最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 買い物を済ませて下宿屋へと戻った桜の花達は、その日の締めくくりとして夕食を食べ、宿題なども済ませたのち、風呂と寝支度を終える。
 少々トラブルに見舞われたりもしたが、そこは機転で乗り越えて、静かで穏やかな夜を迎えた。
 寝室は同じでと藍に定められ、2人分の布団を部屋に。横たわる桜と藍色は、静寂降りる寝室にて、少しの会話を始めるのだった。

 主人公 side.


桜と霧の夜

 下宿屋へと戻り、夕飯の前に入浴を済ませる。

 最初、入浴と言う話を聞いて、犬がめちゃくちゃ風呂を嫌がると言うトラブルがその際にあったが、「ちゃんと風呂に入るなら、毎日好きなものを一品作ってあげるから我慢して入れ。嫌なら入らなくてもいいけど、わたしが作るお菓子も料理も食べさせない」と伝えたら、「それはいやらびょん!!」と言って、指示を聞いてくれたため何とかなった。

 ちなみに、この時骸と千種が驚きと尊敬の表情を見せてくると言う珍時が起こった。

 どうやら、骸ですらも犬に風呂を入らせるのが難しかったらしい。それをあっさりとわたしがクリアしたものだったから、あんな表情を見せてきたようだ。

 

 ……この後、ちゃんと犬が好きなものを作り、4人で一緒に食事を済ませ、歯磨き等も終わらせた。

 寝支度もできたから後は寝るだけ……まぁ、その睡眠場所には物申したいことがたくさんあるわけだけど。

 

「犬が大人しく風呂に入る姿は初めて見ました。桜奈の食事パワーは効果覿面ですね。」

 

 寝室に足を運び、その部屋にある押入れの中に入っていた布団を出し、せっせと敷いていると、骸が不意にポツリと呟く。

 視線を骸の方に向けてみれば、数週間で身についた布団敷きをこなしながら、苦笑いをこぼしていた。

 

「そんなに犬の風呂嫌いって酷かったんだ。」

 

「ええ。お湯が熱いからか、それともボディソープやシャンプー、コンディショナーと言った石鹸のニオイが好きではないのか……とにかく昔から風呂嫌いでして。

 1週間のうち、二度ぐらいしか入らないことも度々あったんですよ。だから毎回犬の入浴は重労働作業で……」

 

「風呂を嫌がる大型犬か何か?」

 

「その認識が合ってるのではと思うレベルに酷かったんですよ。僕が言っても渋々がほとんどで……なかなか素直に従ってくれなかったんですよね……。」

 

「流石にちょっと汚いかな……。野生動物じゃないんだから……」

 

「犬は野生動物味が強い子でしたよ。昔から。能力に影響され過ぎているんですかね……。」

 

「……今はまだ詳しくは聞かないけど、いつか教えてくれる?3人のこと。」

 

「ええ。いずれ必ず。そうですね……。この穏やかなひと時……夢のような時間が終わる頃にでも。

 本当は、この楽しいひと時の終わりに暗い話などしたくはないのですが、犬と千種から話してもいい……話してほしいと同意があった時に話します。

 ほら、他人の過去を勝手に話すのはまずいでしょう?まぁ、僕は桜奈の過去を随分と前に知ってしまったわけですから、あれこれ言えるかと言われたら微妙なところですけどね。」

 

 静かに過去はいつか教えてもらえるのかと聞いてみたら、必ずこの生活の終わりにでも、過去を話すからと言ってきた。

 そのことに少しだけ安堵しながら、わたしは自身が使う布団の上に座り込む。

 

「……それにしても、まさか買うのは伊達眼鏡だけでいいと言われるとは思いもよりませんでしたよ。」

 

 不意に、骸から今回の買い物の中で、まさかウィッグやカラコンは必要ないから伊達眼鏡だけ買うと言いだすとは思わなかったと言ってくる。

 そのことに一瞬きょとんとしたわたしは、何度か瞬きをしたあと小さく笑った。

 

「まぁ、だろうね。元々はウィッグとカラコンと伊達眼鏡の3種類を使って……って話だったし、そう思うのも仕方ないよ。

 でもさ。ウィッグやカラコンは確かに使える道具ではあるけど、やっぱり外れる可能性は多いにあるわけだし、それだったら伊達眼鏡だけをかけて、後は幻術で誤魔化した方がコスパがいいと思ったんだ。」

 

