最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 藍色の記憶を見た翌日、桜の花は、匿ってくれている青年にこれ以上迷惑はかけられないという理由から、藍色に屋敷から離れることを提案する。
 話を聞いた藍色は、すぐにそれを承諾したのち、桜達を連れて屋敷を去るのだった。


最後の猶予

 意識が現実へと戻されて、それに従うように目を覚ます。静かに体を起きあがらせると、隣で目蓋を閉じていた骸も、意識を浮上させた。

 

「おはよう、骸。昨日はありがとう。キミの記憶を見せてくれて。」

 

「おはようございます、桜奈。お礼をいうのは僕の方ですよ。僕が保護していたとは言え、僕の記憶も、刻まれている憎悪も、全て受け止めてくださってありがとうございます。

 体調は大丈夫ですか?僕が持ち合わせているあらゆる記憶をあなたにダイレクトに共有してしまったので、かなり辛かったと思うのですが……」

 

「ん。大丈夫だよ。骸が離さずにいてくれたおかげでね。まぁ、寝ていたはずなのに疲労がある……って感じの状態ではあるみたいだけど。」

 

 わたしの体調を気にしてくる骸に、寝ていたはずなのにかなり疲れてしまっている自分自身がいること以外は問題ないことを伝えると、彼は少しだけ申し訳なさそうな表情をしては、わたしの唇に自身の唇を軽く重ねてきた。

 特に抵抗することなく、そのキスを受け入れていると、優しく頭を撫でられる。

 

「やはり、記憶を一気に見せてしまったのはかなりの負担になってしまったようですね。かなり無理をさせてしまったようで、申し訳ないです。」

 

 疲労に対する気遣いの言葉に、気にしなくていいと伝えるように、わたしは緩やかに首を左右に振る。

 確かに疲れてはいるけど、この疲労を感じる代わりに、わたしは骸を知ることができた。

 ずっと知りたいと、向き合いたいと思っていた人としっかり向き合えたのだから、これくらいの疲労は安いものだ。

 

「にしても、人間ってあそこまで悪意に全振りして狂人になることができたんだね……。

 正直言って、あの人らの頭と正気をかなり疑ったんだけど。」

 

「それに関しては誰もが同じだと思いますよ。人間は、世界中にいる生き物の中で、最も欲深くて卑しい生き物ですから、自分達の欲のためであれば、周りがどうなってもいいと言う思考に至る可能性が1番高いんです。

 それにより僕らは自由を奪われ、人権を奪われ、将来すらも奪われた。エストラーネオファミリーは、本当に悪意の塊以外の何者でもありません。

 同じ人間だと思いたくもない。彼らはある種の化け物ですよ。人の心を持たない……ね。」

 

「それに関してはもはや何も言えない。あの記憶を見ただけで、嫌という程に思い知らされた。

 人間は知恵と理性があるからこそ我慢ができるけど、その分欲も溜めやすい。

 そして、一度それを爆発させてしまったら、あとはただ燃え広がって、鎮火させることができなくなる。

 エストラーネオファミリーの場合は、自分達をコケにした人間達に対する復讐もあり、どんどん暴走に拍車をかけた。

 それにより歪まされてしまった骸達は、被害者側だと言えると思う。まぁ、そこから加害者にも転じているけどね。」

 

「それは否定しません。僕の手は桜奈の手のように、綺麗なものではありませんから。」

 

 “自分の手は清らかなものじゃない”……そう言って両手を見つめる骸に、わたしは一度、視線を向ける。

 そして、自分よりも大きな彼の手に、わたしは静かに自身の手を重ねて握りしめた。

 

「桜奈……?」

 

「……確かに骸の手は汚れてる。悪意により歪められていたとは言え、それに対する報復として、新たな悪意を以って多くの物を奪い続けたから。

 それは絶対に許されることじゃない。誰もが許しを得ようなんて烏滸がましい、悍ましいと吐き捨てるように罵るだろうね。

 わたしもキミの過去の行動には思うところが沢山ある。それでも、わたしは汚れてしまったキミの手を握り返して受け止めたい。

 キミの行動は突発的なものでもなければ偶発的なものでもない。間違いなく必然的なもの。否定して突き放すことはしたくないから。」

 

 小さく笑って考えを伝えると、骸は一瞬驚いたような表情を見せる。しかし、すぐに安堵したような、だけど穏やかで嬉しそうな笑みを浮かべては、重ねられているわたしの手を握り返してきた。

 指を絡めて遊ぶように。わたしの温もりを確かめるように。

 

「クフフフ……あれだけの記憶を見せられたとしても、あなたはどこまでも優しいですね。

 こんなことなら、いっそのこと六道の記憶も全て見せて、道連れにしてしまうべきでした。」

 

