最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

235 / 385
 連れていた小鳥のまさかの正体を知る一幕を終え、昼休憩。
 2人の少年達と共に屋上へと向かった桜は、屋上に待機していた虹の黄色に促されるままに、自身の本性を明かしていく。


甘え桜育成計画 ver.未来の両腕達

 連れていた小鳥がまさかのアルコバレーノのペットだった仔狐と言う衝撃の事実を知る一幕を終え、時折休憩中に、開いた窓から教室に入り込んでもふられにくる桜月を構いながら過ごした午前中。

 わたしの元に飛んでくる小鳥に、クラス中の人間が興味津々に見てきたり、触ろうとして彼女につつかれそうになると言うやり取りに度々見舞われながらも、昼休憩までの授業をやり遂げたわたしは、リボーンと桜月の双方から言われたことに溜め息を吐きそうになる。

 

 ─────……骸がいたから黒曜で過ごす際、早い段階で自分のことを明かすことができたけど、一年と半年以上、しっかり者として過ごしていた男子の前で本来の甘えん坊を出せってかなり厳しい内容なんですけど。

 

 どうしたものかと頭を抱える。特に、隼人はわたしのことを尊敬するボス候補としていつも話していると言うのに、当人が実際は寂しがり屋で甘えたがりな理想とはかけ離れた存在だったなんて教えられて、これまで通り過ごせるとは思えないんだけどな……。

 

 そんなことを思いながら、まだ父さんが自宅で休暇中と言うこともあり、張り切り過ぎた母さん特性の弁当が入ったバッグを手に取る。

 流石にナツじゃ食べきれねーんじゃねーか?と珍しく母さんに呆れる父さんが見れてしまう程のこれは、重箱レベルのものなのである。

 

 ─────……どう言う巡り合わせなのやら…………。

 

 よりによって隼人達を屋上に呼ぶための口実になりそうなものを持っている現状に困惑する。

 まさかとは思うけど、リボーンが告げ口したとかじゃないよね?

 

 ─────……あり得そうだから困るところ。でも、本当に偶然って可能性もありそうだからなんとも……。

 

 再び出そうになった溜め息を我慢して、昼食の準備をしてる隼人達に目を向ける。

 どうやら彼らもわたしを気にしていたようで、見事なまでに視線が重なった。

 

「……隼人。武。一緒に昼食べよ。今、家に父さんがいるんだけど、そのせいで母さんが料理を張り切っちゃってさ。

 ついでだからって弁当を作ってくれたんだけど、あれこれ詰めまくったのか1人で食べきれそうにないんだよね。」

 

「クラス中で話題になってるナツのオヤジさんが……」

 

「お父様がいらっしゃる状態だと、奈月さんのお母様が料理を張り切るんですか?」

 

「父さんの好きな食べ物、母さんが作る料理全般だからいつも美味しそうに食べてるよ。

 どれくらい食べるのかと言うと、軽く20人前くらいぺろっと。」

 

「にじゅ……!?」

 

「め、めちゃくちゃ食ってますね……?」

 

「でしょ。」

 

 リボーンから2人にもわたしの性質を話したと聞いて、少しだけ身構えていたが、思ったより普通に対応されたことに軽く呆気に取られる。

 まぁ、でも、変なぎごちなさとかない分マシではあるかと思いながらも、とりあえず2人を昼食に誘うことはできた。

 ……あとは、自分からも性質を明かすだけ……とは言うけど……

 

 ─────……それが難しいんだよなぁ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ❀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれよあれよとたどり着いた屋上で、多過ぎる弁当を隼人と武、それと屋上に隠れていたリボーンを巻き込んで食べていた時、不意にリボーンが口を開く。

 

「ナツ。飯食ったら2人にもあの話をするぞ。」

 

「ゔ……やっぱり話さなきゃダメ?」

 

「当たり前だぞ。」

 

「う〜………」

 

 告げられた言葉に唸り声を漏らす。折角意識を弁当の方に向けることができていたのに、食べ終わろうとしていた頃に思い出すように言ってくるなんて……。

 

「……狙ったでしょ?」

 

「なんのことだ?」

 