 帰り際に、ちょっとした小物売り店で購入した青みがかったシルバーの伊達眼鏡をかけ、指を鳴らすだけで一瞬にして幻術を展開する。

 Dさんと骸から、これまでずっと幻術の扱い方を教えてもらったおかげで、随分と扱えるようになったものだ……。

 

「……こうして見ると、本当に桜奈は術士適性が高いですね。幻術で勝負したら、間違いなく僕が桜奈を上回るとは思いますが、僕の幻術の精度、および技術力を10に定めたとして、桜奈の幻術の精度、および技術力は6.8〜7.5……と言ったところでしょうか。

 間違いなく、現在の桜奈の幻術は並大抵の術士レベルではなく、かなりの術士のレベルを上回ってます。

 おそらくですが、幻術の訓練を続けていけば、最終的には8.5〜9辺りまでは伸びるでしょうね。

 約一年でここまで伸ばすことができたのも、桜奈に術士としての才能と適性が高かったことがうかがえます。」

 

 そんなことを思っていると、骸から現在のわたしの幻術の精度に関して言及してきた。

 どうやら、わたしは思っていた以上に術士としての能力値を上げていたようだ。

 

「……意外だよね。まさか、幻術を扱えるようになるとは思わなかったよ。」

 

「誰かからの贈り物かもしれませんね。前の世で頑張ってきたあなたが少しでも多くの幸せを得られるようにと、活用できる技術を与えた者がいたのでしょう。」

 

「そうなのかな……。」

 

「僕はそうだと思いますよ。」

 

 “頑張ってきたわたしへと与えられた、誰かからの贈り物”……その言葉を聞き、わたしは小さく笑みを浮かべる。

 現実離れした能力ではあるけど、その誰かの想いは、少しだけ、わたしの心の隙間を埋めてくれた気がしたのだ。

 

「……さて、そろそろ横になりましょうか。まだまだ平日が数日間続きますから、明日のためにも早く休みましょう。」

 

「うん。」

 

 ありがとう、わたしを想ってくれた誰か……感謝の気持ちを胸のうちに秘めながら、座っていた布団の上に寝転べば、骸は部屋の電気を切った後、同じように横になる。

 

「便利ですね、紐付きの電気。こうやって手を伸ばしてすぐに消せますから。」

 

「割と和室だと見かける形態だよ。延長用の紐とかもあれば、寝転んでいても届くようになるし、便利ではあるかな。」

 

「少々お行儀が悪いような気もしますが、咄嗟に電気をつけるのにはちょうどいいかもしれませんね。」

 

 小さく笑い声を漏らしながら、こっちの言葉に反応を返してきた骸に釣られて笑いながら、わたしは少しだけ骸の方に身を寄せる。

 わたしがそんなことをしてくるとは思わなかったのか、骸から一瞬だけ驚きの感情を感じ取ることができたが、わたしの行動の意味をすぐに彼は把握したのか、身を寄せたわたしの背中に腕を回し、そのまま優しく抱きしめてきた。

 

「……15歳と今年14歳になる男女が同室などおかしいと言っていませんでしたっけ?」

 

「……うるさいな。ちょっと甘えたくなっただけだよ悪いか。」

 

「悪いとは言ってませんよ。ただ、まさか自ら甘えてくるとは思わなかったので、驚いてしまっただけです。」

 

「……そっちがしたいことをしてあげるって言ってきたんじゃん。わたし悪くない。」

 

「クフフフ……そうでしたね。」

 

 揶揄うような声音に少しだけ言い返しながらも、骸にくっついて擦り寄れば、優しく背中を撫でられる。

 ……やりたいことを一緒にやっていこう……そう言われてわたしが一番最初に脳裏に浮かべたのが誰かに甘えることだった。

 少しでいい。誰かに抱きしめてほしくて、誰かに寄り添ってほしくて、前世で我慢していたそれを、少しだけでも解消してほしかった。

 

 多分、わたしはこれからも我慢をし続ける。それが昔からの気質であり、抜けきらない癖となってしまったから。

 治そうとしてもなかなか治せず、きっと、生きている限り、記憶がある限り、これはずっとつきまとう性質だろう。

 だからこそ、甘えていいと、逃げていいと許されている今だけは、かつての我慢を少なからず解消するように……

 

「……本当に甘えてもいいんだよね?今は我慢しなくてもいいんだよね?

