最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 桜の花の味方を藍色達に頼んだ虹の黄色と要請を受け入れた藍色の少年達。
 そんな彼らの元に姿を現したのは、隕鉄の名を持つ幻月の虹だった。
 幻月の虹は、桜と藍色達が共に過ごせるように処遇を決めなくてはならないことを告げ、しばらくの間、自分に藍色達の預かりをさせて欲しいことを伝えた。


幻月の介入、一時の別れ

「よぉ、リボーン。どうやら、件の事件は解決したようじゃないか。それなら、あとはオレの仕事だ。」

 

 わたしの答えを聞き、骸達にわたしの味方になってほしいとリボーンが告げ、それを骸達が引き受ける中、これまで聞いたことがない第三者の声が辺りに響く。

 驚いて声の方へと振り向いてみると、骸と犬、そして千種の3人がわたしの前に出て、それぞれの武器を手に取った。

 彼らの隙間から見えたのは、月をそのまま髪にしたようなプラチナブロンドと、夜空の色をそのまま宿したような濃紺の瞳を持つ青年と、ローブと包帯をまとい、どこか不気味で、だけど、不思議とその気配はアルコバレーノに似たような揺らぎを持つ複数の人だった。

 

「……誰?」

 

「……先頭にいる男の詳細はわかりませんが、背後にいる連中ならわかります。

 あれは復讐者(ヴィンディチェ)と呼ばれる者達で、掟の番人と言われている存在です。」

 

「掟の番人?」

 

「ええ。マフィアの世界には方で裁くことができない出来事もしばしばあります。

 復讐者(ヴィンディチェ)はそんなマフィアを拘束し、収監するのが仕事なんですよ。

 まぁ、おおよそ目的は理解しています。僕と犬、そして千種を拘束しに来た……と言ったところでしょうね。」

 

「!?」

 

 “骸達は悪くない”……一瞬出そうになった言葉をすぐに飲み込む。

 脳裏を過ぎるのは、共犯しようと2人で企んだ時に骸から告げられた、いざと言う時は自分を庇うことなく切り捨てろと言う言葉だった。

 わたしが一瞬、何を口走ろうとしたのか気づいたであろう骸は、黙り込んだわたしを見て小さく笑う。

 それでいいと言うように。

 

「大正解……と言いたいところだが、今回は少し違う。まぁ、結局のところ、オレのワガママなんだけどね?」

 

「え?」

 

「あなたのワガママ……ですか?」

 

「そう。まぁ、こいつらを連れてきた理由は、君達のその行動を見せるためってところだね。

 だって納得してくれないもんだからさぁ、この包帯ローブ共が。さっきまでずっと、六道骸達は復讐者(ヴィンディチェ)側で拘束すべきだ、奈月ちゃんの側にいさせるべきだってやんややんやしてたところだよ。」

 

「……?なんで、私の名前を………。」

 

 やれやれと肩をすくめて、背後の人達とどんなやりとりをしていたのかを告げてくる青年に、わたしは少しだけ困惑する。

 どうしてこの人は、わたしの名前を知っているのだろうか……。

 

「奈月ちゃんのことはよく知ってるよ。ずっと見守ってきたからね。少しずつ自分の思いや意見を口にできるようになってるようで安心したよ。

 昔のキミは周りを優先するばかりで、自分のワガママを口にしようとしなかっただろう?

 ようやく、本当の意味で自分を取り戻して行ってるようだからよかったけど、これまで本当に心配していたんだよ。」

 

「「!」」

 

 自分のことを知ってる彼に疑問を浮かべていると、青年はわたしのことをよく知っていると告げてきた。

 それによりわかったのは、青年は奈月としての私だけでなく、桜奈としてのわたしのことも知っていると言う事実だった。

 思わず、わたしと骸は青年の言葉に反応して目を見開く。どうしてそのことまで知っているのだと問うように。

 

