最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 少年から明かされる過去の出来事。少年から明かされるかつての計画。
 彼と向き合う桜の花は、自身に彼がしてくれたように、その温もりを抱きしめた。



藍を包む桜の花

 自身の入浴を終え、骸の入浴を待つこと数十分。“僕が貸してもらっている部屋に行きましょう”と伝えてきた骸に従うように、彼の部屋へと足を運ぶと、そこにあるベッドのサイドテーブルに、3種類のアイテムが置かれていることに気づく。

 

「これ……弾丸と拳銃と……短剣?」

 

「ええ。僕達の過去を話すためにはかなり重要なアイテムなので、あなたが入浴している間に荷物の中から取り出しておきました。

 本当は、このようなものを見せたくはなかったのですが、向き合う覚悟を決めてくれた以上、一から話すべきかと思いまして。」

 

 “座ってください”と言われ、とりあえず骸が使っている……と言っても、基本的に彼はわたしの部屋に足を運んで眠っているため殆ど使用はされてないと思うが、真っ白なシーツに覆われている大きめのベッドに腰をかけると、骸もすぐに隣に座ってくる。

 

「手に取ってみますか?」

 

「いいの?」

 

「ええ。ですが気をつけてくださいね。銃に装填されていないなら危険はない……と言うわけではありませんから。

 なんせ、この小さな弾丸には火薬が入ってるので、何の拍子に暴発するかわかりません。」

 

「わかった。」

 

 骸から手渡された弾丸を摘み、様々な角度からそれを確認する。

 ……一度だけリボーンに見せてもらった死ぬ気弾とも、普段持ち歩いている拳銃の弾丸ともどこか違う雰囲気の弾丸。

 どうしてか妙な嫌悪感を覚えるそれに、わたしは首を傾げる。

 

「んー……これ、特殊弾……かな?前にリボーンに見せてもらった死ぬ気弾とはどこか雰囲気が違うけど、普通の弾丸とは全然違う不気味な気配があると言うか……。」

 

「おや、鋭いですね。見た目は普通の弾丸にしか見えないはずですが……。」

 

「……その反応からして、やっぱりこれも特殊弾なんだ?」

 

「ええ。その通りです。憑依弾……と呼ばれる特殊弾ですよ。」

 

「憑依弾?」

 

「はい。」

 

 骸が口にした、聞きなれない単語を繰り返すように口にすれば、彼は丁寧に憑依弾の説明をしてくれた。

 ……この憑依弾と呼ばれる弾丸は、その名の通り、ある条件を満たしている人間の肉体に精神を憑依させることができるようになるアイテムらしく、幼い頃、骸が身を置いていたファミリーであるエストラーネオファミリーと呼ばれるマフィア達が持ち合わせていた兵器の一つだったようだ。

 使用例は単純で、敵対マフィアの人間に必要な条件を付与し、この弾丸を使って精神を憑依させ、内部から壊滅させるのだと言う。

 憑依対象が元からそのファミリーにいる人間となると、油断したまま命を奪われてしまうなど当たり前で、かなり画期的なものだったようだ。

 だが、今、マフィアの界隈では、この弾丸はいわゆる禁忌と呼ばれているものらしい。

 

「禁忌になった理由は?」

 

「使い方が酷かった……と言ったところですかね。使い勝手としてはかなりいい物だったのですが……」

 

「使い方が酷かった?」

 

「ええ。そうですね……桜奈に一つ質問です。条件を満たしている人間に憑依することができたとして、憑依した器がダメージを受けた場合、憑依者はどうなると思いますか?」

 

「?単純に考えれば自分自身もダメージを受ける……と思うけど、違うの?」

 

「はい。全く違います。答えはダメージを受けるどころか、痛みすら感じることなく動くことができる……です。

 精神は自分自身ではありますが、器は他人ですので、器のダメージと呼ばれるものは、憑依者には無にしかなりません。」

 

「え……?それってつまり……ああ……なるほど。もし、愛する対象や擁護するべき対象が器にされた場合、器自体が人質になる……ってことか。」

 

「流石は桜奈です。ええ。その通り。もし、敵対マフィアのボスが寵愛している存在が器になったら?敵対マフィアのボスが大切にしている我が子が器になったら?長年連れ添ってきた伴侶が器になったら?

