最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
桜の花と藍色は、屋敷の持ち主の悲鳴で目を覚ます。
「ぎゃあああああああ!!!?」
「「!!?」」
屋敷中に響き渡る悲鳴。急に聞こえてきた叫び声により意識が覚醒する。
何ごとかと思い、骸と一緒にベッドから飛び起きて、2人してキョロキョロと見渡す。
「……は?折角気持ち良く寝ていたのに、急な叫び声で最悪なのですが?」
「今の叫び声、明らかに神谷さんだったよね?」
「ええ。急になんなんですかあの人は。」
困惑を抱くわたしと、苛立ちを抱く骸。別々の感情を抱きながらも、顔を見合わせたわたし達は、叫び声が聞こえてきた方へと足を運ぶ。
先程の声からして、神谷さんが普段から使ってる自室の方からだとは思うけど、いったい何があったのか……。
「ちょっと神谷さん!!朝っぱらから何賑やかに……うっわ……」
「ええ……?何このぴよぴよパラダイス……?」
急いで神谷さんの自室へと足を運んでみると、彼は部屋にあるベランダに出て、ワナワナと震えていた。
そこにいるのは大量の小鳥達で、朝から賑やかに鳴いている。
「なんなんだよこれ!!なんで僕の部屋のベランダに大量の小鳥がいるんだよ!?
つかどこの小鳥だこいつら!!明らかにここら辺の地域の小鳥じゃねーんだけど!?」
ギャースッとベランダの小鳥を怒鳴りつける神谷さん。
かなり荒れていると思いながら、部屋の中にお邪魔すると、彼の部屋にあるテーブルの上に、一枚のメモ紙を目撃する。
なんだこれ?と思いながら、メモ紙に目を向けてみると、丁寧な文字で文章が記されていた。
「……あの〜……神谷さん?」
「ハッ!?え、ああ……す、すみません、沢田さん!六道さん!自分、かなりうるさかったですよね。どうかなさいましたか?」
荒れていた神谷さんに声をかけると、神谷さんは申し訳なさそうな表情をしながら、わたしと骸に目を向ける。
かなりの変わり様に、思わず骸と顔を見合わせるが、すぐに意識をメモ紙に向けては、それを片手に神谷さんに近寄った。
「テーブルの上にメモ紙が置かれていたんですけど、神谷さん宛てじゃないでしょうか?」
「はい?メモ紙ですか……?」
手にしたメモ紙を神谷さんに手渡せば、彼はすぐにわたしの手元からそれを受け取り、記されている文章に目を通す。
程なくしてそのメモ紙はぐしゃりと神谷さんに握り潰され、ワナワナと肩を振るわせ始める。
それに気づいた骸がわたしの方に近寄っては、肩を抱き、神谷さんからススス……と距離を取る。
同時に神谷さんは、手元にあったメモ紙をビリビリに破き始めた。
「なぁにが遠征先に行ったらついてきちゃったからお世話と里親探しよろしくだ!!
めんどくさいもの持ち込んでおいたから押し付けとくの間違いだろうが─────!!」
ビリビリに破いたメモ紙をゴミ箱に投げつけて、肩で息を切らす神谷さん。
その様子を無言で見つめていると、次第に彼は落ち着きを取り戻し……
「……沢田さん。六道さん。この小鳥達引き取りません?可愛らしいと思うんですけど……」
「「いやいやいやいや……ご乱心したあと急に落ち着いて小鳥をすすめないでくださいよ。怖いです。」」
にこやかに笑いながら、わたしと骸に小鳥を引き取らないかと言ってきた。
あまりの変わり身の早さに、わたしと骸は思わず引きながら怖いと神谷さんに言ってしまった。
わたし達の反応は、神谷さんも予測していたのか、デスヨネー……と片言で口にしたあと、その場に項垂れた。
「えっと……メモ紙の送り主、誰だったんですか……?」
とりあえず空気を変えようと思い、先程のメッセージの送り主を問いかける。
様子からして、神谷さんの知り合いのようだったけど……
「あー……まぁ、自分の片割れみたいなもんです。別に兄弟というわけではないんですが、似たようなもんでして。
いつも急に現れたかと思えば、いろんなことを押しつけてくると言いますか……。
いや、まぁ、別に問題はないんですけどね?毎回知らぬ間にこう言う厄介ごとを置いていなくなるんで、頭が痛くなります……。」
「な、なるほど……?」
どうやら、腐れ縁にも似たような誰かから物事を押し付けられてしまったようだ。
