最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
時には同性にしかわからない不調もあると言うことから、同性の側にも止まり木を作っておけと言われるがままに。
放課後を迎え、しばらくは仕事より休息を取るように恭弥さんから言われ、風紀委員会の仕事をせずに帰路につく。
隼人と武は側にいない。今日は部活や用事が重なっているためか、一緒に帰ることができなかった。
「なっちゃーん!」
「おっと!?」
今日は1人の下校時間か……なんてことを考えながら、いつもの道を歩いていると、背後から京ちゃんに抱きつかれる。
少しだけ考え事をしていたせいで、軽くバランスを崩したが、なんとか倒れるようなヘマをすることなく、軽く上がっていた足を地面に降ろす。
「相変わらず抱きついてくるのが好きだね、京ちゃんは。」
「うん!だってなっちゃんが帰ってきたんだもん!何回だって抱きつくよ?
1ヶ月もいなかったからなっちゃん不足で大変なんだから。」
「扱いが充電器のそれなんだよなぁ……」
わたしの横に並び、いつものように腕に自身の腕を絡めてくる京ちゃんに、わたしは小さく笑う。
しかし、すぐに脳裏に過った京子にも本当の自分を話せと言うリボーンの言葉に、少しだけ遠くを見つめる。
「なっちゃん?」
「ん?ああ、ごめん。1ヶ月ずっと父さんに連れ回されるカタチで旅行をしたもんだから、ちょっとだけボーっとしちゃったみたいだね。」
「大丈夫?」
「うん。大丈夫。今回、直接会ったのは2年振りくらいだったし、家族が大好きすぎる父さんの性格上、振り回されることは想定していたしね。」
「ふふ!なっちゃんのお父さんってそんな人なんだ!」
「父さんの好物は母さんが作ったメシとナツが作った菓子全部だ!って豪語するくらいにはね。」
「そうなんだね。でも、なっちゃんが作るお菓子も、なっちゃんのお母さんが作る料理もすごく美味しいからわかる気がする!私もなっちゃんが作るお菓子大好きだもん!」
「ありがとう、そう言ってくれて。」
わたしの反応に、隣にいた京ちゃんが気づかないわけがなく、すぐに声をかけられたが、なんとかボーっとしていた理由は誤魔化した。
とは言え、これはいわゆる一時的な処置に過ぎないため、長い効果は期待できない。
─────……リボーンが言うには、京ちゃんとハル、それとビアンキ姉さんの3人にも話せるように準備しておいたって話だけど、ハルもあとで合流するのかな。
そんなことを思いながら、京ちゃんと一緒に帰路を歩く。
「ナツさーん!京子ちゃーん!」
すると、噂をすればなんとやら……と言っても噂すら口にしていないわけだけど、どこからともなくハルの声が聞こえてきた。
すぐに視線を声の方に向けてみれば、ハルがこっちに走ってきている姿がそこにはあった。
「あ、ハルちゃんだ。」
「だね。」
2人で足を止めてハルの方を見つめていると、彼女は先程の京ちゃんのように、わたしに思い切り抱きついてきた。
前からの突撃だったため、難なく受け止めてあげれば、ぎゅっと抱きしめられる。
「ナツさん1ヶ月もどこに行ってたんですかぁ!!ナツさんのお家はもぬけの殻だし、ナツさんのお母さんも、リボーンちゃんも、ランボちゃんやイーピンちゃん、ビアンキさんやフゥ太君までいなくなってたしで引っ越してしまったのかと思ったじゃないですか!!」
軽く涙目になりながら怒鳴ってくるハルに苦笑いをこぼす。
確かに何も言わずに家がすっからかんと言うのはかなり驚くと言うか、何があったんだと慌ててしまいそうである。
「ごめんごめん。海外で仕事していた父さんが急に戻ってきたかと思えばそのまま旅行に行くぞ!って1ヶ月間海外に連れて行かれちゃってね……。
知り合いに連絡する暇すらなかったもんだから教えることができなかったんだよ。」
「はひ!?ナツさんのお父さんって海外でお仕事してる方だったんですか!?」
「うん。しかも地位としてはかなり高いらしくてね。確か、実質No.2……だったかな?