「オレがなんでこんなに物事を知ってるんだって反応だね。まぁ、予想通りと言ったところかな。

 さっきも言ったように、オレはずっとキミを見守っていたんだよ。この世界に生まれ落ちる前からずっとね。

 ちゃんとこの世界に馴染めてるだろうか、とか、ちゃんと愛されてることを自覚してくれるだろうか、とか考えながらさ。

 オレはキミに沢山愛されて、沢山幸せになってもらいたいんだ。昔みたいに、1人で苦しみながら泣いてほしくなかった。

 だけど、オレはキミに手を貸してあげることができなかった。あの時のオレは、実体がなかったからね。」

 

 桜奈としてのわたしのことも、ずっと見守っていたのだと告げてくる青年に、わたしはさらに混乱する。

 この人の声をずっと聞いていると、どこか懐かしく思えてきてしまう。どこで聞いた声かはわからない。だけど、その声に助けられたような、そんな気がして来るのである。

 

「……あなたは、いったい…………?」

 

「おっと……あまりにも久々に直接声を聞いたもんだから、少しばかり余計な話をし過ぎちゃったかな。

 ただ……そうだね……。オレは、幼い頃からキミのことを見守って、愛していたとだけ言っておくよ。

 キミが良く知る男の子達よりずっと前からね。本当は、あの時できなかった分、すぐにでも抱きしめて、ずっと頑張ったねって頭を撫でてあげたいところだけど、今はその時じゃない。」

 

 わたしの問いかけをはぐらかすように言葉を紡ぎ、口元に笑みを浮かべる青年に、わたしは思わず無言になる。

 今はその時じゃない……今のわたしには、話す必要がないと言うことなのだろう。

 本当は、もっと探りたいところだけど、明確な答えは返ってこないとわたしの直感は言っていた。

 きっと、それを知ることになるのは、もう少し先の時だから、今は待てと言われているようだった。

 

「探らないでくれてありがとう。そうだな……オレが自ら明かすのは、もう少し先だが、もし、キミがオレに対して感じていることに関しての答えに自らの足でたどり着いたら教えてあげよう。

 それがすぐになるか先になるかはキミ次第。だが、必ずオレは君に答えを教えると約束しよう。キミが知りたいと思うのであれば……ね。」

 

 青年はそう言って小さく笑い、わたし達の方に歩み寄る。

 骸達が彼を警戒する中、無言でわたしは青年を見つめ続けた。

 

「ああ、でも、今の段階で明かせることが一つある。それはオレの名前だ。

 オレの名前はメテオライト。世界の観測者であり、何があろうともキミの味方をするアルコバレーノさ。

 見た目は明らかに青年だけど、この通り呪い付きの邪魔くさいアクセサリーが着いてるんだよね。

 呪いとしては、他のアルコバレーノが赤ん坊になって成長しないと言うものとは別枠のもの。

 言うなれば不老不死ってところ?全くもって面倒臭い。まぁ、その分与えられている権力はかなり大きくてね。

 ある程度のワガママは、そこの包帯ローブ共に通せるってわけ。」

 

「ええ………?」

 

「それはそれでどうなんですか……?」

 

「こいつ……かなりの年寄り……?」

 

「そうらしいね。信じられないけど。」

 

 わたし達が軽く引いていると、メテオライトと名乗った青年は、その場でカラカラと朗らかに笑う。

 予想通りの反応だったのだろう。なんだかすごく楽しそうだ。

 

「さて、本題に入ろうか。六道骸と城島犬、そして、柿本千種。キミ達の身柄に関してなんだが、しばらくの間、オレの預かりになってもらいたいんだよね。」

 

 なんなんだこの人……と戸惑いながら、目の前に来たメテオライトさんを見ていると、彼は本題に入りたいと口にする。

 続けて紡がれた言葉は骸達に対するもので、しばらくの間、3人には自分の預かりになってもらいたいと言うものだった。

 

「……なぜ、あなたの預かりにならなくてはならないのですか?」

 

