最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 虹の黄色に前世を打ち明けた桜は、その夜、藍色と精神世界で顔を合わせる。
 そこで2人が話したことは、いざと言う時の未来の話だった。


 side SAKUNA.→side change REBORN.


藍の温もり

「満開に咲き誇る数え切れない程の桜の木に、水面に浮かぶ蓮の花……これ、完全に骸とわたしの精神世界が混ざって結びついてるな。」

 

 リボーンに過去を打ち明け、自宅に戻った後、こっちの反応から要望を汲み取っていく彼に散々甘やかされた上で眠りに落ちたわたしは、気がついたら精神世界に足を踏み入れていた。

 目の前に広がるこれまでのものとは明らかに変化している精神世界を見て、広がる気配と景色に、何が起こっているのか察したわたしは、少しだけ困惑しながらも、背後から伸ばされた2本の腕の中に大人しく収まった。

 

「完全に混ざってない、これ?」

 

「混ざってますね。僕もこっちに足を運んだ時にここまで混ざるものなのかと驚いてしまいました。

 桜奈に告げられたいざと言う時の準備のため、繋がりを強くしただけなのですが……」

 

「繋がり強くしただけで混ざるって何?」

 

「わかりません。それだけ相性が良かったのか、それとも互いに互いを受け入れあっているからなのか……」

 

 わたしの疑問に、背後から抱きついてくる骸が答える。繋がりから感じ取れるのは、自分でもわからないと言う感情だった。

 骸でもわからないと言うのであれば、わたしにもわからないと言うわけで……。

 

「まぁ、でも、確かに混ざりあった状態になってしまいましたが、これからの生活に支障はないので気にする必要はないですよ。

 これだけ繋がりが強くなると言うことは、互いの声が届き易くなったと言うわけですからね。僕としてはありがたいです。

 おかげであなたの精神世界には簡単に足を踏み入れることができるようになりましたからね。

 これなら、あなたが本当に助けを求めてきた時、直ぐに助けてあげることができるようになりました。」

 

 そんなことを思っていると、骸はわたしの体をしっかりと抱きしめながら言葉を紡ぐ。

 静かに彼の顔を見上げてみれば、こっちの視線に気づいたのか、蒼天と黄昏を宿す瞳が緩やかに細められた。

 

「……助けを求めた時に直ぐに助けることができるようになった……か。うん。確かに、これだけ混ざって繋がっていたら、いつでも骸に助けを求めることができるね。」

 

 彼の言葉を復唱するように、確かにこれなら助けを求めやすいと同意する。

 脳裏に過るのは、離れる時に口にした一つのお願いのことだった。

 

「……ごめんね。あんなお願いしちゃって……。完全に、骸を利用するような内容だったよね。」

 

 それを思い返したわたしは、骸から視線を逸らしながら、あの時のお願いに関しての謝罪を口にする。

 一瞬、繋がりを通して骸が驚いたことを感じ取る。しかし、直ぐにその感情は優しく穏やかなものへと変わり、気にするなと言わんばかりにわたしのことを包み込んだ。

 

「何を言ってるのですか?あの程度、利用されたうちに入りませんよ。むしろ、こちらの方がお礼を言いたいくらいです。

 順序や状況は全く違うものとなりましたが、あのお願いは、僕達にとって願ってもないことですから。

 飛行機に乗って、イタリアの方へと向かう際に犬と千種にも話しましたが、あの2人もかなり乗り気で引き受けていましたよ。」

 

 “こんな風にね”と骸は呟き、わたしの両目を片手で覆う。同時に流し込まれたのは、飛行機の中にいた時の彼の記憶だった。

 

 

 …………………

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 …………………

 

 

『え!?奈月がそんなことお願いしてきたんれすか!?』

 

『それは……オレ達にとっては願ってもないことですが、まさか、彼女がそんなことを……』

 

『ええ。僕も最初は驚きました。まさか、奈月からそんな物騒な言葉が出てくるとは思いませんでしたから。

 ですが、彼女がそれを望むと言うのであれば、僕は喜んで終止符を落とすつもりですよ。』

 

