最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 大切な女性の気配を感じたが、惜しくも花びらのように掴み損ねてしまったリボーン。
 確かに彼女の気配は町にあった。それなら町にいるはずだと信じて探し回るヒットマン。
 それによりたどり着いたのは、少し古ぼけた下宿屋だった。

 No side.


桜の手紙

 確かに感じた桜奈の気配。彼女に度々干渉していた気配とともに、霧が霧散するかのように朧げに消えてしまったそれを探して、リボーンは町を走り続けた。

 しかし、彼は小さな自身の体を動かし続け、かなりの時間を探し回っていたことにより、徐々に体力を消耗し、疲労が浮かぶ表情を見せる。

 

「くそ………っ」

 

 襲いくる眠気に悪態をつき、その場でリボーンは座り込む。

 眠るわけにはいかない。桜奈がいるかもしれないのに、眠ってしまってはまた遠くに彼女が行ってしまう。

 確かな焦燥感に襲われながら、なんとかして体を動かそうと試みるが、その想いとは反対に、体は言うことを聞いてくれない。

 

「坊や。大丈夫かい?」

 

「!」

 

 そんな中聞こえてきたのは1人の女性の声だった。リボーンはその声に反応して、静かに顔を上げる。

 そこにいたのは1人の初老の女性であり、リボーンのことを心配そうに見つめていた。

 

「こっちにおいで。すぐ近くに、昔から私と達彦さん……旦那と一緒に下宿屋をしていた場所があってね。

 つい最近まで4人程人がいたのだけど、そのうちの女の子が体調を崩してしまったから、しばらく自然がある場所で過ごすからと言って離れちゃったのよ。

 だから、掃除をしていて少しばかり散らかっているけど、少し、おばちゃんのところで休まないかい?」

 

 女性の声を聞き、リボーンは無言になる。しかし、すぐに今の自分には休息が必要だと考えて、女性の言葉に小さく頷いた。

 だが、移動しようと立ち上がった瞬間、とうとう限界を迎えてしまったリボーンは、強い眠気に抗えず、その場で意識を失ってしまう。

 

「!?坊や!坊や!!大丈夫かい!?坊や!!」

 

 わずかに機能していた聴覚が捉えたのは、先程の女性の慌てたような声。

 しかし、リボーンはそれに答えることはできず、そのまま意識を手放してしまうのだった。

 

 

 …………………

 ………………………………

 ……………………………………………

 

 .:*.。o○o。.*:._.:*.。o○o。.*:._.:*.。o○o。.*:._.:*.。o○o。.

 

 ……………………………………………

 ………………………………

 …………………

 

 

 ─────……リボーン。

 

「!!」

 

 暗くなった意識の中、一瞬だけ聞こえた声により、リボーンは意識を覚醒させる。

 慌てて起き上がり、辺りを見渡すと、「あらあら」と言う第三者の声が聞こえてきた。

 すぐに声の方へと目を向けてみれば、そこには意識を手放す前に顔を合わせていた女性がいた。

 

「ごめんなさいね。大きな音を立てちゃったみたいで。」

 

「いや……。ここは……?」

 

「私が旦那と一緒に下宿屋を営んでいた場所よ。まぁ、旦那は病院で入院していて、私も歳だからやめようとしていたんだけどねぇ。」

 

 やめようとしていた……と言うにはつい最近まで生活が行われていたと言う程に整頓されている建物内を、リボーンは無言で見渡す。

 すると、作業をしていた女性が、坊やと彼のことを呼んだ。すぐに視線を向けてみると、女性は台所で手招きをしている。

 大人しく台所の方に足を運べば、女性はその場でお茶を出した。

 

「よかったら飲みなさい。」

 

「悪いな。茶を飲んだらすぐに立ち去る。」

 

「急がなくてもいいよ。つい最近まで人がいたけど、昨日の夕方には出て行っちゃったからね。」

 

「?昨日まで誰が住んでいたのか?」

 