 アルコバレーノであると言う理由から、彼がマフィアに関係する者であることは明白で、そんな彼からの指示に、骸達は嫌悪の表情を見せる。

 どうして自分達が、お前の指示に従わなくてはならないのか、繋がりからもその感情が伝わってきた。

 

「その言葉はもっともだ。オレとしても、このまま奈月ちゃんの側にいていいよと言いたいところだよ。

 でも、ほら、キミ達3人は、脱獄に強盗、不正な渡航に他ファミリーへの襲撃教唆、その上ボンゴレ10代目候補者である奈月ちゃんをしばらく連れ回してくれた誘拐と罪状がかなり重なっちゃってるからね。

 ペナルティなしでそのまま奈月ちゃんの元に置くことはできないってそこの包帯ローブ共がうるさいんだよ。」

 

 うんざりといった表現が似合いそうな程に表情を歪めるメテオライトさんに骸達は静かに顔を見合わせる。

 しかし、すぐにいくつも思い当たる節があるのか、言われてみれば……と言わんばかりの複雑な表情を浮かべては、メテオライトさんに視線を向ける。

 彼らが自分達の立場を理解したことを確認したメテオライトさんは、再び口を開く。

 

「理解してくれたようで何よりだよ。まぁ、オレとしてはね?奈月ちゃんの側に置くことを考えて、ボンゴレの監視下に入り、その監視役を奈月ちゃんにしてもらうって案があったんだけど、彼女はこっち側の認識だと誘拐された被害者と言うことになるし、今のボンゴレはティモッティオ坊やのものだから、ボンゴレの監視下となるとそっちに主権がいっちゃうんだよね。

 だから、奈月ちゃんの主権を維持したままでキミ達の処遇を考えないといけないから、しばらくオレの預かりにさせてほしいんだよ。」

 

 改めて理由を告げられた骸達は、再び顔を見合わせる。どうしたもんかと表情を曇らせる骸達を見たわたしは、少しだけ考えたのち、静かに口を開いた。

 

「……メテオライトさん。もし、その話を骸達が蹴った場合、彼らの処遇はどうなるんですか?」

 

 紡いだ言葉は一つの疑問。

 とは言え、この疑問に対する答えなどわかりきっている。

 

「そうなった場合は、包帯ローブ共が管理している監獄への投獄になるかな。

 罪状が罪状だから、どれくらいで表に出てくることができるかわからなくなる。最悪の場合、一生牢獄暮らしだ。

 だからこそオレは、最善を選びたいんだ。奈月ちゃんには……彼女には……キミ達の存在も必要不可欠だからね。」

 

 返ってきた答えに、骸達はやっぱりかと言う反応を見せる。わたしも彼らと同じように、予想通りの答えに少しだけ目を伏せた。

 複数の罪状が重なっている以上、その道は避けることができないだろう。

 

「……骸。ここは一旦、彼の申し出を受けた方がいいんじゃないかな?」

 

 メテオライトさんが口にする言葉は正しい……だけどマフィアに従うのは嫌だ……様々な感情を抱いてる骸達に、わたしは静かに声をかける。

 彼の指示を聞くのが嫌だと言うのであれば、わたしがその背中を押せばいい。

 

「メテオライトさんの提案、わたしは賛成だよ。罪状が重なっていながらも、実質軽くすることができるようなものだから。

 まぁ、ペナルティがどれ程のものになるかはわからないけど、骸達と会えなくなるよりは何倍もわたしは嬉しいよ。

 ……骸達がいてくれた方が、わたしも気が楽だし、乗ってみてもいいと思う。」

 

 “骸達と離れたくない”……その想いを繋がりを通して骸に伝えながらも、わたしは自分の意見を口にする。

 わたしの言葉と、繋がりを通して教えた気持ちの両方を聞き届けた骸は、驚いたように目を丸くしたあと、口元に穏やかな笑みを浮かべてわたしの前にしゃがみ込む。

 

「……あなたがそこまで言うならば、僕は彼に従いますね。」

 

