最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 月により導かれた虹の黄色は、桜を愛する者達と共に、桜を求めて走り抜ける。
 一方桜と共にいる藍色は、彼女の不安を少しでも軽くするように、1つの提案を口にしていた。
 桜を巡る2つの愛慕……衝突する時はすぐそこに………


 side.REBORN【→】side.MUKURO


2つの愛慕

 翌日になり、獄寺と山本、そしてヒバリの3人が合流したのを確認したオレは、昨日のうちにコピーしていたメテオライトから渡された一枚のメモをヒバリに手渡す。

 

「オレが会得した情報では、ナツはここにいるとのことだ。どうやら、情報を教えてきた奴の知り合いがナツの顔見知りだったみたいでな。

 しばらくの間、匿ってもらっているらしく、ナツにちょっかいを出してる六道骸も、一緒にいるだろうと言われてる。」

 

 オレが手渡したメモのコピーを手に取ったヒバリは、すぐにそこに記されている文字に目を通し始めた。

 程なくしてヒバリは何度か瞬きをして、持ち歩いている携帯電話を開く。

 

「……結構遠いね。並盛から2町か3町くらい離れてる場所だよ。海が見える場所だ。」

 

「……海か…………。」

 

 ヒバリが口にした海と言う言葉を聞き、オレはある記憶を思い返す。

 それは、桜奈にオレのことを教えた日の翌日、足を運んだ水族館での記憶だった。

 

 遊園地と水族館が一緒になっているそこに、足を運んだオレ達は、桜奈の意見を優先して、水族館から回ることにした。

 夏休みだったこともあり、多くの人が過ごしてる中、次々と水槽を見て回る他の客とは違い、桜奈はとてもゆっくりと歩いていた。

 水族館を余すことなく楽しむように。水族館に広がる蒼い空間を楽しむように。

 

『ゆっくり満喫してるな。水族館が好きなのか?』

 

 他の奴らには自由に楽しんでいいからと告げ、水族館の目玉である大水槽の前にあるベンチに座り、じっと目の前に広がる蒼の世界を見つめる桜奈に、なんとなく思ったことを聞いた時、桜奈は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐにそれは、穏やかさと落ち着きを持つ、成熟した大人の女の笑みに塗り替えて、オレに静かに話してくれた。

 

『水族館……と言うよりは、海が好きなんだよ。どこまでも広くて、色鮮やかな魚や珊瑚礁が輝いてる宝石箱のような世界だから。

 それに、海は桜奈としてのわたしにとって、1番ゆかりのある場所でね。こんな風に、蒼と魚達が織りなす色鮮やかな世界を見てると、すごく落ち着くんだよ。

 まるで、海の世界で暮らしてる人魚姫になったみたいで、わたしは海が大好きなんだ。』

 

 穏やかに笑いながら、海が好きなんだと告げてくるその横顔は、これまで見てきた女の横顔の中で一番綺麗だと思ってしまう程に見惚れてしまった。

 同時に、すぐにでも触れなくては、泡沫のように消えてしまうのではと思ってしまう程の儚さもあった。

 

『どうしたの?リボーン。』

 

『……なんでもねーぞ。』

 

 ……あの時、無意識のうちにオレは、桜奈の肩に飛び乗っていた。

 そうしないと桜奈がどこかに居なくなってしまいそうで……

 

 ─────……海の世界で暮らしている人魚姫になれたようで、落ち着くから海が好き……か。

 

 ─────……桜奈。お前が言ってる人魚姫ってのは、王子と結ばれて幸せになった人魚姫の方じゃなくて、泡となって消えてしまった原点の方の人魚姫を示す言葉だろ……。

 

 桜奈の過去はわからない。だが、海にゆかりがある……と言う言葉から読み取れることは2つある。

 海が近い場所で暮らしていたか、海に落ちて元いた場所からいなくなってしまったかの2つだ。

 もしかしたら、その両方を経験しているのが、桜奈と言う女なのかもしれない。

 ……自身が事故により海で命を落としたとしたら、落ち着くとは言わないはずだが、だからこそ、嫌な考えが脳裏を過る。

 

