最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 先々言ってしまった黒色を追い、虹の黄色は歩みを進める。
 ようやくたどり着いた本拠地の手前……足を止めていた黒色と合流し、乗り込んだ彼らを待ち受けていたのは、眠る桜と、桜を守るように存在していた3人の少年達だった。

 side REBORN.


貝は藍色に邂逅する

 黒曜ヘルシーランドの跡地。そこの奥へと向かうために歩みを進めるオレ達の前には、制服を着ている大量の気絶した人間の姿が転々と存在している。

 ここら辺の学校と言えば、黒曜中学校くらいしかないはずだが、そこの生徒達だろうか。

 ちらほらと見える顔立ちは、どことなく不良と言えるような容姿をしているものが多い。

 

「……どうなってんだ、これ?」

 

「男子生徒が沢山気絶してるな……。」

 

 異様な光景に、少しばかり困惑している獄寺と山本。オレはそんな2人のことなど気にすることなく、近くに倒れている男子生徒に近寄る。

 完全に目を回しているそいつは、よく見ると殴打を受けたような傷があり、その範囲からして、ヒバリのトンファーによるものであることがわかった。

 

「……どうやら、ヒバリがこいつら全員を伸してるみてーだな。おそらくだが、足を進めるたびに襲って来たんだろう。」

 

「ええ……?」

 

「ヒバリの野郎が誰をボコそうが知りませんけど、なんでこいつらアイツを襲ったんスかね?

 確か、10代目とヒバリは並盛中学校の2大柱として他校の不良でも知ってるはずですけど。」

 

「うん、ちょっと待て獄寺?ヒバリはともかく、ナツもそれってどう言うことだ?」

 

「並盛で発生した不良達の問題を女手一つで解決するどころか、ヒバリと同じように不良をのしちまうからそう言われてるんだよ。

 まぁ、不良共の間じゃ、まだ10代目と接触するのは優しい方だって言われてるらしいがな。」

 

「優しいのか……」

 

「ああ。10代目は“仏の顔も三度まで”、が基本だからな。最初は忠告だけ、2回目はその場で説教、3回目になると再起不能になるまでボコられるって言ってたぞ。」

 

「……誰から聞いたんだそれ………。」

 

 山本が苦笑いをこぼする中、オレはあることを思い出す。

 それは、桜奈が風紀委員会の仕事をする中、獄寺が学校にいる不良と話していた姿だ。

 獄寺はしょっちゅう不良に絡まれ、度々喧嘩沙汰に発展していたが、その時の不良達は、明らかに獄寺に対して喧嘩腰になっておらず、獄寺もそいつらとただ話してるだけだった。

 あまりにも珍しかったため、なんとなく話を聞きに行ってみたら、不良達から別の地域の不良の話を聞き、並盛中学校の不良がその不良達から問題を吹っかけられたことや、別の地域の不良が、並中の人間に絡んでいたりした場合、それを桜奈に伝えると言う流れの会話をしていたのである。

 

「……獄寺。もしかしてナツにこってり絞られたり、〆られた並盛中学校の不良と繋がりがあったりすんのか?」

 

「んな!?な、なんでリボーンさんがそれを!?」

 

「やっぱりあったか。ナツとヒバリが不良界隈でどんな扱いを受けてるのかもその時に聞いたんだな。」

 

「ゔ……さ、流石リボーンさんです……。そうなんスよ。そいつら、10代目から説教されて、自分達がどんだけ浅はかだったか思い知らされたみてーで……。

 なんか、10代目から目をつけられてたらしくて、ヒバリと同等にやり合う相手に逆らえるわけもなく、オレに絡む理由を洗いざらい吐かされたのち、それにブチギレた10代目から説教と一緒にオレに対する評価や褒め言葉とか聞かされたらしいんスよ。

 そんで、自分達が側しか見ずに散々絡んでいたことが情けなくなっちまったって言ってました……。」

 

 少しずつ照れたような表情を見せ、何があったのかを話した獄寺の様子に、その不良達からどんな風に褒められたのか聞かされたのだろう。

 対して話を聞いていたどことなく鈍感な山本は、獄寺の嬉しそうな様子に、少しだけ拗ねたような表情を見せている。

 自分も褒められたいと思ったのか、それとも好いた女が自分以外の男を褒めていることが嫌だったのか……なんにせよ、嫉妬していることがわかった。

 