基本的には大元の会社から離れているみたいなんだけど、時にはかなりの権力を発揮する立場だって聞いてるよ。
だから、ここ数年は音信不通で何をしてるのかさっぱりわからなかったんだよね。
そんな父さんが急に日本に戻ってきたかと思えば長期の休みが取れたから家族旅行に行くぞ!だもん。
呆気に取られるまま、あれよあれよと海外に連れて行かれて1ヶ月間帰れなかった。
まぁ、母さんは先に帰国していたんだけど、わたしにはどんな仕事をしているのか教えたかったからって帰してもらえなかった。」
「あ……アクセル全開な個性的なお父さんです………。」
「ド級の家族想いでいい人ではあるんだけどね……。ちょっとブレーキがない人だよ……。」
表現としてはおかしくないと思うけど……なんて考えながらも、京ちゃんとハルの両方をくっつけたまま家に帰るための道を辿る。
そう言えば、リボーンが三浦家用の土産は家にあるから帰り際にでもハルに渡しておけって言ってたな。
「そう言えば、リボーンちゃんから連絡がありましたけど、ナツさん、大事なお話があるんですよね?」
「あ、私もリボーン君から同じメールが届いたよ。どうかしたの?」
「……………。」
“リボーンが言っていた準備ってこのことか”……などと言う感想を抱きながら、わたしは苦笑いをこぼす。
恭弥さんや隼人達にはガッツリとわたしの性格のことを話しているくせに、京ちゃん達にはそれを伝えていないのか……。
─────……自分で話せってことね……。
ある程度抵抗はなくなっているとは言え、なかなか難しいことをさせようとしてくるものだと考える。
でも、リボーンの言う通り、同性の前でしか見せることができない弱音というのも世の中には存在しているのも事実。
ただでさえ女は男にはない不調と呼ばれるものが存在しているのだから、同性の気を許せる存在と言うのは割と必要なものである。
「……ビアンキ姉さんにも話すから、まずはわたしの家に行こうか。3人にしか話せないことがあるから。」
ここまでお膳立てされた以上、それから逃げるのは誠意に欠ける。
それならばわたしは、わたしの性格を彼女達に話すことを選ぼう。
「うん!」
「はい!」
わたしの言葉を聞いて、京ちゃんとハルは元気に頷き、両腕にピッタリとくっついてくる。
夏場じゃないだけマシかと思いながらも、わたしはリボーンの気配がする方へと目を向けた。
彼はわたし達の様子を見ながら、携帯電話を触っている。おそらくだけど、ビアンキ姉さんに連絡を入れて、母さん達を家から遠ざけるための手を打っているのだろう。
そのことに少しだけ安堵しながら、自宅へと向かう道を真っ直ぐ歩く。
……ビアンキ姉さんも、わたしの話を聞いて、受け入れてくれるかな……?