「むぅ……」

 

 軽く拗ねながら、なんで言うんだと睨みつけるが、リボーンには通用していないようで、知らん顔をして自分の昼食を食べている。

 

「あの話って、ナツの本当の性格は、オレ達が見ていたものじゃないって話か?」

 

「そうだぞ。」

 

「ってことは……やっぱり奈月さんはいろいろと抱え過ぎていて、気を抜くことがずっとできなかったってことっスよね。

 しかも、その原因の一因はオレ達の方にも少しあって、奈月さんは無理をし過ぎていた……」

 

「そうなるな。……ナツ。お前から詳しく話してやれ。ずっと一緒に過ごしていた奴らに、本当はこんな性格じゃないって言うのは難しいし、失望されちまうかもしれないって不安になる気持ちはわからなくもねーが、このままじゃ本当にぶっ倒れて、最悪の場合、それが原因で取り返しのつかねーことに陥る可能性だってあるんだぞ。」

 

 そこまで言って、リボーンは少しだけ罰が悪そうな様子を見せる。

 自分はこんなことを偉そうに言えるような立場じゃない……そんな反省も伺えるようだった。

 

「……それに気づかずに無茶させ過ぎたオレが言うのもあれだけどな。ナツにはこれから少しでも自由に過ごせるような、抱え過ぎたものを少しだけおろして一休みすることができるような時間を作ってほしいんだ。

 悔しいことに、骸と違ってオレ達はナツが無茶してることや、抱え過ぎている状態になってることを察してやることができない。

 情けないとは思ってるが、ナツからSOSを出してもらったり、手を伸ばしてくれないとそれを掴んでやることができない。

 渡り鳥だって時折休憩を挟んで移動をしている。飛び続けることなんていくら長距離移動に慣れている鳥でも不可能だ。

 移動に慣れてる鳥ですら止まり木を持ってるんだ。ナツがちゃんと一休みできる場所を複数持っていてもおかしくはねーぞ。」

 

「………………。」

 

 “渡り鳥だって常に飛び続けることなく休む場所を持っているのだから、わたしも休める場所を複数作ってもいい”……その言葉を聞いて、わたしは無言で隼人達に視線を向ける。

 わたしの時線に気づいた2人は、一瞬だけキョトンとしたような表情を見せたあと、リボーンの言葉に賛同するように笑って頷いた。

 

「……わたし、本当は2人が思ってる程しっかり者じゃないの。本当は、誰かに甘えたくて仕方ない子供で、なんでも卒なくこなせる完璧な沢田奈月なんて、ただ、わたしが演じていただけに過ぎない一つの仮面なんだ。」

 

 真剣に話を聞いてくれようとしている隼人達を少しだけ見つめたわたしは、静かに口を開く。

 自身の根底に存在しているもの……それに伴う本来の性格を明かすために。

 

「今は父さんが度々気にかけてくれているからかなりマシになったけど、前までは父さんが音信不通で、母さんが1人でわたしを育てているような状態だったんだ。

 そのせいか、母さんはいつも寂しそうで、それでどこか辛そうで、だけど、わたしを育てるためにしっかりしないとって、それを表に出そうとはしない人だった。

 小さい頃から、わたしはそれを不思議と察することができる性質だったから、何が正解で、何が母さんの負担を減らすための行動になるのかわかってたから、理想の娘を演じるのは得意だった。」

 

 周りの様子を見て正解を察知することができる洞察力……これは、わたしが小鳥遊桜奈として生きていた時に身についたもの。

 あの時もわたしは周りの様子を察知して、それに対する正解の答えを選び取る能力に長けていた。

 その能力や記憶を持ってこっちの世界に生まれ落ちたから、こっちの世界でもその生き方は有効で、先読みした行動を不自然さを出さないようにすることができた。

 でも、その度に新しい知識を会得して、その度に技術を身につけて、それを実行していくのは、それなりに疲れを感じていた。

 