 広い飛行機の機内の中。これからのことに関して話すのであれば、今のうちに話しておくようにとメテオライトさんに言われ、彼が席を外しているタイミングで骸達は話し合っている。

 骸の記憶から、わたしがお願いしたことを犬と千種に話したのがわかる。

 彼らの表情から、かなり驚いていると言うことも。

 

『そのために現在、彼女と僕の精神世界の結びつきを強くしている最中です。』

 

『精神世界の結びつきを強く………?』

 

『いわゆる、憑依弾を使用する際に必要な【契約】に近いものですよ。まぁ、かなり仕様は変わりますがね。』

 

『そんなに変わるものなのですか?』

 

 疑問を口にする千種に、骸は静かに頷く。

 そして、自分がわたしとどのような繋がりを構築して、わたしのお願いを叶えるために動こうとしているのかを口にした。

 

『通常の【契約】とは違い、彼女の状態の変化による強制憑依を行えるようにしようとしているんですよ。

 例えば、彼女の精神がひどく傷ついた時、僕が直ぐにそれを察知して、彼女の精神を強制的に眠らせたあと、僕の精神を彼女の精神世界に送り込み、そのまま彼女に憑依する……と言った感じですね。』

 

『そんなことできるんれすか?』

 

 聞いただけではよくわからないようなことを口にする骸。

 この話に、犬と千種はうまくついていけてないのか、頭上にたくさんの疑問符を浮かべながら、そんなこと可能なのかと骸に問う。

 問いかけられた骸は、直ぐに2人に頷き返しては、再び口を開いた。

 

『普通はできませんが、僕と彼女であればできます。何故なら彼女は僕を完全に受け入れている上、僕の精神世界との相性が極めて良好なんですよ。

 その証拠に、彼女と精神世界で逢瀬を重ねながら、彼女の精神と僕の精神の結びつきも少しずつ強くしてみたところ、今の彼女の精神世界は、僕の干渉と憑依を拒絶できない状態になるまで掌握することができました。』

 

 “それは初めて聞いたんだけど?”なんてことを脳裏に浮かべながらも、わたしは骸の記憶を見つめる。

 まさか、骸とわたしの状況がそんなことになっているとは思わなかったのか、犬と千種は目を丸くして驚いていた。

 

『ヒントも最近得ることができました。彼女と僕の入れ替わり憑依の時、彼女が答えを見つけ出すためのサポートができたらと思い、僕の精神の一欠片を僕の体に残してみたところ、ちゃんと機能してくれたんですよ。

 そこで、彼女の精神世界に僕の精神の一欠片を潜伏させ、端末として扱い、彼女の状況の変化により、その端末を依代にして僕が憑依する形に持っていこうと考えています。

 普段は彼女の精神世界の隙間に潜伏させ、状況だけを把握できるようにしておくので、彼女の精神に支障は出ません。

 そして、彼女が本気で助けを求め、僕の名前を口にした瞬間、その端末から彼女の精神世界を完全に掌握し、彼女の全てを一時的に僕へと譲渡されるようにするつもりです。』

 

 かなり複雑な技術に、犬と千種は驚いたような表情を見せる。

 しかし、直ぐによくわからないと言ったような表情を見せては首を傾げた。

 ただでさえ複雑な憑依技術……それを使用できるからこそ、わかることなのだろうかと言わんばかりの様子だ。

 

『まぁ、こればかりは僕にしかわからないことなので、理解しろとまでは言いません。

 とりあえずは、奈月が多重人格となることと、僕が説明したことを完遂することができれば、奈月のお願いは簡単に叶えることができるようになるとだけ覚えていてください。』

 

 骸の言葉に、犬と千種は小さく頷く。

 結論さえわかれば、その結論に至るまでの過程はどうでもいいのだろう。

 

『“完全に限界を感じ、本気で逃げたいと自分が望んだ時、自分の代わりに全てを壊してくれ”……などとお願いされるとは思いませんでしたが、これはまたとないチャンスと言えます。