「そんで、不良達曰く、10代目からこってり説教を食らったあと、大人しく話を聞いていたことを褒められたらしくて、そのあと、どうして自分達は不良になったのか聞かれたそうです。

 それで、成績の不審だったり、人間関係に対するいざこざだったりを話したようで、自分達の話を最後まで聞いた10代目から、ずっと大変だったんですねって褒められたみたいです。

 それで、そのあと自分達の悪かったところだったり、抱えていた問題をどうすれば解決できるのかをアドバイスされ、半分そんなことしても意味ないと思いながらも試しに1週間実行してみたら、抱えていたことがウソみたいに解決したらしいんですよ。

 それと、10代目が寄り添うように話を聞いてくれたことにもスッキリしたようで、それからオレに、10代目の役に立ちたいからといろいろ教えてくれるようになって……」

 

「なるほどな。」

 

「ナツって、そう言うところあるんだよな。オレもそれに助けられたし、きっとその人らも助かったんだろうな。」

 

「ああ。」

 

 しかし、拗ねたような表情は、次第に桜奈の性格の話により和らいで行き、小さく笑って桜奈にはそう言うところがあると相槌を打つ。

 ……人は、割と他人の粗探しをしやすい。それによりイケスカナイと判断したら、とことんソイツを嫌い、次々と粗を探してそこをつつく性を持ち合わせている。

 もちろん、全ての人間がそうだとは言わないが、何かしら痛いところを突こうとする奴は少なくない。

 だが、桜奈は決してそれを行わない。粗よりも良いところを見つけ出しては、それを評価し、伸ばすことに長けている。

 その過程で粗を見つけた場合、それを否定するのではなく、それもまた一つの答えだと受け入れ、それでいて良い方向に持っていくための意見を口にする。

 良いところも悪いところも全て受け入れて、だけど良い方向に持っていく流れを作り、試しに数日から1週間程やってみてくれと伝え、それを実行させる導きの才……それがどれだけ人に影響をもたらすのかなど知らないで、無意識のうちに評価とアドバイスを行うところは、桜奈として生きていた場所で、どれだけ人を率いることに長けていたのかを把握するには十分過ぎる力だ。

 

 ……だが、逆にそれは桜奈の欠点だと今のオレは思うようになっていた。

 人を良い方向へと導き、その過程で多くの人を惹きつけ、無意識のうちに自分を頼られる存在に置く……まるで、頼られなくては意味がないと言うように、自分のことを見てもらえるように仕向ける姿勢は、桜奈の精神を逆に摩耗させてしまう要因となっていた。

 

 ─────……オレも、それに乗せられてしまった人間の1人だな。その才能を見せつけられていたことにより、ボンゴレの時期ボスは桜奈しかいないと思ってしまった。

 

 限界を巧く隠す桜奈の方が上手だったと判断するべきなのか、それとも、その才覚の裏に隠れていた本心に気づけなかった自分を情けないと罵るべきなのか……。

 どちらが正しい答えなのかはわからない。だが、これだけは理解できた。

 

 ─────……そんなことをしなくても、オレはお前をちゃんと見てるから、もう、無理をしなくていいと、早い段階で言ってやることができていれば、本当の意味で桜奈を本来の桜奈に戻してやれたはずなのに……。

 

 考えれば考える程、オレが取っていた一手の全てが間違いだったと言う後悔に苛まれる。

 もっと早く寄り添っていれば、頼られる桜奈と言う仮面を壊してやることができていれば、あんな手紙を書かせてしまうことはなかっただろう。

 どうして、無理に責任を全うしなくていいと言って、複数の道を残してやれなかったのか、頭を抱えたくなる衝動に、深く溜息を吐き出した。

 

「小僧?大丈夫か?」

 

「お疲れのようでしたら、一旦休みますか?」

 

「……いや、別に疲れたわけじゃねーぞ。ずっと山本の肩に乗ってるからな。

 ただ、少しだけ大切な女を本当の意味で助けてやれなかったことに頭を抱えたくなってただけだ。

 もう少し早く寄り添ってやれたら、辛い思いをさせることもなかったんじゃねーか……ってな。」

 