「本当は甘えたくて仕方なかった。ワガママだって言いたかった。好きなことやしたいこと、そう言ったものを自由気ままにしていきたいと思ったりもした。

 でも、そんなことをしたら母さんの負担が増えるばかりで、母さんの方が参ってしまうのは明白だった。

 母さんの負担が増えることと、やりたいことを我慢して、母さんのために動くこと……どちらが正解なのかは考えるまでもなかった。」

 

 きっと、父さんが特殊な仕事に就いていなければ、わたしも少しは甘えることができたのだろう。

 普通の子供のように過ごして、当たり前の日常を過ごすことだってできたのだろう。

 でも、この世に生まれ落ちる際に、親を自分が選べるはずもなく、どのような仕事をしていて、どのような家庭が築かれているのかなんて知ることなく新たな生を受ける。

 それが、この世の常と言うものだ。事実、桜奈としてのわたしも生まれ落ちて成長するまで、どのような家庭なんてわからなかった。

 それは、こっちに来ても同じだった。

 

「早くしっかりすることができたら、母さんの負担は一気に減る。どこで何の仕事をしているのかわからない父さんの代わりに、少しでも母さんの支えになることが、その時のわたしの答えだった。

 でも、演じていたものが本当の自分にすり替わってしまうまで慣れても疲れるものは疲れるわけで……だけど、今更甘えることなんてできるわけがないって、完全に休むことを諦めていたんだ。」

 

 脳裏に過る骸に甘えていた時の記憶。

 諦めなくていい……甘えたい時は甘えていい……甘えたいのであれば、自分がそのための止まり木になるからと言ってくれた人の側にいると言う環境の息のしやすさは、とても心地の良いものだった。

 

「そんな状態の時に、骸から甘えたい時は甘えていいんだって言われて……肩の力を抜いていいって言われて……抱えていたものを投げ捨ててもいい……逃げてもいいって言われたんだ。

 もちろん、最初はそれができなかった。甘えることなんてとうの昔に捨ててしまったものだったから、素直に甘えることができなかった。

 でも、そんなわたしを骸はずっと気にかけてくれて、本当はこうしてほしいけど、口にすることができない時も、彼は察してそのしてほしいことをしてくれた。」

 

 側に寄り添い、時にはくっついて、ずっと甘えると言う行動だけを促してくれた骸のおかげで、わたしは本当のわたしを少しだけ思い出すことができた。

 でも、それは他の人に明かせなくて、骸とリボーンだけが知っていればいいと思っていた。

 

「その時間は本当に苦しくなくて、すごく心地良いなって思っちゃって、わたしは、改めて自分の本当の性格を思い出すことになった。

 わたしは……根っからの甘えたがり屋で寂しがり屋……しょっちゅう人の温度が恋しくなって、その温もりを感じていたくて、くっついたり甘えたりしたいと思ってしまう……それが、わたしの本当の性格なんだ。」

 

 だけど、2人が許してくれるのなら、わたしも、2人の前では自然体でいたい。

 少しでも呼吸がしやすいように、ゆっくりと過ごせる居場所として。

 

「2人が見ていた姿も“私”ではあった。それに関しては否定しない。でも、“わたし”自身の素かと言われたら、それはノーとしか言いようがない。

 でも、優等生や理想を演じていない時のわたしを見た周りに嫌われたり失望されたりしたくなくて、ずっとそれは言えなかった。」

 

 もし、2人が問題ないと言うのであれば、2人にも本当のわたしを預けたい。

 こうして、わたし達以外の人がいない場所で過ごしている時だけは、本当のわたしとして接したい。

 

「……正直に言うとね。優等生や理想を演じ続けるのってすごく疲れるんだ。

 だから、休める時は休みたいし、本当の自分で過ごせる時間がほしかった。誰かに甘えたり、くっついたりして、少しだけ羽を伸ばしたかった。

 だけど、それができる場所がない。周りに人がいると、どうしても嫌われたくない、失望されたくないって気持ちの方が出てくるから、その場所を作ることができなかった。」

 

 骸と恭弥さん、それとリボーン……3つの休める場所を作ることができてるなら、それでも問題はないと思ってる。

 でも、折角こんな機会ができたのだから、もう少しくらい欲張りたいし、これからも長い付き合いがありそうな2人にも、少しだけわたしを知ってほしい。

 

