最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

210 / 385
 桜の花を探すため、動き出した10代目ファミリー。
 黄色のアルコバレーノが桜と向き合う決意を固め、明日に備えて動こうとしている頃、彼らが向かおうとしている海の屋敷では、もう1組、向き合うために動いている2人がいた。


 side. MUKURO
 ↓
 side. SAKUNA.


向き合う刻 -トキ- はすぐそこに

 時は夕刻を回り、次第に空は黄昏から宵闇へと変化する頃。

 

「骸様。お呼びですか?」

 

「話ってなんれすか?」

 

 桜奈が屋敷にある浴場で過ごしている間、僕はこれまでずっとついてきた犬と千種の2人に、話があると呼び出した。

 僕の指示を聞いた2人は、すぐに呼びかけに応じ、僕の元へとやってくる。

 

「犬。千種。待っていましたよ。」

 

 部屋に入ってきた2人の声に、静かに反応を示す。

 僕の声音から、要件が真剣なものであることを悟ったのか、2人は一旦顔を見合わせた後、僕の方へと近寄ってきた。

 

「まぁ、とりあえず座ってください。」

 

 部屋にあるソファーに腰をかけるように指示を出せば、2人はすぐにソファーに座った。

 彼らと向き合うように、こちらも反対側に腰をかけ、屋敷に常在している神谷幸弥の使用人が淹れてくれた紅茶を一口飲み、僕は静かに口を開く。

 

「2人を呼んだ理由は、僕達の過去……それを、奈月に話すことを伝えるためです。」

 

「「!?」」

 

 僕の言葉を聞き、2人は驚いたように目を見開く。当然だろう。2人も桜奈のことを気に入っている。

 彼女の優しさや温もりに触れ、普通の子供のように自由気ままに遊んで学んで、疲れたら暖かい寝床で眠り、翌日になれば、また彼女に笑顔で出迎えられる……かつての僕らには存在し得なかった陽だまりのように暖かく、光に溢れた存在に、僕らの負の感情が積み重なった過去を話すなど、なかなかに心苦しいだろう。

 僕も同じだ。桜奈のことを気に入っている……いや、気に入ってるなどという言葉などでは収まりきらないほどに、僕は彼女を愛しているのだから。

 だからこそ、本当は僕も話したくない……。あの記憶を彼女に教えるなど、あまりにも辛く、避けたいことだった。

 このまま彼女が、僕達と共にいると言ってくれたなら、この話はしなくて済んだかもしれないのに、彼女はそれを選ばない。

 

「……元から、最終的には話すつもりでした。彼女がマフィアとの決別に踏ん切りができなければ、マフィアになると言うことは、僕らのような存在をその目で見て、向き合うことになると言うことですからね。

 あのように悍ましく、地獄のような現状と向き合うなど、彼女の精神が持つはずがありません。

 あんなにも、優しさと愛情に溢れた女性に、悪意が蔓延るマフィアの世界で生きろなど、酷である以外の何ものでもない。

 だからこそ、一緒に逃げようと誘っていたのですが、時間切れのようですから……。」

 

「「…………。」」

 

 時間切れと言う言葉に、犬と千種が静かに俯く。

 彼らも随分と変わったものだ。気に入った女性ができると言うのももちろんのことだが、その女性が傷つくのを恐れるようになったのだから。

 憎しみだけではなく、愛情を知り、温もりを知り、それを返す方法を知る……桜奈と出会ったことで、この場にいる全員が、憎しみで動く復讐の怪物ではなく、ただの人間に戻るきっかけを得るなど誰が予想できただろうか。

 

「……本当に、話さなきゃならないんれすか……?」

 

「ええ。ランチア達が捕縛されてしまった以上、近々ボンゴレファミリーがやってくるでしょうから。

 そうなったら、間違いなく奈月は向こう側に連れ戻されるでしょう。だから、彼女にはマフィアになることがどのようなことであるかを把握してもらわなくてはなりません。

 そうすることで、彼女がマフィアから距離を取ろうとする可能性はあります。」

 

 ……正直なことを言うと、マフィアになると言うことがどのようなものと相対しなくてはならないのか教えたところで、彼女がマフィアから距離を取るという可能性は低い。

 それでも……そうだとしても、少しでも考えを改めて、僕の手を取ってくれたらと、望まずにはいられない。

 自身に言い聞かせるように、きっとマフィアの闇を知ってくれたら、考えを改めてくれると、願望でしかないことを内心で考えていると、千種が静かに口を開いた。

 

「……もし、オレ達の過去を知ったとして、それでも、奈月がマフィアのボスになる道を歩くと言ったら、骸様はどうするんですか………?」

 

「…………。」

 

 その問いかけに、僕は無言を返す。その可能性を、考えていないわけではなかった。

 もし……もしも、桜奈が、マフィアの道を歩くのをやめないと言ったら僕は彼女に刃を向けなくてはならないのか……?

