最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 バーベキューと花火を楽しみ、波の音のみが広がる静寂の中で、桜と藍は寄り添っていた。
 2人は互いに笑い合い、のんびりと話しながら、穏やかな時間を過ごす。
 その姿を微笑ましく月白は見守っていたが、近づきつつある2人の穏やかな時間の終わりを悟り、その場を後にするのだった。

 No side.


月夜に笑う藍桜

 バーベキューをしながらの花火を終え、静けさを取り戻した屋敷のベランダにて、桜奈と骸は寄り添いながら、広がる海を眺めていた。

 2人の視界に広がる景色は、どことなく桜奈が終わりを迎えた時に見ていた景色によく似ていたが、2人の気持ちは物悲しさではなく、穏やかな温もりに溢れていた。

 

「……バーベキューをしながら花火なんて、前世では考えつかなかったよ。

 何度か会社の付き合いで、花火大会が行われる海の近くにあったホテルのビアガーデンから食事をしながら過ごしたことはあったけど、あの時は楽しむ余裕なんて全くなかったからなぁ……。

 どちらかと言うと、記憶からはほとんど抜け落ちちゃった。クッソくだらない上司の自慢だの、クソ野郎のセクハラだの、うざい程の酒注げ命令しかなかったし。」

 

 不意に、夜の海を眺めながら、桜奈はポツリと過去の記憶に懐古する。

 彼女の横に立っていた骸は、一瞬だけ目を丸くしたあと、口元に笑みを浮かべて口を開いた。

 

「そんなもの忘れて正解ですよ。にしても桜奈って、割と素になると口が悪くなりますね。

 どれだけ前世でストレスを溜め込んでいたんですか?そうなるくらいなら、いっそのこと退職届を叩きつけるなりして離れてしまえばよかったでしょうに……。」

 

「はは。ごもっともな意見。あの時はすでに精神が結構疲れていたせいで、いろいろと放棄しちゃったことがあったからね……。

 でも、骸みたいに責任だなんだ全部投げ出しても構わないからってGOサイン出してくれる人がいたら、退職届を上司の禿頭に叩きつけて、こんな会社倒産して消えろ!!さっさとくたばれセクハラジジイ!!って怒鳴りつけてたかも。」

 

「クハハハ!!それはそれは、なかなか愉快で最高の切り捨て台詞ではありませんか!!」

 

「幻滅した?」

 

「するわけないでしょう?最高に人間らしくていいと思いますよ。だってあなたは操られるだけのお人形でも、いいように使われて壊されるだけのオモチャでも、心を持たないロボットでもないのですから、それくらい吐き捨ててもバチは当たりません。」

 

 キッパリと桜奈の憤りは真っ当なものであると告げる骸に、今度は桜奈が目を丸くする。

 しかし、自身の感情は真っ当であると肯定されたことが嬉しかったのか、その表情はすぐに笑みに消え、桜奈は隣にいる骸の体に自身の体を軽くくっつけるように近づいた。

 彼女がくっついたことにより、ほのかに感じた温もりに、骸も穏やかな笑を見せ、遠慮しなくてもいいと言うように、小さな肩を抱き寄せる。

 

「もし、あなたの前世の世界に生まれ落ちて、あなたを見つけて側にいられたら、僕は躊躇いなく憤りをぶつけてしまえと言ったでしょうね。

 なんなら、あなたを散々利用して、性格や人生を狂わせた連中に、あの手この手で地獄を見せていたと思います。」

 

「会社に未練はないし、潰してくれるなら潰してくれていいって思っていたかもしれないけど、そのあと仕事を探すの大変そうだね……」

 

「そうなったらそうなったで自営業をしてしまえばよかったかと。そうですね……お菓子屋さんとか桜奈には似合いそうですね。

 和菓子から洋菓子、様々な種類を取り扱うような、お菓子屋さんとかどうでしょう?

 店の中では飲食が出来るようにして、沢山の人に訪れてもらえるような、そんなお店を桜奈は作れそうです。」

 

「お菓子屋さんかぁ……。そう言えば、前世の方の小学生の時はお菓子屋さんになりたいとか作文に書いてた気がするよ。」

 

「こちらでは何になりたいと書いたんですか?」

 

「警察官。」

 

「……お菓子屋さんからどう変化したら警察官になるんです?」

 

 お菓子屋さんと言う可愛らしい内容から、警察官と言うお堅い内容に夢が変わっていたことに、思わず骸はツッコミを入れてしまう。

 確かに警察官も似合いそうですけど……と苦笑いをこぼしながら、なぜそこまで夢が変わってしまったのか問いかける。

 骸の問いかけを聞いた桜奈は、どこか遠い目をしながら、死んだ魚のような目を見せた。

 

