最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
そんな中、やってきた彼の部下が、こっちの用事は済ませたのかと問いかける。
部下の問いかけを聞いた跳ね馬は、9代目からの預かり物として、桜に一つの箱と手紙を手渡すのだった。
ここから指輪争奪戦序章となります。
大きな温もり、新たな力
ディーノさんに桜奈としての自分を明かし、甘えてもいいと言う言葉をもらったわたしは、しばらくの間、彼の膝の上に座り、奈月としての自分自身の休息を行った。
その間、ディーノさんはずっとわたしの頭を撫でて、思い立ったように名前を呼んではキスをしてくると言う、わたしを知った骸と似たような行動を取ってきたことにはかなり驚いていたし、その現状をわたしの中に潜ませた精神の端末から感じ取った骸から浮気だなんだとツッコまれたりもしたが、わたしはどちらとも付き合ってないことを忘れないでほしい。
そんなことを考えながら、桜奈としての自分でゆっくりと羽を伸ばしたわたしは、いつロマーリオさんが入ってきてもおかしくないように、十分休まった奈月としての自分に戻り、出されていたコーヒーとお菓子を口にしていた。
……奈月としての“私”に戻り、離れてしまったからか、少しだけディーノさんが寂しそうだったけど、オンオフの切り替えは大事だから許して欲しい。
「ボス。姫さんの大事な話は終わったのか?」
「ああ。なんとかな。まぁ、その分ちと寂しい思いをすることになっちまったが、ちゃんとナツが何を伝えたかったのかわかったぜ。
どうやら、ゆっくりと休める場所を作っていたところだったらしいな。どうもナツは抱え過ぎるみてーだし。」
「なるほどな。そんで、兄弟子妹弟子の関係性ができてるボスと話をさせたってわけか。
立場が同じ年上の人間を、無茶しがちな姫さんのいい相談役にあてがうために。」
「ま、そんなとこだな。」
“まぁ、実際はそれ以上の話があったわけだが”……なんて視線をわたしに向けながら、小さく笑うディーノさんを見つめ返す。
するとディーノさんはわたしの視線と自身の視線をしっかりと合わせては、明るい笑顔を見せてきた。
先程まで時折キスをしてきた彼とは全く違うお兄さんと言えるような表情に、2人きりと人がいる時でこうも表情が違うのかと軽く目を逸らす。
桜月の言葉を借りるなら、あれは完全にオスとしての……男の人としての表情だったわけだ……。
「おやまぁ……随分と変わり身がすごいですねぇ、この兄弟子さん。見事なまでのオスの顔と兄の顔の2種類でした。」
……どうやら桜月のお墨付きだったらしい。そんなお墨付きいらないけど。
「姫さんの話が終わったんなら、今度はこっちの話じゃねーか?ボス。」
「そうだな。ナツ。ちょっと待っててくれ。」
「?」
わたしに待つように言って、ディーノさんは部屋の外に行く。程なくして戻ってきた彼の手元には、一つの箱が握られており、その上には手紙が乗せられていた。
「……9代目からの預かりもんだ。これから先、ナツに必要になるだろうって渡されてな。
……これを受け取るとなると、ナツはこれから先もマフィアとしての道を歩むことを示すことになる。
9代目からの言伝だ。“自分の歩みたい道……それをしっかりと考えた上で受け取るか否かを考えてほしい。今回のことで、君が10代目の候補として名を挙げられることを拒みたいと思ったなら、これは受け取らないでも構わない”……だってさ。」
それは、一つの選択肢を意味するものだった。ボンゴレファミリーのボスを引き継ぐための道をこれまで通り歩むのか、それとも、ボスの座を引き継ぐことはせず、マフィアと関わりのない道を歩むのか……それを選ばせるためのものだった。
少しの間、わたしはディーノさんが持っている箱を無言で見つめ、静かにそれに手を伸ばした。
「……引き受けるんだな?」
「……はい。私のやりたいことは、そっちの世界に足を踏み入れることでようやく動かすことができます。
確かにイバラの道かもしれない……苦しい思いも、痛い思いも、辛い思いも沢山してしまうかもしれない。