 ……憑依者にダメージを与えようと思い、仮に攻撃を加えたとしても、憑依者はダメージを受けるどころか、どれだけ出血や骨折が発生していても動ける状態にありますから、器が死ぬまで憑依者は襲いかかってくる。

 流石に動かぬ死体に憑依することはできませんが、贓物が肉体からはみ出ていようとも、骨がいくらか粉砕されていても、血液を垂れ流しにしていようとも、体が動くのであれば憑依している限り動かし続けることができるというわけです。

 しかも、憑依者は任意で憑依状態を解除できるので、襲いかかってきた存在に攻撃したと思ったら器本人の精神がすでに戻っており、自分の手で大切にしていた存在の命を終わらせてしまう……と言う状況に陥らせることも可能です。」

 

「……だろうね。それはかなりの地獄だし、非人道的とされ、禁忌指定されてしまうわけだ。」

 

 それはあまりにも酷い話だった。同時に納得いく禁忌理由であり、骸が口にした、使い勝手の良さと言うのもわかる内容だった。

 そんなものを作るマフィアが世の中にはいるんだ……と少しだけ表情を歪める。

 いくら使い勝手がいいとしても、とても残酷で、悪夢のような道具だ。

 

「禁忌指定を受けているなら、本来は持つこともできないと思うんだけど、なんで持ってるの?」

 

「そうですね……製造方法は僕が持ち出したので、材料さえ揃えば造ることは可能ですね。」

 

「なんで持ち出しちゃったかな……」

 

「僕のものだから……とだけ言っておきましょうか。なんせ僕は元とは言え、エストラーネオファミリーの人間だったので。

 ファミリーが残したものは、財産として持っていっても構わないでしょう?まぁ、明らかに負の財産ですがね。」

 

 やれやれと肩をすくめながら言ってくる骸に、思わず引き攣った笑みを浮かべてしまう。

 負の財産とわかっていながら持ち出すって相当なことをやっているんだけど……?

 

「……憑依弾で憑依するには、条件があるって言ってたけど、その条件って?」

 

 とりあえず話を進めようと思い、憑依弾による憑依に関しての質問を行う。

 すると骸は、わたしの手のひらに乗っていた憑依弾を取り上げて、入れ替えるようにサイドテーブルに置かれていた短剣を乗せてきた。

 

「憑依する器に変貌させる時はこの短剣を使います。簡単に言いますと、この短剣で少しでも傷つけられた場合、傷つけられた対象は、憑依が可能になる器となります。

 だから、桜奈のように、僕が精神を繋げるだけで憑依できる対象と言うのは、世の中にほとんどいないんですよ。

 余程僕達は近い位置に存在していて、尚且つ相性がよかったのでしょうね。」

 

「ふぅん……。不思議な運命もあったもんだね……。」

 

「本当に。まぁ、僕としてはこの上なく嬉しい誤算でしたがね。こうしてあなたと真っ向から話せるのは、相性が極めて良かったあなただったからこそ……なので。」

 

 ここぞとばかりに軽く口説いてくる骸に、少しだけ照れてしまう。

 真剣に話しているにも関わらず、無意識の愛慕の流入を起こすとか、この子は相当わたしにお熱らしい。

 

「……なんか槍の先っぽにも見えてくるなこの剣。」

 

「実際、槍としても使いますよ?」

 

「どっから取り出したのその棒。しかもカチッてちゃっかり先っぽに嵌めてるし。」

 

「棒は折り畳み式ですので、持ち運びが楽ですよ。」

 

「……わたしも折り畳み式の武器持ってるからわからなくもない。」

 

 話題を変えるように、剣の見た目の感想を言っていると、隣にいた骸は、わたしの感想の答えを見せるように短剣を槍に変えていた。

 別に見せてくれとは言ってないけど、折り畳み式が楽であることはものすごく同意した。

 