「……いやぁ……今は落ち着いたけど、父さんがあまりにも帰らない上、母さんがかなり抜けてる人だったから………。」

 

「あー……言われてみれば、奈月としての記憶を見た時、かなりの天然を炸裂させる奈々さんの記憶が多々ありましたね……。

 桜奈のお父様……沢田家光でしたっけ?彼との幼い頃の記憶は、ほとんどなかったような気もします。

 最近はちらほらと記憶に出てくるようになったと言うか、桜奈が大爆発した記憶を堺に、かなり変化しているようでしたけど。」

 

 告げられた理由にどこか納得してしまう骸。

 それはそうだろう。桜奈に許されている範囲で、彼は奈月としての記憶も把握している。

 その中にはもちろん、かつてのマフィアランドの大騒動にて、革命を起こした聖女のごとく、もしくは敵対者を容赦なく退ける英雄のごとく戦場に立っていた彼女の記憶も混ざっていた。

 それは、必然的にマフィアランドの抗争をただのイベントとして丸め込まれ、楽しんでいた彼女の母親の姿の記憶も見ていることになる。

 桜奈が遠い目をしても、正直言って仕方ないのである……。

 

「……ギャン泣きしたのバレてーら………。」

 

「クフフフ……そんなに恥ずかしがる必要はありませんよ。あなたのあれは、前世のことも考えると、当然の反応であり、当然の権利です。」

 

 家光に対して大爆発した時のことをどこか恥ずかしげな様子を見せる桜奈に、骸は気にする程のものではないと告げて笑う。

 むしろ、音信不通の父親と言うのは、小鳥遊桜奈としての彼女の大きな地雷なのだから、あれくらい言っても当然であると、彼女の行いを肯定した。

 そのことに、桜奈は穏やかに笑い、海から流れてくる夜風に髪を遊ばせる。

 

「……当然の権利……か。どうして、昔のわたしはその権利を忘れちゃったのかな……。」

 

「それだけ追い詰められた……と言うことでしょうね。これに懲りたら、もう二度と、我慢などしないようにしなさい。

 我慢はあなたが追い詰められた原因の一つです。もちろん、時には必要かもしれませんが、抱えきれなくなる程、黙っているのはよろしくないですよ。

 だから、せめて僕にだけは教えてください。あなたが抱く本音や、あなたが望むことを。

 全て叶えることはできないかもしれませんが、出来る限りのことは沢山しますし、話を聞くことくらいはできますから。

 ……僕に、あなたの心と精神を守らせてください。もう二度と、その優しい温もりが壊れないように、精一杯尽くしますから。」

 

「……ありがとう、骸。」

 

 穏やかな波の音に耳を傾けて、緩やかな風を寄り添いながら浴びる2人は、互いに欠けているものを補うように、言葉を交わす。

 恋人同士がするように、大きさ違いの手を、硬く強く握りしめて。

 

 その姿を離れた位置から見つめていた神谷は、月明かりに照らされているかけた心を持つ者同士、不思議と惹かれあってしまう2人の少年少女を見つめながら、カメラのシャッターを静かに切る。

 切り取られた一時はまるで絵画のように鮮やかなものだった。

 

「……人は心の隙間を埋めるために、1番相性がいい心の持ち主と惹かれ合う。

 この2人はまさに、心の中に広がっていた大きな隙間を埋めるために、自身が持ち得ない感情を多く持ち合わせていた正反対の存在と出会い、その隙間を埋めるように繋がりを得た……。

 うん。君達はそれでいい。その繋がりがあるからこそ、君達はようやく互いの精神を守ることができるようになる。

 桜奈ちゃんの傷ついた心……それを、本当の意味で理解して、守ることができるのは……今のところ、彼女の精神に深く触れることができる君だけだ。

 だからこそ、君は桜奈ちゃんの心を守るために、必要な存在だったんだ。

 ……前世と今世……2つの精神が存在する桜奈ちゃんと、君が早くに出会ってくれてよかったよ、六道骸。

 これでようやく、桜奈ちゃんの精神は安定して、桜奈ちゃんの心と自我を守ることができる。」

 

 呟くように紡いだ言葉……それと同時に神谷は、『これまで観測することができた』桜奈の記録を思い返す。

 その記録に残る桜奈は、複数の悲劇を辿っていた。自我や精神が壊されてしまったことにより、発生してしまったものだった。

 もちろん……中には違う原因により発生した悲劇も存在していたが、大半が精神面の負担により発生した悲劇だった。

 

