最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 桜は語る、自身の記憶を。
 呪われた虹の黄色を担う青年は、その話をただ静かに聞くのだった。

 side REBORN.


桜ガ語ル記憶ノカケラ Ⅰ

 桜奈は語った。沢田奈月として生まれ落ちる前……小鳥遊桜奈と言う女として生きた、四半世紀の物語を。

 最初、四半世紀なんて短か過ぎないかと思ったが、話を聞いていくと、その理由も納得できるものだった。

 

 海がよく見える街に暮らしていた社会的地位が高い父と、病弱な母の間に生まれた桜奈は、最初のうちは当たり前の子供のように過ごすことができた。

 少しだけ違うところを挙げるとしたら、幼い頃から病弱な母親が辛くないようにとできることを手伝っていたことだが、それも子供のお手伝いの範疇……早くに家事を覚えることになったこと以外は特に変わりのない子供だった。

 社会的地位が高い父は、長期の休暇をもらった時、家族を旅行に連れて行くような優しい人だったらしい。

 向かう先はもっぱら海のある場所で、日本の国内から外国のリゾート地まで様々な場所に連れて行ってくれたようだ。

 それにより桜奈は海が好きになり、海のある場所を好むようになった。この頃から水族館も好きだったようで、昔から人魚姫に憧れていたと言うエピソードは、とても可愛らしいものだった。

 これだけ聞けば幸せな家庭に生まれ落ち、明るい日々を過ごしていたのだろうと微笑ましく思う。

 だが、その穏やかで幸せな日々は、長くは続かなかった。

 

「わたしが10歳の誕生日を迎える日の1ヶ月前くらいにね、お母さんの容体がおかしくなってね。病院への入院を余儀なくされたんだ。

 最初のうちはお医者様も、いつも通り数週間の入院だけで退院ができるって言ってたんだよ。

 でも、本来退院するべき日になってもお母さんの容体は治らなくて、入院は延長することになった。

 きっと、今回は少しだけ体が疲れてるんだよって、お父さんは言ってくれたけど、お母さんはそう思ってなかったみたい。」

 

 10歳の誕生日を迎える日の1週間程前。仕事をしている父親の代わりに入院している母親の元に顔を出した桜奈は、母親からあることを告げられた。

 それは、自分はもう長くは持たないと言う、ある種の悟りの言葉だった。

 その話を聞いて、桜奈は涙を流したそうだ。そんなことは言わないで。死んでほしくなんかないと。

 でも、桜奈の母親は涙を流す娘の懇願に答えることができなかったのか、困ったように笑い、もしもの時は父親を頼むと言う言伝を残した。

 

「それから1週間過ぎた、わたしの10歳の誕生日の夜に、お母さんは死んじゃった。

 お母さんね。生まれつきお医者様でも治療することができない重い病気にかかってたんだって。

お母さんが死んだ日、お医者様からようやくそのことを教えられたんだ。

 お父さんも知らなかったみたい。病弱だったとしか聞かされてなかったって言ってた。」

 

 母親を失ってから、桜奈の環境はガラッと変わった。母親が生きていた間は、父親と母親の両方が互いに助け合い、桜奈を甘えさせることもできたが、片親になったことにより、その機会は完全に失われてしまった。

 母親から告げられた父親を頼むと言う言葉に従うように、桜奈は仕事で忙しい父親を支えるための生活を送るようになった。

 片親は大変だろうからと、父親側の家族が再婚や使用人の雇用等をすすめられていたようだが、肝心な父親は妻以外の女性を深く愛せるような人でもなく、使用人が作るような料理も、好みの味ではないのか、あまり喉に通らないような人だった。

 それを知った桜奈は、そんな父親を支えるために、母親がこなしてきた家事を一通り行うようになったらしい。

 それにより食事を全くしないなどは起こらなかったようだが、今度は別の弊害が発生してしまったり

 

「小鳥遊桜奈としてのわたしは、母親にすごく似ていたんだ。容姿も、言動も、彼女にそっくりだと両親の祖父母や親戚に言われてしまう程に。

 だからかな……。お父さんは娘の桜奈ではなく、桜奈に重なるお母さんの姿ばかりをその目に映していた。

 お母さんとは違うことをしてみても、わたしの姿は映らなくて、病弱じゃなかったらのIFばかりを考える。

 お母さんの方のお婆ちゃんから聞いたんだけど、わたしのお母さんって病弱な体質以外は本当にわたしにそっくりだったみたいなんだ。

 チャレンジ精神が強くって、体を動かさなくてもいいことは何でもかんでも挑戦していたって聞いた。

 小さい頃にもね。病気が治ったら沢山のスポーツに挑戦するの!って言ってたんだって。」

 