それでも、頑張りたいと一度思ってしまったんですから、歩けるところまで歩いて行きたいです。
その過程で、沢山ディーノさん達を頼ることになるかもしれませんが……」
「ナツに頼られることはどうってことないって言っただろ?辛い時はいつでも言ってくれ。
その時はオレも、オレのできる限りの力を尽くしてナツを支えてやるからさ。」
ディーノさんの頼もしい言葉に、わたしは小さく笑みを浮かべたのち、その箱を彼の手から受け取った。
一緒に乗せてあった手紙の文字は、度々文通で様子を伺ってくれていた9代目のもののようだ。
おそらく、この箱に入ってるものに関して記されているのだろう。
手渡されたものと手紙の関係性……それを冷静に分析しながら、わたしは静かに箱を開ける。
箱の中には一対の黒皮の手袋が収められていた。
「……?」
この手袋はいったい……?不思議に思いながら、箱の中からそれを取り出す。
……不意に、わたしに流れているジョットさんの血が、わたしに話かけてくれた気がした。
“その手袋を嵌めて、死ぬ気の炎を灯してみれば答えがわかる”と、変わらず優しいあの声で。
それに従うように、わたしは持っていた手袋を嵌めて、静かにその場で目を閉じる。
何度か深呼吸を繰り返せば、私の中に宿る温かい炎が全身を緩やかに巡り、一点へと集中する。
感じ取った温もりを穏やかに解放すれば、視界にちらつくオレンジ色の炎。
同時に、わたしが手にはめていた黒皮の手袋は、不思議な形状のグローブへと姿を変えていた。
「……手の甲に何か……?X……と言うよりは、英数字の10かな。文字からボンゴレって文字が読み取れるから……なるほどね。ボンゴレデーチモ……ボンゴレの10代目を意味するエンブレムか。」
視界に入り込んだ手の甲を見て、何が刻まれているのか読み取ったわたしは、箱と一緒に手渡されていた手紙を静かに開く。
そこに記されていたのは、とても丁寧なイタリア語の文章だった。
────────────────────
親愛なる奈月ちゃんへ。この手紙を読んでいると言うことは、ディーノに預けていた贈り物は、ちゃんと君に届いたようだね。
まずは、謝罪をさせてほしい。こちらの都合で君の穏やかな生活を、当たり前の子供としての毎日を、奪ってしまってすまなかった。
君が残した手紙を見て、あまりにも多くを背負わせてしまっていたと知り、深く反省すると同時に情けないと思っている。
本来ならば、沢山あったはずの若者の道筋を、我々は塞いでしまった。重ねて謝罪をさせてほしい。
そして、ありがとう。沢山悩み、苦しい思いをしたにも関わらず、引き受けることを選んでくれて。
リボーンから聞いてるよ。君がボンゴレを継ぐための道を歩く意思を見せていたと。
理由はどうであれ、その想いは本当に嬉しかった。こちらの都合によるワガママを引き受けてくれてありがとう。
これから先、君には沢山の試練が待ち受けているだろう。現に、今この時も、何やら怪しい動きをしている者達がいる。きっと……君や君の周りにも牙を向けてくるはずだ。
手紙を読んだ時、君の中にも流れている血が、贈り物のグローブのことを教えてくれただろう。それは、間違いなく君の身を守る力となると。
そのグローブはね。かつて、我々の先祖である始まりのボンゴレ……ジョットが使っていたものと同じものなんだ。
君の手紙を見て、もしも君がボンゴレを継ぐ道を選ばなかった時のために、残されているボンゴレに関する資料を読み解き、他に候補者となりうる者がいないか探していたのだが、その時に見つけた資料の中に、かつてのグローブの製造方法が載っていてね。こうして蘇らせることができた。
もちろん、君の手や立場に合わせるように、特注しておいた代物でもある。
きっと、これから歩む道の中で、そのグローブとジョットの血が、君を守り抜いてくれるだろう。
無論、我々も君の味方だ。何か困ったことがあったり、悩みや苦しみに苛まれてしまった時は、遠慮なく我々を頼ってほしい。
そして、我々だけでなく、君の周りにいる者達もしっかりと頼りなさい。
今の君は1人ではない。多くの人と、多くの縁に恵まれているのだから。