「そうなんだよ。外国から来た子達で、男の子が3人、女の子が1人いてね。

 ただ、女の子は日本に来た時から病院で過ごしていたくらいに体調を崩しやすい子らしくてね。

 男の子の1人曰く、病弱な従妹さんらしいんだよ。でも、つい最近までは、体調が落ち着いたから学校に通うようになっていたし、従兄妹同士で仲良くお出かけをしたりもしていたんだけど、急に崩してしまったみたいでね。

 もしかしたら、排気ガスがよくないのかもって、自然が豊かなところで療養させると言っていたよ。」

 

 “大丈夫かしらねぇ”……と心配そうに呟きながらも、ゆっくりしてちょうだいと笑顔を見せて掃除を始める女性を見送ったリボーンは、出されたお茶に手を伸ばして口をつける。

 先程聞こえてきた自身を呼ぶ声……桜奈の声は何だったんだと思いながら。

 しかし、その疑問はすぐに解決することとなった。

 

「まぁ……これは、坊やのことかしらねぇ……?」

 

「!」

 

 掃除に向かっていた女性が、少しだけ驚いたような声を漏らしてリボーンの元に戻ってくる。

 自分のこととはどういう意味だ……疑問を脳裏に浮かべながら、女性の方へと目を向けてみれば、彼女は一枚の置き手紙のような紙と、封筒に閉ざされた手紙を持って来た。

 

「掃除していたら見つかったんだけどね。スーツを来た小さな男の子が来たらわたしてほしいって書いてあるのよ。」

 

 女性が手渡してきた便箋。見せてくれと女性に告げてリボーンが手を差し伸べると、それを手のひらに乗せられる。

 乗せられたものはとてもシンプルだが、鼻を近づけてみると、リボーンが桜奈に手渡していた虫除け用のロールオンフレグランスの香りがわずかに香ってきた。

 

「……ああ。これはオレに宛てられたものだ。もらっていいか?」

 

「ええ。大丈夫よ。坊やはあの子達の知り合いだったのねぇ。」

 

 笑顔を見せながら再び去っていく女性の背中を見送ったリボーンは、手元にある手紙に封をしているシールを剥がして手紙の中に視線を向ける。

 そこには、丁寧なイタリア語で文字が綴られていた。

 

 

 ────────────────────

 

 この手紙を見てる頃には、そこには私はいない

と思う。

 まずはみんなに謝罪を。ごめん。急に家を飛び

出したりしてしまって。

 心配かけてるよね?重ねて謝らせてもらうよ。

 

 今、私はある男の子と一緒に少しだけ遠くに行か

せてもらってるよ。

 本当は、早く帰ることが正しいのだとわかってる

んだけど、ちょっと、色々と考えたいことが多くて

もう少しだけ考えさせてほしいんだ。

 

 私の考えたいことは、自分のやりたいこと。

 今まで、マフィアのボスになることや、ご先祖様が

残したものを守って残すことが大切だと思っていたし、

それが私のやりたいことなんだと思っていたんだ。

 でもね。最近それがわからなくなった。

 

 私がそれを目指したのは、自分が望んだから?それ

とも周りに背負わされたから?私が本当にやりたかっ

たことは?

 

 考えれば考えるほどわからなくなった。私が本当に

やりたかったことは何?目指していたものは正解だっ

たの?

 ……そんな疑問ばかりが浮かんで、しばらくの間は

みんなの元に帰ることができそうにない。

 

 ねぇ、リボーン。わたしは、本当にジョットさん達の

想いを継ぎたかったのかな?本当に、それがやりたいこ

とだったのかな?

 

 もう、何がなんだかわからないよ……。

 わたしが目指したかったものって何?わたしがやりた

かったことって何?わたしが本当に望んでいたものって

何だったわけ?