 本当にわたしの本質は甘えたがりなんだ。誰かにくっついていてほしいと思うこともあるし、甘やかしてほしいと思うこともある。

 リョウやスイといた時のように、誰かにべったりしたい時がある。病弱で、一緒に旅行に行けたのも数回で、幼いうちに遥か遠くへ、たどり着くことすらできない程遥か遠くへ旅立ってしまった母さんにも、母さんを失って悲しみに暮れて、まるでそれを忘れ去りたいと言うかのように仕事をこなして、だけど悲しみは消えることなく、ずっと呪いのようにまとわりつかれていた父さんにも甘えることはできなかったから。

 甘えたくても甘えられなかったから。少しでも元気になってほしくて、わたしに目を向けてほしくて、たくさん頑張って、褒めてほしくて、だけどその呪いは解くことができなくて……むしろ甘えたら負担にしかならないと思って、どうすることもできなくて……」

 

「ええ。」

 

「我慢することは慣れてる。でも、やっぱりわたしは寂しがり屋で甘えたがりで、少しでも我慢を解きたくて、幼馴染みである2人に甘え続けていた。

 多分……ある種の、依存に近かったと思う。わたしの事情を知ってる分、2人は母さんと父さんに甘やかされない分、ずっとわたしを甘やかしてくれたから、その分、わたしは、2人の前だけでは、寂しがり屋で甘えたがりなわたしを出すことができた。

 その時だけは、息苦しくなくて、我慢する辛さが全くなくて、本当に気持ちが楽だった。

 だから、ずっと甘えさせてもらっていたし、くっつくこともさせてもらっていた。

 互いに社会に出て、忙しくなるその時までずっと……」

 

「そのようですね。桜奈の記憶を見ているからわかりますよ。記憶には、感情も一緒に記録されていますから、把握できています。」

 

 ポツリポツリとこれまで抱えてきたものを口にすれば、骸は穏やかに相槌を打ちながら、わたしの背中を優しく撫で続ける。

 緩く動くその温もりは、学生の時に我慢の限界を迎える度に、泊まらせてくれた幼馴染み達のそれとそっくりで、余計に気持ちを決壊させる。

 

「……本当にいいの?事情を知ってる人に甘えていいって……気を楽にしていいって言われたら……わたしは、本当に寂しがり屋で甘えたがりなめんどくさい存在になっちゃうよ?

 くっつきたいと思った時は、今みたいにくっついたりするし、甘えたいって思ったら、本当に甘え出すし、満足して落ち着くまでやめなくなっちゃうよ?」

 

 幼馴染み達のように、この世界で唯一、わたしの事情と本質を把握している近い位置の精神の持ち主……誰かを彼らの代わりにすると言うのは、少しだけどうかとは思うけど、この息のし易さは、2人と一緒にいた時のような気楽さは、どこか捨て難いものだった。

 だからこそ、最後の確認を。本当に、彼らのように、少しでもわたしが息のしやすい環境を……少しでもわたしが気楽に過ごせる環境を用意してくれる相手になってくれるのかを問う。

 

 これは、リョウとスイにもしたことがある質問だ。

 甘えていいから、くっついていいから、我慢する必要はないと言われて、そんなことを言われたら、本当に寂しがり屋で甘えたがりなわたしになっちゃうし、満足するまで、落ち着くまでくっついたり、甘えたりするけどいいのかと、最後の言質を得るためにしたものと同じもの。

 迷惑をかけたくないから、本当に寂しがり屋で甘えたがりなわたしを出してもいいのかと……その対象として、骸を選んでしまってもいいのかと問いかける。

 

「ダメだったら我慢などするなとも、自分のしたいことや望みを曝け出せとも言いませんよ。

 むしろ、僕の方が聞きたいです。桜奈は、本当に僕をその対象として……彼らと同じような居場所として定めてしまってもいいのですか?

 僕の手は、桜奈が思っている以上に清らかではなく、穢れてしまっています。

 何度も他人の命を手にかけましたし、他人を利用することで、あらゆるものを破壊してきました。

 あなたの幼馴染み達のように、精錬とされた気高さはなく、悪意しか持ち合わせていません。

 まぁ、桜奈に対しての悪意はありませんし、犬や千種にも悪意らしい悪意は向けていませんが、それ以外には悪意しか向けていません。

 特に、桜奈が足を踏み入れようとしているマフィアに対しては悪意ととめどない憎悪しか向けていないですし、全て消し去ってしまいたいと強く望む程に嫌っています。」

 

 “そんな僕を、桜奈として咲き誇るための止まり木にしてもいいのですか?”と聞いてくる骸に、わたしは躊躇うことなく静かに頷く。

 確かに骸からは深く暗い憎悪の闇を感じ取ることができる。骸とリンクしている精神世界から、それを確認することができている。

 だけど、それでもいい。わたしの前にいる時だけは、憎悪渦巻く悪意の塊ではなく、ただの六道骸なのだから、わたしもただの桜奈になれる。

 