 ─────……自ら命を絶つために、海へと飛び込んだ可能性……か。

 

 できることなら、そんなことは考えたくない。

 だが、海の中が落ち着く……と言う言葉は、それを決定づけるには十分過ぎるものだった。

 桜奈の元からの性格上、どれだけ精神がすり減ろうとも、1人で何もかも抱え込んで、誰にも打ち明けず笑っている可能性が高い。

 だが、最終的にその限界を超えてもなお、無理をして何もかも抱え込んで、なんらかのきっかけにより崩壊していたとしたら、自ら命を絶つことにより、それによりあらゆるしがらみから抜け出せる一つの救いになっていてもおかしくないし、それが海への身投げだとしたら……。

 

 ─────……どうすればオレは、桜奈を傷つけることなく、過去も、その心も抱きしめてやれるんだ……?

 

「……赤ん坊?何ボーッとしてるの?」

 

「!」

 

 不意にヒバリに声をかけられ、オレの意識は引き戻される。

 顔をあげてみると、心配そうにオレを見てくる獄寺と山本、それと、珍しいものを見たと言わんばかりの表情をしているヒバリの姿が視界に入った。

 

「……わりーな。まだ、連日の疲労が抜けてなかったみてーだ。

 なんせ体がチビだからな。お前達と違って、その分疲労が溜まりやすいんだが、その状態であっちこっち走り回っていたせいで、昨日の睡眠だけじゃ、ちと休息が足りなかったらしい。」

 

「ふぅん……」

 

「無茶すんなよ、小僧?」

 

「そうですよ、リボーンさん!10代目がいなくなってからずっと探し回っていたってアネキにも聞いてますし、キツイようだったら、オレと山本だけで行きますから!」

 

 考え込んでいたことを誤魔化して、オレは気にするなとヒバリ達に告げれば、三者三様の反応がその場に広がる。

 サラッとヒバリを省きながらも、自分達が桜奈のとこに行くからと言ってくるとは思わなかったが、まぁ、獄寺と山本がそれなりに仲良くなったようで何よりだな。

 

「まぁ、しんどくなったらオレなりに休むから気にすんな。そんなことより、ナツがいる場所に向かうぞ。

 まぁ、そこで待っていればいいが、場合によってはまた移動しねーと行けねーかもだから、それは頭に入れておけよ。」

 

「はいっス!」

 

「おう!」

 

「……僕は先に行くから、君らもさっさと来てよ。」

 

 オレの言葉に返事をする獄寺と山本をスルーして、ヒバリは近場に置いてあったバイクの方へと向かってしまった。

 このままバイクで向かうのだろう。だが、さっさと合流しろと言ってくるってことは、昨日のオレの言葉は守ってくれるようだ。

 

「ああ。早めに合流する。」

 

 合流するという言葉に、ヒバリは一度オレに目を向けたあと、バイクにエンジンをかけてこの場から去っていった。

 

「ケッ……相変わらずいけすかねー野郎だぜ。」

 

「一応は待ってくれるんだな、ヒバリ……。」

 

「ナツの影響なのか、それとも別の要因か……。まぁ、それなりに制御できる分には多少は扱いやすいかもな。獄寺。山本。オレ達もさっさと行くぞ。」

 

 オレ達のすぐ側にタクシーが止まる。獄寺と山本は、貸切のタクシーがここに来るとは思わなかったのか、少しだけ驚いたような表情をしていた。

 

「タクシーはオレが呼んでおいたんだ。タクシー代は全額払ってやるから、さっさと乗って移動するぞ。」

 

「おう!」

 

「了解っス!」

 

 2人に指示を出してタクシーに乗り込み、メテオライトから手渡された桜奈がいる場所の住所が記されている紙を見せれば、タクシードライバーはすぐにタクシーを動かした。

 ……嫌な予感は未だに絶えず、何が原因で発生しているのかはわからない。

 ただ、一つ思うことは………

 

 ─────……できることなら、六道骸と対話が臨めればいいんだがな……。

 