 もしも病気になどなっていなかったのであれば、桜奈と同じように様々なことをやっていたかもしれない……その言葉は、きっと、桜奈の一つのトラウマだ。

 どれだけ母親と違うことをやってみても、病気じゃなかったらあの子もと言われ、誰も桜奈を見てくれなかった。

 どれだけ頑張ろうとも、母親に瓜二つの容姿で生まれ落ちてしまったがために、小鳥遊桜奈と言う女ではなく、小鳥遊桜奈に重なる小鳥遊佳奈ばかりを映された。

 目の前にいるのは桜奈なのに、誰もその姿を見ることができなくなってしまっていた。

 

 ─────……存在しているはずなのに、重なる面影ばかりを見られる……か……。

 しかも、それをしてきたのは血の繋がりがある親族ばかり。精神を摩耗しない方が無理な話だ。

 

 自分自身を見てもらえるように、誰もが頼るような存在になることへの執着。

 頼られなくなってしまわないように、1人で何もかも抱え込んで、無理をしてでも頼られる自分を手放さない執念。

 その根底にある原因の露見に、オレは思わず歯を食いしばる。

 

 湧き上がってくるのは怒りの感情。怒りの矛先は、そのような原因を作り出した、小鳥遊桜奈の親族へ。

 目の前にいる女は、すでに小鳥遊桜奈として終わってしまい、沢田奈月として生まれ変わってしまった少女になってしまっているため、その矛先を向けたところで何かできるわけでもないが、怒りをぶつけたくてしかたがなかった。

 

「……辛かっただろ………。」

 

「うん。すごく辛くて悲しくて、どうして私を見てくれないのって大きな声で怒鳴りたかった。

 でも、そんなことをしたところで環境が変わるとは思わなくて、最後まで怒鳴ることはできなかった。

 だけどね。わたしだってちゃんと、息抜きができる時もあったんだよ。剣道の大きな大会に出てみたり、天然石を買って、オリジナルのアクセサリーを作ってみたり、気になる本を読んでみたり、お菓子作りに挑戦したり……沢山の趣味があったおかげで、その辛さを紛らわすこともできたんだ。」

 

 紡がれた言葉に、オレは一瞬目を見開く。同時に脳裏を過ったのは、神谷に初めて呪解できるブレスレットをもらった時の記憶だった。

 

 

 …………………

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 .:*.。o○o。.*:._.:*.。o○o。.*:._.:*.。o○o。.*:._.:*.。o○o。.

 

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『店の商品に興味があるのかな?』

 

『桜奈もこんなの持ってたなって眺めていただけだぞ。』

 

『なるほどね。うん。あの子はこの店の上客だよ。よく贔屓にしてもらっていてね。

 ほら、あの子ってアクセサリーやストラップなんかの小物をハンドメイドするのが趣味だろう?

 実を言うと、あれは奈月ちゃんになる前の桜奈ちゃんの趣味だったんだよ。』

 

『桜奈は昔からアクセサリーを作るのが好きだったのか?』

 

『まぁね。詳しくは今度桜奈ちゃん本人に聞いてみるといい。アクセサリー作りに没頭した理由は、なかなか悲しいものだと思うけど。』

 

『おい。ヒントを与えたかと思えば即行で聞き難くするんじゃねー。』

 

『それは申し訳ない。わざとだよ。』

 

 

 

  …………………

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 ─────……神谷が言っていた言葉の意味は、これだったのか。

 

 桜奈にとっての趣味の時間が、どのようなものであるかを告げられ、神谷の言葉の意味を理解する。

 周りに見てもらえないと言う辛さ……それを紛らわすための自衛行動……それが、桜奈にとっての趣味だった。

 それにより桜奈の精神は、一気に摩耗することがなかった。

 

「それにね。誰1人としてわたしを見てくれなかったわけでもないんだ。

 確かに、親族の人や父さんは、わたしのことを見えていなかったけど、幼馴染み達がわたしを見てくれていた。

 小鳥遊桜奈と言う甘えん坊の寂しがり屋の女をね。彼らが甘えさせてくれたおかげで、わたしは完全に壊れることがなかったんだよ。

 だから、2人には感謝しても仕切れない。わたしの大切な命綱だった。」

 

 だが、その幼馴染み達とは社会に出ると同時に、会うことが少なくなってしまった……。

 幼馴染み達の職業が警察官と言うこともあり、いつも忙しなく動いている2人には迷惑をかけられなかったと桜奈は語る。

 命綱と言ってしまう程に依存していた2人と離れることになるのは桜奈の精神の摩耗を早くするには十分過ぎる出来事だったはず……だが、自分よりも他人を優先する傾向にある桜奈は、自分1人だけに構うより、多くの人を助ける方がいいと考え、自ら距離を置くことにしたのだろう。

 

「2人が警察官になってくれたおかげで、わたしも助けられた人間だからね。

 だって、2人がそう言う立場にいてくれたおかげで、わたしはストーカーと強姦の2つから助かることができたから。

 だから、2人には警察官として、多くの人を守って欲しかった。確かに、2人から離れるのは辛かったけど、わたしは別に後悔はしてないんだよね。

 いつまでもわたしに縛りつけておくわけにもいかなかったし、ちょうどいい転機だと思ってた。」

 