 繋がりを通して感じ取れた確かな歓喜の感情。

 わたしが、離れたくないと望む程に、彼らの中に馴染んでいたことを確認した骸が、ハッキリと喜んでいる証拠だ。

 

「……仕方ねーから従ってやるびょん。」

 

「右に同じく。」

 

 骸がメテオライトさんの申し出を引き受ける様子を見せると、犬と千種の2人もそれに従うと口にした。

 わたしの言葉で手のひらを返したからか、メテオライトさんが苦笑いをこぼす。

 しかし、すぐに小さく笑ったのち、静かに頷いた。

 

「うーん……やっぱりキミ達はどの道を歩こうとも奈月ちゃん以外の指示は聞かないんだねぇ……。

 まぁ、キミ達の過去を考えれば、妥当の判断と言ったところかな。彼女とはどの道を歩いても彼女の指示だけは絶対に聞いてくれる程の確かな信頼関係や繋がりを築いてくれる分、オレが観測できる範囲の中にあった、ある男の子がボンゴレを継ぐ道より話を聞いてくれるから助かるよ。」

 

「「「「???」」」」

 

「……キミ達、本当に仲がいいな。」

 

 メテオライトさんの言葉に、骸達と揃って首を傾げると、少しだけ引き攣ったような笑みを浮かべられる。

 “この世界線の4人が1番仲がいいかもしれないな……”、と不思議なことを口走る彼は、これまでにいったい何を見てきたのだろうか?

 

「ほら見ろ復讐者(ヴィンディチェ)。オレの言った通り、六道骸は沢田奈月と一緒にいたら大人しくなるだろう?

 確かに彼らは様々なことをやってきたし、重ねてきた罪は計り知れない。それは否定しないさ。

 だが、元を辿れば彼らは明確な被害者だ。あのロクデナシ小僧共が作り上げた弾丸は禁弾で、それを取り締まるのは別に構わない。」

 

 そんなことを思っていると、呆れたような表情をしながらメテオライトさんが言葉を紡ぐ。

 

「でも、禁弾処理を施したアレを作った連中を野放しにして、罪がない子供のアフターケアすらしてなかったからこそ、六道骸達は歪んでしまったのもまごうことなき事実だ。

 被害者から転じて加害者になってしまったことは許されないが、しっかりとそこんところちゃんとしていたら、こんなことにはならなかったとも取れるだろう?」

 

 骸達の罪を否定せず、しかし、根本的な元凶となってしまったことに対する不始末に対する言及を行い、骸達の罪は、元を辿れば何により重ねられてきたかを訴える。

 

「大丈夫さ。六道骸達は沢田奈月と一緒にいることでちゃんと制御が効くようになる。

 だから、少しくらいは自由に過ごせるような判断をしてくれよ。まぁ、何かあったらちゃんとオレが責任取るし、そこら辺は安心してくれ。」

 

「……勝手にしろ。」

 

「はいはい勝手にしますとも。」

 

 メテオライトさんの説得が聞いたのか、復讐者(ヴィンディチェ)の1人が彼に勝手にしろと吐き捨てるように告げる。

 彼はその言葉を言われ慣れているのか、飄々とした雰囲気のまま、受け流すように言葉を返した。

 一瞬だけ呆れたような雰囲気を、復讐者(ヴィンディチェ)の人から感じ取る。

 しかし、その雰囲気はすぐに消え、包帯の隙間から覗く瞳が、わたしの姿を静かに捉える。

 

「……場合によっては、お前にも責任を問うことになるだろう。六道骸、および城島犬、柿本千種は、お前が考えている以上に重ねてきた罪は大きく、同時に重い。

 そのような連中を側に置くと言うことは、手綱を握れきれなかった時、こちら側に混乱と被害を齎らす可能性から、手放したお前も罪に問われる。

 そのことをよく頭に入れておくことだ。わかったな?沢田奈月。」

 