 メテオライトから言われた、まずは向こうの意見を聞いた方がいいと言う言葉。

 桜奈とではなく、彼ら……つまり、六道骸達の意見も聞いた方がいいと言う言葉に含まれているものだった。

 桜奈を傷つけようとしたわけじゃなく、守ろうとしていることを考えると、一応、対話をすることはできるだろう。

 だが、対話に聞く耳を持たなかった場合、衝突する可能性は十分過ぎる程にある。

 

 ─────……戦闘だけにはなりたくねーな。

 

 戦闘に入った瞬間、オレの嫌な予感は明確に形を持って姿を見せる……何故かそう思って仕方がなかった。

 だからこそ、戦闘にだけはならないでくれと、らしくもないことを考える。

 胸中に宿るこの予感は、しばらく消えてくれそうになかった。

 

 

 

 …………………

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 【side change.MUKURO】

 

 

「ほへ〜……アルバムってこんな感じになるんだな。」

 

「……初めて作ってもらった。」

 

「ええ。にしても、神谷さんは随分とシャッターを切っていたようですね。

 見てください。初めて勢いよく花火を噴出するタイプの手持ち花火にビックリして飛び跳ねてる犬と、それを見て笑ってる僕らの写真がありますよ。」

 

「こっちにはねずみ花火にビックリして固まってる骸が写ってるね。」

 

「奈月と骸様が一緒に昼寝してるのを見てるオレと犬の写真もある。」

 

 黒曜ヘルシーランドへと移動し、かつて映画館だったのであろう一室にて、僕らは桜奈が受け取ったアルバムを広げていた。

 いくつもあるページに、沢山の写真が収められているそこにいるのは、何気ない日常を一緒に過ごしていた僕ら4人の写真で溢れており、思わず小さく笑ってしまう。

 

「抵抗してる犬が奈月と千種に容赦なく風呂場へ引きずられて行く写真もありますね。

 おや……この時の僕、こんな風に笑っていたんですか……。僕でもこんな風に笑えるとは、少し驚きました。」

 

「……ってなんれアイツ、オレの失敗写真撮りまくってんだ!!ムカつくびょん!!」

 

「面白かったんじゃない?」

 

「つい笑ってしまうシーンだからでは?」

 

「犬が失敗してる時、わたしと骸が毎回笑っちゃってるからね。シャッターを切るタイミングとしてちょうどよかったのかも。

 端々に映り込んでる千種も、思わず顔を逸らして笑ってるみたいだし……。

 あ、ほら見て。珍しい千種のスマイルショット。いや、スマイルと言うよりは完全に笑ってる……?」

 

「そのようですね。確かに、写真として残さなくては勿体無いシーンです。

 千種は少々、表情筋が硬いところがありますからね。ポーカーフェイスと言えば聞こえはいいですが。」

 

 写真として残されていたからこそ見える、全員の様々な表情に、僕は緩やかに目を細める。

 まさか、僕らがこんな風に年相応の表情を表に出しているとは思いもよりませんでした。

 

「……みんな、素敵な表情をしてるね。」

 

「クフフ……そうですね。奈月も明るく笑っていますし、いい写真ばかりです。」

 

 名前を呼ばれたのか、バーベキューを頬張りながら振り向く犬や、初めての線香花火に、おっかなびっくりになりながらも、興味深そうに眺めている千種。

 太陽により蒼く輝く海を背景に、楽しそうに笑っている桜奈に、桜奈を愛おしげに見つめ、穏やかに笑っている僕。

 何かしらやる度に、折角の記念だからと4人でまとまって写る写真や、日常の一コマを切り抜いたような、自然体の僕らの写真など、様々なもので構成され、記録されているそれは、ページをめくるたびに広がっていき、とても癒されるものばかりだった。

 ほんの少しの短い間であったはずなのに、詰め込まれている思い出の数々……短期間であっても、僕らはこんなにも笑えていたんですね。

 

「……って、神谷さん、こんなところまで写真に収めてたんだ。」

 

