あのばあちゃんがいなくなったからもう問題ねーな。骸しゃ〜ん。戻りましたか〜?」
「犬……うるさい。もうちょっと静かにできないの?」
どうすれば僕だけを選んでくれるのか……そんなことを考えていると、賑やかな声が聞こえてくる。
そのことに少しだけため息を吐きながらも、僕は静かに奈月から視線を外した。
もう少しだけ、奈月と2人きりの時間が欲しかったのですが、2人が戻ってきたなら仕方ない。
彼女が目を覚まして、話をすることができるようになるまで、暇潰しに相手にするとしましょうか。
─────……いや、どちらかと言うともう休む時間ですね。好き勝手していいと言う許可はもらってますし、奈月は僕と同室にしましょう。
「犬。今何時だと思ってるのですか?人気が少ないとは言え、一応ご近所さんはいらっしゃるので静かにしてください。」
呆れながら、僕は戻ってきた者へと視線を向ける。
そこにいたのは、長らく僕についてきている同年代の2人組……城島犬と、柿本千種の2人だった。
「すみません、骸様。何度か注意したのですが……」
「全く……。あまり賑やかにし過ぎないでください。眠っている方もいらっしゃいますし、何より僕らはあまり人目につくわけにはいかないのですよ?
コソコソと隠れるのが性に合わないのは理解していますが、それなりに振る舞い方を考えてくれませんか?」
「……すんません。」
こちらの注意に縮こまる犬に、再び深くため息を吐く。全く……脱獄した身であるにも関わらず賑やかにするとは……犬には自覚がないんですかね?
まぁ、本能で生きる野生動物みたいなところがありますし、大人しくできないのは仕方ないのかもしれませんが……。
「……その女性が、ボンゴレ10代目ですか?」
「うっへぇ……マジでただの女じゃねーか……。こいつがボンゴレの次期ボスで、とんでもねー人脈を持ってるとか信じられねーびょん。」
どうやって躾けるべきか……と少しの思案に耽っていると、犬と千種の視線が奈月の方へと注がれる。
確かに、こうやって穏やかに眠っているだけだと、何の変哲もない女の子にしか見えません。
ですが、本当に彼女はマフィアの人間であり、おかしな人脈を持ち合わせている女性なんですよね。
「ええ。僕も正直信じたくありませんが、彼女は確かにマフィアに属する女性ですよ。
こんなものを持ち歩いていましたし。おそらく、すでに癖になってしまっているのでしょう。」
そう言って僕が取り出したのは、奈月のキャリーケースの中に収まっていた大きめの袋。
その中にはチェコ製の物と思わしき拳銃や、武器として扱っているのであろうトンファー、複数の手榴弾に、特殊な仕組みが使われていると思われる重さのある2つのスティックが入っている。
「げげ……本当にマフィアだったびょん……。」
「こんなものを持ち歩くなんて……。」
「おそらく、マフィアの知識を与えた人間の入れ知恵でしょうね。身を守るために武器は常に持ち歩きなさいとでも言われたのでしょう。
全くもって忌々しい……。なぜ、前世で普通に生きることができなかった彼女を、今生でも普通の女の子にさせようとしないのでしょうね、この世の中は。」
吐き捨てるように言葉を紡ぎ、手にしていた荷物をキャリーケースの中へと収める。
本当なら、こんなもの持つ必要はないとさっさと破棄してしまいたいところだが、僕の立場上、どうしても身を守るために必要な道具は持ち合わせておかなくてはならない。
まぁ、大体の連中は、こっちが幻術なりマインドコントロールなりを使えばどうにでもなるはずだが、それでも念には念を入れておかなくては……。
「んで、どうすんれすか?この女。」
「この女……ではなく奈月ですよ。ちゃんと彼女にも名前があるので、その呼び方は失礼に値します。
あと、ボンゴレ呼びもなしですよ。今のこの子はマフィアではなく、ただの女の子ですから。
千種も、彼女のことは奈月と呼んであげてください。周りに人がいる時は、望月咲良と名乗らせますので、望月か咲良で呼ぶように。」
「わかりました。」
「へーい。わかりました〜。」
奈月の呼び方に関して、注意すれば、2人はすぐに従ってくれた。
これで、少しの間は奈月もマフィアのことを考えなくて済むでしょう。
ああ……でも、奈月の武器などは何かしらの方法で隠さなくては……。あれはマフィアを想起させますからね。
余計なことを考えなくてもいいように、できる限りマフィアを想起させるものは見えなくしてしまいましょう。
とは言え、どこに隠しておくべきか……そこら辺は考え所ですかね。
様々なことを考えながら、犬と千種の2人とこれからのことを話していると、膝をかしていた少女が僅かに身じろぐ。
それに気づいた犬と千種は、すぐに彼女へと視線を向けた。僕も倣うようにして、少女の方へと視線を落とす。
もう少し寝ていてもいいのにと、一瞬考えてしまったが、これだけ賑やかだと、まともに眠ることもできないかと苦笑いをこぼしてしまった。