❀
……程なくしてたどり着いた自宅。
すでに洗濯物は収められており、家の中からはビアンキ姉さんの気配だけが感じ取れた。
いや、気配だけを見るとリボーンもいる。ただし、彼がいるのはわたしの自室で、女性だけが残るようにセッティングしてあるようだ。
「ただいま。」
「「お邪魔しまーす!」」
ビアンキ姉さんがいるためか、玄関の鍵は開いていた。
扉を開けて中に入れば、玄関からは殆どの靴が無くなっている。
「お帰りなさい、3人とも。ああ、ナツ。ママン達は今チビ達と一緒に出かけているから、家の中には私達しかいないわ。
リボーンだけは家にいるけど、彼はナツの部屋にいるって言って2階に上がって行っちゃったわ。」
「女性だけの時間ってところかな。」
「きっとね。話があるんでしょう?まぁ、なんとなく内容はわかっているけど、リボーンも大まかなことしか教えてくれてないから詳しくは知らないの。話してくれるかしら?」
ビアンキ姉さんの言葉に静かに頷く。内心で、ビアンキ姉さんには話したのか……と少しだけツッコミながら。
どうせなら京ちゃん達にも話してくれたらよかったのにと思わなくもないけど、彼なりの自分で話すことも身につけろ……と言う意味なのだろう。
そんなことを考えながら、帰宅した際に必ずする手洗いうがいを済ませる。
そのあとで台所に一旦足を運び、さっさと人数分のお茶を淹れた。
ついでに昨日のうちに作っていたクッキーを取り出して、リビングの方へと持って行く。
「……父さんのはこっちって書き置きしていたおかげでこっちのクッキーは無事だった。」
「あなたの書き置き見せてもらったけど、あんなにデカデカと太い文字で書いてあったらパパンでも手を出さないわよ。
まぁ、その代わりパパン用に作っていたクッキーはどんどん彼の腹の中に消えていったけど。
にしてもナツ、あなた、甘いものとしょっぱいものを絶妙な加減で織り交ぜていたらしいじゃない。
彼、驚いていたわよ?なんでちょうどいいタイミングで甘いのとしょっぱいのが切り替わるんだってね。」
「だって甘いものばかり食べてたら飽きるでしょ?それならちょうどいい感じに織り交ぜておけば味が次々変わっていくから飽きないと思って。」
「相変わらずあなたは気遣いの天才ね。」
ビアンキ姉さんがわたしの頭を優しく撫でながら微笑む。
緩やかに動く確かな温もりはとても気持ち良くて、ついつい目を細めて堪能してしまう。
「……ナツさんのこんな表情初めて見ました………。」
「私も初めて見た。」
不意に京ちゃんとハルが少しだけびっくりしたような声音で言葉を紡ぐ。
……隼人と武と恭弥さんに今日1日頭撫でてって催促しまくってたせいで、つい頭を撫でられに行ってしまった。
まだ2人には話してないのに……。
「可愛らしいでしょ?でも、これが本来のナツらしいわよ。」
「「え!?」」
しまった……と遠い目をしていると、ビアンキ姉さんがサラッと今のわたしが本来のわたしであることを2人にバラしてしまった。
まさかの事態に2人が驚きわたしの方を向いてくる。
─────……どうやって話そうかと思っていたからちょうどいいか。
予想通りの反応を見せる2人に、自分から言えなかったなと言う少しの反省と、話せるタイミングができてよかったと言う安堵を抱く。
あとでリボーンから何かしら言われそうな気がしなくもないけど、自分から明かすことに慣れていないから少しだけ多めに見てほしい……。
「なっちゃん。ビアンキさんが言ってることは本当なの?」
「もしかして、ナツさんって本当は甘えんぼさんだったりするんですか?」
……意外にも直球で質問してくるハルに少しだけ苦笑いをこぼしそうになりながらも、わたしはビアンキ姉さんからそっと離れ……ようとしたら、なぜか彼女の膝の上に座らされる。
あれ?なんかこの体勢、応接室内で恭弥さんとしたぞ?と既視感を覚えながら、ビアンキ姉さんを少し見上げる。
「少しは気が楽なんじゃないかしら?こうやって実践された方が。」
……どうやらこれは、ビアンキ姉さんなりの気遣いだったらしい。
いや、まぁ、確かに気分的には楽だけどさ。躊躇わなくていいから。
「……重くない?」
「あら、私をそこら辺にいるひ弱な女と一緒にしないでちょうだい。ナツを膝の上に抱き上げることくらいどうってことないわ。