「何を重ねようとしてんの。いくら骸の保護があっても、そこまで一気に見せられたら間違いなくわたしは大ダメージを受けて動けなくなるんだけど?」

 

「冗談ですよ。6割程は。」

 

「残り4割が本気ってほぼ半数じゃないか。」

 

 なかなかに恐ろしいことを言ってくる骸にツッコミを入れると、彼は楽しげに笑って見せる。

 そんな彼に呆れながら、やれやれと深く溜息を吐いた。

 

「……本気で知ってほしいなら、受け止めることも吝かじゃないけど、それなりに時間を置いてからにしてよ。

 キミの過去の記憶だけで、わたしは胃もたれしてしまいそうだからね。」

 

「おや、受け止めてくれるんですか?」

 

「本気で望んでいるのならね。」

 

「全く……どこまでもあなたはそのスタンスなんですね。ですが、ありがとうございます、そう言ってくれて。

 では、本気で道連れにしたくなったらその時は教えます。今はまだ、僕の過去を知ってくださるだけでも嬉しいので。

 ですが、本当に道連れにして、僕だけに囚われてほしいと望んだ時は、本当の意味で、僕の全てを教えましょう。

 その時は覚悟してください。どれだけあなたが発狂しようとも、泣き叫びやめてと乞おうとも、僕は絶対にやめません。

 全てを受け止めると言うのであれば、それこそ奈落へと落ち、無理心中をするかのように、無理矢理にでも連れて行きますから。」

 

 穏やかな声音とは裏腹に、蛇のように絡みつくような骸の恋慕を感じ取る。

 何度か口頭で伝えられたことだったから把握していたつもりだけど、本気で逃がしてくれないのだと改めて認識してしまい、少しだけ遠い目をしてしまった。

 正直言って、それに応えられる自信はないのだけど、いつまで返答は待ってもらえるだろうか……。

 なんてことを考えながらも、骸に手を遊ばれていると、感じ慣れた気配が2つ、この部屋に近づいてくることに気づく。

 

「犬と千種がこっちに向かってるね。そろそろ入ってくる。」

 

 わたしがそう口にした瞬間、骸が寝室として与えられていた部屋の扉が開き、犬と千種が姿を現した。

 彼らの接近にすぐに気づき、タイミングも完全に会っていたからか、骸が何度か瞬きを繰り返す。

 

「………相変わらずあなたの気配察知能力は恐ろしい程に正確ですね。これじゃあどれだけ誤魔化そうにも、すぐに見つかってしまいそうです。」

 

「当然でしょ。わたしは、アルコバレーノになっちゃった凄腕のヒットマンの気配すら、どれだけ遠くにいても見つけ出せるんだから。」

 

「アルコバレーノ……ですか。そう言えば、あなたの側にいるリボーンと言う名の家庭教師はアルコバレーノでしたね。

 あなたの記憶の中に、彼からそれを明かされている時のものがありました。

 一度覗いてみましたが……何やら随分とムカつく程に仲睦まじくしていたご様子ですが、彼とはどういったご関係で?」

 

「わー……ここまで明確な嫉妬心初めて見た………。リボーンは今のところ、わたしを知るもう1人の男性だよ。

 まぁ、わたしを知ると言っても、骸程深く知ってるわけじゃないけどね。

 あと言えるとしたら、彼もまた、わたしに想いを寄せてくれる人……ってところかな。」

 

「つまり、僕の恋敵と言うわけですね。……こちらのことを把握される前に、あなたの全てを僕のものにしておくべきでした。

 そうすれば、アルコバレーノ達が付け入る隙など一つも残すことなく、あなたを独占できたのに。」

 

「拗ねないでよ。」

 

「無理です。」

 

 ムスッと軽く拗ねながら、わたしの手をにぎにぎしてくる骸に苦笑いをこぼす。

 全てってつまりあれだよね?R18的な展開も含まれてるよね?中学生でそう言うことする子っているの?わたしは見たことないんだけど……?