 そんなことを思っていると、桜奈が恥ずかしそうな表情をしながらアルバムを見つめ始めた。

 不思議に思い、彼女が見ているページへと視線を落としてみると、僕と桜奈が2人で写ってる写真ばかりがそこには収められていた。

 中には僕が桜奈にキスをしている写真や、桜奈が僕にくっついて甘えている写真、僕の膝を枕にして転がっている桜奈の写真や、僕が桜奈に寄りかかって無防備に眠っている写真なども混ざっており、何度か瞬きをしてしまう。

 

「クフフフ……あなたの周りが嫉妬に狂いそうな写真がかなり残ってますね。」

 

「嬉しそうにしないでよ……」

 

 桜奈の羞恥と拗ねた気持ちが繋がりを通じて伝わってくる。

 こんなところまで写さなくてもよかっただろうと言う、神谷さんに対する文句も一緒に聞こえてきて、少しだけ笑ってしまった。

 

「嬉しそうにするなという方が無理ですよ。もはや恋人同士にしか見えない素晴らしい写真ばかりですから。

 まぁ、僕としては、周りからみたら恋人に見えると言う視覚的のものではなく、本当の恋人としてあなたの全てに触れることを許される存在になりたいのですが……。」

 

 僕の言葉を聞いて、桜奈は顔を赤くする。繋がりのおかげで僕の感情が彼女に筒抜けだからだろう。

 ……これ程までに、彼女も僕を意識しているというのに、どうして応えてくれないのか………。

 そこまで考えて、僕はふと、彼女の過去を思い出す。もしかしたら彼女は、応えると言う一線を超えてしまったら、その相手から離れることができなくなるため、応えられない……と言うのが正しいのかもしれないと。

 

 幼いうちから誰よりも早く精神を成長させてしまい、結果、自身の考えや行動、心が追いつけないまま、精神を擦り減らしていってしまった桜奈は、その影響もあり、これまで我慢し続けた分、一度一線を超えてしまったら、完全にタガを外してそのまま愛情を与えてくれる人間に依存してしまう可能性がある。

 それを彼女自身が理解しているからこそ、依存と言う道を辿らないように、想いに応えないと言う選択肢を選んだ。

 そうすることにより、甘えたい時には甘えて、満足したら離れることができるから。

 

 父親が自分を見てくれなかったことも関係あるのかもしれない。見てもらうために必死で頑張って、だけど見てもらえないという現実は、彼女の強いトラウマとなっている。

 そのため、過度に期待をしてしまうような状態を作らないようにするためにも、想いに応えないことを選んでいる可能性も十分ある。

 いわゆる一つの自己防衛……二度と人に絶望したくない、傷つけられたくないという、彼女なりの心を守るための盾だ。

 

 ─────……依存したくない……と言うのは、彼女が持ち合わせている最後の理性の砦なのでしょうね。

 

 ─────……それが完全になくなってしまったら、彼女は自分だけで立つことも歩くこともできなくなってしまう。

 

 ─────……だからこそ、彼女は想いに応えない。申し訳なさを感じていても、最後のタガを外したくないから、応えることを拒んでいる。

 

 僕としては、そんなこと気にする必要はない……依存してしまうのであれば依存してしまえばいい……それくらい僕に囚われて、二度と離れることができなくなる程に堕ちてしまえ……が答えではあるが、彼女自身がそれを許さない。

 申し訳なさを感じなくなる程、理性のタガを壊してしまえばいいだけの話だが、それが完遂するまで、彼女はずっと辛い思いをしてしまうのは目に見えている。

 それならば……

 

 ─────……彼女が苦しまない道を歩かせた方が正解なのだろう。彼女が本気で僕に溺れてしまいたいと思うまで。

 

 今はまだ応えなくても構わない。それなら応えたくなる程に、僕が彼女を愛せばいい。

 そこまで考えて、僕もアルバムへと視線を向ける。今開いているページにあるのは、溢れかえる程の日常の一コマばかりだった。

 

「おや、この写真は……」

 

「あ……わたしが寝てる骸にイタズラした奴………」

 