「……こうやって、わたし達がいる時だけでいい。少しだけ休める機会があればそれでいい。

 しっかり者の“私”じゃなくて、寂しがり屋で甘えたがり屋な女の子としての“わたし”を出して過ごせる場所がほしい。

 2人が知る“私”とは、全く正反対の“わたし”になるけど、もし、2人がそれでも問題ないよって言うのなら、しっかり者の“仮面を被った私”としてじゃなくて、寂しがり屋で甘えたがり屋な“本来のわたし”として過ごしてもいいかな?」

 

 “嫌われてしまったらどうしよう”……そんな不安を抱きながらも、わたしは自分の本質を明かす。

 あとは2人の答えを聞くだけ……だけど、2人の顔は見る気になれなかった。

 

 ……不意に、頭に優しく手を乗せられて、緩やかな手つきで撫でられる。

 驚いて顔を上げてみれば、武がわたしの頭に手を伸ばしていた。

 

「大丈夫だぜ、ナツ。」

 

「え……?」

 

 わたしの頭を優しく撫でながら、武はニッと眩い笑顔を見せる。

 彼の表情に驚き、何度か瞬きをしていると、今度は隼人の声が聞こえてきた。

 

「そっスよ、奈月さん。確かに、オレは最初のうちは奈月さんの才能に惹かれて奈月さんの側にいました。

 ですが、今のオレは、しっかり者だとか、ボスに相応しいからだとか、そんな陳腐な理由で奈月さんの側にいるわけじゃないんスよ。

 奈月さんと一緒に過ごすようになって、今は本気で奈月さんと言う女性に頼られたい、支えたいって思ってるんです。」

 

「オレも獄寺と同じだな。最初は確かに、すげークラスメイトがいたんだなって感じだったし、スランプの時に助けてもらった恩返しがしたくて一緒にいた。

 でも、一緒にいる時間が長くなって、恩返しが終わったあともずっとナツと一緒に過ごしたい、助けたいって思ったんだ。」

 

 隼人と武の2人から、笑顔で支えたいと思っていると告げられて、わたしは少しだけ呆気に取られる。

 こんなにもあっさりとわたしを受け入れると言われてしまうとは思わなかった。

 

「ナツはもうちょい周りを信じることを学んだ方がいいぞ。自分の周りには本当の自分を見せたとしても受け入れる人間が沢山いるってこともな。

 まずは愛されてるってことに自信を持って、支えようとしてくれる人間が何人もいることを理解しろ。

 いつまでも怖がって、失望されるからと自分を否定して、絶対に受け入れてもらえないからって疑心暗鬼になってないで、ちゃんと周りに手を伸ばせ。

 それができなきゃ、いつまで経っても精神を休めることができないで、これまで通り抱えるばかりの生活から抜け出すことは不可能だ。」

 

 少しだけ厳しく、だけど優しい声音で、リボーンはわたしに語りかける。

 その言葉を聞くために視線をリボーンに向けてみれば、彼は小さく笑っていた。

 ようやく、自分が思っていたことを教えられる……そんな感情を乗せながら。

 

「これでわかっただろ?自分がどれだけ人に恵まれていて、どれだけ多くの味方がいて、どれだけ多くの人から愛されているのかが。

 少なくともナツの周りに集まってるオレ達は、本当のナツを受け入れることができるくらいにナツを大切にしてるんだ。

 知ってるか?こいつらもナツが好きなんだぞ。骸やヒバリ、オレと同じ意味合いでな。」

 

「………はい!?」

 

「ぶほ!?ちょ、小僧!!いきなりなんつーことバラしてくれてんだ!?」

 

「そうっスよリボーンさん!!いくらリボーンさんでもそれはないっスよ!!」

 

「つかちゃっかり小僧もナツが好きって言ってなかったか!?」

 

「言われてみれば!!どう言うことですかリボーンさん!?」

 

 突然の爆弾発言に固まってしまったが、直ぐに意味を理解して顔を赤くしてしまう。

 慌てて隼人と武に視線を戻してみると、2人もわたしに視線を向けていたのか思いっきり視線が重なってしまった。

 