 復讐者(ヴィンディチェ)に名指しされ、骸達を側に置くと言うことの意味を頭に入れておくように言われる。

 彼らの言葉を聞いた瞬間、骸達がわたしの方へと目を向けて、その表情を不安と心配に染める。

 

「……ええ。それは理解しています。いざと言う時、責任を問われると言うのであれば、甘んじてそれは受けましょう。

 ですが、安心してください。骸達の手綱は決して離しません。彼らの苦しみと憎しみを、長引かせることはしたくありませんしね。」

 

「……その言葉、違えるな。」

 

 わたしの答えを聞いた復讐者(ヴィンディチェ)は、それだけを告げて踵を返す。

 

「……随分とおっかない連中だな。」

 

「そんな連中相手にハッキリと物事を言うあなたは逆に肝が据わり過ぎですよ……。」

 

 呆れたように苦笑いをこぼし、肝が据わり過ぎだとツッコミを入れてくる骸に、わたしは首を傾げる。

 責任の重要度は理解しているつもりだし、当たり前の返答をしただけだったんだけど、彼にとっては相当衝撃的だったらしい。

 

「奴らに目をつけられると厄介なことにしかなんねーぞ、ナツ。」

 

 リボーンからも呆れの眼差しを向けられてしまった。復讐者(ヴィンディチェ)と呼ばれる組織は、マフィアの世界では相当な厄介者らしい。

 まぁ、あれだけ冷たい空気をまとっていたし、それが事実であることは間違いないけど……なんでかな……。

 

 ─────……あの人達はあの人達で、掟以上の何かを見据えているようだった。

 

 絶対に許さない……それは、掟破りのマフィア達にではなく、何かまた、別の対象に向けられている怨嗟の念。

 あの人達はあの人達で、何かに苦しめられた先であんな風になってしまったような……よくわからないけど。

 

「……なんか、掟どうこう関係なく、あの人達とは関わることになりそうな気がするなぁ……。」

 

「あれとこれから先関わる気がするって……随分と不穏なことを口走りますね、奈月?」

 

「しょうがないじゃん。本当にそんな気がするんだもん。」

 

「おやおや……。なんらかの悪縁でもあるんですかね?」

 

「さぁ……?それに関してはなんとも……」

 

 困惑しながら言葉を紡いでいると、メテオライトさんが苦笑いをこぼす。

 その表情は、なんでわかっちゃうかな、とでも言いたげな表情だった。

 その表情を視界に捉えたわたしは、あえて見なかったフリをする。言及してもはぐらかされる……それがわかってしまったから。

 

「さて、話もまとまったし、そろそろお暇するとしようか。六道君達はオレについてきてくれ。

 オレの拠点ってイタリアに複数あるんだけど、そのうちの一つは既に貸してるから、別のイタリア拠点に一旦向かおう。

 衣食住はしっかり完備しておくからそこら辺は安心してくれ。ついでにGPS付きの国際電話可能な携帯電話も支給するから、奈月ちゃんと連絡を取れるようにしておくよ。」

 

 無言でメテオライトさんを見つめていると、彼はそろそろこの場から去ることを口にする。

 それは、骸達としばらく会えなくなることを示す言葉。連絡を取り合うことができるとしても、やっぱりそれは寂しいもので、思わずわたしは少しだけ俯く。

 “行かないで”……脳裏に過った言葉を飲み込むように。

 

「……奈月。」

 

「……!」

 

 不意に、骸から優しく名前を呼ばれ、反射的に顔を上げると、そのまま唇へと優しくキスを落とされた。

 ビックリして目を丸くすると同時に、複数の殺気が骸に向けられる。

 

「そんなに寂しがらないで。僕は必ずあなたの元に戻って来ますから。それに、僕達にはいくらでも言葉を交わす手段がある。

 確かに、しばらくの間離れ離れになり、あなたの温もりを抱きしめることができなくなるのはとても寂しいですが、今生の別れではないのですから。だから、少しの間、待っていてください。ね?」

 