「「?」」

 

 オレの言葉に、獄寺と山本が首を傾げる。桜奈のことは好いているが、それは恋愛とかの感情からではなく、親愛や師弟愛と思わせるようにしていたことや、表立ってそう言った感情を見せたことがないため、オレが口にした女が誰なのか辿りついてないのだろう。

 それならそれで構わない。むしろ、桜奈のことを示すことに気づかれなくてよかったかもしれない。

 こいつらのことだからな。それなりに邪魔されちまいそうだ。

 

「……獄寺。山本。お前ら、ナツのことは好きか?」

 

「「い゛!?」」

 

 そんなことを思いながら、それとなく紡いだ桜奈に対する好意への質問に、獄寺と山本が顔を赤くして固まる。

 2人して全く同じ反応をするとはな。やんややんやとしょっちゅう言い争ってる割には、息がピッタリだ。

 

「好きなんだな。」

 

「いや、その、これは……!!」

 

「………ああ。ナツのこと、好きだぜ。」

 

 そんなことを考えていると、狼狽える獄寺とは違い、山本はハッキリとした声音で桜奈を好いてることを口にする。

 まさか、山本がそんなにハッキリ言うとは思わなかったのか、獄寺は目を見開いて固まっていた。

 

「最初はさ。スランプの時に助けてもらったから、何か恩返しがしたいって思ってただけだった。

 何か困ってることがあったら、すぐに助けてやれたらって思って、ナツと一緒に過ごしてたんだ。

 でも、ナツと一緒に遊んで、時には怒られたりもして、それでも一緒に笑ったり、話したりしてるうちに、オレはナツが好きなんだなって思うようになったんだ。

 オヤジからナツのことばっかり話してるって言われたり、ナツがヒバリと一緒に過ごすようになって、話す時間が少なくなって、そんでディーノさんとかとも一緒に過ごして笑ってる姿を見てモヤっとしたりして、ハッキリとそうなんだってわかった。

 小僧がナツを迎えに行くのは明日にしようって言った時なんか、正直言って、すっげームカついたんだぜ?

 早くナツに会いたい、攫われたんなら助けたいって思ってんのに、後回しにされて……」

 

 “少しだけ、殴りたいと思ったくらいにはナツが好きなんだ”と、素直な気持ちを吐露する山本に、そうかと小さく相槌を打つ。

 温厚な山本からそんな言葉が出てくるとは思わなかったが、それだけ桜奈を愛している証拠だ。

 

「獄寺はどうなんだ?」

 

「……オレも、正直言って、10代目のことは……奈月さんのことは、1人の女として好いてます。

 最初はその実力を測るためだけに喧嘩を吹っかけて、それでいて鮮やかな手口で負かされて、この人にならついていきたいと思っただけでした。

 でも、奈月さんと一緒に過ごすようになって、時にはどうしようもないオレに寄り添ってくれて、オレの全部を受け止めてくれるその姿勢に、いつのまにか惹かれていたんです。

 ハッキリと奈月さんが好きだと思ったのは、初めてヒバリと戦闘になったあの日、泣きそうな顔で無理をしないでほしいと言われた時でした。

 オレ達のことを本気で心配して、本心から安堵した姿を見て、この人のためにも、これからは無茶をしないようにしなきゃって……。

 その……そう思っていても、これまで散々無茶しちまってた気がしてやまないんですけど……。」

 

 申し訳なさそうにしながらも、自分の想いを吐露する獄寺に、確かに無茶してるところはあるなと思いながら、山本の話を聞いた時と同じように一言相槌を打つ。

 やっぱりこいつらも恋敵か……なんて、少しだけ笑いそうになりながら、オレは静かに口を開いた。

 

「……だったら、好きな女を頼るだけじゃなく、好きな女に頼られる男にならねーとな。

 今回のナツの失踪は、精神的な負担の方も関係があったらしいしな。」

 

「精神的な負担……」

 

「オレ達はナツを頼り過ぎてたんだな……」

 

「ああ。頼るなとまでは言わねーが、ナツからも頼られるように、尚且つ負担を減らしてやれるように、男を磨く必要がありそうだ。

 ナツを迎えに行って帰ったあと、きっちり頼られる男とは何かを教えてやる。

 ……オレも、改めて復習しておきたいしな。好いた女が素直に甘えられるような存在になるためにもな。」

 