今回の厄介ごとは、ベランダにいる大量の小鳥達……。なんか丸々とした黄色の羽毛の子達である。
「……おや?よく見たらこの鳥は………」
「?骸、何か知ってるの?」
「ええ、まぁ。」
そう言って骸はベランダに足を運ぶ。
すると、ベランダに集まっていた小鳥の一羽が彼に気づいては、パタパタと彼に飛んで近寄った。
「ムクロ!ムクロ!ヤラレタ!ヤラレタ!バーズヤラレタ!」
「「しゃ、喋ったぁ!?」」
彼の肩に移動した小鳥が、カタコトで言葉を話すのを見て驚いていると、神谷さんも同じように驚く様子を見せていた。
まさかの出来事に困惑する。インコやオウムが言葉を発することができるのは知ってるけど、こんな小鳥でも話せるようになるのか……。
「この小鳥は僕の知り合いが飼っていた小鳥です。どうやら、その知り合いが何かしら不足の自体に陥り、小鳥達だけが残ってしまったようですね。」
「その知り合いって?」
「まぁ、奈月は会わなくていい変態ですよ。人が驚く姿を見るのが好きで、その表情を想像するだけで鼻血が出るとか言う妙な加虐癖を持ち合わせている男でして。
驚く表情を見るためならば、対象の髪を燃やすことも、硫酸をかけることも厭わないんですよ。
その上、殺人鬼の双子を従えているので、その2人を利用して虐殺することも平然とやってのけます。」
「「うっわ……」」
「引きたくなる気持ちもわかります。まぁ、手際はそれなりにいいので利用価値はありましたから、度々取引や依頼をこなしてもらったこともありますが、それ以外の価値はないんですよね。」
「ええ……?いや、まぁ、そうなんだろうけど……よくそんな変態とつるめたね……?」
「正直言って僕も不思議です。」
どこか疲れた様子で小鳥達の飼い主だった存在の話をする骸に、苦笑いをこぼす。
利用できるものは利用するタイプだから、一応ツテとして手札には入れていたらしいが、理解まではできなかったようだ。
うん。理解しなくていいレベルの変態だから、そのまま理解しなくてもいいと思う。
「ん?」
「どうかなさいましたか、奈月?」
そんな人に飼われてた小鳥達を不憫に思いながら、小鳥達の群れに目を向けていると、一際目立つ色合いの小鳥が混ざっていることに気づく。
わたしの視線に気づいた小鳥は、愛らしい表情を見せながら、わたしの方に目を向けてきた。
「……おいで。」
目が合った小鳥に声をかけ、静かに手のひらを広げてみると、その小鳥はすぐにわたしの手のひらの上に乗っかった。
……わたしの手のひらに乗った小鳥は、他の小鳥達とは違い、真っ白な羽毛を持っている。
身形としては他の小鳥達と変わらないようだけど、羽毛だけが真っ白……瞳の色は赤ではなく黒のため、おそらくだが、メラニン色素が生成されなくて白くなったアルビノではなく、白変種と呼ばれる別の理由で白くなった特殊な個体だろう。
「真っ白な羽毛だね。白変種の子かな?」
「♪」
「……フフ……キミは懐っこいんだね。来てくれるとは思わなかったよ。」
「♪」
「ん。なんだかご機嫌だね。わたしに呼ばれて嬉しかったの?」
「♪」
「……そっか。嬉しかったんだね。」
綺麗な囀りを響かせながら、わたしの手のひらに座り込む白変種の小鳥。
その頭を優しく撫でてみれば、小鳥はすごく嬉しそうな様子を見せていた。
……他の小鳥達からすごく視線を感じる気がするけど、気のせいだよね?
「……んー……なんだか真っ白まんまるで見覚えのある美味しそうなフォルム……。よし、キミのことはユキミって呼ぼうかな。
エナガみたいに黒い羽毛があったら豆大福になってたかもしれない。」
「?」
「不思議そうにしてるね。簡単に言うと、わたしと一緒に暮らす?って聞きたかったんだ。
もし暮らしてくれるなら、キミのことは最期までちゃんとお世話するよ。」
この子、野生じゃ絶対生き残れないよな……と少しだけ考え込んだわたしは、白変種の小鳥……ユキミに、一緒に暮らすかと声をかける。
すると、わたしの言葉を理解したのか、ユキミは嬉しそうに囀りを響かせた。
「わたしの名前は奈月。これからよろしくね、ユキミ。」
「ナツキ?」
「ん。わたしの名前が奈月。」
「ナツキ!」
……すごいなこの子。わたしの名前、もう口にしてる。なんだろう品種改良された子達なんだろうか?