 そこまで考えて、僕は不可能だとすぐに否定の言葉を浮かべる。どれだけマフィアが憎いとしても、どれだけ壊してしまいたいと思っていても、桜奈にだけは、刃を向けたくない。

 

 ……僕の脳裏に、かつての桜奈の終わりが過ぎる。

 幼い頃に母親には先立たれ、それを境に父親から愛情を注がれなくなり、周りの望みを聞き、幸せを叶えるために奔走することで枯渇していた愛情を補っていたにも関わらず、結局はまともに愛情を返されることはなく、むしろ花びらを無理矢理引きちぎられ、搾取され続けた桜の木。

 どれだけ愛情を注いでくれることがなくなったとしても、楔にはなっていた父親が、自ら命を絶ってしまったことにより、かろうじて維持されていたその精神は崩壊を迎え、最後は海へと散ってしまった桜の花。

 全てに絶望し、全てに諦観し、涙を流しながら自らの命を切り捨てたにも関わらず、穏やかに笑って、自身の人生に終止符を打ち込んだ春のような女性の姿は、今もなお記憶に焼きついていた。

 

 二度にわたって肉親の死を目の当たりにしていても、最期まで誰かのために生き、自我を殺し続けていた彼女に、今世になってようやく自我を取り戻し、幸せそうに笑えている彼女に、どうして手をかけなくてはならないのか。

 そんなこと僕にはできない。すでに僕にとって、何よりも大切な心の拠り所となっている彼女の命を、自らの手で壊すなどできるはずがない。利用することもできるはずがない。

 もしも、彼女が壊れてしまうようなことがあったら、僕は……。

 

 そこまで考えて、僕はあることを思い出す。桜奈と共に過ごしている間、ずっと頭の片隅にあったものを。

 僕達の過去を……向き合わなくてはならなくなるであろうマフィアの闇を伝えてもなお、彼女がマフィアのボスになることを選んだ時を想定して、考えていた一つの答えを。

 

「……もしも奈月が、それでもマフィアの道を歩むと言うのであれば、僕は彼女にのみ与するつもりです。

 他のマフィアには従いませんが、彼女にだけは付き従うことを、ずっと前から考えていました。

 無論、マフィアは憎悪の対象です。それは決して変わりません。ですが、奈月のためだけなら、動いてもいいと思えるんですよ。」

 

 素直な気持ちである答えを口にすると、犬と千種が驚いたような様子を見せる。

 マフィアに対して、強い憎悪を持ち合わせている僕が、奈月にだけなら従うと言ったことが意外だったのだろう。

 だが、それは僕の本音だった。彼女がマフィアの闇を知ろうとも、それでもマフィアの道を歩くと言うのであれば、彼女にだけ付き従う……それは、別に苦でも何でもないのである。

 

「まぁ、結局のところそれは、最終手段に過ぎません。ですが、僕はもはや、彼女から離れることができなくなる程に囚われているんです。

 この居心地の良さと温もりと、彼女に対する愛情は、今の僕が何よりも優先したいものですから。」

 

 自身の胸元に手を添えて、ハッキリとした声音で告げれば、2人は一度顔を見合わせる。

 しかし、すぐに小さく頷いたあと、僕の方をまっすぐと見据え、

 

「だったら、オレは、骸さんと奈月にだけは協力するびょん。」

 

「オレも、犬と同じ意見です。確かにマフィアには沢山の恨みがありますが、奈月はそれを向けるべき対象じゃないと思ってるので。」

 

「奈月みたいに、オレ達の全部を受け止めようとしてる奴なんて見たことないびょん。

 それに、飯とか作ってくれたお礼とかもしたいし、奈月は傷つけたくないれす……」

 

 自分達の思いを吐き出した。2人の意見に、僕はすぐに同意する。

 2人の言葉の通り、桜奈はすでに、僕達のことを全て受け止めることを決めている。

 それならば、僕達がやることはただ一つ、受け止めようとしてくれる彼女の優しさと温もりに、少しでも多く応えるだけである。

 