むしろちょっと軽いくらいよ。もう少しご飯を食べなさい。」
「わたしは元から少食なんだよ……」
少しだけ拗ねた表情をしながらも、ビアンキ姉さんに言葉を返せば、彼女は小さく笑い声をもらし、わたしの腰辺りを抱きしめた。
少しだけその腕を見つめたわたしは、何度か瞬きをしたあと少しだけ息を吐き、そのままビアンキ姉さんに軽く寄りかかった。
「……大事な話って言うのはこれのこと。ハルの言う通り、本当は寂しがり屋で甘えん坊なんだよね、わたし。」
寄りかかるわたしを抱きしめて、優しく頭を撫でてくるビアンキ姉さんに、自身の身を任せながら言葉を紡ぐ。
横向きに座っている状態のため、京ちゃん達の顔を見なくて済むことを、少しだけありがたいと思いながら。
「周りからしっかり者だと思われがち……と言うか、そう見えるようにしてるからそう思われているんだけど、誰かにくっついて過ごすことや、頭を撫でられることが好きでね。こうやって人にくっついていると落ち着くんだ。」
ビアンキ姉さんの温もりを満喫するように、静かに目を閉じながら、わたしは自分のことを明かしていく。
こうして抱きしめられていると、自分を一々取り繕う必要がないからか、とても息がしやすかった。
「こっちに移動している時にも話だけど、わたしの父さんは海外の方で常に仕事をしてる人なんだよね。
今はビアンキ姉さんや、ちびっ子達がいる分賑やかで、だけど、みんな手伝いをしてくれるから楽になってるけど、ビアンキ姉さん達が居候するようになるまでは、母さんとわたしの2人だけだった。
殆ど片親の状態で子育てや家事をしなくちゃいけない状態だったから、負担はかなりのものだったと思う。
その上、母さんは少し心配になってしまうくらいに抜けているところもあって、そんな母さんを守るためにも、わたしはいろんな技術を身につけた。」
ゆっくり言葉を紡ぎながら、少しだけ京ちゃん達に視線を向ける。2人はわたしの話を真剣に聞いてくれている。
続いてビアンキ姉さんに目を向けてみれば、彼女はそのまま話していいと言うように、わたしを見ながら頷いた。
「少しでも母さんが楽になるように、沢山のことをこなしていく日々は別に苦じゃなかった。
でも、甘えたいと思う時は何度もあった。少しくらいは普通の子供のように過ごしてみたいって考える時もあった。
だけど、そんなことをしたら母さんの負担にしかならないことは明白だった。」
「……だから、ナツは沢山のことを我慢して、抱えることを選んでいたのね。
自分のことより周りのことを優先して、これまでずっと頑張ってきた。」
ビアンキ姉さんの言葉を肯定するように、わたしは静かに頷く。わたしが素直に頷いたからか、ビアンキ姉さんは少しだけ驚いた様子を見せたが、すぐに安心したように笑った。
「でも、その様子だとかなり疲れていたんじゃない?時には息を抜きたいとか、力を抜きたいとか、そう思うことだって沢山あったでしょう?」
ビアンキ姉さんの問いかけに、再び小さく頷けば、彼女は困ったように笑いながら、“やっぱりね”……と呟く。
「あの、ビアンキさん。話がよく読めないんですけど、結局のところ、ナツさんは誰かに甘えたい……ってことでしょうか?」
話を聞いていたハルが、確認するように言葉を紡ぐ。
ビアンキ姉さんはすぐに小さく頷いては、わたしの頭を優しく撫でた。
「私達に話したかったことって言うのはこのことだったのよ。
ほら、あなた達も感じたことがあるんじゃない?ナツは男子よりも遥かに頼りになるしっかり者の女の子だってね。」
ビアンキ姉さんの問いかけに、京ちゃんとハルは頷く。
その言葉にビアンキ姉さんは予想通りだと言うように笑い、再び口を開いた。
「それもきっと、ナツって女の子の一つの側面……いわゆる、しっかり者の頑張り屋な優等生としての側面で間違いないと思うわ。
でも、本来の性格……本来のナツ自身かと言えばそれは違って、周りを守りたい……支えたいと言う想いが強く表に出ていることにより発生する後天的に芽生えてしまった側面なのよ。
本当のナツは寂しがり屋で甘えたがり屋な女の子で、でも、今、この場でママンを守り、支えることができるのは自分しかいないと理解してしまっていたから、本来の性格……本来の自分自身として過ごすことができなかった。」