「………あれ……?ここは……?」
長いまつ毛を蓄えた目蓋が微かに揺れ、静かに目蓋は開かれる。
覗き込んだ琥珀色は、少しだけ涙に濡れており、どことなくハチミツのようだった。
「……すみません、奈月。連れが戻ってきたもので、少しだけ賑やかにし過ぎてしまいましたね。」
不思議そうな様子を見せる奈月に声をかけながら、僕はその柔らかな髪にそっと触れる。
すると、僕の声に気づいたのか……それとも頭を撫でられたことに反応したのか、少しだけ濡れた琥珀色がこちらの方へと向けられた。
「骸……?……ああ……そっか……。家出したんだっけ……わたし……。」
紡がれた声音はいつも通りのはずなのに、どことなく大人びた雰囲気のあるそれは、奈月のものではなく、奈月として生まれ落ちた桜の花の物なのだろう。
今は奈月と言う人物ではなく、僕がずっと精神世界で話していた彼女と言うことだろうか。
それならそれで構わない。奈月と名乗る誰かのものであるならば、奈月と名乗る誰かの素であると言うのであれば、それがマフィアとしての彼女から離れていることを意味するのであれば、その姿で生活できるようにてだすけをするだけである。
「ええ。僕が攫ってきてしまいましたからね。今のあなたは家出中ですよ。」
そっと彼女の背中に手を回し、ゆっくりとその体を起き上がらせる。
僕の腕の中にある桜の花は、静かに体を起き上がらせて、何度か瞬きを繰り返した。
「……千種。水を持ってきてあげてください。」
「はい。」
とりあえず彼女に水を飲ませよう。眠っている間も、水分と呼ばれるものは放出され続けている。
汗はかいていなかったため、脱水を引き起こす程ではないだろうが、目を覚ました時は水分を取る方がいいと言う話は有名な話だ。
「水を飲み終わったら、これからのことを話しましょうね。」
「……ん。」
千種から水を受け取りながら、桜の花にそれを手渡せば、彼女は小さく頷いて、グラスの中に入っている水を飲み始める。
その姿を静かに見つめ、僕は口元に笑みを浮かべる。これでやっと、あなたとゆっくりお話ができる。
「そう言えば、精神世界ではいつものように話していましたが、こうして生身で会うのは今日が初めてですね。だったら、まずはこの挨拶が必要でしょう。
初めまして、奈月として生まれ落ちた桜のあなた。僕が、精神世界でずっと話していた六道骸です。……ようやく、あなたのこうやって話すことができて、嬉しく思っています。
時間は沢山用意しておきました。これから、沢山お話ししましょうね。」
六道 骸
奈月に憑依することにより、まんまとボンゴレを出し抜いて攫ってしまった脱獄者。
奈月の精神世界に沈む桜の花から、奈月として生まれ落ちた、かつては普通に生きることが許されなかった転生者のことを桜の花、もしくは桜のあなたと呼ぶことにした。
可能であれば、自分の隣を選び取り、マフィアの奈月ではなく、マフィアとは関係ない優しい女の子として生きてほしいと望んでいる。
奈月の偽名として、咲良の名をつけた理由は、少しでもマフィアとしての少女ではなく、かつて美しく咲き誇り、悲しくも散らされてしまった桜の花である本来の自分として過ごしてほしいと言う願いの現れである。
沢田 奈月
骸に身を委ねたことにより、一時的な家出による失踪を果たしたボンゴレ10代目……として生まれ落ちてしまった桜の花。
目を覚ましたら知らない場所にいたし、自分は骸に膝枕されてるし、周りには骸以外の誰かもいたが、自身が家出したことと、これまでの骸との会話から、すぐに順応した。
骸がいるためか、奈月としての「私」ではなく、桜奈としての「わたし」が無意識に出ている。
城島 犬
戻ってみたら人が1人増えていたので、あ、骸さんが連れてきたボンゴレってこいつか、とすぐに納得した脱獄者。
骸の膝を枕にして眠っている彼女の姿を見て、本当にただの女じゃねーかとツッコミを入れた上、こいつがボスとか人脈持ちとか信じたくねー……と引いていた。
柿本 千種
コンビニに犬と出かけて下宿先に戻ってみたら、ちゃっかり骸がボンゴレを連れ去って戻っていたので、この短時間でボンゴレを連れ去ったのかと一瞬だけ驚いた脱獄者。
眠ってる姿はどこにでもいるような女子生徒だと言うのに、すでに癖になるまでに、武器の所持を行なっているボンゴレ10代目候補に、少しだけ哀れみを抱く。
物語に関係ない好奇心からのネタ質問です。主人公に好意的な感情を向ける男キャラは、これから先も増えるのですが、主人公のファーストキスは誰が一番奪いそうだと思いますか?
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リボーン
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