最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
すでに寝支度を済ませた桜が、空に昇る月を見つめる中、虹の黄色は一時的な呪解を行い、桜を外に連れ出した。
黒曜センターから帰宅して、母さん達と再会したあとの自宅はなかなか大騒ぎになってしまった。
ビアンキ姉さんからは思い切り抱きしめられ、ランボとイーピン、フゥ太からは思い切り泣かれてしまい、父さんと一緒に日本へと来日したディーノさんからは本当に無事でよかったと安堵したように頭を撫でられ、そんなディーノさんの手を、父さんが何故か叩き落とし、父さんに手を叩き落とされたディーノさんが父さんと軽く言い争いになり……とにかくカオスな一幕が広がっていたのである。
しかし、そのあとすぐに母さんが帰ってきたわたしと父さんを迎えるために大量のご飯を作り上げ、その場にいた全員で食卓を囲み、賑やかな夕飯を終えたのだ。
大量の人数で食卓を囲むとか、前世でどれくらいあったっけ?なんて、少しだけ考えたりもしながら、寝支度を済ませたわたしは、1人空を眺めていた。
リビングの方では父さんがいびきをかいて眠っており、ランボとフゥ太は母さんの部屋に、ビアンキ姉さんとイーピンは、この家にあるお客様用の部屋へすでに言っており、ディーノさん達はホテルの方へと戻って行ったため、随分と静かになったものだ。
「ナツ。」
そんなことを思っていると、背後からリボーンに名前を呼ばれる。すぐに視線をリボーンの方に向けてみれば、そこにはいつもの姿の彼のまま。
でも、手元には神谷さんに渡されたと言うブレスレットが握られているため、2人になった時に使うのだろう。
「ちと遠出をするから寝巻きじゃなくて私服に着替えてくれ。」
「私服に?」
「ああ。“桜奈”について聞くからな。家の中よりは外の方がいいんじゃねーか?」
「……ん。わかった。すぐに着替えるよ。」
リボーンの気遣いをありがたく思いながら、わたしはすぐに私服を取り出す。
わたしが動き出したのを見たリボーンは、こっちの着替えを見ないようにするためか、先に外に行ってると告げて、わたしの部屋から立ち去った。
それを確認したわたしは、さっさと服を選び、寝巻きから私服へと着替える。
どこまで話すべきか……少しだけそんなことを考えながら。
❀
……程なくして着替え終わったわたしは、自宅の玄関の鍵を片手に外に出てみると、ブレスレットをつけた状態のリボーンが立っていた。
彼の背後には見たことない車が一台あり、思わず何度か瞬きをしてしまう。
「……どうしたの、その車?」
「神谷から借りてきた。」
「神谷さん?」
「ああ。桜奈と2人でしっかり話をしたいって言ったら、それなら自分の車を貸すから遠出してきたらどうだって言われてな。
事情がかなり複雑だし、家ん中や近所で話すより安全だし、それならって甘えさせてもらったんだよ。
まぁ、それと引き換えに新しいブレスレットを試してほしいって言われたがな。」
「新しいブレスレット……。」
「これだ。」
そう言ってリボーンが見せてきたのは、最初に彼が持っていたブレスレットとはまた違ったデザインのブレスレットだった。
使われている石は、ブラックムーンストーンに、エンジェルフェザーフローライト、ムーンクォーツと、最初のうちに使われていたものとほとんど同じだったが、シルバービーズがアゼツライトに変わっていた。
「……アゼツライト……相変わらず神谷さんは珍しい天然石を仕入れてるな……。」
「アゼツライト……?聞いたことねー石だな……。なんだそれは?」
「んっと……アゼツライトは、スピリチュアルの側面が強い石で、アメリカの方で見つかった乳白色の水晶だよ。
効果としては、エネルギーの活性化と非常に強力な浄化能力と言われてるんだよね。
昔は宇宙のような高次元エネルギーと繋がりを得ることができると信じられていて、アゼツライトは通常の水晶とわけて認識されていたんだ。
他にも、身につけていたら様々なメッセージを受け取ることができるとされていて、未来を切り拓きたい人がお守りとして持つこともあるって聞いたことがあるよ。
なんでも、時に予言のように頭にインスピレーションが浮かぶとか言われているみたいで、かつてはヒーラーやシャーマン御用達のアイテムだったんだって。
ただ、あまり天然石の店では見かけることがなくて、通販とかなら度々売られてるんだけど……」
「……相変わらず天然石の知識はオレ以上だな。」