 それがわからなくて、迷ってしまって、今はみんなと

顔を合わせることができそうにない。

 

 ごめんね……こんな迷ってばかりの候補者で。ごめん

ね……決断できない候補者で。

 ごめんね……みんな……。わたし、自分が自分でわから

なくなっちゃった……。

 

 ─────────────────────────

 

 

「……桜奈。」

 

 手紙に綴られていた文字を見て、リボーンは小さく彼女の名前を呼ぶ。

 最初は、桜奈が何者かにつけいられてしまい、そのまま唆されるままにいなくなっていたのだと思っていた。

 しかし、手紙に記されている文字を観る限り、黙っていなくなった理由は、唆されただけではないのかもしれないと考える。

 

 この文字に記されている内容からして、桜奈はかなり悩んでいたことがわかる。

 自身が目指していたものは、本当に自ら望んでいた道なのか……改めて文字に起こされているのを見ると、その疑問は否定できなかった。

 

 ─────……言われてみれば、オレは桜奈の本当のやりたいことを聞いたことがない。

 能力の高さから、ボスに相応しい才能を持っているとは思っていたが、それを押し付けるようなことをしていなかったか?

 

 手紙に記されていた文字により、リボーンはその表情を少しだけ暗くする。

 もしかしたら、彼女を追い詰める原因を生み出していたのは自分自身だったのではないかと、脳裏に疑問を浮かべながら。

 

「……探さない方がいいのか…………?」

 

 自分が彼女を追い詰めていたとしたら……生まれた疑問の末に出てきたのは、桜奈を探さない方がいいのではないかと言う迷いだった。

 このような手紙を残せるくらいなら、きっと桜奈は精神的にも肉体的にも傷つけられていない。

 そう思うと、探して行くのが正しいことなのかわからなくなってしまった。

 

 連れ戻さなくてはならないと言う気持ちと、このまま放置して様子を見た方がいいのではないかと言う気持ち……2つの気持ちの鬩ぎ合いに、リボーンは無言のままお茶を飲む。

 

 記されている男の子と言う言葉に、何者であるのかの疑問は残るが、それ以上に桜奈の……愛する女性の精神状態を尊重したいと思ったリボーンは、しばらくの間考えた末、一旦は桜奈の捜索を切り上げ、ディーノ達からの情報を待つことを選ぶのだった。

 

 

 …………………

 ………………………………

 ……………………………………………

 

 *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀

 

 ……………………………………………

 ………………………………

 …………………

 

 

 ……リボーンが桜奈の捜索の手を一旦やめた頃。

 骸達と共に行動を取っていた彼女は、ある場所に足を運んでいた。

 

「海だ〜。」

 

 それは、並盛からも黒曜ヘルシーランドからも離れた地域にある海沿いの別荘地。

 海が見える場所へと行こうと話し、電車に揺られて移動していたところ、まさかの人物に彼女達は出会していた。

 

「……あの、神谷さん。本当に使わせてもらっちゃってもいいんですか?」

 

「ええ、構いませんとも!いやはや、まさか季節外れの長期休暇を取っていたところ、沢田さんを見かけるとは思いもよりませんでしたね!あ、今は沢田さんではなく望月さん……でしたっけ?」

 

「そうですね。一応、そのように名乗ってます。」

 

「では、望月さんと言うことで!それで、ええっと……こちらの男性が六道さんで、そちらが城島さん、それと柿本さんですね。」

 

「ええ。まぁ、普段は偽名を名乗っておりますがね。」

 

「確か、霧島さんに柴崎さん、本原さんと言ってましたね!では、やはりそちらの方でお呼びしたほうがよろしい感じですか?」

 

「できることならば。お願いできますか?」

 

「もちろんですとも!お得意様のご友人のお願いであれば、しっかりと聞かせていただきますよ!」

 

 その人物とは、桜奈がいつも利用している天然石の専門店、水月輝石商店の店長である神谷幸弥だった。

 たまたま海が見える方へと移動していたところ、長期休暇を取っていた彼が、たどり着いた先にいたのだ。

 最初、知り合いである神谷と出会し、思わず桜奈は固まってしまい、逃げ出しそうになっていたが、彼女の様子や、荷物などを見て何かを察した神谷が、笑顔で秘密にするのでちょっとこっちに来ませんか?と告げてきたである。

 それを聞いた桜奈は逃げるのをやめ、そのまま神谷に連れられるカタチで、大きな屋敷に足を踏み込んだのだ。

 