 

「骸さん。奈月にオレらのこと、教えたんれすか?」

 

「ええ。夜のうちに僕の記憶を通して過去を教えました。それでも彼女は僕達を受け止めてくれるようですよ。

 僕達のやったことに、いろいろと思うところはあるようですが、その行いを否定し、突き放すつもりはないのだとか。」

 

「……お人よし過ぎじゃない、奈月?」

 

「骸からも言われたよ。でも、それがわたしの本心。キミらがやったことは、確かに世間的には絶対に許されないことだ。

 わたしもやっぱり思うところがある。許せるような所業じゃないと、ハッキリと考える程にね。

 だけど、わたしはそれを否定しないよ。そうなってしまうのも仕方ない程に、キミらは人生を台無しにされ過ぎた。」

 

 そこまで言って、わたしは骸の隣から静かに離れ、目の前にいる犬と千種に歩み寄る。

 そして、自分よりも背が高い2人の頭にそっと手を乗せて、緩やかに頭を撫で付けた。

 

「これまでずっと傷つけられ続けて、本当に辛かったね。それでも負けないで抗い続けて、キミ達は本当に頑張り屋だね。

 その深い傷は、きっと永遠に癒えないと思うし、きっと永遠に燃え盛って、全てを焼き払いたくなるような衝動は続くんだと思う。

 そんなキミ達の傷を、わたしはきっと癒せないけど、休みたくなったらいつでもわたしのところに来ていいよ。

 ほんの少しのひと時だとしても、少しは穏やかな時間を一緒に過ごせると思うから。」

 

「「っ………」」

 

 何度も緩やかに撫で付けながら、静かに言葉を紡ぐと、2人は一瞬目を見開いたのち、少しだけ泣きそうな表情を見せる。

 彼らにとって、マフィアに対する憎悪は何よりも大きくて、ほとんどの感情は、それに占められているのだろうけど、心のどこかには、やっぱり確かな辛さもあって、だけどそれは労われることなく、ずっと触れられることはなかった。

 側から見たら偽善かもしれない。わたしの勝手なエゴなのかもしれない。だけどわたしは、少しでもその傷を労わってあげたかった。

 これはまごうことなき本心だ。鬱陶しいと思われても、そっと抱きしめてあげたかった。

 わたしに骸がしてくれたように、その苦しさに少しでも寄り添いたかった。

 

「……迷惑だったらごめんね。でも、2人もすでにわたしの身内だから、少しでも声をかけたかったんだ。

 こんな言葉程度で癒してあげられる程、キミ達の傷は浅くないのはわかってるんだけど。」

 

 わたしの言葉に、犬と千種は首を左右に振る。そんなことはないと言うように、口元には穏やかな笑みを浮かべて。

 その姿を見て、わたしは少しだけ安堵する。余計なお世話だって言われなくてよかったと。

 

「……なぁ、奈月。マフィアのボスなんてなんなよ。」

 

「オレも犬の意見と同じ。奈月はマフィアのボスにならない方がいい。例えボンゴレファミリーが、エストラーネオファミリーみたいなことをしていないとしても、他のファミリーがそう言うファミリーだってことが絶対にあるから。」

 

「骸さんの記憶を見て、オレ達がどんな目に遭ってたのかわかっただろ!?

 絶対ェ奈月にとっても最悪な人生にしかなんねーびょん!!」

 

「奈月の中に、マフィアの血が流れてるのはわかってるし、一生それはついて回るものなのもわかってる。

 だけど、それに従ってマフィアになったところで、絶対に奈月もくるしくなるし、辛くなる。だから、マフィアにはならない方がいい。」

 

「もしマフィアの連中が、奈月のことを無理矢理連れて行こうとするなら、オレ達が絶対にそれをさせねーから……!!だから、マフィアにだけはならないでほしいびょん……」

 

 そんなことを思っていると、2人からマフィアのボスにはならないでくれと告げられる。

 エストラーネオファミリーのような非人道的な組織じゃ無いとしても、マフィアのボスになると言うことは、そう言った組織とも相対することになる……そんな最悪な世界だからと。

 もし、ボンゴレファミリーがわたしを逃さないというのであれば、わたしを連れ戻そうとするのであれば、それに自分達が抗うからと。

 2人の言葉を聞き、わたしは骸に見せてもらった骸達の過去を思い返す。人を人とすら思うことなく、自分達の栄誉のためにと他人の命を弄び、生き残った子供達の全てを歪め、将来を奪った怪物達……2人の意見はもっともだ。

 例え自分が継ぐことになっている組織がそんな組織じゃないとしても、他の組織も同じであるとは限らない。

 彼らを苦しめた組織のように、怪物の巣窟となっている場所になってる組織が、今もなお存在している可能性もある。

 

「……奈月。確かに僕は、あなたが確かな自我を以って選んだ道を歩むのであれば、マフィアになることも止めないと言いました。

 ですが、やはり僕も彼らと同じ意見です。このままマフィアから離れた世界で生活した方がずっといいに決まってますから。

 ……だから、今一度、僕はあなたに問いかけます。このまま、僕達と一緒にマフィアから離れた世界で暮らしませんか?