「趣味で天然石のアクセサリーを作っていたらそんなもんだよ。石同士にも相性があるから、綺麗だからって組み合わせたら悪い気を引き寄せることもあり得るし、暇潰しに調べたりもしていた。」
アゼツライトの説明をしながら、リボーンのブレスレットに目を向ける。
よく見るとブレスレットに刻まれている不思議な文字が、前のものとは違っているようだった。
「この文字……なんて書かれているのかはよくわからないけど、前のとはちょっと違うような……?」
「ん?……言われてみればそうだな。」
2人してブレスレットの文字を見つめて首を傾げる。
そう言えば、神谷さんのお屋敷にお邪魔していた時、神谷さんが布で雁字搦めのぐるぐる巻きにしてる何かを持っていたのを少し見かけたけど、その時に見えた文字がこんな文字だったような気がする。
「……神谷さん……本当に何者なんだろう………?」
「さぁな。だが、桜奈やオレ達アルコバレーノの事情をなんか知ってるってことだけは確かだ。」
「え?わたしの事情も……?」
「ああ。神谷は桜奈のことも知っていた。メテオライトと同様にな。だが、それに関して言及しても、全てを知ってるだけだと口にするばかりでまともな答えは返ってこねーから、今は探るだけ無駄だと思うぞ。」
リボーンから告げられた事実に、わたしは思わず目を丸くする。
メテオライトさんと同じように、桜奈としてのわたしを知っているとは思わなかった。
でも、時折あの人はわたしをとても優しい表情で見つめており、安堵しているような様子があるのも事実で、リボーンのその言葉はとても信憑性のあるものだった。
「……言われてみれば、神谷さんはすごく穏やかな表情で、今のわたしが幸せそうでよかったって口にすることがあるよ。
ずっと不思議だったけど、それでようやく合点がいった。……そっか。神谷さんも桜奈を知ってて、ずっと見守ってくれていたんだね。」
これまでの彼の様子に対する納得の答えを得たわたしは、小さく笑いながら言葉を紡ぐ。
“ずっと見守ってくれていたんだ”……無意識に紡いでいた言葉の意味は少しだけわからないけど、強い安心感に包まれる。
これからもあの人はわたしを見守ってくれる……不思議とそう思えた。
「あー……神谷の話を出したのはオレの方だが、なんかムカついてきたから話は終わりだ。」
「自分から話しておいてムカつくって……なんかちょっと理不尽じゃない?」
「うっせ。ほら、さっさと行くぞ。」
「免許は?」
「ヒットマンとして移動手段は多いに越したことはないからな。それに関しては問題ねーよ。」
「あ、免許証持ってた。」
「当たり前だろ。」
「見せて見せて。」
「いや、なんで見たがってんだお前。」
「え?リボーンの本当の年齢見てやろうかと。」
「誰が見せるか。」
「ケチ〜……」
軽く拗ねながら言葉を返すと、デコピンを一発喰らわされる。
痛みが走る程のものではなかったが、そこそこ衝撃は重かった。そんなに見られたくないのかな。
「早く乗れ。外で話し込んでたら家光に気づかれるだろ。」
「はーい。」
そんなことを思いながら、わたしは目の前にある車の助手席に乗り込む。
……なんか、車のエンブレムが結構お互い外車の奴に見えた気がするんだけど気のせい……?
いや、気のせいじゃない。どう見てもこれ高級外車だ。秋良さんとお付き合いした時に乗ったことある奴だ。
「……会社の社長は高級外車がデフォルトなわけ………?」
「?どうかしたのか?」
「……いや、なんでもないよ。」
不思議そうに話しかけてくるリボーンに、なんでもないと返したわたしは、すぐにシートベルトを着ける。
なんでもないと言ったわたしにリボーンは一度首を傾げたが、特に何かを言ってくることなく、車のエンジンをかけた。
随分と懐かしいエンジン音だと思いながら、かつて、桜奈だった時に初めてお付き合いしていた青年を思い出す。
あの人が休みの時、様々な場所にドライブに連れて行ってもらったっけ。
─────……思えば、あの人は本気でわたしを愛してくれていたような気がする。
でも、本当のわたしはしっかり者でも仕事ができる人間でもなく、甘えん坊の寂しがり屋で……それを知ったら、ガッカリされてしまうのではないかと思って、結婚を申し込まれた時も、自分より相応しい人がいるはずだからと、数ヶ月の付き合いの果てにお断りしたんだっけ……。
もし、あの時、自分は本当はこんな人間じゃないんだって伝えていたら、少しは未来が変わっていたのかな……?