 オレの言葉に、再びキョトンとする獄寺と山本に、小さく笑い返しては、本拠地になっているであろう建物の前に移動するように伝える。

 しばらくしてたどり着いたそこでにはヒバリが容赦なく不良を殴り飛ばしている姿があった。

 

「「うっわ……」」

 

 殴り飛ばされた不良がかなり吹っ飛んだためか、獄寺と山本が若干引いたような様子を見せた。

 だが、よく見るとその顔は少しだけ青くなっており、自分達が容赦無く殴り飛ばされて床に沈められた時の記憶が軽くフラッシュバックしたことが読み取れた。

 

「……君達何してたわけ?少し遅くない?」

 

「んだと!?」

 

「待て待て獄寺。噛みつくなって!今はそれどころじゃねーだろ?」

 

「チッ……」

 

 山本に宥められ、舌打ちをこぼす獄寺。ヒバリは2人のやり取りなど気にしていないのか、オレ達が到着するまでに沈めておいた不良を蹴り飛ばして退かしていた。

 

「襲われてたのか?」

 

「そうなるね。対して歯応えはなかったけど、数だけは多かったよ。全員、黒曜中学校の生徒ばかりだね。

 何度か並中(うち)の生徒と喧嘩沙汰を起こしていたからよく覚えてる。

 ただ、あれだけ咬み殺しておいたのに、その時の生徒が混ざってたことには少し驚いたかな。」

 

「ヒバリが〆た奴らが混ざってたのか?」

 

「そう。一度土に沈めた連中が、まさかまた襲ってくるとは思わなかった。」

 

「……何か気づいたことはねーか?妙な違和感とかは?」

 

「違和感……?ああ、そう言えば、僕のことに気づいていなかったような気がするよ。

 まるで、縄張りに足を踏み入れた存在は襲うように指示された人形みたいだった……と言えばいいのかな。」

 

「……なるほどな。」

 

 マインドコントロール……ランチアに六道骸が施していたことを知っていたが、まさか、自身が潜伏する生徒にまでそれを施していたとは思いもよらなかった。

 目的はおそらくだが足止めだろう。自分の邪魔をされたくなかったのか、それとも桜奈に頼まれたのか……。

 後者だとしたらかなり精神的に痛手を感じるため、そうではないと思いたいもんだ。

 もし、後者だとしたら、桜奈からオレ達に会いたくないと言われているようで、かなりダメージが大きい。

 

「何かわかったわけ?」

 

「……まぁ、可能性としてだが、六道骸から何かしら吹き込まれたんだろうな。あるいは六道骸が精神掌握に長けており、何かしら洗脳をする術を持ち合わせているかだ。

 なんにせよ、六道骸が操っていたことには変わりねーだろうな。何かに思い込ませ、敵対者の排除を目的にしていたんだろう。」

 

「ふぅん……」

 

 さして興味を示すことなく、ヒバリは目の前にある建物の入口に視線を向ける。

 そこから先に人の気配は感じ取れない。不良を外に総動員して、邪魔をしていたのか、それとも内部に仕込んでる奴らが息を潜めているのか。

 

「ヒバリ。不本意だろうが、こっからはオレ達と行動を取ってくれ。

 距離は置いていていい。ヒバリが先行していてもいい。ただ、不測の事態にだけは備えてほしいんだ。」

 

 そんなことを考えながら、オレはヒバリにこれからの行動に関して話す。

 予想通り、ヒバリはかなり不機嫌な表情を見せたが、一つ溜息を吐いて廃墟と化している建物に足を踏み入れる。

 

「遅かった置いていくから。」

 

 だが、こっちの意見は聞いてくれるのか、渋々受け入れる様子を見せる。

 そのことに小さく頷き、オレは静かに口を開いた。

 

「悪いな。ナツを迎えに行って並盛に帰った時は、1週間くらいナツを独占してもいいぞ。

 ただし、その1週間の間、せめて3日か4日は仕事しねーことを条件にだがな。

 どうやらナツは、いろいろやり過ぎて疲れちまってるみてーだしな。」

 

「……その約束、絶対に破らないでよ。」

 

「ああ。オレは余程のことがねー限りは約束を破らねーぞ。」

 

「そう。言質は取ったから。」

 

 そう言ってヒバリが見せてきたのは携帯電話だった。再生されたのは、オレが口にした言葉と全く同じもの。

 いつの間に録音されていたんだと少しだけ驚いていると、ヒバリは小さく笑う。

 

「奈月が笹川了平にボクシング部に入れと言われた時、絶対に約束を違えさせない方法として使っていただろ?