ビアンキ姉さんがわたしの両頬を手で包み、ふにふにと揉むように触ってくる。
その手が少しだけくすぐったくて、わたしは軽く身を捩る。
「ずっとママンを支えようと頑張った結果、本来の性格が出しにくくなってしまって、息抜きすることができなかったのでしょうね。
しっかり者の優等生で頑張り屋さんのナツのことは否定しないし、この子が将来的に就くことになる立場を考えると、それは決して悪いことじゃないけど、我慢し過ぎて力を抜くことを忘れてしまったら、間違いなく人は精神的に壊れてしまい、それに伴って肉体的にも壊れてしまうわ。」
ビアンキ姉さんの手が頬から離れ、再びわたしは抱きしめられる。
今度は先程よりも強い力で、かなり体は密着していた。
「だからナツは私達に本来の性格の話をしたのよ。まぁ、この子のことだから余計な心配まで浮かべて、明かすことを最後まで悩んでいたところをリボーン辺りにツッコまれてようやく話した流れのような気もするけど。」
“ビアンキ姉さん、ちょっと怖い”……と少しだけ遠い目をする。
なんで少ない情報だけでそこに行き着くのマフィアの人って……。さっきまでのわたしの状況をサラッと見抜かれるとは思わなかったんだけど。
「この子なりのSOSってところでしょうね。こうして、私達といる時だけは本来の性格の自分でいさせてほしいってことだと思うわ。
ずっと普段のままで過ごしていたら、限界が必ずやってくるってわかったのかもしれないわね。」
“そうでしょう?”と聞いてくるビアンキ姉さんを見上げ、少しだけ拗ねる。
なんで全部わかるの……そんな疑問をぶつけるように。
「私はあなた達以上に様々な経験を積んでるのよ?一般の人間と全く違う洞察力や視点を持ってるんだから、少しのヒントだけでも答えに簡単に行き着くわ。」
わたしがどうして拗ねたような表情を見せたのかすぐに把握したビアンキ姉さんは、その疑問の答えに当たる言葉を返してくる。
こんなにあっさりバレるのか……やっぱりマフィアってちょっと怖い。
「……そうだったんだね。なっちゃん、これまでいっぱい頑張ってたんだ!」
「大丈夫です!ハルは頑張り屋ないつもの王子様なナツさんも、ビアンキさんにくっついたり頭を撫でてもらったりして、リラックスしてるベリーキュートな今のナツさんも好きなので!
ハルは将来的にナツさんの敏腕秘書を目指しているので、休みたい時や力を抜きたい時は言ってください!
お仕えするリーダーさんの精神面の健康を守るのも秘書の役目です!」
「?なっちゃんって将来はどこかの社長さんになるの?」
「えっと……」
「似たようなものになる予定にはなってるわね。だってナツは、将来的に一つの組織のリーダーになるために現在勉強中だもの。」
「だったら私もなっちゃんの秘書になる!これまでいっぱい助けてもらったんだもん。だから今度は私がなっちゃんを支えるの!」
「いいですね!ハル達で敏腕秘書目指しましょう!」
「うん!」
「……秘書って2人以上いるもんだっけ…………?」
「別にいいんじゃない?その分円滑に作業も回ると思うわよ。周りに支えられながら過ごす方が、ナツにもちょうどいいと思うし、いっそのこと2人を将来的に秘書として雇いなさい。
私はどちらかと言うと前に出る方が得意だから秘書にはならないけど、必要ならばいくらでも頼りなさい。私なりの仕事でナツの障害を振り払ってあげるから。」
「……うん。ありがとう、ビアンキ姉さん。」
ビアンキ姉さんにお礼を言いながら、わたしはそのまま彼女に抱きつき少しだけすり寄る。
頭上から、あら……と小さな声が聞こえてきたが、すぐにわたしが甘えてるのだとわかったのか、ビアンキ姉さんは再び頭を撫でてくれた。
「……ビアンキさん、ちょっとずるいです。」
「私もなっちゃんの頭撫でたい……」
「ハルもです……。いつも撫でられるばかりなので、たまにはお返ししたいです。」
それを見ていた京ちゃんとハルからどことなく拗ねたような声音が聞こえてくる。
視線を2人に向けてみると、彼女達は少しだけ頬を膨らませていた。
「……とのことみたいよ、ナツ?今のあなたは、少しだけ甘えん坊のあなたなんだし、2人のところにも行ってみたらどうかしら?