 なんせ、憎きマフィアの頂点に立たんとしている女性から公認された殲滅ですからね。まぁ、彼女は憎きマフィアに該当しない大切な僕達の身内ですが。

 ……彼女に憑依したとして僕1人で何もかもできると言うわけではありませんから、2人にも手伝ってもらえればと思っています。

 まぁ、しばらくは高みの見物と洒落込むことにしましょう。マフィアの連中がどこまで彼女に負担をかけずに生きながらえることができるのか、安全圏から眺めさせてもらうんです。

 どれだけの人が気づくのでしょうね?1人の女王が自分達を見限った時、全てが終わりに向かってしまうと言うことに。』

 

 骸の言葉に犬と千種は力強く頷く。その口元には、条件さえ満たされてしまえばマフィアに対して反旗を翻すことができると言う現状に喜んでいるのか、不敵な笑みが浮かんでいた。

 

 

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 ……飛行機の中での骸の記憶……その映像が終わりを迎えた時、わたしの両目から彼の手が離される。

 不敵に笑いながら、どれだけマフィアがわたしと言うある種の終末装置を起動させずに生きながらえることができるのかを楽しみにしている彼の姿には、RPGに出てくる厄介なボスの風格を幻視してしまった。

 

「これから先、マフィアの世界で頂点に君臨するかもしれない女性から公認でマフィアを滅ぼしていいと告げられたので、2人もとても嬉しそうに笑っていました。

 僕も清々しい気分です。条件が満たされたらと言う制約があるとは言え、憎きマフィアを殲滅していいと言うことなのですから。

 とは言え、今はまだ、桜奈の意思を尊重し、反旗を翻すつもりはありません。

 ですが、本当に限界を迎え、辛いと思い、逃げたいと言う望みが出てきた時はこう言ってください。」

 

 背後からわたしを抱きしめていた骸が、わたしの前に立つ。

 彼が持つ2色の瞳を見上げるように、静かに視線を向けてみれば、彼はわたしの頬を両手で優しく包み込み、言葉の続きを紡ぐために、静かに口を開いた。

 

「“もう、何もかも終わりにしたい。全て壊して助けてほしい”と。あなたがそれを口にした時、僕があなたの代わりに全てを終わらせてあげますから。」

 

 終わらせたいと思った時、口にするべき魔法の言葉。

 わたしと骸達以外には、呪いにしかならないであろう破滅の言葉。

 少しだけ無言で彼を見つめたわたしは、それを承諾するように頷き、骸に抱きつくように腕を伸ばす。

 

「できることなら、そんなことになってほしくないけど、本気で助けを求めた時は、全てキミに任せるよ。

 わたしの代わりに、キミが全部壊してね。かつて、キミが囚われていた研究所の全てを壊した時のように。」

 

 こんなお願いは、できることならしたくなかった……そんな気持ちに苛まれながらも、骸にいざと言う時を託すと、彼は抱きついてくるわたしの後頭部に大きな手を回しては、そのまま唇へとキスをしてきた。

 抵抗することなくそれを受け入れていると、彼の舌が唇を割って入ってきた。

 まさかの事態に一瞬驚くが、そのまま大人しくしていると、口内を優しく荒らされる。

 程なくして普段以上に骸との強い繋がりを感じるようになると、骸は同時にわたしにしていたキスを止めた。

 

「ケホッ……急にこれはちょっと苦しい……」

 

「すみません。手っ取り早く繋げるにはちょうどよかったもので。」

 

 小さく笑い声を漏らしながら悪びれもなくそう言ってくる骸を、わたしは思わず睨みつける。

 しかし、骸はそれを気にしていないのか、拗ねた気持ちを隠そうとしないわたしの頬を優しく撫でて、触れるだけのキスをしてきた。

 