 言い聞かせるように、わたしに待っていてほしいと言ってくる骸に、キスで顔が熱くなりながらも、大人しく頷く。

 わたしが頷いたことを確認した骸は、優しい笑顔を見せたあと、わたしの耳元に口を寄せた。

 

「……精神世界でまた会いましょう。互いにそこに入れるのであれば、僕達2人の間に国境などないに等しいのですから。

 また、春の陽だまりのように暖かく、穏やかで優しいあなたの世界で、ゆっくりと過ごさせてください。」

 

「……うん。」

 

 わたしの耳に吐息がかからないように、それでいて穏やかな囁きで、お願いをしてくる骸に頷き返せば、耳元で小さな笑い声が聞こえる。

 程なくして骸はわたしからそっと離れ、最後に一つ、額に優しくキスをする。

 

また会いましょう(Arrvederci)、奈月。あなたと過ごした1ヶ月は、とても充実した毎日でした。

 次にこうして直接触れ合うことができるようになるまで、それなりに時間はかかりそうですが、浮気したらダメですよ?」

 

「そもそもわたし達は付き合ってない。」

 

「おやおや……。まぁ、今はそう言うことにしておきましょうか。」

 

 少しだけ拗ねたように言葉を紡げば、骸は楽しそうに笑う。

 しかし、すぐに側にいたメテオライトさんに制服の首根っこを掴まれて、そのままぐいっと引っ張られた。

 

「ぐえ!?」

 

「はいはい、奈月ちゃんとのイチャイチャタイムは終わりだぜ六道君。さっさと空港に向かうぞ。

 城島君と柿本君もな。いろいろ手続きとかしないといけないんだから、無駄に時間を取らないでくれ。」

 

「ちょ!!痛いです!!首絞まってるんですけど!?歩きます!!歩きますから手を離してくださいませんか!?」

 

「オレだって奈月ちゃんとイチャつきたいのに我慢してんだぞ?そんな中別の野郎が奈月ちゃんとイチャイチャするのを見せられるとかどんな拷問だよ。

 これはちょっとした罰だっつの。少しくらい我慢しやがれって話さ。」

 

 ズルズルとメテオライトさんに引き摺られていく骸の姿に苦笑いをこぼす。

 犬と千種はところ構わず女とイチャつく自分達のリーダーに少しだけ呆れているのか、今のメテオライトさんを止めるつもりがないようだ。

 締まらないなぁ……と肩をすくめ、メテオライトさんに引き摺られていく骸と、彼らのあとをついていく犬と千種の背中を見送る。

 

「……ナツ。」

 

「ん?むぶ!?」

 

 骸達はどんなペナルティを課せられてしまうのだろうかと、心配に表情を歪めていると、リボーンから名前を呼ばれた。

 どうかしたのかと思い、彼の方へと目を向けてみると、口元にハンカチを押し付けられる。

 そのままゴシゴシとそこまで強くない力で口元を拭われ、意味がわからず目を白黒させていると、ハンカチが口元から外された。

 

「ぷはっ!?いきなり何!?」

 

「何、オレ以外の野郎にキスされてんだバカナツ。」

 

「ええ……?」

 

 拗ねたような表情をしながら、バカと罵ってくるリボーンに困惑する。

 いや、まぁ、リボーンの気持ちはわかってるから、これが嫉妬なのはわかるけど……。

 

「ナツ!!」

 

「奈月さん!!」

 

「奈月。」

 

 そんなことを思っていると、離れた位置にいた隼人達がわたしの方へと走り寄ってくる。

 先程まで彼らが骸に向けていた殺気はすでに霧散しており、いつもの彼らに戻っていた。

 

「ナツ!怪我はしてねーな!?」

 

「骸の野郎……!!奈月さんになんつーことを……!!早く帰って口洗いましょう!!」

 

「獄寺隼人の言う通りだよ。早く帰って消毒しないと。」

 

「なんで約2名、骸をバイ菌扱いしてんの!?」

 