 しかし、自身の心を休ませる場所を失った桜奈がたどっていたのは、精神の摩耗ばかりする道のりのみ。

 桜奈が勤めていた会社は、あまりにも環境が良くなかったようだ。大きめの会社であるはずなのに、仕事ができる人間が数割程度しか存在しておらず、様々なハラスメントも横行していた。

 しかも、タチが悪いことに労基に引っかからない絶妙なところで仕事が行われていたせいで、メスを入れることもできなかった。

 

「あまりにも環境がアレだから、お父さんの方の祖父母から、お父さんがいる会社に転職した方がいいって言われたりもしたんだけど、わたしがそれを拒んだんだ。

 ……お父さん、社会的地位がある人だったって言ったでしょ?その地位って言わば、会社の社長って地位なんだよね。

 大規模な会社かと言われたら、ちょっと微妙なところだったけど、それでも複数の事業を成功させて、それなりに有名なところだった。

 お父さんの方の祖父は会社の会長さんで、祖母はそんな祖父の秘書だったんだよ。

 小さい頃から仕事の話を聞いていたから、どうすれば仕事の効率を上げることができるのかとか、事業を成功させることができるのかとか、ちょっとした世間話で教えてもらってた。」

 

 桜奈がやけに仕事に関して的確なアドバイスができる人間だった理由を聞き、すぐに納得する。

 そのような環境下に住んでいたのであれば、元から地頭がよかった桜奈が知識を吸収し、様々な能力の高さに影響を与えてもおかしくない。

 

「会社の環境が問題だらけだったのは理解していた。でも、わたしはお父さんの会社に行きたくなかった。

 だって、そこに務めるようになったところで、わたしは周りからまたお母さんによく似てる、お母さんにそっくりだと言われるばかりで、誰1人としてわたしを見てくれない。

 わたしは小鳥遊佳奈じゃない。小鳥遊桜奈なんだ。お母さんの生き写しじゃない。お母さんじゃない。

 どうして誰も見てくれないの?わたしはみんなの目には映らないの?みんなが必要にしているのはわたしじゃない。お母さんじゃないかって……そうなるのが目に見えていたから、わたしは行かなかった。行きたくなかった。」

 

 泣きそうな表情で笑いながら、父親の会社に行かなかった理由を口にする桜奈を、オレは無意識のうちに抱き寄せていた。

 あまりにも桜奈が消えてしまいそうで、その姿を見ているだけなんてできなかった。

 

「……少しだけ休め。そんなに辛そうな顔をして話す女は、流石に見ていて苦しくなる。

 ゆっくりでいいって言っただろ?一旦休憩して、落ち着いたあとにまた話してくれ。

 泣きたいなら泣いていい。我慢しなくていい。少しだけ休憩しろ。」

 

「……うん…………」

 

 短い返事が紡がれると同時に、少しだけ服が濡れる感覚を覚える。

 その涙がこれまで堪え続けていたものであることはすぐに把握することができたオレは、オレに擦り寄って泣いている桜奈の頭を撫でながら、内心で舌打ちした。

 誰かに見てもらいたい……あまりにも根深く存在している願望と執着の原因となった桜奈の親族がこの場にいたのであれば、オレは……

 

 ─────……いや、これは桜奈が傷つくだけだな。忘れた方がいい感情か……。

 

 今はとにかく、桜奈を落ち着かせよう。

 それで、話を続けるのであれば話を聞いて、話を続けることができないと言うのであれば、今日は一旦引き上げればいい。

 どちらを桜奈が選ぼうとも、桜奈の全てを受け止める気持ちだけは、受け止めても尚想う気持ちだけは、絶対に変わらないのだから。

 

 

 

 




 小鳥遊 桜奈(沢田 奈月)
 実を言うと、前世では社長令嬢の立場にあった転生者。
 根深く存在している誰かに見てもらいたいという執念には、親族が1番関わっており、暴走の道への原因の一つとなってしまっていた。
 そのため、母親によく似ていた自分を通して母親のことばかりを見る親族達が大嫌いだったため、どれだけ仕事の環境が悪くても、親族の近くにだけは行きたくないと考えていた。
 唯一、肉親である父親だけは嫌っていなかったのだが、その父親も自分に重なる母を見ているため、それだけが辛く、父親からも距離をとっていた。

 リボーン
 桜奈が語る記憶から、桜奈と言う存在を構成する原因を紐解いているアルコバレーノ。
 彼女が置かれていた環境が、あまりにもひどいものだったことを知り、彼女の暴走の要因となっていた彼女の親族に対する強い怒りを抱く。
 穏やかな声音とは裏腹に、あまりにも桜奈が泣きそうな表情をしているため、彼女の辛さを軽減するため、一旦休もうと声をかけた。


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