「おやおや……僕が知らないうちにあなたの方からキスをしてきているとは思いもよりませんでしたね。」

 

「神谷さんに促されたんだよ!!確かに実行したのはわたしだけど!!」

 

 そんな中に混ざっていた、恥ずかしそうに赤面しながら僕の頬にキスをする桜奈の写真に、少しだけ口元がニヤけてしまう。

 同時に少しの落胆も出てきてしまい、なかなか複雑な心境になってしまった。

 

 ─────……桜奈からのキスは嬉しいのですが、眠っている間にされたと言うのは少し……いえ、かなりガッカリしてしまいますね。

 

 ─────……なぜ、この時僕は起きていなかったのか……。起きていたら、最高の瞬間に立ち会えたかもしれないというのに。

 

 桜奈からキスをしてもらえるなど、レア中のレアとしか言えないというのに、起きていなかった自身を少しだけ殴りたくなってしまった。

 過去の自分を殴ることなどできないのですが……。

 

「起きてる間にしてくださればよかったのに……」

 

「起きてる骸にできるわけないでしょーが!!絶対そのあと倍返しどころじゃない仕返しが来そうだし!!」

 

「仕返しとは人聞きの悪い……。軽くキスを返すだけじゃないですか。」

 

「そのキス、絶対軽くじゃないよね!?」

 

「そんなことは……ただ、少し舌を突っ込むだけですよ。」

 

「やっぱり軽くどころじゃないじゃんバカ!!」

 

「あだ!?」

 

 桜奈に平手で頭を叩かれる。それなりに力が入っていたのか、なかなかの衝撃を喰らってしまい、叩かれた位置を軽くさすった。

 僕の隣から、「バカ……ホントにバカ……!!」とどこかへとすっ飛んでしまった語彙による罵倒が聞こえてくるが、繋がりからただの照れ隠しであり、嫌悪などは抱いていないことが丸わかりであることを、彼女は理解しているのだろうか……。

 しかも、その表情はイチゴのように真っ赤になっており、恥ずかしそうにしているのも見て取れる。

 

「クフフフ……どうしたんですか、奈月?もしや、少し想像でもしてしまいましたか?」

 

「うっさい!」

 

「おやおや……」

 

 こちらの指摘にさらに顔を赤くしてしまった桜奈の姿に笑いそうになりながらも、僕はアルバムに残る記録にそっと触れる。

 ここから先にページはない。短期間で撮った写真のためか、大きめのアルバムではなかったのだ。

 その事実に少しだけ寂しさを感じる。できることならば、もっと大きなアルバムに、沢山の記録を残せる程の写真を撮りたかった。

 

「……寂しくなりますね。あなたと過ごせる時間は、残りわずかのようですから。」

 

「……うん。わたしも正直言ってすごく寂しい。こんな風に笑えたの、本当に久々だったから。」

 

 “そんな風に思うのであれば、ずっと一緒にいればいい。”

 口から出そうになった言葉を、僕は静かに飲み込んだ。彼女の未来は彼女のもの。僕が決めつけていいものではないのだから。

 

 ─────……決めつけると言う行為は、彼女をマフィアにしようとしていた連中と同じことをするに等しい。

 

 ─────……そんなことはしたくない……。奴らと同じことなど、絶対にしたくない。

 

 ─────……したくないの……ですが…………。

 

 “彼女を永久に縛り付けてしまいたい”。“このまま隣に縛りつけて、悠久の時を生きていたい”……思考に過ぎる感情に、僕は静かに目を閉じる。

 彼女自身が選ぶ未来を尊重したいと言うのに、僕の隣で笑って過ごす未来以外を許したくない……矛盾する自身の感情に、少しだけ吐き気を覚えてしまう。

 

 ─────……ああ、本当に……なんと人間は欲深いのか……。

 

 自身に都合のいいことしか考えられず、それにそぐわないことが起こる度にどうしてと疑問をぶつけたくなる。少なからず怒りも湧いてくる。

 

 ─────……これだから……桜奈以外の人間は嫌いなんですよ。

 