「……では、奈月に全てを話しても構いませんね?まぁ、僕の場合は話すよりは見せる方が手っ取り早いので、僕だけで奈月に教えます。

 できることならば、僕達の憎悪まで伝えたくはないのですが、きっと彼女のことです。本当に、全てを受け止めようとするのでしょうね。」

 

 僕の意見に、犬と千種は静かに頷いた。

 これまで半月以上、共に彼女と過ごしていた分、彼女の性格はすでに把握できている。

 それに……僕は彼女の過去を見て、それを受け止め、その辛さや寂しさ、絶望を抱きしめた側の人間だ。

 きっと彼女は、それに対するお礼として、同じく全てを受け止めて、抱きしめようとしてくるだろう。

 それがどれだけ暗く、尚且つ忌々しいものであろうとも……。

 

 ─────……ああ……ですが……考え方を変えれば、ようやく彼女に僕を受け入れてもらえる……とも取れますかね……?

 

 少しだけ泥のような独占欲と、受け入れてもらえるという感情が溢れ、それをリセットするように、僕は冷めた紅茶に口をつける。

 早く風呂から出てこないだろうかと、逸る気持ちを感じながら。

 

 

 

 …………………

 ………………………………

 ……………………………………………

 

 *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀

 

 ……………………………………………

 ………………………………

 …………………

 

 

 ──── side change. SAKUNA ────

 

 

 神谷さんの屋敷にある浴場。

 すでに体も髪も洗い、湯船に浸かっていたわたしは、無言で天井を見つめていた。

 考えているのは骸達のこと。朝方、僕の全てを教えると言われ、ずっと思考は彼ら一色に占められていた。

 

「……骸達の過去……か。」

 

 ポツリと呟いた声は浴室に響くのみ。反響する自身の声に耳を傾けながら、静かに目を閉じる。

 

 ……どれだけ笑っていようとも、どれだけ今を楽しんでいようとも、彼らから感じ取れた仄暗い感情。

 憎悪、怒り、絶望、悲しみ……マイナスの感情が集まってできた暗闇のような気配は、きっとマフィアに向けれているものだとわたしは把握していた。

 碌でもない幼少期……温もりなど感じることができなかった幼少期だと、彼らは度々言っていた。

 与えられる食事は最低限。おかれた環境は最悪なもの。断片的に拾い上げることができた条件から、彼らは幼い頃からマフィアに苦しめられ、酷い仕打ちを受けていたのだと予測をつけることができる。

 そして、これはハズレじゃない。わたしの直感がそう告げている。

 

「……彼らの様子からして、きっと地獄のような世界で生きていたんだろうね。」

 

「ナツキ……?ドシタノ……?」

 

「ん?ああ……骸達のことを考えていたんだ。きっと、最悪な過去を生きていたんだろうなってね……」

 

「ムクロ?」

 

「うん。骸。」

 

「ソッカ。」

 

 小さく呟くように言葉を紡いだら、なぜか一緒に浴室に入っているユキミに話しかけられる。

 この子、なぜかめちゃくちゃ話せるんだよね。しかも、わたしの言葉に正確に反応して、それに対する言葉を返してくる。

 頭良過ぎでしょ。何?この子、前世が人だったとか、実はAIを詰んだ小鳥型のアンドロイドだったりするの?

 

「ナツキ、フアン?」

 

「どこでそんな言葉覚えてくるの君。」

 

「カミヤガイロイロイッテクル!フアンヲカンジル、クラクナル!ゲンキモナクナル、キイテル!フアンハキガカリ、オチツカナイ!」

 

「あの人何教えてるんだ……」

 

 パタパタと小さな翼を動かしながら、どこで言葉を覚えてくるのか言ってくるユキミに少しだけ呆れてしまう。

 マジで神谷さん、うちのユキミに何やってるんだ……。頭がいいからすぐに覚えてくるし……。

 まぁ、少しだけ不安を感じていたことは間違いないんだけどね。

 

「……例え骸達の過去を知っても、彼らを嫌いになることはないって断言できるよ。

 でも、やっぱり不安はどこかにあって、少しだけ怖いとすら思ってるんだよ。」

 

「コワイ?ジブンニヨクナイコトオキル、チカヅキタクナイ……?」

 

「……神谷さんはユキミを辞書にでもする気かな?」

 

 次々と言葉を口にするユキミが、だんだん言葉を話す辞書のように見えてきて、思わずわたしは苦笑いをしてしまった。

 神谷さん……なんでユキミに大量の言葉教えてんの……。

 