「憑依弾と器作りの短剣ね……。確かに、キミが元々身を置いていたファミリーの話をするには必要なアイテムだ。

 でも、それ以外にもこれらのアイテムを明かしたのは理由があるんでしょ?」

 

「……なぜそれを………?」

 

「勘……と言いたいところだけど、ちょっと違うか。実はね。わたしの中に流れてるボンゴレファミリーの創設者の血って、少し特殊な能力が遺伝する血なんだ。」

 

「特殊な能力が遺伝する……ですか?」

 

「うん。それは、“超直感”。直感力の上位互換のようなもので、なんでも見通してしまう力なんだよね。

 それは、遠くに潜んでるヒットマンの位置をすぐに見抜いたり、これから先起こることを起こる前に把握して完璧に対処できたり、どのように行動を取れば最善になるかを把握することができたり……とにかく、様々なことを見抜いてしまう力だよ。

 人材の抜擢や武器の扱い方、人の隠し事なんかもわかっちゃう。だから、骸がアイテムを見せたのは、エストラーネオファミリーの話をするためだけじゃないってわかっちゃった。」

 

 わたしの言葉に、骸が驚いたような表情を見せる。しかし、すぐに小さく笑っては、話したくないことすらも見抜いてしまうことに対するわたしの少しの嫌悪をほぐすように、優しく頭を撫でてきた。

 

「……桜奈の仰る通りです。エストラーネオファミリーの話をするために持ち出していましたが、実を言うと、話はそれだけではありません。」

 

 そう言って骸は一泊無言のクッションを置き、静かに言葉を紡いだ。

 

「……あなたをこうして迎えに行く計画の前は、これらのアイテムを使用することにより、あなたの肉体を乗っ取る計画を立てていました。

 全てはマフィアを殲滅するために……。そのためには、若いマフィアのボスの肉体が必要だったんです。

 そこで僕は、あなたと精神世界で逢瀬を重ねる前は、あなたのことを謀り、あなたが持ち合わせている能力を全て開示させたのち、あなたが大切にしている存在を人質に取り、その体を差し出させるつもりでした。」

 

 声音から……これだけは話したくなかったと言う感情が感じ取れた。

 真っ向から告げる、利用してやるという宣言……。今や過去のものとなっているようだが、元々の計画だと、彼はわたしと敵対するつもりだったようだ。

 

「……申し訳ありません。過去の話とは言え、こんなことを………」

 

 繋がりから感じる嫌われてしまうかもしれないという不安。離れて欲しくないという願望。嫌われてしまっても仕方ないという諦観……様々な感情が混ざったそれを読み取ったわたしは、深く溜め息を吐く。

 その瞬間、視界の端に肩を一瞬震わせて、手にしていた槍を強く握りしめる骸の姿が映り込む。

 まるで、親に叱られる子供のような……捨てられてしまった子供のような反応に、わたしはやれやれと首を振り、隣にいる骸の後頭部に手を回し、そのまま自身の方へと引き寄せた。

 

「桜奈……?」

 

「……本当のことを話してくれてありがとう。別に怒ってないよ。だって過去の話でしょ?

 ……確かに、ちょっとショックだったところはある。こんなに仲良くなれたのに、元々はわたしの周りを傷つけてでも、わたしのことを利用するつもりだったって言われたんだから。

 でも、そこまで考えないといけない理由が骸にあることもわかってるから、そんなに怖がらなくてもいいよ。」

 

「……僕のこと……嫌いにならないんですか?」

 

「さっきも言ったように、ちゃんとした理由があることは自身に流れてる血から遺伝した力でわかってる。

 ショックは受けたけど、嫌いになるわけないよ。……嫌いになれるわけがない。

 理由がある上、実行に移したりしなかったんだから、許す許さないは別として、受け止めてあげられるくらいには、骸のことを好きになってるつもりなんだけど?」

 

「……何ですか……それ……。そんなにも簡単に、僕のような存在を受け入れるなんて……あなたは相当な変わり者ですよ……。」

 