「「「っ〜〜〜〜」」」

 

 勢いよく視線を逸らして動きを止める。

 自分の顔が赤くなってることが嫌と言う程に理解できる程顔が熱くなっている。

 

「ゆでダコみたいだな。」

 

「誰のせいでこうなったと思ってんの!?」

 

「誰のせいでこうなったと思ってんだ!!」

 

「誰のせいでこうなったと思ってんスか!!」

 

「……仲良いなお前ら。」

 

 リボーンの指摘に隼人達と揃ってツッコミを入れると、リボーンから楽しげな様子が抜け落ちた。

 自分で揶揄っておきながらなんで自分でダメージ受けてんの……。

 

「「「………………。」」」

 

 そんなことを思いながら、わたし達は再び視線を合わせる。揃いも揃って顔を赤らめているのが丸わかりだった。

 気まずさを覚える程の無言の時間がしばらくの間流れる。

 

「……あー……その……なんだ。本当は、こんな風に言いたくなかったんだけど、小僧の言ってること……マジなんだよな……。」

 

「その……今の関係を崩したくなかったんで、ずっと黙ってたんスけど、オレも野球バカと同じで……」

 

「……2人して、わたしを恋愛的な意味で特別な異性として見ていたと。」

 

 わたしの問いかけに、隼人と武は気まずそうにしながらも頷く。

 2人の瞳には骸やリボーン……恭弥さんやディーノさんのように、確かな恋慕が混ざっていた。

 

「正直言ってさ。オレはこうやって賑やかに話せる関係を今は続けたくて、まだ伝えるつもりはなかったんだよな……。」

 

「オレも、今は奈月さんが歩く道を支えることが優先なんで、コトがある程度落ち着くまでは話すつもりなかったんスけど……」

 

 顔を赤ながら、ポツポツと言葉を紡ぐ隼人と武を見つめていると、2人は少しだけ互いに顔を見合わせたあと、その場で頷き、わたしの方へと目を向けてきた。

 

「オレはナツが好きだぜ。友達(ダチ)としての好きじゃなくて、付き合えたらいいのにって言う意味の方で。」

 

「オレも奈月さんが好きです。ボスとしてとか、友人としてとか、そんなありふれた好きじゃなくて、山本と同じ意味で……。」

 

「でも、今はこの関係を続けたいから、選んでくれとまでは言わないぜ。ただ、少しでも長く過ごしたり、嫌なことや辛いこと、休みたいと思った時は、ヒバリや骸じゃなくて、オレ達を頼ってほしいんだ。」

 

「しっかり者だと思っていた方が、実は真逆の性格だったってことには少しだけ驚きましたけど、別に引いたり、嫌ったり、失望したりはしてないっス。」

 

「むしろ、親近感が湧いてきたよな!今までのナツは確かに頼りたくなるような雰囲気があったけど、こう、どこか距離を置こうとしてる感じもあったからさ。」

 

「だから、踏み込んでいいのかわからなかったスけど、こうして話してくれたおかげで、ようやく踏み込んでいいってわかりましたから。」

 

 そこまで言葉を紡ぎ、2人は笑顔を見せる。

 その表情はどこか晴れやかで、とても嬉しそうだった。

 

「オレ達はどんなナツでも受け止めるつもりだぜ。好きなヤツに頼られてイヤだとは思わねーって!」

 

「オレ達はまだ頼りないかもしれないスけど、絶対に頼りになる人間になってみせるんで、これからはどんどん頼ってください!