私はこのままでもいいのだけど、2人も今のあなたのことは好きみたいだし。」
「…………。」
ビアンキ姉さんに促されるまま2人に少しだけ近寄ってみると、2人は近づいてきたわたしを見て花が咲いたような笑顔を見せては、自分達の間に1人分座れる隙間を空けた。
そこに座ると左右から抱きしめられる。
「ナツさんがハル達のところに来てくれました!」
「うん!このままぎゅーってしちゃお!」
左右から2人に抱きしめられ、2人の頬が自分の頬にくっつけられる。
少しだけくすぐったかったが、それもまた不思議と心地良くて、わたしは体から力を抜く。
「あらあら。可愛らしい団子ができたわね。」
左右からぎゅうぎゅう抱きしめられていると、ビアンキ姉さんが微笑ましいものを見る目をして、携帯電話を取り出す。
シャッター音が聞こえることから、彼女がわたし達の写真を撮ってるのがわかった。
「……何で写真撮ってるの、ビアンキ姉さん。」
「いいじゃない。私だって可愛いものを見て癒されたいんだもの。」
「ビアンキさん!その写真、あとで私に送ってください!」
「ハルもほしいです!」
「いいわよ。そうだ。折角だし、膝枕とかしてもらったらどう?抱きしめられたり、頭を撫でてもらうだけでもナツにとっては十分なのかもしれないけど、これまで頑張ってきたんだからそれくらいしてもらっても問題ないくらいだと思うわよ。」
「さ、流石に膝枕は……」
「よーし、京子ちゃん!じゃんけんです!」
「負けないよ、ハルちゃん!」
「ちょっと2人までなんで乗り気なの!?」
「それなら私も混ざろうかしら。いつも甘えてこない可愛らしい妹分が甘えたがりモードなんだし、今を逃したら次はいつになるかわからないもの。」
「ビアンキ姉さんまで……!!」
楽しげに笑ってるビアンキ姉さんまで混ざりながら、誰がわたしを膝枕するかじゃんけんを始めてしまう3人に困惑する。
そこまでしなくてもと声をかけようにも、止まりそうになかった。
「……今回はビアンキにリードされて明かすことになったみてーだな。」
「!」
どうしようと思っていると、すぐ近くからリボーンの声が聞こえてきた。
視線を声の方に向けてみると、そこには明らかに女性ものの衣装とロングヘアのウィッグを身につけてるリボーンの姿があった。
「ええ……?なんでそんな格好してんのリボーn」
「今のわたしはリボ子よ!ナメないで!」
「誰だよリボ子って!!」
まさかの姿に呆気に取られながらリボーンに声をかけると、彼は自分はリボ子だと言い返してきた。
誰だよ!!と思わずツッコミを入れるが彼は気にしていないのか、手元にある携帯電話を見せてくる。
画面に映し出されているのは送信済みボックスと、ディーノさんの名前が記されている連絡先、そして、”ナツがようやく素直になったから明日お前もナツに会え”と言う文字だった。
「ちょ!?」
「これまでディーノには度々甘えていたしな。ついでに本格的に甘えられるようにしておいた方がいいと思ったんだ。
ナツにとってもちょうどいい先輩だし、相談をする窓口兼甘えられる対象にしていても問題はないと思うぞ。
まぁ、日本をメインの行動場所にしている分、今回のメンバーだけでも問題はないと思うが、念には念をってとこだ。
時には年が離れた相手にしか話せないこともあるだろうし、ボスとしての立場を持つ者同士、心を許せる奴がいてもいいはずだ。
まぁ、本来は別のマフィアのボスに心を許すのはできるだけ避けた方がいいわけだが、ディーノなら絶対にナツを裏切らないだろ?
元教え子だった分、アイツの人格はよく知ってるし、信頼も信用もしてるからな。」
“ディーノにはモロバレだったしな、お前の本当の性格”……と口にするリボーンに頭を抱えそうになる。
いや、まぁ、確かにディーノさんには度々本来の性格の片鱗出していた記憶しかないけど、改めて打ち明けないといけないの……!?