「ちゃんと受け入れてくださりありがとうございます、桜奈。これで、僕の精神のカケラをあなたの精神世界に潜伏させることができました。

 基本的には先程の記憶の通り、あなたの状態を把握するための端末として機能するだけですが、いざと言う時は、僕の精神があなたを通して表に出るようになります。

 ただ、僕の精神のカケラを潜伏させるための下準備の過程で、僕の精神世界とあなたの精神世界がわずかに混ざり合いながら繋がってしまい、僕の気配があなたの中に混ざり込んでしまっているので、アルコバレーノや気配に敏感な連中は僕とあなたの両気配が混ざっている状態に混乱すると思いますが、気にする程のものではないでしょう。」

 

「いや、それはそれでどうなの……?」

 

 つい真顔でツッコミを入れてしまう。

 わたしと骸の気配が完全に混ざってるって……リボーンとか父さんとかディーノさん……あと、9代目辺りにバレたら何て説明したらいいんだ……。

 

「自身の精神を防衛するために新たな人格が生まれる話は度々聞くけど、まさか、人工的に別の人格を植え付けられることになるとはね……。」

 

「ですが、あなたが無茶をしそうになった時の強力なストッパーになりますよ。

 あなたの状態はほとんど僕に筒抜けになりますから、こちらの判断で精神を眠らせて動きも止められます。

あなたの意思だけを尊重していたら、また危険な状態に陥るまで気づかずに暴走しそうでしたし、ちょうどいいでしょう?

 あ、言っておきますが、無茶をするようでしたら本当に強制的に憑依しますからね?あなたが無茶をして壊れていく姿は見たくないので。

 こっちが強制的に憑依してまで止めなくてはならない状態になった場合、しばらくあなたに精神世界は返しませんから反省するように。

 そのような事態になってまで、何かをやり遂げようとしなくてもいいのですから。」

 

 言ってることはなかなかひどいものではあるが、わたしのことを心配するが故の判断であることはわかったため、異議を唱えることなく静かに頷けば、骸は安心したように笑みを浮かべた。

 

「僕がこの世に存在している限り、桜奈の精神は僕が守ります。他の誰かの干渉も絶対にさせたりはしません。

 だから桜奈は、無茶だけはしないようにして、自分の思うままに動いてください。

 いいですか?く・れ・ぐ・れ・も無茶だけはしないように。」

 

「2回言った……。」

 

「大事なことなので何度だって言いますよ。」

 

 ペチッと平手で軽く頭を叩かれ、イテッと思わず声を漏らす。

 反射的なものだったため、「ウソおっしゃい」と骸からツッコまれたが、こればかりは仕方ないような気もする。

 

「そう言えば……人工的に外部から別の人格が入り込むとか言うかなり独特な多重人格の発生になってるけど、よくできたね?

 いくら相性がいいからって、外側からそれを入れ、共存させることってなかなかできない気がするけど……。」

 

 そんな中、わたしは骸と言う存在を一つの人格(実際は外側からの精神干渉による自分以外の精神の憑依だけど)として共存させることができる状況に対する疑問を口にする。

 すると骸は、一瞬キョトンとした表情を見せたあと、ああ……と小さく呟いた。

 

「これに関しては、桜奈だからこそ可能になったものです。あなたの精神は、桜奈としての精神と奈月としての精神が共存している状態なのですが、どうやら混ざり合うことなく2つの側面として別々になってるらしいんですよ。

 そのせいか、あなたの精神世界は2つ存在しており、その2つの精神世界の間に1人分の精神を潜伏させることができる隙間があったんです。

 そこに僕の精神のカケラを差し込むことで、共存させることが可能になった……と言うのが答えですね。」

 

 ……どうやら、3つの精神の共存は、わたしの特異性により可能になったことのようだ。

 

「……わたし、そんなに特殊な精神だったんだ。」

 

「ええ。僕もまさか、桜奈のような存在がいるとは思いよりませんでした。

 ですが、そのおかげでこうして僕はあなたの精神を守ることができるようになったので、僕としてはあなたがこの特異性を有して生まれてきてくれてすごく嬉しいです。」

 