確認する術もないもしもの可能性と、それによる複数の答えを脳裏に描きながら、リボーンが運転する車の中で、流れゆく景色を無言で眺める。
そう言えば何も聞かされてないけど、リボーンはいったいどこまで行くつもりなんだろう……?
❀
懐かしい車に揺られながら、ドライブをすることを数十分。
「着いたぞ。時期が外れている分、ここなら誰も人は来ない。」
たどり着いたのは、月光により輝く水面が広がる穏やかな海と砂浜だった。
その姿は、小鳥遊桜奈としてのわたしが過ごしていた故郷であり、終わりを迎えた場所でもあるそこによく似ていて、とても懐かしい気持ちになる。
「おい、桜奈!急に走るな!」
この世界にも、あっちによく似た海があったんだと思い、懐かしさとはやる気持ちに背中を押されたわたしは、そのまま砂浜の方へと走り出す。
背後からリボーンに注意されたが、その言葉に足を止めることはせず、砂浜まで出たわたしは、履いていた靴をその場で脱ぎ捨て、波により濡らされている波打ち際まで足を運び、ゆらめく水辺に足を浸けた。
「ふふ……時期が時期だから、ちょっと冷たいかな。」
でも、その冷たさもとても懐かしく、穏やかな海を蹴り上げる。月光が照らす海の雫は宝石のようにキラキラ光り、とても綺麗だった。
秋とは言え、残暑が残る夜。少しでも涼しくしようと思って短パンを履いていたけど正解だったようだ。
「ったく……いきなり走るな。」
「ごめんなさい。この海の雰囲気がすごく懐かしくて、つい足を浸けたくなったの。」
「……それは、桜奈としてのお前が、海に近いどこかに住んでいたからか?」
「……………。」
「……当たりのようだな。」
紡がれた言葉に無言を返せば、やっぱりかと言わんばかりの反応が返ってきた。
その様子から、桜奈が海の近くに生まれた子供だったことに彼が気づいていたことを悟る。
まぁ、リボーンくらい頭が良ければ、わたしが漏らしていた記憶の断片や表情から、読み取ることくらいはできたかな。
「……気づいてたんだ。」
「海は自分にとって1番ゆかりのある場所であり、1番落ち着く場所である……水族館で、桜奈が自分で話したことだろ。
それくらいのヒントで答えに行き着けなくて何が凄腕のヒットマンだって話だ。」
「なるほどね。」
ハッキリと気づいていたことを肯定され、やっぱりかと小さく息を吐く。
まぁ、わたし自身もわかりやすく教えたし、余程の鈍感さんじゃなければ気づかない方がおかしいか。
「……桜奈。」
そんなことを思っていると、リボーンから名前を呼ばれる。
静かにリボーンの方へと目を向けてみると、月光に照らされた彼の表情は、とても真剣なものとなっていた。
「まずは謝らせてくれ。これまですまなかった。向き合うと言っておきながら、オレはしっかりと向き合う態度を桜奈に一度も見せていなかった。」
静かに頭を下げられ、わたしは思わず目を丸くする。
まさか、リボーンに頭を下げられるなんて予測していなかったため、呆気に取られて言葉を失った。
「桜奈としての話は辛いもの……桜奈自身も話すためには色々考えないといけないと思ってな。
それなら、話したいと思った時に話してくれたらいいとオレは思ったし、実際、桜奈に対してそう言った。
だが、それは向き合う姿勢をただ見せているだけであり、話をちゃんと聞こうとしてる態度かと問われたら、明らかに違うものだった。」
下げていた頭をあげて言葉を紡ぐリボーンに、わたしは無言だけを返す。
彼の思い、彼の考え、彼の向き合う姿勢を見極めるために。
「メテオライトから指摘されて、オレは自分から桜奈に歩み寄ろうとせず、桜奈が歩み寄ってくるのを待っていただけだったと気付かされた。