「天然石の専門店を生業にしている割には、随分と豪勢な別荘に暮らしているようですね。」

 

「ああ、自分。天然石の店は趣味の一環だったんですよ!本来の仕事は宝石の仕入れや取引をする会社の社長をやっておりまして!その過程で出てきた宝石とは言い難いものを天然石に加工して売っている感じです。

 あと、昔から勘だけは優れておりましてね?それを応用して、暴落しない株や、ナンバーを自分で決めるタイプの宝くじなども必ず2等や1等を当てることができるものですから、それなりに金銭面は潤っておりまして!

 まぁ、その分税金はかなりかかりますが、それでも大金持ちと自称できる程にはあるんですよ。

 あ、使用人が何名か別荘の屋敷にはおりますが、全員口が硬いので、望月さんのことは誰1人として口外することはありませんので、安心してくださいねー。」

 

 いつもの調子で話しかけてくる神谷に、桜奈達は何度か瞬きをして顔を見合わせる。

 その表情には、目の前の彼は何者なんだ?という疑問が見え隠れしており、少しだけ困惑している様子だった。

 そんな彼らを気にすることなく、神谷は再び口を開く。

 

「何やら家出中のようではありますが、深く聞いたりは致しません。それだけ何か考えたいこと、見つけたいことがあるのだとわかりますからね。

 なので、まぁ、ゆっくりしていってください。場所が場所なんで、買い物が出来る場所は少しばかり遠くにありますので、少々不便なところはありますが、そこら辺は僕の使用人に必要なものがあれば頼んでいただければと!

 何かあれば遠慮なく言ってくださいね!皆さんがしっかりとやりたいことをこなせるように、僕は全力でお手伝いさせてもらいますので!」

 

 “いい休暇ライフを!”と告げて、自身の私室に向かっていく神谷。

 彼の背中を見送った桜奈達は、それぞれ自分達が使っていいと与えられた部屋に足を運ぶのだった。

 

 

 

 




 リボーン
 桜奈を探して一時的に力尽きたヒットマン。たまたま出会した下宿屋の管理人であるスミレに手を貸されることにより、下宿屋で休憩していたところ、スミレから桜奈の手紙を渡される。
 その手紙に綴られていた文字を見て、自身がやっていたことは正しいのかと言う疑問が少しだけ芽生える。

 桜奈
 骸達と共に海が見える場所に向かってみたら、神谷と出会し、そのまま彼の別荘に身を置くことになった迷いの転生者。
 神谷は何者なのか疑問に思うが、彼が口にした身内に黙っておくという言葉に嘘偽りはないとすぐに判断して別荘でお世話になることにした。

 六道 骸
 桜奈と一緒に海が見える地域に足を運んでみたら、彼女の知り合いがいた上、わずかながら桜奈が逃げようとしていた感情を感じ取り臨戦体勢を取っていたが、神谷が内緒にするからと言ってきたことを信じ、桜奈が彼についていったため、一旦矛を下げたが警戒はしている。
 連れてこられた別荘にかなり困惑したが、桜奈が滞在するならばと一緒に滞在することを選んだ。
 一緒の部屋じゃないことは少しだけ不満。

 犬&千種
 桜奈の逃げようとした一瞬の仕草や、骸が警戒して臨戦状態を見て一緒に臨戦体勢を取ったが、すぐに2人に続いて神谷の別荘で世話になることを了承する。
 何この屋敷、でけー…………。

 神谷 幸弥
 季節外れの長期休暇を取っていた輝石商店の店主……だが、実際は宝石関連の仕入れや貿易を行ってる会社の社長をしている上、勘が優れているため株も宝くじも大当たりを引きまくる高スペック店主。
 ……と、彼は言っているが、その真偽は不明であり、今回桜奈達と邂逅したのも、偶然ではなく、彼が先回りしていた結果である。
 桜奈が悩んでいることや、骸達と行動を取ってる理由を知っているため、決して秘密を口外しない使用人達もいる自身の別荘にて彼女達を匿った。


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