 ふわりと優しく抱きしめるように、骸の感情がわたしを包み込む。

 これまでは、洪水のように流し込まれるばかりだったものだけど、わたしと骸の精神世界が軽く混ざってしまったからか、感情の感じ取り方がかなり変化しているようだ。

 

「……物理的にも骸に抱きしめられているけど、骸の感情もわたしの体を包み込むカタチになってるね。」

 

「これまでの僕とあなたは完全に個々でしたからね。今は軽く混ざっているからか、個々としての互いの精神も存在していながら、わずかながら同一の部分が発生しているため、感じ方が変わっているのでしょう。

 とは言え、僕達が個人であることは変わりないので、これまで通り桜奈のことはしっかりと愛するつもりですが。」

 

 抱きしめる腕に力を加えて言葉を紡ぐ骸に、わたしは視線を一時的に向ける。

 そのあと、自分と骸の繋がりを感じ取るように、少しだけ目を閉じて呼吸を繰り返してみれば、彼と混ざり、結びついている精神の一部が見つかった。

 

「……個体でありながら双子の片割れのような状態……って言えばいいのかな。

 不思議な感覚ではあるけど、どうしてかすごく落ち着くよ。」

 

「クフフフ……僕の片割れのような状態になったと言うのに落ち着くとは……相当あなたに好かれたようですね、僕は。」

 

 楽しげに笑いながら、一つ、また一つとキスを落としてくる骸。

 触れる唇が少しだけくすぐったくて身を捩れば、彼はキスを降らせるのをやめてくれた。

 

「……いざと言う時はよろしくね、骸。」

 

「ええ。あなたに何かあれば直ぐに僕が助けてあげます。だから、これからも僕の腕の中で心穏やかに過ごしてください。」

 

 もしものことがあった時、その時は頼むと再度口にして骸を見上げれば、彼は穏やかな笑みを浮かべたのち、見上げるわたしの唇へと自身のそれを重ねてくる。

 なんか、骸からのキスは完全に拒絶できなくなってきたな……と脳裏でロマンのカケラもないことを考えながら、受け入れてほしいと言うように突かれた唇をわずかに開ける。

 その隙間から口内に侵入してきた熱を帯びた舌の感触に、わたしは一時的に目を細めたあと、静かにそれに応えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ❀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 精神世界に言っていた意識が現実世界へと引き戻される。直ぐ側で鼓膜を揺らしてくる目覚まし時計の音に従い、静かに目蓋を開けてみれば、先に起きていたらしいリボーンがわたしを見下ろしていた。

 

「……桜奈。お前、眠ってる間に骸に会ってただろ。」

 

「……バレた?」

 

「当たり前だぞ。骸が持ち合わせていた気配が眠ってるお前から感じ取れたからな。

 つか、今も骸の気配が混ざってるみてーだが……何があった?」

 

 ……予想通り、リボーンにはわたしに起こった一つの変化が直ぐにバレてしまった。

 ただ、骸かどうかを確認してこないと言うことは、ちゃんと彼が憑依しているか否かを判別することができているようだ。

 

「ん〜……ちょっとしたお願いを彼にしてきただけ。彼の気配が混ざってることに関しては、ちょっと説明が難しいかな。」

 

 そんなことを思いながら、わたしは骸と会ったことを素直に肯定し、わたしと骸の間に発生したこれまで以上に強く、尚且つわずかに混ざり合ってしまった精神世界に関してのことをはぐらかす。

 マフィアの人間であるリボーンに、いざと言う時は、わたしの代わりにマフィアを全部壊して……なんて骸にお願いしたとは話せない。

 

「……色々はぐらかされてるような気がするが深くは追求しないぞ。ただ、これだけは聞かせてくれ。混ざってる骸の気配は、桜奈に全く害はないんだな?」

 

「それに関してはYESと返せるよ。これに関しては害がない。まぁ、強いて言うなら、骸にわたしの精神状態のほとんどが筒抜けになってしまうってことだけど、別に悪いものじゃない。

 365日、骸に精神状態と無茶の有無を監視されるのもどうかとは思うんだけどね……。」

 

 最後の言葉を紡ぐと同時に、わたしはリボーンから視線を逸らす。

 精神状態と無茶をしているか否かを四六時中監視される状態って、かなりのパワーワードでは……?