桜奈と言う名前を明かしてくれた時点で、桜奈が歩み寄ろうとしてくれたことは明白だったのに、それに応えるために、オレが歩み寄っていなかった。
そんな態度じゃ、桜奈が過去を話してくれるはずがないって、少し考えればわかることだった。」
真剣な声音でわたしに歩み寄り、静かに手を差し伸べてくるリボーン。
その手を静かに見つめていると、彼は再び口を開く。
「ずっと待たせて悪かった。辛い話も沢山あるだろうし、話せるところまでいい。
話してもいいと思えるところまで、オレに桜奈のことを教えてくれ。」
困ったように笑いながら、だけど懇願するように、リボーンはわたしに桜奈を教えてほしいと口にする。
その言葉に嘘偽りは全くなくて、本気で向き合おうとしてくれていることが、しっかりと伝わってくるものだった。
「……結構重たい話になるよ。それに、この話をしたら、わたしはもう、今のわたしをリボーンの前で維持できなくなっちゃう。
わたしの根本である素の部分って、ちっともしっかり者じゃないんだ。むしろその逆。誰かに頼りたくて頼りたくて仕方ない、甘えん坊の寂しがり屋。
本当の自分を知ってる人の前じゃ、どうしてもわたしはそっちの側面が強くなって、沢山甘えたくて仕方なくなって、ところ構わず甘えさせてほしいとおねだりしちゃうようになるの。
そんなめんどくさい自分になるのが嫌で、自分を話さない選択をして、しっかり者の自分を維持し続けていた。
わたしを知るってことは、その本来の側面を外に引き摺り出すってこと。それでもいいの?」
それならば、わたしは彼に最後の確認をしよう。
わたしを知ると言うことは、何を意味するものであるかをしっかりと伝えて、それでもいいと言うのであれば、小鳥遊桜奈と言う四半世紀しか生きることができなかった自分の話をしよう。
「CHAOSだな。愛してる女の甘えたい気持ちを受け止められねー程、オレの心は狭くねーぞ。
ところ構わず甘えたくなる?上等だ。甘えたければ甘えればいい。まぁ、今のオレはアクセサリーと夜と言う条件がなけりゃ、こっちの姿に戻れねーわけだが、それならそれでやりようはいくらでもある。
だから、教えてくれ。ずっとお前が表に出すことができなかった、本当の桜奈のことを。
どれだけ話が重かろうと、全部オレが受け止めてやるさ。好きな女1人の過去くらい余裕で背負っていけるぞ。」
わたしの問いかけを聞いたリボーンは、口元に笑みを浮かべながら、躊躇いなく話を聞くと言う選択肢を選ぶ。
迷いも躊躇いも抱くことなく、そっちを選んでくるなんて……と、少しだけ苦笑いをこぼしたくなりながらも、差し伸べられた大きな手に、わたしは自分の手を重ねる。
「……じゃあ、少しだけ長くなるけど聞いてもらおうかな。沢田奈月として生まれ落ちる前……小鳥遊桜奈として生きてきたわたしの、四半世紀の物語を。」
その覚悟があるのであれば、わたしもそれに応えよう。
幸せな人魚姫に憧れた、子供のまま大人になってしまった矛盾を宿す女の物語に、本気で向き合おうとしてくれているのだから。
沢田 奈月(小鳥遊 桜奈)
リボーンに連れられ、海へとやってきた転生者たる10代目。
小鳥遊桜奈を知ることが何を意味することが明かしたにも関わらず、迷いなく話を聞く選択肢を選んだリボーンに苦笑いをこぼしそうになったが、本気で向き合おうとしてくれている彼に応えるために、自身の過去を打ち明けることを決意する。
リボーン(呪解中)
神谷から車を借りて桜奈を海に連れ出したヒットマン。
これまでの自分の態度や対応を反省し、謝罪を口にしてしっかりと向き合う姿勢を見せた。
しっかり者が維持できず、甘えん坊の寂しがり屋になってしまうと言われ、むしろ来いと完全にウェルカム状態。