「ダイジョブ!ナツキナラダイジョブ!」

 

「え?」

 

 そんなことを思っていると、ユキミが再び言葉を話す。

 小鳥だから、表情の変化はよくわからないけど、声音から、本当にわたしを元気づけようとしていることが不思議とわかり、何度か瞬き繰り返す。

 

「ナツキ!イツモドウリ!ソレナラダイジョブコワクナイ!イツモノナツキデダイジョーブ!」

 

 意図的なのか偶然か、ハッキリとした声音でそう言ってくるユキミをわたしは無言で見つめる。

 でも、どうしてかその声に元気づけられてしまい、小さく笑ってしまった。

 考えて言ってるのかどうかわからないけど、その言葉はどこか頼もしい。

 

「そっか。いつものわたしで大丈夫なんだ。」

 

「ウン!ムクロモナツキモイツモドウリ!コワクナイ、コワクナイ!」

 

「ん。ありがとう、ユキミ。なんだか元気が出てきたよ。」

 

 人差し指でユキミの頭を優しく撫でれば、ユキミはとても気持ちよさそうに目を細め、可愛らしい囀りを響かせる。

 その声に耳を傾けながら、ゆっくりと湯船に浸かり、今日の夜、明かされる骸達の過去を想う。

 しかし、不意に目の前で言葉を話すユキミに、わたしはある疑問を脳裏に浮かべた。

 

「……ところでユキミ。君って性別どっち?」

 

「メスー!」

 

「あ、女の子だったのね。」

 

「ユキミハメス!ニカイクライアツアツノジキミタ!」

 

「メスで2歳か。いや、2歳でこれって頭良過ぎじゃないかな君?て言うか、小鳥ってこんなに頭良かったっけ……?」

 

「ソウカナ?」

 

「そうだよ。」

 

「ソウカモ!」

 

 ダメだ。この子、謎の小鳥過ぎる。どうなってるんだこの子……?

 

「ナツキ!ナツキ!ユキミモミズアビシタイ!」

 

「ん。ちょっと待ってね。神谷さんから小鳥に使っていいよって言ってもらった桶にお水張るから。……これくらい?」

 

「ン〜……モウチョット!」

 

「じゃあ、これくらいかな?」

 

「ウン!ユキミモオフロ!」

 

 とりあえず桶に水を張り、ユキミの前に差し出せば、ユキミはぴょんこと桶の中に飛び込み、そのまま水浴びをし始めた。

 そう言えば鳥って水浴びをすることで衛生を保つんだっけ……?神谷さんにパソコン貸してもらえそうなら、小鳥の飼い方調べとこうかな……。

 

 

 元気に水浴びをするユキミを見ながら、わたしは浴槽の縁に軽く寄りかかる。

 彼と向き合うまで、あと少し………。

 

 

 

 




 小鳥遊 桜奈(沢田 奈月)
 骸と向き合うことになる転生者な10代目。
 思った以上に話しまくる小鳥のユキミに、自身の不安と恐怖を打ち明けたら、めちゃくちゃ元気付けられた。
 君、人間の転生体かAIだったりする?

 ユキミ
 ユキミハオンナノコ!アツアツノジキニカイミタ!ナツキトムクロナラダイジョブダイジョブ!
 テンセータイトカエーアイッテナニ?ユキミワカンナイ!

 六道 骸
 全てを桜奈に明かすことを決意した脱獄囚の少年。
 これを聞いて桜奈がマフィアから離れてくれたらと思っているが、上手くいかないだろうと諦めている節がある。
 もしも、桜奈がマフィアの闇を知り、自身の憎しみを知り、それでも尚、マフィアの道を歩むと言うのであれば、彼女にのみ与することを考えている。
 全ては彼女の心を……その精神を守るために。
 彼女からすでに離れることができない程に堕ちている自覚がある。


 城島犬&柿本千種
 骸から自分達の過去を奈月に伝えることを教えられた上、もしも彼女がマフィアの道を歩むのをやめないというのであれば、彼女のみに与することも厭わないと告げられ、かなり驚いたが、骸が本気であることをすぐに理解して、その時は自分達も奈月にのみ協力することを決意した脱獄囚。
 自分達を真っ直ぐと見て、対等に接し、向き合あって全てを受け止めようとしてくれる奈月を、骸とはまた別のベクトル上で気に入っているため、彼女のために行動を取ることも厭わない。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。