 だから僕も少しだけ真似をしたんだよ。君のことだから、何かしら僕に言う時、必ず奈月を引き合いに出してくると思ってたからね。」

 

 ……まさか桜奈がよくやる手口と全く同じことをヒバリがするとは思わず無言になる。

 どうやら桜奈は、周りに様々な影響を与える天才だったらしい。

 

「ちゃんと交換条件は出してもらったし、今回は大人しく聞いてあげる。だけど、僕の半径3メートル以内には入らないでね。それ以上近寄られると蕁麻疹が出る。」

 

「アレルギーかよ……」

 

「奈月からも群れアレルギーかってツッコまれたよ。あの子以外からそう言われるのはかなりムカつくから、次からは言わないでくれる?もし、次にそれ言ったら君達全員咬み殺すから。」

 

「あはは……まさかの連帯責任な……」

 

「巻き添え喰らうのは勘弁だぞ。次は言うなよ獄寺。」

 

「……わかりました。」

 

 不服そうにする獄寺に、山本が苦笑いをこぼす。

 対するヒバリは、オレ達のやり取りを一瞥したのち、先行して廃墟の奥へと歩き始めた。

 その背中を追うように、オレ達も廃墟の奥へと足を運ぶ。六道骸がいる場所へ向かうために。

 

 

 

 

 

 

           ❀

 

 

 

 

 

 ……廃墟の中はかなりボロく、同時にそれなりに襲撃者が存在していた。

 奥へと足を運ぶたびに、たびたび邪魔をするように、ヒバリに襲いかかるそいつらは、容赦なくヒバリに殴り飛ばされる。

 標的は獄寺や山本にも向けられたが、それなりに鍛えておいた2人が負けるはずもなく、来るたびにそれを排除する。

 念の為にと山本にいくつか自身が持ち合わせている技術を教えておいたが、どうやらそれは正解だったようだ。

 山本のことも大切にしている桜奈のことだから、山本が暴力沙汰を起こし、人に怪我をさせてしまったりしたら、ショックを受けることは予測できる。

 それなら怪我をさせないように、尚且つ的確に相手の動きを封じられるように、鳩尾や顎、首の後ろなどに衝撃を与えて気絶させる方法を教えておいたんだが、ここで役に立つとはな。

 

「……山本、お前いつの間にそんな技術を身につけたんだ?」

 

「ナツを守れるようにって小僧が教えてくれたんだ。一撃で人って気絶すんのか?って最初はちょっと思ってたけど、できるもんなんだな。」

 

 自身が気絶させた不良を見ながら、初めての感覚に目を丸くしている山本。

 獄寺からは、どことなく拗ねたような視線を向けられた。自分には何も教えてくれないのかとでも言いたげだ。

 だが、山本とは違って獄寺は戦闘の基礎に関してはあまり教えることがない。

 強いて言うならば、慢心して相手の力量を見誤るところは治してーところだが、そこら辺は治すまでかなり時間がかかるため、今はまだ後回しでも問題はない。

 まぁ、そろそろ本腰を入れてそこら辺もキッチリと教えて、無駄に突っ込む癖を治させねーと、本格的にマフィアの組織とぶつかった時、周りを巻き添えにして自滅するかもしれねーか。

 

 そんなことを考えながら、廃墟の中を歩き回る。途中途中で階段や非常口を見つけたが、どの道もすでに崩壊していたり、意図的に壊されている様子があるため、進むべき道は固定されていた。

 しかも、奥に行くたびに不良に出会すおまけ付きのため、なかなか面倒なこと極まりない。

 ただ、ランチアやランチアと一緒に行動を取っていた連中が混ざっていたらもっと厄介だったかもしれないと思うと、不良だけを乱雑に置いてくれている今の方がマシかもな。

 

「なんか上がれそうな場所が一つだけあるな。」

 

