最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
武の入ファミリー試験が終わって、早くも一週間の時が経った。
あれから私は、しばらくの間1人になるため、誰とも言葉を交わすことなく過ごしている。
京ちゃん達は、私が少しだけ1人になろうとしてることなんとなく察しているのか、話しかけてくることがない。
その優しさに、少しだけ感謝しながらも、1人でゆっくりする日々を過ごしていた。
今日もまだ、完全に気持ちが落ち着かない。だから私は、並盛中学校の屋上に足を運んでいた。
ここは、平地であっても高さがあるから、涼しい風が吹き抜ける。それに、あまり人も近寄らないから、落ち着くにはちょうどいい場所だ。
普通、学校の屋上って出入り禁止によくなっているはずなんだけど、この学校はそうでもないらしい。
「……あ、アメ玉持ってくんの忘れた。舐めてるとそっちに意識向けるから、落ち着くのにちょうどよかったんだけど。」
そんなことを思いながら、制服のポケットに触れたら、いつもある複数の小さな膨らみがなかった。
いろいろ考えすぎて、ちょっと忘れていたな……と小さく溜息を吐く。
アメ玉がないなら仕方ない。とりあえずここに座って……
「……君、誰?」
「ん?」
風を浴びるだけでも、気分って落ち着かせることができるんだろうかと思っていると、どこからか声が聞こえてくる。
辺りを見渡すと、こっちだよ、と再び声が聞こえてきた。声を頼りに視線を動かしてみると、屋上への出入口の上に、1人の生徒が座っていた。
黒髪に黒目……純日本人と言える容姿をしている男子生徒。同じ学年で見たことないから、先輩に当たる人だろう。
「……すみません、先約がいるとは思わず。」
「別にいいけど、誰?」
「1年A組に通ってる沢田 奈月です。」
「ふーん。」
「あなたは……?」
「僕?雲雀 恭弥。」
「雲雀 恭弥?あ、もしかして風紀委員長の……?」
「そう。知ってたんだ。」
「ええ。いろんな意味で有名ですから。見かけたのは、今日が初めてですけど……」
「当然だろうね。僕は、弱い草食動物達の群れが大嫌いだから、あまり出歩かないんだ。群れを見ていると咬み殺したくなる。」
「……思考回路が肉食動物のそれな件。」
いったい誰なんだこの先輩はと思っていたら、随分と聞き覚えのある名前の持ち主だった。
雲雀 恭弥……並盛中学校の風紀委員長を務めていながら、不良の頂点にも君臨している並中最凶の男子生徒。
自分にとって気に入らないものがいれば、例え誰であろうとも、仕込みトンファーでめった打ちにする。
厄介な人に出会してしまったと、少しだけ溜息を吐く。これは、早めに退散した方がいいかな。
「どこ行くの?」
「……雲雀先輩は群れが嫌いなんでしょう?つまり、1人でいることを好む人と言うことになりますから、私がいたら邪魔になるかと。
知らなかったとは言え、お休み中に入ってしまってすみません。すぐに立ち去るので……」
「別に、今の君は群れてるわけじゃないでしょ?近づいてこなければ、こっちもどうこうするつもりはないから、好きなようにしなよ。」
「…………ありがとうございます。」
どうやら、この場にいることを許されたようだ。それならと、お言葉に甘えて離れた場所に座りこむ。
うん、夏場でも風が涼しいから、そこまで暑くない。水分は取らないといけないだろうけど、ゆっくり過ごすことはできそうだ。
そう思いながら、私は屋上からの景色を眺める。並盛中の屋上に上ったのは初めてだったけど、すごく綺麗な景色が広がっていたんだね。知らなかったよ。
「……景色、気に入ったの?」
「!ええ。あまり高いところに上る機会がなかったので、初めてこの景色を見ました。
並盛中学校の屋上って、こんなに綺麗な景色が見れたんですね。」
「当たり前だよ。僕の並盛なんだから。」
「雲雀先輩の並盛……?」
「うん。並盛中学校は僕のもの。だから、この景色も僕のものだよ。」
「あはは。すごいことを言いますね。」
「そう?」
「ええ。並盛中学校が、とても大切なんだなとわかるくらい、その言葉からは強い想いを感じます。」
「……ふーん。気に入ったなら、また来れば?ただし、群れを引き連れないで、君だけできて、僕から離れた位置にいることが条件だけど。」
「……じゃあ、たまに足を運ばさせてもらいますね。もちろん、そちらの条件もちゃんと守ります。」
「そうして。僕は、女子であろうとも容赦するつもりはないから。」
「わー……怖いこと言いますね……。雲雀先輩がいる前では群れない、しっかりと頭の中に入れておきます。」
思ったより普通に話しかけてくる雲雀先輩の言葉に応えながら、静かに町を眺める。
彼がいる場所は、もっと綺麗に景色が見れて、並盛町のほとんどを見渡すことができるんだろうけど、あそこは彼の縄張りだろうし、上るのはやめておこうかな。
そんなことを考えていると、昼休憩の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。
それに気づいた私は、すぐに腰を上げて、制服についた埃や土を払い落とした。
「授業が始まっちゃうので、失礼します。お邪魔しました。」
「うん。またおいで。言ったことをちゃんと守るなら、好きに入ってきていいから。君は、あまりこっちに干渉しようとしないみたいだし、結構気楽だったから。」
「ありがとうございます。」
「ああ、明日風紀委員の取り締まりあると思うから、しっかり風紀は守るんだよ。あと、遅刻はしないこと。わかった?」
「……それ、教えちゃっていいんです?」
「気分だから問題ないよ。」
「そうですか。ご忠告感謝します。では。」
この人は授業を受けないの……?と一瞬脳裏に過った疑問。でも、干渉しない方が吉だとなんとなく思うから、指摘することなく屋上から退散する。
なんだか少しだけ不思議な風紀委員長様だったな……。
「そう言えば、雲雀先輩が使う仕込みトンファーってどんなものだったんだろ……。まぁ、藪を突いて蛇が出てきたら嫌だし、それに関しては聞かない方がいいかな。」
なんにせよ、一人になりたい時に使えそうな居場所が確保できたことはかなりラッキーだったかな。
多分、屋上にはあまり人が来ないだろうし、しばらくはお世話になろう。
まぁ、流石に冬場とかには足を運べないけどね。寒いだろうから風邪をひきそうだ。
沢田 奈月
少しの間1人になりたくて、静かな場所を求めて並盛中学校の屋上に足を運んでみた転生者な10代目。
そこで出会した雲雀に、最初は驚いていたが、彼が提示した条件さえ守るのであれば来ていいと許可されたので、屋上に足を運ぶことが増える。
雲雀とは深く関わらない方針を取るつもりだが、最終的にその方針が崩されることになるのを知らない。
雲雀 恭弥
昼寝をしていたが、屋上に入ってきた人の気配に目を覚まし、最初は咬み殺すつもりだった最凶風紀委員長。
しかし、ポツンと離れた場所で、静かに外を見る気配の正体、奈月を見て、どこか浮世離れしている彼女に戦意が弱くなり一旦は咬み殺すのをやめた。
話してみたら、意外と大人しいし、並盛の良さを少しでも理解していることからちょっとだけ気に入ったので、条件付きで自分がいる時であっても、屋上に出入りすることを許可した。