 

「……ちなみに、無茶をしていたらどうなるんだ?」

 

「……骸からのお仕置き強制憑依+しばらく反省部屋。」

 

「……お前はそれくらいされた方がまだ健全に過ごせるかもな。」

 

「ええ……?」

 

 リボーンすらも匙を投げてしまうレベル……?と困惑の声を漏らすが、リボーンはそんなわたしのことなど気にすることなく、真っ直ぐと私の方へと目を向ける。

 

「……どうやら、桜奈を通してお前に見られてるみてーだな。」

 

「え?」

 

「お前が何を企んでいるのかは知らねーが、妙な真似をしやがったらこっちも容赦しねーぞ。

 あと、絶対ぇ桜奈はお前に渡さねーからな。桜奈はオレが貰う。」

 

「ぶほ!?ちょ、いきなり何言ってんのリボーン!?」

 

 急に告げられた言葉に思わず吹き出しながら、顔を赤くしていると、わたしの脳内に骸の声が響き渡る。

 

【わかっていたことではありますが、やはりアルコバレーノには直ぐにバレますか。まぁ、バレてしまう前提であなたとの結びつきを強くしていたので構いませんがね。

 桜奈。少しだけ体を貸してください。アルコバレーノに伝えたいことがあるので。

 本当は、あなたの体を依代にして自身を顕現させ、直接言葉を伝えたいところですが、これはかなり力を使うことになるため厳しいので、あなたの姿で僕の言葉を伝えます。】

 

 骸の言葉を聞き、わたしは何度か瞬きを繰り返したあと、それを承諾するように静かに目を瞑る。

 骸は、それが承諾であることを直ぐに把握することができたようで、「ありがとうございます」と一言声をかけてくる。

 同時にわたしの両目は、彼の片手により覆われた時のような感触を感じると同時に、意識は一瞬にして眠らされた。

 

 

 

 

 

 

 ───── side change REBORN ─────

 

 

 桜奈が目の前で目を閉じたかと思えば、一瞬にして纏う気配が別のものへと変化した。

 その気配が黒曜センターで接触した少年、六道骸のものであるのは明らかで、骸が何かしらの手を加えたことにより、桜奈の気配は奥深くへと眠らされたのだと直ぐに理解できた。

 

「……クフフフ……やはりアルコバレーノと呼ばれる存在は、つくづく気配に敏感ですね。

 流石は呪われていながらも様々な分野から選出された最強の集まりの1人と言ったところでしょうか。」

 

 閉じられていた瞼の裏から顔を出した瞳は、片方だけ紅玉のような赤色に染め上げられていた。

 赤の瞳に浮かぶのは六の文字。目の前にいる桜奈は、完全に骸へと変化している。

 

「まさか、こうも早く直接言葉を交わすことになるとはな。」

 

「それに関しては僕も同じです。とは言え、僕自身はすでに離れた地であるイタリアの方にいるので、直接と言うにはいささか語弊がありそうですが、まぁいいでしょう。」

 

 桜奈の姿と桜奈の声……それを通して言葉を伝えてくる骸は、相変わらずどこか不気味な気配を纏っている。

 桜奈の気配もしっかりと残っているせいで、ますます妙な雰囲気だ。

 

「企みもろもろは明かすつもりないので割愛しますが、桜奈に対して何かしらちょっかいを出すつもりは毛頭もありません。

 ハッキリと言わせてもらいますが、僕は桜奈を裏切りませんし、むしろ彼女にとっての絶対的な味方として、彼女の側にいること以外考えていませんよ。

 まぁ、何かしら競い合わなくてはならない時などは彼女と競うこともすると思いますが、そのようなことがない限り、僕は桜奈を守るために動きます。」

 