 だから、ヒバリや六道骸なんかよりも、まずはオレ達に手を伸ばしてください、奈月さん。」

 

 こっちの不安など跳ね飛ばすように、わたしのことを受け入れると言ってきた2人に、わたしは何度か瞬きをする。

 程なくして込み上げてきたのは安堵と喜び。それに従うようにして、わたしは目の前にいる2人に勢いよく抱きついた。

 

「おわ!?」

 

「な、なな、な、奈月さん!?急にどうしたんですか!?」

 

 触れたところから、2人の体温が高くなっていることを悟り、思わず笑い声を漏らしそうになる。

 でも、それよりも2人に伝えたいことがあったわたしは、笑い声を飲み込んで、静かに口を開いた。

 

「……ありがとう、2人とも。頼っていいよって言ってくれて。」

 

 わたしの言葉に、わたわたと慌てていた2人が動きを止め、程なくしてそっと背中に手を回してくれた。

 触れた温もりに心地良さを感じ、少しだけ目を細める。

 

「……今みたいに、わたし達だけで過ごしてる時だけは、2人にも少しだけ甘えてもいいかな……?」

 

 そして、こうやって周りに人がいない時、わたし達だけで過ごしている間は甘えてもいいかと問いかける。

 

「隣にいてくれるだけでもいい。普段よりちょっとだけ近づいてくれるだけでもいい。

 少しだけ、2人の温もりを感じることができるだけでも十分だから、この時だけは側にいてほしいんだ。」

 

 ただ、少しだけ温もりを感じることができるだけでも、自身の寂しさや疲れは取れるからと。

 

「それくらいならお安い御用だぜ。」

 

「むしろ遠慮しないでどんと来てください。奈月さんが少しでも落ち着けるなら、いくらでも胸は貸すんで!」

 

「……そんなこと言われたら、わたし、容赦なく2人の膝の上に座り込んだりするけどいいの?」

 

「「え゛!?」」

 

「ナツの甘える行動って基本的に相手にくっつくタイプの奴だぞ。応接室にいた時も、普通にヒバリの膝の上に座り込んでくっついていたしな。

 あと、撫でられるのも好きみたいだぞ。ヒバリに撫でろって促していたみたいだしな。」

 

 リボーンからの指摘を聞いて、再び隼人と武は顔を真っ赤にする。

 骸や恭弥さん、それとリボーンはそれなりに余裕を持ち合わせている状態だったり、すぐにそれを受け入れるタイプだったため遠慮なくくっつくことができたが、ピュアな2人には、少しばかり慣れない行動だと思っていた。

 予想通り、少しくっつくだけでも顔を赤らめてしまっているのだから、恭弥さんや骸、呪解しているリボーンにするように膝の上に乗っかられると言うのは、かなり刺激が強いはずだ。

 

「2人は側にいてくれるだけでいいよ。恭弥さんや骸にするような大胆な甘え方はしないから。」

 

 だったら今は、側にいてくれるだけでいい……そう言ってわたしは、2人からそっと離れた。

 

「膝はいつか貸してくれたらいいから、時には頭を撫でてほしいな。それくらいなら、2人でもできるでしょ?」

 

 ただ、少しだけワガママを言っていいのであれば、頭を撫でてもらえたら……そう思いながら言葉を紡げば、2人は一瞬目を丸くする。

 でも、すぐにそれくらいなら大丈夫だと思ってくれたようで、しっかり頷いてくれた。

 

「情けねーなお前ら。好きな女に逆に気を遣わせてどうすんだ。」

 

「「ゔ……」」

 

「リボーン。そんな風に言わないの。2人には2人のペースがある。わたしに合わせてもらうよりは、そのペースに沿って甘えさせてくれる方が2人のストレスにはならないよ。」

 

「ナツはそれでいいのか?折角自分の本来の性格を教えたのに。」

 

「構わないよ。骸と恭弥さんもいるしね。一休みの時は隼人達にお願いして、しっかり休みたい時は、骸か恭弥さんに甘えさせてもらうよ。」

 

「サラッとオレが抜かれてねーか?」

 

「だってキミは限定的なものでしょ?」

 

「………さっさと今の状況をなんとかする方法探すか。」

 

 拗ねたように言葉を紡ぐリボーンに、小さく笑い声を漏らす。

 大丈夫だよ。キミには家にいる時にしっかり甘えさせてもらうから……そんな言葉は飲み込んで。

 

「しっかり者の“私”じゃなくて、寂しがり屋で甘えたがり屋な“わたし”を出せるだけでも助かるよ。

 これからは、ちょっと距離が近くなるけど、問題ないなら側にいさせて。

 2人の間に挟まるだけでも、ゆっくりと過ごすことができそうだから。」

 