「ズルイ!」
「ズルイ!」
「ズルイ!」
「シロダケズルイ!」
なんて考えていると、他の小鳥達がユキミに向かってずるいと言い出した。
わたしに引き取られたのがそんなに羨ましかったんだろうか。というか、感情めっちゃあるなこの子ら。
「……めちゃくちゃ話すじゃん、この子ら。」
「小鳥を飼い慣らして、大道芸と小鳥の譲渡をした方がよっぽどマシな人間になっていたかもしれませんね、バーズは……」
「バーズって言うんだ。変な加虐癖持ってた小鳥の元飼い主。」
と言うか、シロだけずるいって言った子いたけど、この子シロって呼ばれてたのかな。
まぁ、確かに真っ白だし、合ってる名前だけどさ。まぁ、飼い主はわたしに変わるわけだし、名前を一新しても別に問題はないか。
「……他の大量の小鳥どうしよう………?」
「誰かに譲渡するしかないでしょうねぇ……。沢田さん。小鳥とか好きそうなお友達とかいらっしゃいません?」
「一応1人いますが、引き取るかどうかはその人次第と言いますか……。」
「そうですか……」
そんなことを思いながら、屋敷のベランダに群がっている小鳥達をどうするか神谷さんと話し、首を傾げる。
んー……恭弥さん、小さいものとか可愛いものが結構好きみたいだし、今度聞いてみようかな。
「……………。」
「……骸?」
なんて、小動物好きの彼のことを脳裏に浮かべていると、骸が小鳥達を見つめながら表情を曇らせる。
わたしの前世の話を聞いて、そう言う表情をすることは度々あったけど、今回みたいなのはあまりなかった気がする。
「どうかしたの?」
「……いいえ。なんでもありません。ただ、そろそろ色々と考えないといけないかと思っただけですよ。」
不思議に思い、骸に声をかけると、彼ははぐらかすように言ってきた。
感じ取れた感情は、大きな落胆と強い寂しさ。わずかに何かを決意したような、そんな感情も感じ取れたが、前者の2つの感情の方がとても強かった。
それらによりわたしも少しだけ悟る。夢の終わりが近いのだと。
「……そっか。」
短い言葉の中に込めた思い。きっと骸は気づいている。
その証拠に繋がりを通して、先ほどの感情とは全く違う強い願いが感じ取れた。
“このままずっと一緒にいたい。離れ離れになりたくない”……彼から必ず感じ取れる、縋り付くような感情だ。
その願いを聞き、わたしは思わず表情を曇らせる。
本当はそれに答えてあげたい。わたしだって離れたくない……一緒に生きたいと差し伸べられた手を、できることなら受け入れたいし、このまま遠くへ行きたいとも思う。
だけど、それじゃあダメだと言う思いもあって、それに応えてあげられない。
きっとそれに応えてしまったら、本当にわたしは骸なしでは生きることができなくなってしまうから。
ずっと一緒にいる方法があるのであれば、それに手を伸ばすことは厭わない。
でも、今のわたし達にその方法は見つかってない。骸は脱獄者であり誘拐の罪も重なって、対するわたしは誘拐されたマフィアのボス候補……。
どちらが不利であるかなんて、考えるまでもなく、どうすることもできないのが現状だ。
「……あーあ……本当、なんでわたし達は厄介な立場で生まれ落ちちゃったかな。」
もはやそれしか言うことができず、文句を言うように言葉を紡ぐ。
骸も同じ気持ちなのか、無言でその場に俯いたのち、強く拳を握りしめた。
「……奈月。」
「ん〜?」
「……今日の夜、僕の全てを教えます。だから、お時間をいただけますか?」
真剣な声音と表情で、今日の夜に話したいことがあると口にした骸に、わたしは何度か瞬きをする。
しかし、彼から伝わってくる強い覚悟を感じ取り、それを承諾するように頷いた。
わたしが承諾したことを見て、骸はどことなく辛そうな笑みを浮かべる。
ずっと避けていた骸の過去……きっとわたしの精神面のことを考えて、本当は黙っていようと思っていたのだろう。
でも、こればかりは避けられない運命でもあるとわたしは思っていた。
「……きみの過去や抱えている闇……全部わたしに教えてよ。大丈夫。どれだけ暗くて辛いものでも、わたしは全部受け止めるから。」
“きみが、わたしの過去を受け止めてくれたように”……。
そっと最後は感情だけで伝え、小さく骸に笑いかける。わたしの感情を感じ取った骸は、一瞬だけ驚いたような表情を見せるが、すぐに小さく笑みを浮かべて、わたしの言葉に頷いた。
沢田 奈月(小鳥遊 桜奈)
骸の過去や闇を受け止める覚悟ができている転生者たる10代目。
どれだけ暗くて辛い話であろうとも、彼の感情ごと受け止めるつもりでいる。
六道 骸
バーズ達がやられたことを知り、タイムリミットが近いことを悟った脱獄者たる術士。
奈月と離れたくない……このまま共に生きていたいと望むが、奈月が頷かないことも理解しているため、願うだけに止まった。
夢の終わりが近いため、自身の過去を奈月に伝えることを決意する。
神谷 幸弥
小鳥の大群を押し付けられてしまい、発狂していた多才な青年。
奈月と骸の様子を見て、とうとうこの時が来たかと見守りに徹する。
ユキミ
奈月に引き取られた白変種の小鳥。元バーズの小鳥。
頭がいいのですぐに奈月の名前を覚えた。