「変わり者で結構だよ。わたし、一度懐に入れた人にはかなり甘くなるタイプだからね。

 ついでに甘えたくなるタイプ。骸はすでにその条件をしっかり満たしてるから、わたしはこうやって甘やかしてるんだよ。

 犬と千種も同じ。彼らのことも、わたしにとってはすでに身内。もちろん、骸の方が、彼らよりも身内って言えるけどね。」

 

 抱きしめた骸の頭を優しく撫でる。懐に入れた人に対する対応の話も事実ではあるけど、わたしにはそれ以上に、骸を受け入れる理由があった。

 彼はわたしの過去を知っている。小鳥遊桜奈の一生を。そして優しく抱きしめてくれた。わたしの渇望に応えるように。

 わたしはそれが嬉しかった。どれだけわたしの絶望を知っても、どれだけわたしの苦しみを知っても、この人はそれを受け止めてくれた。

 それだけでわたしは十分だった。あの時の渇望に答えて、そこに水を注ぐように、愛情を注いでくれた人を、どうして突き放せるのだろうか。

 

 ─────……前世にも、それをしてくれた人はいる。だけど、次第にその人達とは離れ離れになっていき、わたしは再び渇愛だけの絶望に落とされた。

 

 ─────……唯一の楔として存在していた父さんも、結局わたしに応えることなく、そのまま自ら命を絶った。

 

 ─────……あの時失った色彩の景色……それを抱きしめてくれたのは、今のところキミだけなんだよ、骸。

 

 ……リボーンはそれなりに向き合おうとしてくれた。それは嬉しかったけど、わたしの暗い過去の話をすることなんてできなかった。

 そんなものを話して、同情されるのが嫌だった。同情の末に側にいるのだと疑ってしまいそうな自分が嫌だった。

 だから話したくなかったし、話すつもりはなかった。リボーンだって、話したくなったら話していいと言ってるんだから、ずっと話さなくても問題はないはずだ。

 

 ………骸は違う。わたしの過去を知っていても、同情だけは向けなかった。

 救おうとして手を伸ばして、わたしの全てを受け入れてくれた。それが何より嬉しかった。

 確かに最初は同情があったのかもしれない。それから一緒に過ごすようになったのかもしれない。

 でも、骸はこの屋敷に来て、わたしの過去を見て、同情ではなく愛情を以ってわたしのことを抱きしめてくれた。

 その温もりから、わたしのことを受け入れてくれるんだと、わたしの全部を愛してくれるんだと、溺れてしまう程に感じることができたから。

 

「重ねて言わせてもらうけど、わたしは絶対に骸を嫌いになったりしない。それだけわたしはキミを受け入れてる。

 だから、全部教えて。骸のこと。キミが何を抱えていて、何を望んでいたのかを。

 わたしはそれに向き合うし、受け止めたいと思ってるから。」

 

 それを知ったところで、正しい答えを出せるかわからないけど、キミが望む答えを出せるかわからないけど、それでも、キミがわたしを受け止めてくれたように、わたしもキミを受け止めたい。

 答えはその後に探せばいい。マフィアになるか否かなんて、その時に考えればいい。

 もう、わたし達には、限られた時間しかないけれど、2人で考えれば大丈夫だと思うから。

 

 

 

 




 小鳥遊 桜奈(沢田 奈月)
 骸から元の計画を教えられて、それなりにショックは受けていた10代目。
 それでも実行していないことや、ちゃんとした理由が存在していることを把握しているため、それくらいじゃ嫌いにはならないとハッキリと言える程には骸が好き。
 桜奈としての自身を受け止めて、同情ではなく確かな愛情を以って抱きしめてくれた骸の優しさに応えたい。

 六道 骸
 憑依弾やエストラーネオファミリー、憑依の器を作る短剣の話や、自身が元々考えていた計画の話を打ち明けた少年。
 嫌われ、拒絶される覚悟でかつての計画を明かしたと言うのに、ちゃんとした理由がある上、実行にまでは移していなないのだから、嫌いにまではならないとハッキリと告げてきた桜奈にかなり驚いた。
 変わり者だと軽く罵ったが、抱きしめてくれた温もりは抵抗することなく受け入れながら、やっぱり自分は彼女が好きだと目を瞑った。

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