 吐き捨てたくなる言葉を紛らわすように、僕は桜奈を抱き寄せる。

 僕がマイナスの感情を抱いてることに気づいたらしい彼女は、何度か瞬きを繰り返した後、少しでも気を紛らわせるためか、優しく頭を撫でてきた。

 頭を撫でる優しい温もりは、落ち込んだ気分を落ち着かせるには十分過ぎるものだった。

 

「……リボーン達、絶対こっちに来るよね?それまでに考え、まとめられるかな……。」

 

 不意に、桜奈が少しだけ不安気に言葉を呟いた。最後の選択を選び取るために、こっちの方へと戻って来たと言うのに、彼女を迎えに来ようとしている連中が来るまで、明確な答えを出すことができるかわからないようだ。

 それだけ彼女が迷ってくれている……その事実に僕は、少しだけ嬉しく思ってしまった。

 迷うと言うことは、それだけ彼女にとって、僕らと過ごす時間は捨てがたいものとなっているのだから。

 背負わされた責任は大きいもの……それでも責任を捨て去って、僕らと共にいる未来も琥珀色の目に映っている事実……喜びが湧かないはずがなかった。

 

「迷うくらいマフィアって大事なもの?あいつらのやることなんて、最悪以外の言葉がないよ。」

 

「オレらのことをコケにして、害虫みてーに次々と殺して、沢山のものも奪ってく……そんな奴らの仲間になんかならねー方がいいに決まってるびょん!!

 奈月らって傷つけられるかもしんねーぞ!?それでもいいのかよ!?」

 

 確かな迷いが彼女にあること……それは犬と千種でも強く感じ取れるものだった。

 その証拠に2人は、桜奈に自分達と来ることを選んだ方がいいことをハッキリと伝えている。

 僕の記憶を通して、かつての出来事をその目で見た彼女は、それを否定することができないのか、少しだけ泣きそうな表情をしながら、2人の頭を優しく撫でた。

 

「……奈月。これは、僕からの提案なのですが、少しだけ聞いてくれますか?」

 

 自分から離れてしまった温もりに、少しだけ寂しさを抱きながらも、僕は静かに口を開く。

 僕の言葉を聞いた桜奈は、キョトンとした表情を見せて、緩やかに首を傾げる。

 その姿を見て、僕は静かに口を開いた。彼女が答えを出すための時間稼ぎ……そのためにできる、僕と彼女だけの方法を。

 

「……一時的に、僕とあなたの精神を入れ替えましょう。互いに憑依することができる、僕とあなたの特権……それを存分に利用してやるんですよ。」

 

 

 




 小鳥遊 桜奈(沢田 奈月)
 骸達と過ごすことに心地良さを感じているため、明確な迷いが生まれてしまった10代目候補。
 自身が依存したくないからと、周りの想いに応える一歩が踏み出せない。

 六道 骸
 桜奈とずっと一緒にいることを望み、明確な依存状態が発生している脱獄した術士。
 彼女が想いに応えられない理由に見当はついているが、それを取っ払ってしまいたい。
 彼女が答えを出すための時間稼ぎ、その方法として、自分達の意識を入れ替えることを提案した。

 犬&千種
 奈月の迷いに気づいているため、迷うくらいならマフィアなんて捨てて自分達と共にいればいいと説得を試みる。

 リボーン
 獄寺、山本、ヒバリの3人に、桜奈がいる場所を教えたアルコバレーノのヒットマン。
 桜奈が海を好む理由……その答えに情報だけでたどり着いたが、真実ではないと言う否定が欲しい。

 雲雀 恭弥
 奈月の居場所の情報を得て、愛車で移動する風紀委員長。
 しかし、リボーンが口にする嫌な予感と言う言葉は頭に入っているのか、単独で突っ込むのは少しだけ待つ意思を見せた。

 獄寺&山本
 たまにボーッとしているリボーンを心配しながらも、彼が提示した奈月の居場所に向かう両腕候補。
 リボーンから何度も移動する可能性があると言われ、そのことも想定した上で移動を始めた。


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