「敢えて道を一つに絞ってたのか?」

 

「それしか考えられないだろ。その上道は狭くされてる分、いちいち出てくる不良の相手をさせられるし。」

 

「体力の消耗と、ナツを迎えに来たオレ達の足取りの遅延を狙ったんだろうな。

 六道骸はナツにかなり入れ込んでるみてーだし、ナツに対するちょっかいの邪魔をされないようにしていた可能性が高いぞ。」

 

 オレが口にしたちょっかいと言う言葉に、獄寺とヒバリは殺気を軽く見せ、山本は憤りを見せる。

 こいつら、本当に桜奈が好きなんだな……と少しだけ他人事のように考えながらも、湧き上がる苛立ちに舌打ちをしそうになった。

 

 ─────……自分で自分が紡いだ言葉に苛立つなんてな……。オレも相当、桜奈には惚れ込んでいるらしい。

 

 そんなことを思いながらも、上の階へ上がってみると、2階に位置する場所は瓦礫により閉ざされていた。

 見た感じ、自然と崩れちまったようだし、2階は使えなかったのだろう。先にある3階は足を踏み入れることができそうだ。

 ヒバリもそれに気づいたのか、さっさと3階に位置する場所まで上がった。

 続けてオレ達も3階に上がってみれば、そこには大きな扉が複数あった。

 階に存在している名残から、どうやら映画館が並んでいた場所のようだ。

 

「こっちから人の気配がするね。」

 

「ああ。しかも、オレ達が上がってきた瞬間、気配を隠さず出してきやがった。」

 

「それって、オレ達を呼び込んでる……ってことっスか?」

 

「それで間違いねーだろうな。」

 

「……てことは、骸って奴がここに?」

 

「おそらくな。」

 

 3階に上がった瞬間、わざとらしく存在感を放つ気配に、あえて呼び込まれていることを悟る。

 例え罠であろうとも、無視することができないそれに、少しだけ表情を歪めながらも、オレ達は移動を開始した。

 

「……随分と早い到着ですね。やはり、ただの不良程度では、あなた方の明確な足止めには程遠いものだったらしい。」

 

 程なくしてたどり着いた気配を強く感じ取れる部屋。

 そこに足を踏み入れてみると、スクリーンがあったのであろう場所に、3人の男が待ち構えていた。

 

「ようこそいらっしゃいました、アルコバレーノ、リボーン。および、並盛中学校風紀委員長、雲雀恭弥。そして、2年A組、獄寺隼人と、2年A組、山本武。」

 

 そのうちの1人……真ん中に座っている男が不敵な笑みを浮かべながら、静かに顔を上げる。

 その瞳には青天のような青色と、六の文字が刻まれている黄昏のような赤色がハマっていた。

 

「初めまして。僕が六道骸です。あなた方が愛してやまない、沢田奈月を攫った張本人です。」

 

 

 

 




 リボーン
 桜奈を引き合いに出すことにより、雲雀を従わせたアルコバレーノなヒットマン。
 念の為にと山本に、桜奈を守るために使える技術として、相手の急所に一撃だけ入れて気絶させる方法を教えていた。

 獄寺 隼人
 雲雀と行動を取ることがかなり不服だが、リボーンが言うならと渋々同行することにした未来の両腕候補の片割れ。
 山本が知らないうちにリボーンから戦闘技術を教えてもらっていたことに軽く拗ねたが、今は口を噤むべきだと判断したのか、表情にそれを見せただけ。

 山本 武
 ちゃっかりリボーンから対人戦で役立つ意識を奪う攻撃を教えられ、それを身につけちゃって軽く強化された未来の両腕候補の片割れ。
 奈月が好きなのかと言うリボーンからの問いかけに、迷うことなく好きだと答えた。

 雲雀 恭弥
 奈月を引き合いに出された結果、リボーン達に同行することにした風紀委員長。
 奈月がやった、約束を絶対に守らせる方法をちゃっかり真似してリボーンとの口約束を録音する。

 六道 骸
 とうとうリボーン達と邂逅を果たした脱獄者たる術士。
 桜奈に提案した作戦通り、実際は桜奈の肉体に精神を入れ替え憑依させた状態だが、本来の自身の姿を幻術で見せて対峙する。



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