「……躊躇いなしですか。僕の前で無防備になってくれるのはとても嬉しく思いますが、少しくらいは警戒してもらわないと手を出してしまいますよ?」

 

「……骸は、わたしにちょっかいを出してきた下半身に支配されてるだけの脳味噌チ※コ野郎とは違うでしょ。

 だからわたしも無防備になれるんだよ。仮に、わたしに劣情を抱いていたとしても、それを嫌がるわたしに手を出したりはしないでしょ?」

 

「それは当然ですよ。確かに桜奈を強く想い、劣情を抱くこともありますが、僕は桜奈を大切にしたいし、愛したいと考えることこそすれど、傷つけて壊すようなことは絶対にしません。

 桜奈に嫌われたら僕も辛いですし、僕は、桜奈だけは絶対に傷つけないと決めています。」

 

「だったら問題ないよ。わたしを傷つけないってことは、敵に回るつもりもないってことなんだから。」

 

「……全く……あなたには敵いませんね。そこまで信頼を向けられ、信用されているのなら、余計に何もできないじゃないですか。」

 

「何かするつもりだったの?」

 

「いいえ?それだけはありません。触れ合いたいとは思いますがね。」

 

「だったら別にいいでしょ。こんな風に甘えても。」

 

「クフフフ……ええ。もちろん構いませんよ。いいことも聞きましたしね。」

 

「いいこと?」

 

「ええ。」

 

「何か言ったっけ。骸にとっていいこと。」

 

「はい。話してくれましたよ。僕にとっていいこと。まぁ、どれが僕にとってのいいことかは内緒ですがね。」

 

 何それ、と小さく笑いながらわたしは静かに目を閉じる。

 骸にとってのいいことってなんだろう?過去の話の中に、それがあったみたいだけど。

 

「とりあえず頭を撫でたりはしてますが、他にしてほしいことはありますか?」

 

「ん……今のところはない……。夏場だから暑いかもしれないけど、くっつかせてくれるだけでいい。

 ……まぁ……強いて言えば、ぎゅっとしてほしいくらい。夏のはずなのに、今日はなんだか無性に誰かの温もりを感じて眠りたいんだ。」

 

「……僕の理性を試して楽しいですか?」

 

「そんなつもりはないんだけど……」

 

「……まぁ、あなたのことですからそうだろうとは思いましたよ。」

 

 少しだけ呆れながらもわたしを抱きしめてくれた骸に、小さく笑いながらぴったりとくっつく。

 夏場だからから少しだけ高い体温に、一緒にいることにより感じ取ることができる人の匂い。

 それらに落ち着きを覚えながら、わたしはそのまま眠りに落ちる。

 

「……おやすみなさい、桜奈。また明日、ゆっくり話しましょうね。」

 

 意識を完全に手放す寸前に聞こえてきた穏やかな声。

 返事を返したかったけど、眠気の方が混ざってしまい、その声に言葉を返すことなく、わたしの意識は夢の世界へと溶けていくのだった。

 

 

 

 




 桜奈(沢田 奈月)
 本当は寂しがり屋で甘えたがりな転生者。
 幼い頃に母を亡くした上、その悲しみに縛られながらも自身を育ててくれていた父に迷惑をかけたくなくて、甘えることを封じていた過去がある。
 その反動もあり、甘やかしてくれていた幼馴染み達には依存に近いレベルでくっついていたのだが、社会に出て集まる機会がなくなってからは、また甘えることを我慢する日々に戻り、最後は壊れ果ててしまった。
 時を経て甘えていい、くっついていい、自分のやりたいことを言ってほしいと口にする骸と出会ったことにより、今だけは、寂しがり屋で甘えたがりな自分で……とくっついている。
 添い寝にあまり抵抗がないのは、これらの性質の影響からである。

 六道 骸
 許されたら自身は本当に寂しがり屋で甘えたがりになるし、めんどくさい存在になってしまうぞと言う桜奈の忠告に、ダメだったら素直になれなどと言わないと一刀両断した脱獄した術士。
 その一刀両断を聞き、受け入れたと判断した桜奈からぴったりとくっつかれることになったが、当人は全く気にしておらず、甘え始めた桜奈を可愛がる様子を見せている。
 ……が、色々と当たっているので、ちょっと理性がぐらついてしまった。


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