 “そこら辺は安心してください”と笑いながら言ってくる骸に、オレは探るように視線を向けるが、骸から嘘は全く感じ取ることができない。

 余程のことがなければ桜奈の絶対的な味方であることは事実のようで、それに関しては納得できた。

 こっちが納得したことを確認した骸は、どこか満足したように笑う。しかし、直ぐにその表情は別のものへと変わり、再び口が開かれる。

 

「しかし……絶対に桜奈は僕に渡さないと来ましたか。その上彼女をもらうとは……。

 なんともハッキリとした宣戦布告ですね。それならば、僕もそれに対して宣戦布告を返しましょうか。」

 

 ガワは桜奈のままであると言うのに、その表情は明らかに恋敵を見据える男のものであるとわかってしまったオレは、告げられるであろう宣戦布告を聞き届けるために、真っ直ぐと骸を見つめ返す。

 

「僕も桜奈を譲る気は毛頭もありません。死が2人を分つまで、最期まで桜奈の側にあり続けるのは僕の方です。

 お前達マフィア風情に、彼女を幸せにすることなどできるはずがないでしょう?

 言っておきますが、例えそちら側の誰かが桜奈と結ばれようとも、僕は容赦なく奪うつもりですので、そこら辺精々頭に叩き込んでおきなさい。」

 

 ハッキリとした声音で告げられた、オレに対する宣戦布告。

 オレはそれを聞き届けたあと、しばらくの間、骸を無言で見つめ、口元に笑みを浮かべる。

 

「いいぞ。頭に入れておいてやる。その時はオレも真向からお前を迎え撃つ。

 お前が桜奈と結ばれた場合も、容赦なく奪い取りに行くから頭に入れておけ。

 どっちが先に桜奈を心から幸せにしてやれるか、勝負といこうじゃねーか。」

 

 “世界一幸せだと桜奈に言わせるのはオレだ”……そんな思いを込めながら、骸を真っ直ぐと見据えれば、骸はしばらくの間無言になったあと、不敵な笑みを口元に浮かべる。

 

「いいでしょう。どちらが先に桜奈を枯れさせることなく美しく咲き誇らせることができるか勝負してあげます。まぁ、どうせ勝つのは僕だと思いますがね。」

 

「それはわかんねーぞ。確かに今のオレはこんなナリだが、この体に降りかかった呪いが解けたら直ぐに桜奈を撃ち落とすことができるくらいカッコいいからな。

 まぁ、ちょっとしたハンデって奴だ。オレが呪われている間、精々桜奈にアピールしておけ。

 それすらも凌駕する魅力で、オレが必ず奪ってやる。」

 

 オレの言葉を聞いた骸は、恋敵を前にした男としての表情を穏やかなものへと変化させ、しかし、2色の宝石のような瞳には負けたりしないと言う強い意思を宿し、静かに口を開く。

 

「クフフフ……それはとても楽しみですね。まぁ、精々自分が勝つと言う思い上がりに浸っていたらいいですよ。

 君が桜奈に手を伸ばした頃には、すでに彼女の身も心も、僕に染められて堕ちていると思いますがね。」

 

 そう言って、骸は静かに目を閉じる。同時にその気配は完全に桜奈のものへと塗り変わり、閉ざされた目蓋が静かに開けば、2つの琥珀色が顔を覗かせた。

 

「……話は終わった?」

 

「ああ。見事なまでに宣戦布告をかまされちまったがな。」

 

「宣戦布告……?」

 

「桜奈は気にしなくてもいいぞ。男同士にも譲れないものや秘密があるってだけだからな。」

 

「???」

 

 頭上に沢山の疑問符を浮かべる桜奈に、オレは小さく笑いかけながら、自身の体に視線を落とす。

 夜だけしか維持できない本来の姿は、夜が明けるとともに赤ん坊のものへと戻ってしまった。

 それでもオレは関係ないとばかりに、首を傾げる桜奈に近寄り、淡い紅色の唇に、自身の唇を軽く触れさせる。

 

「……へ!?」

 