 笑いながらこれからのことを伝えれば、隼人と武は一度顔を見合わせる。

 そして、小さく口元に笑みを浮かべて頷いた。

 

「ああ。くっつくくらいなら問題ないし、休みたい時は言ってくれよな。」

 

「オレ達はリボーンさんや奈月さんみたいな余裕はまだ持ち合わせてないっスけど、いつか余裕ができた時は教えるんで、その時は頼ってください。」

 

「……うん。」

 

 小さく笑いながら頷けば、隼人と武も笑う。

 

「……まぁ、今回は及第点としてよしとするか。ナツが周りに甘えるようになる基盤はできたしな。

 あとは同性と大人にもっと甘えられるようになれば合格だぞ。」

 

 そんなわたし達を見ながら、リボーンは及第点だと口にする。

 そして、2人の間にちょこんと座り込んだわたしの肩に飛び乗って

 

「女同士でしかわからねーこともあると思うし、次は京子とハル、それとビアンキ辺りに行ってみっか。

 できれば黒川も……と思っちゃいるが、今はまだ、マフィアの関係者に接触したことがある人間だけ集めていくぞ。」

 

 次は女性陣に自身のことを明かすように言ってきた。

 彼の言葉に、思わずわたしは苦笑いをこぼす。ビアンキ姉さんはともかく、京ちゃんとハルにも明かすのか……。

 

「京ちゃん達にもかぁ……。だいぶ抵抗は無くなったけど、やっぱ不安はあるかな……。」

 

「獄寺と山本の反応からして、この3人もちゃんと受け入れてくれるはずだぞ。

 最終的には、もっとナツの止まり木を増やしていくからな。今回は獄寺と山本、それとヒバリ、あと、京子とハルとビアンキに明かす流れだな。

 余裕がありそうならもう少し枠を増やす予定だが、今回の合格ラインは今挙げたメンバーに甘えるための基盤を作ることだ。」

 

 リボーンの言葉に間延びした返事を返しながらも、左右にいる隼人と武の手を自身の頭に強制的に乗せる。

 2人は驚いたような表情を見せたが、すぐにこっちの意図に気づいてくれたようで、優しく頭を撫でてくれた。

 緩やかに動く2人の手のひらの温もりに、口元が緩やかな弧を描く。ついでとばかりに肩に乗っていたリボーンを両腕でぬいぐるみを抱えるように収めれば、リボーンは一度だけわたしに視線を向けたあと、フッと小さく笑い声を漏らした。

 

 

 

 




 沢田 奈月
 リボーンからの指摘を受け、ようやく2人にも自身の性格を明かし、彼らに合わせた甘え方を行ったボンゴレ10代目。
 この日から2人にたびたび撫でてほしいアピールをするようになるのだが、教室内でも自身の頭を2人が撫で始めるようになるとは思っていない。
 2人が自身にうっすらと好意を抱いてることには気づいていたのだが、ガッツリ好かれているとは思わず顔を赤くした。

 リボーン
 少しでも奈月が甘えに行ける範囲を広げるために、獄寺と山本の2人に甘えに行かせたアルコバレーノ。
 甘えるならガッツリと甘えに行けと思い、サラッと2人の好意をバラす暴挙に出たが、あまりにも2人がウブだったので、女に気を遣わせんなと少しだけ呆れた。
 とは言え、奈月が甘えるための基盤を得ることができたので、とりあえずはよしとした。
 2人の間に挟まり、頭を撫でさせる奈月に抱っこされるオチがついてきたのは役得ではあるが、ちょっと当たってるもんあるんだが……?

 獄寺&山本
 リボーンにまさか奈月に対する恋慕をバラされることになるとは思わず顔を真っ赤にした両腕候補。
 しかし、大切に思っていた彼女からようやく近づいてもらえたことに対する嬉しさの方が勝り、これからはヒバリや骸より先にこっちを頼ってほしいと告げる。
 この日から彼女にたびたび撫でてアピールをされるようになり、それに応える生活が始まるのだが、まさかそれが癖として身につき、教室内でもやらかしてしまうようになるとは思っていない。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。