 何もあなたが引き受けなくてもいいでしょう?例え1番若い継承権の持ち主であっても、それに大人しく従って、血塗られた玉座に腰を据える必要などありません。」

 

 3人から懇願するような目を向けられて、わたしはその場で言葉を失う。

 これまでのわたしなら、それにすぐに答えただろう。そうも行かないと突き放すように。

 だけど、3人の憎悪とかつての怒り、確かに感じていた苦しさを知り、ハッキリと答えることができなかった。

 ……彼らの意見も正しいもので、わたしを心配しているがゆえに紡がれている言葉だから、拒絶することができなかった。

 でも、それではダメだと言ってるわたしの声も聞こえていて、どう答えたらいいかがわからない。

 

「……そろそろ、わたしのファミリーがここを突き止める。そうなったらきっと、骸達は彼らと衝突することになるんだろうね。」

 

 わたしの口から出てきた言葉は、彼らの願いに対する答えではなく、これから起こる事象のことだった。

 わたしの中に流れている血が、わたしにそう告げている。決断の時は近いと。

 でも、今のわたしに明確な答えは存在していなくて、それを提示することができない。

 このままじゃみんなが辿り着く前に、自分の答えを告げれない。

 

「彼らは今日中にここにたどり着く可能性が高い。だから、わたしからの提案。

 この屋敷を離れよう。ここで衝突を起こしたら、神谷さんの迷惑になる。

 もうすぐ答えは出そうなんだけど、このままじゃ答えを出す前に、リボーン達と顔を合わせることになっちゃうから……この屋敷を離れたいんだ。」

 

 きっとこれは、最後の悪あがき。答えを出すまでのわずかながらの時間稼ぎ。

 それでもわたしの言葉を聞いて、骸達はすぐに頷いてくれた。わたしのお願いを、最後まで聞こうと決意して。

 

「移動先はどこにしますか?」

 

 骸に静かに問いかけられ、わたしは一瞬無言になる。

 しかし、すぐにその答えは口から漏れた。

 

「……わたしと骸が出会わなかった場合、キミ達が拠点にしようとした場所があるんじゃない?」

 

 その言葉に骸は一瞬だけ目を丸くする。しかし、すぐにどこか思い当たる場所があるのか、肯定するように頷いた。

 

「奈月はすぐに自身の荷物をまとめてください。僕達の荷物は、あなたに預けたらあなたの周りにいる方々に捨てられてしまいそうなので、神谷さんに預かっていただけないか聞いてきます。」

 

 そして、今からやるべきことをわたしに伝え、黒曜中学校があるであろう方角へと視線を向ける。

 

「黒曜ヘルシーランド跡地に向かいましょう。あそこは立入禁止区域ではありますが、そのおかげで人はあまり近寄りません。

 奈月のファミリーと相対するには十分過ぎる場所です。仮に戦闘になったとしても、奈月に無関係な人間を巻き込むことだけは起きません。」

 

 

 

 

 




 小鳥遊 桜奈(沢田 奈月)
 骸達の過去を知り、3人に寄り添いたいと心から思ったボンゴレ10代目。
 過去を知ったことにより、彼らの憎悪や怒り、苦しみを知ってもなお、その優しさは損なわれることなく、思うところは沢山あるし、許されるものではないと告げながらも、その憎悪は当然のものであり、否定することはできないものだと受け止めた。
 自身の答えを出すために、あと少し時間がほしいと彼らに告げ、屋敷から離れることを提案した。
 最近、骸には一生逃がしてもらえないんだろうな……と度々思っている。


 六道 骸
 自分達の過去の記憶……それを見てもなお、その優しさが穢れることがないことを見せつけられた術士の青年。
 どこまでも優しく、寄り添おうとしてくれる彼女からはもはや一生離れることができそうにないと思いながらも、汚れた手を握りしめてくれた優しい温もりを宿す小さな手を握り返す。
 本気で望むのであれば、六道骸と言う存在をどこまでも受け止めようとしている姿を見て、軽く呆れを抱きながらも、そこまで言うなら遠慮はしないと、自身が堕ちている場所に引きずり落とし、そのまま逃すことなく道連れにすると宣言した。
 最後の懇願に、明確な答えが返ってこなかったことに少しだけショックを受けたが、彼女が答えを出すために、最後の悪あがきをしようとしているのを見て、すぐにそれに協力することを承諾した。

 犬&千種
 初めて自分達の苦しみに寄り添い、よく頑張ったねと優しく告げてきた奈月に、少しだけ泣きそうになったエストラーネオファミリーの生き残りたる被害者達。
 このままずっと、マフィアから離れた世界で4人で共にいることができたらと、彼女にマフィアにならないでくれと懇願する。



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