「言っただろ。やっと好いた女が自分の近くにやってきたんだから、これからは本気で撃ち落としにかかるってな。

 こっちの姿でもキスはできる。まぁ、流石に触れるだけのものくらいしかできないが、それでも意識させることは割とできるもんだぞ。」

 

 不意打ちでオレがキスをしたからか、固まってしまった桜奈の姿にわずかながら笑い声が漏れる。

 こんな姿じゃあまりカッコはつかないが、ようやく近くに来てくれた桜奈に対して、オレはもう我慢する気はない。

 

「これからはこっちの姿でも桜奈に本気で意識させにかかるから油断すんじゃねーぞ。

 もし、少しでも油断なんかしてたら、オレは直ぐにオトしにかかるからな。

 もちろん、それは夜の時も言えることだ。赤ん坊の姿じゃ触れるだけのキスが限界だが、本来の姿に戻ることができる夜は、もっと大人に攻めるからな。

 隙さえあれば容赦なく仕留めにいく。オレはそう言うタチなんだ。そこら辺、しっかりと頭に入れておけよ。」

 

 聞き流されたりしないように、これからの自分の方針を桜奈に伝えれば、桜奈は何度か瞬きをしたのち、顔を真っ赤にしてしまった。

 羞恥が混ざったような声音の唸り声が聞こえてくるが、全く怖くない小型犬の唸り声のようにしか聞こえず、再び小さく笑い声が漏れる。

 

「あまり可愛らしい反応はすんじゃねーぞ。もっとイタズラしたくなるからな。」

 

「っ〜〜〜もう!リボーンのバカ!!」

 

 子供のような罵声を口にしては、桜奈は布団の中に潜り込んでしまう。

 そのことにくつくつと喉を鳴らすように小さく笑う。学校に遅刻しない程度に、そのほとぼりが冷めるまで、しばらく好きにさせておくか。

 

 

 

 




 小鳥遊 桜奈(沢田 奈月)
 実は複数の精神世界を共存させることができる特異体質持ちだったボンゴレ10代目。
 前世と現世の精神が混ざり合わず隣接していたことにより、そのような状態になっていた。
 彼女が桜奈と奈月の精神を入れ替える度に、炎の色が変化していたのはこれが理由であり、骸曰く陰(桜奈)と陽(奈月)に別れているとのこと。
 混ざり合わずに隣接していた影響により、1人分の精神を潜伏させることが出来る程の隙間が空いていたようで、そこに骸が自身の精神のカケラをを潜伏させたことにより、彼女の精神世界を掌握できるようになった。
 一時的に骸が憑依し、リボーンと何かしら言葉を交わしていたようだが、それによりなぜかアタックが強くなってしまい顔を赤くしてしまった。

 六道 骸
 桜奈と奈月の精神世界の間に1人分の精神を潜伏させることができることに気づき、そこに自身の精神のカケラを潜伏させたことで、桜奈の精神の防衛機構となったイタリアにいる術士。
 その過程で互いの精神世界がわずかに混ざった形で繋がってしまうと言う予想外の出来事に見舞われたが、別に支障はないしと気にせず放置することにした。
 リボーンの呼びかけに応え、一時的に桜奈に憑依することにより彼の前に姿を現し、一歩も譲らない宣戦布告を交わした。
 これから先、桜奈が無茶したり、危険な状態に陥った場合、問答無用で憑依して姿を見せるセコムと化すようになるが、誰1人としてそれを知らない。

 リボーン
 朝起きてみたら明らかに桜奈の中に骸の気配が混ざり込んでいることに気づき、彼に呼びかけてみたところ、再び彼女に憑依した骸と対峙することになったアルコバレーノ。
 桜奈に憑依状態とは言え、直接姿を見せた彼と互いに桜奈は譲らないと宣言し合い、彼の憑依から解放された彼女に容赦なく迫った上、これからこの姿でも手は抜かないと告げた。
 今回のことで桜奈と骸がどのような形で接触し、言葉を交わしたのかを把握することができたため、それは予測できなかったと舌打ちをした。


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