────────────────────
手紙に記されていた文字を最後まで追い、わたしは自身の手を覆っているXが刻まれたグローブに視線を落とす。
確かにこのグローブは、ジョットさんが戦闘技術を教えてくれる時、いつもつけていたものと全く形状が一緒だった。
「……グローブとプリーモの血が、私のことを守ってくれる……うん。確かにそうかも。
このグローブをつけていると、不思議と大きな温もりが力を貸してくれているんだと思えるから。」
わたしの手に合わせてあるグローブの感触を確かめるために、何度かグーとパーを繰り返す。
「……そっか。このグローブ……私が持ってる武器と全く同じ材質なんだ。」
再び優しく教えるように、わたしの中に流れている血が囁いた。わたしの手を覆っているこのグローブは、わたしが持ってる槍と大鎌と同じように、死ぬ気の炎を灯すことができるものだと。
教えてくれると言うことは、このグローブの使い方は、これから先重要なものになってくることを意味している。
─────……最近、見かけることがないけど、ディーノさんと別れたあと、みんなの元に合流しよう。彼らの力を借りた方が、わたしは強くなれるから。
「何か感じるものがあったか?」
そんなことを考えていると、ディーノさんが話しかけてきた。直ぐにわたしは小さく頷き、自身の死ぬ気モードを解除する。
死ぬ気の炎を消した瞬間、グローブは先程の黒皮の手袋に戻ったが、どうやらこれは、わたしの死ぬ気モードに反応するものだったらしい。
「……不思議と、このグローブからは大きな温もりを感じることができました。
同時に、奪うために与えられたわけではなく、自分自身と大切なものを守るために与えられたのだと言うことも。
……この温もりがあるおかげで、私は自分のやりたいことを真っ直ぐとこなせる気がします。
例え沢山の回り道や、険しい道が現れようとも、きっとそれを走り抜けることができる。」
9代目からの手紙と一緒に添付されていた便箋を手に取り、わたしはそこに文字を記して行く。
贈り物のグローブに対する感謝の想いを込めながら。
「……イタリアに戻った時、可能であれば9代目に渡してください。素敵な贈り物をもらったので、お礼を伝えたいから。」
「ああ。任されたぜ。」
その場で記した手紙をディーノさんへと手渡せば、彼はそれを受け取って、9代目に渡すと約束してくれた。
そのことに小さく笑いながら、わたしは冷めてしまったコーヒーを飲み干す。
手紙に記されていた、沢山の試練が牙を向けてくるだろうと言う、これから先に起こるであろう出来事に、静かに思いを馳せながら。
沢田 奈月
ジョットと同じグローブを受け取り、これから先の試練に思いを馳せるボンゴレ10代目。
ジョット達と合流した方が、必要な力を身につけることができると判断し、彼らとの合流を視野に入れる。
ディーノ
ちゃっかり桜奈にキスを何度もしていたキャバッローネファミリー10代目ボス。
奈月としてボスの道を歩むことを決めた彼女の姿を見て、同盟者として、1人の男として、目の前にいる女王を支えることを誓う。
ロマーリオ
なんとなく2人の距離が縮まっていることを感じていたキャバッローネファミリー幹部。
ボンゴレを背負う覚悟で贈り物を受け取りながらも、いざと言う時は助けてほしいと自身のボスに告げる貝の女王と、その女王を力の限り支えると躊躇いなく告げる自身のボスの姿を見て、オレらのボス、この姫さん以外の女を嫁にもらおうとしなさそうだな……と苦笑いをこぼした。
まぁ、この2人が結ばれたらウチも向こうも安泰かもなとも思っていたりもする。
9代目
奈月に手紙とともに、かつて、初代のボンゴレが使っていた形状と同じグローブを贈った現ボンゴレファミリーのボス。
彼女の手紙を見て、彼女の意思やもしもの選択を下した際のことを考えて、複雑な心境を抱いていたが、リボーンから迷いに迷ってやりたいことを見つけ、ボンゴレを継ぐための道を改めて歩き始めたと言う話を聞き、申し訳なさと同時に、感謝を向け、これから先も自分は奈月の味方をすると手紙に記し、自分達意外にも、周りにいる仲間を頼るように伝えた。