 まともなこと言ってんの武だけじゃん!!わっと集まってきた隼人達にツッコミを入れながらも、わたしは一つ溜息を吐く。

 これは、骸と一緒に行動を取っていた間、何回もキスされたことは黙ってないと、とんでもないことになりそうだ。

 

「……ったく……男相手に無防備になるからキスなんかされるんだぞ。」

 

「むぅ……小言とか言われたくないんだけど。」

 

「当然の注意だぞ。ナツはもうちと自分が深く愛されてるってことを自覚して、少しは男を警戒するってことをしろ。」

 

「イテッ」

 

 ペチッと小さな手に頬を叩かれ、小さく声を漏らしていると、リボーンは一つ息を吐く。

 しかし、すぐに口元に笑みを浮かべては、叩かれた頬を触ってるわたしに視線を合わせる。

 

「……お前が無事でよかったぞ。おかえり、ナツ。」

 

 そして、一言安堵の言葉を紡ぎ、おかえりと短く言葉を紡いだ。

 彼のおかえりを聞いたわたしは、何度か瞬きを繰り返したあと、その笑みに答えるように笑を返し、静かに口を開いた。

 

「うん……。ただいま、リボーン。」

 

 

 

 




 沢田 奈月
 家出騒動から1ヶ月。ようやくリボーン達の元に戻ってきたボンゴレ10代目。
 話が収束に近づいた時、姿を現したメテオライトに不思議な懐かしさを感じてしまい首を傾げる。
 しばらくの間、離れ離れになってしまう骸達に対して寂しさを抱くが、連絡を取り合えることや、骸とだけなら精神世界で会えると言うことに、少しだけ寂しさは紛れる。でも、やっぱり寂しい。

 六道 骸
 ちゃっかり他の男性陣の前でも奈月の唇へと平然とキスをして、精神世界で会う約束を取り付けた抜け目のない幻術士。
 自分達と離れたくないと言う彼女の感情を唯一知ることができた少年でもある。
 奈月としばらくの間、離れ離れになってしまうことは寂しく思っているが、精神世界での逢瀬が自分にはある分、まだ気が楽……だが、どちらも眠ってる時にしか会えないことに変わりない為、やっぱり寂しい。

 犬&千種
 マフィアからの指図はは絶対に聞かないが、奈月と骸には絶対に従う少年達。
 実はところ構わず奈月にキスをしたりイチャつき出す骸には少しだけ呆れていたので、首根っこを引っ掴まれてメテオライトに引きずられていく骸のことは助けなかった。
 3人で一緒にいる分いくらか寂しさは紛れるが、奈月がいない時間はやっぱり寂しいので早くペナルティは決まってほしい。

 リボーン
 目の前で奈月にキスをした骸にかなりイラっとしたアルコバレーノ。
 ようやく戻ってきた奈月に、おかえりと言う言葉をかけると同時に、桜奈としての彼女にしっかりと向き合わなくてはと決意し、彼女が話しやすい状況を作る方法を模索する。

 獄寺、山本、雲雀
 何、こっちの想い人にキスしてんだあいつ!!と苛立ちはあったが、今はただ、奈月が戻ってきてくれたことに安堵する。
 これからは彼女の意見をしっかり聞いて、彼女の負担をとにかく減らすことが課題である。

 メテオライト
 月をそのまま髪にしたような金糸の長い髪に、濃紺の瞳を持つ幻月の青年。
 桜奈のことも奈月のことも全て知っているお兄さん。全ては愛しい彼女のため、最善に最善を重ねることで、彼女の幸せを固めたい。
 骸の10代目キス事件はめちゃくちゃイラッとしたので、とりあえず首根っこ引っ掴んで引きずっていった。

 復讐者(ヴィンディチェ)
 実はメテオライトに振り回されている方々。しかし、権力は自分達より上にいるため、あまり強く言い出せない。
 自由人なメテオライトに振り回されながらも、掟破りの罪人を側に置くと言うことはどう言うことか伝え、奈月に釘を刺してその場から立ち去った。


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