「……彼女に1番必要なのは、身を守るための力でもなく、多くの人を惹きつけるカリスマ性でもなく、多彩な才能でもない。精神を守るための温もりと、優しく心を抱きしめてあげることができる存在だ。

 いずれは他の人間にも、その役割を担ってもらいたいところだけど、今は君だけが頼りなんだよ。」

 

 視界に映る2人の少年少女達が、何かを話してベランダから退散していく。

 きっと、部屋の中でゆっくりと過ごすつもりなのだろう。その様子を穏やかに見守っていた神谷は、優しく微笑む。

 しかし、不意に、空に浮かぶ月を見上げては、服の中に忍ばせていた、文字が記された布により雁字搦めになっていた銀色の何を取り出しては、静かにその布を少しだけ剥がす。

 彼が胸元にそれを持っていき、静かに目を閉じれば、銀色の何かは彼に一つの映像を見せる。

 

 それは、遠く離れたイタリアの地にて、ぶつかる2つの勢力のものだった。

 見えたその記録の中には、奈月としての彼女の父と、彼女にとっての兄弟子の青年……そして、かつて暗闇の中に閉じ込められ、今も苦しんでいる1人の青年の姿が映っていた。

 

「………そう。そろそろぶつかってしまうんだね、彼らは。ありがとう、教えてくれて。」

 

 手にしていた何かにお礼を告げ、再び布を巻き直した神谷は、その場から静かに移動する。

 そして、使用人に少し出掛けてくると伝え、一瞬にしてその場から姿を消した。

 

 

 

「さく……いえ……奈月はもうお菓子屋さんは目指さないのですか?」

 

「ん〜?そうだなぁ……警察官にはもうなれないだろうから、一つの進路として考えるのはありかもね。

 まぁ……まずは今の立場を受け入れるかどうかを考えないといけないけど、もし、受け入れない選択を選んだとしたら、製菓学校で正式に学ぶのもいいかも……。」

 

「もし、本当にそのような進路を歩んだ時は、僕もついていきますね。奈月が作るお菓子が食べたい……と言うのもありますが、何より、奈月と共に、ゆっくりと穏やかな生活を送りたいので。」

 

「何?わたしと骸でお菓子屋さんするの?」

 

「ええ。犬と千種も従業員として参加させて、そんな道を歩くのもいいかと思いまして。

 奈月だけで仕事をする必要はないですしね。あなたさえ嫌でなければ、どうですか?そんな生活。」

 

「悪くないかもしれないけど……何?きみはわたしに一生ついてくるつもりでいるの?」

 

「もちろんそのつもりです。ここだけの話、僕はあなたが緩やかな終わりを迎えることができるまで、ずっと側にいたいと思ってるんですよ。

 あなたと一生を共にする……それが今の僕の夢です。あなたが傷つかないように、あなたが悲しまないように、もう二度と寂しい思いをさせないように、その傍らで穏やかに暮らしたいんです。

 これもまた一つ考えたことですが、あなたの名前の由来となっている桜の花が沢山咲いている場所で、のんびりと生活してみたいんですよ。

 その時、隣にはもちろんあなたがいて、時には子供とあなたを取り合いながら、暖かな毎日を過ごしてみたいです。」

 

「……それ、完全にプロポーズだよ。」

 

「おや、言ってませんでした?僕はあなたとお付き合いしたいと思っていますが、それは、一生を共にする前提で、交際を申し込みたいんですよ。

 元からあなたの一生の全てを狙ってます。誰にも譲ったりなんてしてやりませんし、あなたのことも逃すつもりはないですよ。」

 

「……恥ずかしげもなくよく言えるね……全く………。」

 

 

 

 屋敷内から家主がいなくなったことに気づいていない桜奈と骸は、2人でソファーに隣り合って座り、いつか来るかもしれない未来の可能性の一つを話しながら、互いに笑い合っていた……。

 

 

 

 




 沢田 奈月(小鳥遊 桜奈)
 骸と将来にある可能性の一つを穏やかに話しながら過ごしていた転生者。
 恥ずかしげも無くプロポーズの真似事をしてきた骸に呆れながらも、彼とお菓子屋さんを開いてのんびり過ごす自身の姿を少しだけ思い描いてしまった。

 六道 骸
 元から結婚すること前提で交際を申し込む気満々だった術士の少年。
 恥ずかしげもなく……と顔を赤らめながらも、そんな未来もあるのかと考えてしまった彼女の思考は把握済。

 神谷 幸弥
 桜奈の行末、分岐を全て把握している謎多き月白の青年。
 どうやら、彼が手にしている銀色の何かを使用することにより、世界の情勢を把握することができる様子がある。少し出かけると言って屋敷を離れた。
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