「あと、この話をする前、ディーノがナツに預かり物があるから持って行くって言ってたからついでに明日もらってこい。」
「……普通それが本題じゃないの?」
リボーンの言葉に呆れながら言い返すが、彼は知らんぷり。
その姿に思わずジトリと睨みつけるが、何も反応は返ってこない。
─────……優先順位はわたしが甘えられる人を作ること>預かり物を受け取るなわけ……?
逆じゃん……と溜め息を吐きそうになっていると、ころんとその場で体を横たわらされる。
同時に頭に触れたのは柔らかな太ももの感触で、何度か瞬きを繰り返す。
「ビアンキ姉さん?」
「じゃんけんをしたら私が勝ったから膝枕をしてるのよ。」
「う〜〜……負けちゃいましたぁ〜………」
「私もなっちゃんに膝枕したかったのに……」
「……結局じゃんけんしたんだね………?」
止めたかったものが止められなかったことに苦笑いをこぼす。
でも、次第に膝枕で転がされたわたしの頭を撫でるビアンキ姉さんの手の心地よさに、少しだけ眠りかける。
「これからきっと忙しくなるわ。歩こうとしてる道を決めたのならば、それに伴った沢山の壁が立ちはだかるのが目に見えてるんだもの。
だったら、今だけは普通の子供みたいに、沢山甘えて、沢山休みなさい。
ナツの姉代わりくらいどうってことないから、甘えたい時は甘えてちょうだい。
今回は帰ってきてくれたから良かったけど、何も気付けないまま手遅れになることもありえるってことがわかってしまって、自分が情けなくなったもの。
もう、あんな思いは懲り懲りだから、大変な時は頼ってちょうだい。」
「ナツさん!ハルはナツさんが甘えん坊さんでも気にしません!やれることは少ないかもですが、ナツさんをぎゅっとしてなでなですることくらい、ハルもできますので、息抜きをしたい時は言ってくださいね?」
「私もなっちゃんが甘えることが好きな女の子でも気にしないよ。私にもできることがあると思うし、なっちゃんが大変な時はいつでも助けるから、もし、助けてほしいことがあったら言ってね!」
そんな中聞こえてきた3人の言葉に、わたしは少しだけ無言になる。
でも、すぐにその言葉に頷けば、3人が笑い声を漏らした。
「ママンとパパンとチビ達が帰ってくるまで眠ってもいいわよ。特別に膝をこのまま貸してあげるから。」
「ナツさんが起きた時、ハル達は帰ってるかもしれませんが、甘えたい時はいつでも頼ってくださいね!」
「今度、一緒におでかけしようね。思いっきりリフレッシュしちゃお!」
「……うん。ありがとう、3人とも。」
頼もしいこと言葉をかけてくれる3人に、わたしは小さく笑いながらお礼を口にする。
明日も大変なことになりそうな気がするけど、今だけはそれを忘れて休ませて貰おう。
沢田 奈月
ビアンキの助力もあり、自身の本来の性格を京子とハルに教えたボンゴレ10代目。
リボーンからディーノにも明かすように言われ、かなり戸惑う。
京子&ハル
ビアンキの助力を受けて、自分の本当の性格を明かしてきた奈月に、自分達にも甘えてほしいと伝える。
今回はビアンキに負けてしまったが、次は自分達が!と意気込む。
ビアンキ
奈月の性格を、朝のうちに少しだけ察していた毒サソリ。
多くを抱えて、一時的に失踪してしまった彼女の行動はかなり堪えていた。
これからのことを考えると、休める時は休んでほしいと思い、甘えてほしいと伝えた。
リボーン
できれば自分から明かしてほしいと思っていたが、とりあえずまずは周りに手を伸ばして甘えられるようになることを優先としているため、ビアンキのリードで明かしたことを指摘するつもりはない。
ディーノから連絡をもらった時、ちょうどいいと思い彼にも甘えられるようにしようと画策する。